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周到な準備に裏打ちされた勇猛さーー彼はなぜあんなにも速かったのか? TDF第16ステージでの戦いについての海外ロードレースファンによる分析

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すでにツール・ド・フランス2023の第16ステージを視聴された方向けの記事です

昨日のツール・ド・フランス第16ステージ、個人タイムトライアルの終了間際。海外掲示板のとあるレース実況スレッドでは、異変が生じていました。かなり多くの投稿が、モデレーターによって次々と削除されていったのです。[deleted], [deleted], [deleted]…

それはなぜか。そのコミュニティには、次のようなルールがあったからです。

No doping speculation inside a race, results, or predictions threads.
レース実況、結果、あるいは予想スレッドでは、ドーピングについて憶測することを禁じます

つまり、かなり多くの人がドーピングを疑うコメントを残していたのでした。

周到な準備に裏打ちされた勇猛さ

しかし別のコミュニティではこんな投稿が見られました。

出典 Difference between Pogacar and Vingegaard in the first corner. Side by side.

  • どんな薬を使えば完璧なライン取りとコーナリングの技術が得られるんだよ、教えてくれ

これは、ドーピングしたってあんな「技術」がすぐに得られるわけはないだろう、ということを遠回しに伝えている意見ですね。昨日の勝者、ヨナス・ヴィンゲゴーのライディングスキルについて、他にも同様の意見が多く寄せられていました。

  • タイム差の50%はバイクのハンドリングと下りのコーナーへのクレイジーなコミットメントが生んだと思う(※筆者注:「コミットメント」は日本語になりにくい言葉ですが、ここでは「やりきってみせる・クリアしてみせる」という強烈な意志、という感じの意味)
  • うん、最初のコーナーでほとんど2秒差がついていた。なんてコーナースピードだ。下りでもリスクを取って全てを注ぎこんでいた(※筆者注:上に掲載したリンク先で、第1コーナーでの2人の走り方の比較動画が見られます)
  • 2つ目のコーナーでヴィンゲゴーは4秒差を付けていたよ。本当に攻めていた
  • ヨナスは今日、勝つか負けるかのどちらかにする、と決めていた。あらゆるリスクを冒して、なんとか生き残った。チャンピオンの勇気(それとも愚かさか?)だよ
  • 彼はあらゆるスポーツマンが欲する状態にいたのだと思う。つまり「ゾーン」に入っていたんだ
  • 彼は大部分のリスクを取ったけれど、かなり用意周到だったことにも注目しなくてはならない。たぶん私達が考えているよりもずっとコントロールできていたんだと思うよ
  • 彼が曲がるたびに緊張したよ。ためらわずに突っ込んでいた。尊敬しかない
  • あらゆるコーナーでのトランジションでテクニックの正確さが際立っていた。モトGPライダーみたいにバイクを取り回していた。タイムトライアル競技のこういう要素を極めることに集中していたのは間違いないと思う、単にエアロやパワーではなくね。そしてそれが実った
  • オランダの専門家に聞いたんだけど、その人は昨日ヴィンゲゴーが5台のチームカーと一緒にいるのを見たんだって。ヴィンゲゴーは試走でコーナーを曲がるたびに、走ったラインが気に入らなかったら戻って、満足行くまでまたコーナリングを試して、最適なルートを見つけるまで3〜5回繰り返していたらしいよ
  • ポガチャルはコーナーと下りでは間違いなく固くなっていたよ… それにバイクチェンジがあったからね…。タイムロスは登りで挽回できるかもしれないと思っていたけど、そうはならなかった。彼は決して悪い状態ではなかった、ただ今日のヨナスのレベルにはなかったんだ。これをひっくり返せるかどうか、とても興味がある、難しいかもしれないけど、挑戦はしてくれるだろう
  • ヨナスに脱帽だ。今年はじめのクラッシュが、ポガチャルのツールでのカーブや下りに少し影響を与えたんだと思う、これまでの年よりも注意深くなっているように見えた
  • (上の人に)でもポガチャルは過去のツールでの自己ベストタイムを更新していたんだぜ

ヴィンゲゴーのコーナリングでは私も「うわ〜、ミスだけはするなよ〜!」とハラハラしながら観戦していました。一方でポガチャルの表情には、第3計測ポイントを過ぎたあたりでこれまで見たことのないような不安・焦燥感が現れているような気もしました。

その時ポガチャルはこんな状態だったのではないか、という憶測を、他の海外掲示板で目にしました。

どうだヨナス、僕はやったぞ! ワウトに大差で僕が1位だ! 今年のツールでは少しづつ秒差を詰めてきた、それが実った、そして今日、僕は爆発する。今日はもっと大きく引き離せるだろう、ヨナス、これで僕の勝ちだ…

(無線で)ヨナスはいまどのへん?

(チームカー)…

(無線で)ヨナスいまどこにいる?

(チームカー) 奴には… もうすぐお前の背中が見える…

もうこんなん漫画やん、と関西弁を喋れないのに関西弁で思いました。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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