ブレーキ

「ディスクブレーキはユーザーが求めたのではない。メーカーに強いられたものだ」クリス・フルームのメカニックが語る

クリス・フルームの個人バイクメカニック、ゲイリー・ブリム(Gary Blem)氏がフルームのYouTubeチャンネルに登場。ディスクブレーキに関する考えを語っています。ブリム氏はメカニック歴17年で、かつてはTeam HTCでマーク・カヴェンディッシュのメカニックも担当していたそうです。

ディスクブレーキはメーカーが強いたものだ

以下の動画の、3:30以降の発言を抄訳してみます。

私はディスクブレーキの大ファンではありません。ロードサイクリングでは、ディスクブレーキは最後の最後でもブレーキをかけられると言われていますし、プロトンは確かにそのようにしています。しかし時にタイヤがコーナーの内側を攻めるのに十分でないことがあり、ロードレースが高速化したこともあり、プロトン内では多くのクラッシュが見られます。

ディスクブレーキでの作業量は半端なものではなく、一般的なシクロツーリスト向けには完璧にセットアップできても、ブレーキに大きい負荷をかける20〜30kmの下りも走るプロにとっては、下りきるとローターがノイジーになりますし、ピストンは固まって動かなくなります。シマノの12スピードではこれが解決されていると良いのですが。ノイズもあるし、信頼性が超高いわけでもなく、ホイール交換もはるかに遅い。こうしたところは改善の余地があると思います。

MTBと(ロード)レーシングでは話は別です。同じタイプの要素ではないですし、ライダーが毎日直面する問題も同じではないのです。

重量ファクターは大きく、300〜400g増えることになるので最終的にはフレームやホイールで相殺しなくてはなりません。超軽量なバイクが必要になります。

個人的にディスクブレーキはライダーが求めたというよりも、メーカーによって強制された側面が大きいと考えています。最終的にはメーカー側からやってきたものです。

12年前にディスクブレーキがロードレースにやってくると言われた時、何を改善したら良いかと意見を求められ、ピストンが調整可能でクリアランスを得られるなら問題のいくつかは解決できるだろう、と答えましたが、言うは易し、行うは難し、ですね。

電動シフトが登場した時に似ていて、絶対反対だという人もいたし、賛成する人もいました。今では見渡すと市場にあるバイクの90%は電動です。初期の電動コンポでは多くの問題を経験しましたが、ディスクブレーキも(現在の電動コンポのようなレベルに達するのは)時間の問題でしょう。

新しいものに人は抵抗を示しがちだったり、拒絶しがちです。心を開いてそこから出発する必要があるでしょう

クリス・フルームによるディスクブレーキ批判は有名ですが(下に関連記事リンクあり)、批判と言っても「ダメなものはダメだ」という調子ではなく、今後ディスクブレーキが主流になるのは間違いないが、異音や摩擦など解消してほしいところは多い、という意見でした。メカニックのゲイリー・ブリム氏も同じような方向性の発言ですね。

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しかし「ディスクブレーキはユーザーが求めたものと言うよりも、メーカーに強いられたものだ(It was more forced by the manufacturers than anything else, and not so much by the riders)」という発言は、おっとそこまで言って良いのか! と思ってしまいました。

上の動画では他にも、フルームがアイソメトリック・チェーンリングにこだわり続けていること、ホイールやベアリングにうるさいこと、グランツールでは毎日のようにポジションを変えていたこと、メカニックの彼はストレスが増えるので(ツール・ド・フランスでは)マイヨジョーヌは頼むから最終週で着てくれと懇願していたこと、ジロ・デ・イタリアを勝利した日は、深夜11時だというのに「ゲイリー、このサドルを使いたんだ、交換してくれ」とお願いされたこともあったといった話題もありました。

ディスクブレーキにもリムブレーキにもそれぞれの長所と短所はありますが、メカニックにとって仕事量が激増したのは間違いないのでしょうね。下りでは抜群に便利なだけに、その下りで問題が出るというのが皮肉なところです。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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