Shimano Di2やSRAM eTap、Campagnolo EPSといった電動コンポは年々利用者が増加していて、将来的には油圧ディスクブレーキと同じようにロードバイクでは主流の選択肢となりそうですが、大きなメリットがある一方で「故障したら基本的に自分でなおせない」という弱点があります。
CBN Blogライターのなどかずさんが先日SRAM RED eTapのトラブル事例を紹介してくださいましたが(下の記事)、実際こうしたトラブルはどの程度の割合で発生するのでしょうか?
ということで、CBN Twitterで実態調査を実施してみました。ご回答いただいた皆様のご協力に感謝いたします。
電動コンポのトラブル発生率
Shimano Di2でのトラブル発生率
今回はShimano Di2とSRAM eTapのトラブル発生経験についてお聞きしました。まず次のようにお聞きしたところ…
Shimano Di2を愛用中の方にお聞きします。これまで走行中に変速操作ができなくなるなどのトラブルはありましたか?
71%の方々がトラブルは1度も経験していないと回答。1回から複数回のトラブルを経験した方は29%という結果になりました(総回答者数350人)。
Shimano Di2を愛用中の方にお聞きします。これまで走行中に変速操作ができなくなるなどのトラブルはありましたか?(関連記事:https://t.co/36g6F8Eakv)
— CBN (@cbnanashi) January 20, 2020
これはTwitterでの簡易アンケートですから、回答された方が実際にDi2を使いはじめてからどのくらい経っているかわかりませんし、いつも同じ環境で使用されているかどうかもわかりません。
そのため「Di2の3割は不良品である」という結論は導けません。「3割の人が何らかのトラブルを経験している」という表現は、そのためかなりざっくりとした、ふわっとしたものであることをあらかじめご了承ください。
SRAM eTapでのトラブル発生率
ただし、だからといってこのデータが何の役にも経たないかというと、そういうわけではありません。
例えばそれはSRAM eTapでのトラブル発生率を見るとわかります。以下のようにお聞きしたところ…
SRAMの電動コンポを愛用中の方にお聞きします。これまで走行中に変速操作ができなくなるなどのトラブルはありましたか?
次のような結果になりました。トラブルを経験したことがないという方は72%。何らかの不具合を経験した方の合計は28%です(総回答者数172人)。
SRAMの電動コンポを愛用中の方にお聞きします。これまで走行中に変速操作ができなくなるなどのトラブルはありましたか?(関連記事:https://t.co/36g6F8Eakv)
— CBN (@cbnanashi) January 20, 2020
総回答者の母数がDi2とeTapとで倍くらい違うので断言はもちろんできないのですが、「トラブルフリー約70%、何らかのトラブル経験30%」とほぼ同じ傾向が出ていて、このあたりの数字の一致はなかなか興味深いものがあります。
電動コンポのトラブル事例
では実際にどんな感じのトラブルが発生するのでしょうか。Twitterで寄せられたご意見からいくつか紹介します。
Shimano Di2のトラブル例
シマノの場合はどちらかというとソフトウェアの異常よりもハードウェアの接触不良やバッテリーの意図しない放電などが多いのかな、という気がしました。
1回だけ、土砂降りの雨の中を走っていたら変速完了を検知できなくなって再度変速しようとしたのか、何度も勝手にシフトアップ・ダウンを繰り返す症状が出たことはあった
反対に言えばそれくらいしかトラブルは無い(6870) https://t.co/a16yxcRg5u— てかりん (@tekarin) January 20, 2020
シートポスト内蔵バッテリーが脱落→走行の振動でフレーム内部でバッテリーが暴れる→衝撃でケーブルが接触不良になりバッテリーが異常放電→バッテリー切れで変速不可、っということはあったけれどあくまでもショップでの組付の問題であってDi2自体の問題でトラブルはこれまでに無かった。 https://t.co/Xio9UU5m3U
— ノシタフ ミヒロ (@kinotsch) January 20, 2020
ジャンクションBが壊れました。
いろいろ試した結果、一つのポートが接触不良を起こしてました。
症状が時々だった上に、フレームの中なので原因がわかるまで時間がかかりました・・・ https://t.co/HvXcIGMrO3— かななわ@BRM208博多300k (@kamultegra) January 20, 2020
落車のショックでブラケットが曲がったせいか左のプラグが半抜けで──はノーカンなのか💦
まあでもdi2といえばワイヤレスユニット導入→E-tubeでファームアップする時に高確率?で起こる「恐怖の文鎮化」──あ、これも走行中じゃないか😅 https://t.co/wmS7T7qsYT— Euvicc@ちょうどいいダート/グラベル探索中 (@Euvicc) January 21, 2020
走行中では無いですが、去年の夏に車庫が暑くなりすぎた為か、1日でdi2バッテリーが満充電から放電済みになっていた事がありました。
— オカピ (@kinpira1223) January 21, 2020
充電がなんらかの原因で揮発することがあったな。走る前に充電を確認しろって話なんだかw https://t.co/Z5eJmEfRJz
— グスタフ (@1028Gustave) January 21, 2020
と言っても、①段差のショック?で外付けジャンクションBからコードが緩んだこと(見つけて押し込んだら動いた)と、②前の晩に動作確認したのに(充電量は未チェック)、いざ車載後走り出したら前も後ろもウンともスーとも言わなかったこと...
①は最初Safety modeかと思ったのに違うので焦りました— とっしぃ〜 (@toshi_k0717) January 20, 2020
と、このようにバッテリーの自然放電、どうも多いのではないかと思いました。完全に充電済みであっても、ライド前の動作チェックは習慣にしたほうが良い感じでしょうか。
SRAM eTapのトラブル例
SRAMではバッテリーがなくなっていた、という報告は目にしなかったと思うのですが、次のようなちょっとお役立ちの情報もありました。
SRAMのeTap
坂でフロントが変速しなくなったとき、リアとバッテリー交換したらフロントをインナーに落とせた❗
それでもう一回バッテリー交換してリア変速出来るようにして、助かったことがある✨電動は何が原因か分からないことがあるからちょっと怖いよね~🚴 https://t.co/9Xcq62SQHY
— sciff (@sciff2) January 20, 2020
ところでSRAMのトラブルは「ファッ◯ン・スラム事件」で去年話題になりましたよね。
とりあえずFUKKIN SRAM!!!と言ってみる
— ズイキ肥後@粉砕骨折中 (@zuikey_higo) January 19, 2020
トレック・セガフレード所属のバウケ・モレマ選手(ベルギー)が2019年のジロ・デ・イタリアでSRAMのリアディレイラーが変速できなくなり全世界に向けて(意図せず)禁断の4文字単語を発した事件である
ちなみにSRAMが問題を起こしたらSLAM(=叩く)すれば治るかもしれないという伝説もあるようです。下はカチューシャ・アルペシン所属のニルス・ポリット選手が動かなくなったリアディレイラーにケリを入れる様子です。
"If in doubt, just give it a big slam!" 😮#Yorkshire2019 @PolittNils 👏 pic.twitter.com/E5JbgV60D1
— UCI (@UCI_cycling) November 29, 2019
次のような事例も見かけました。衝撃を与えるとうまく行ったりして? (精密機器なので要注意ですが、果たして… あと蹴るのはディレイラーハンガーが曲がってしまうかもしれないのでやっぱりやめましょうw)
前まで突発的に起こってたけど、最近は無いな。
対処法としては、走行中に後輪だけ持ち上げて下ろすときに衝撃与えたら大体直る。
これでアカンかったときは一回だけあったけど、その時は止まってる時にRDを手でグイッと押したら直る。 https://t.co/q965KFjTCj— SHIN (@Nabeth819) January 20, 2020
Campagnolo EPSのトラブル例
今回、母数が少なすぎると思ったのでCampagnolo EPSでのアンケートは取らなかったののですが、次のようなコメントをいただきました。ユーザー数が少ないので断言は禁物ですが、本体は大丈夫そうでしょうか。「エラーメッセージがイタリア語」は強烈なパワーワードです。
EPS v3だけど今まで一回もないぁ。
Unhook/Ride Back Homeも使ったこと無いし、今後も使うことがなければいいなー https://t.co/V2Gj6dKAgm— gabasu@RAID0のホットスペア (@gabasu) January 20, 2020
カンパEPSは聞かれないのね。
勝手に言うとEPS自体は今までトラブル無いけどアプリのMyCampyがトラブル多し。
接続できなかったり、途中でフリーズ、エラーメッセージがイタリア語等、超不便。 https://t.co/XF46V6EaUP— Yusuke (@Uske111) January 21, 2020
電波干渉も原因のひとつ?
電動コンポにトラブルが発生しても、結局ユーザー側でできることは基本的になく、故障と思われるユニットは交換対応が基本ですから、最終的に何が原因だったのかわからない、ということが多いと思います。
製品本体の不具合(電子基板や電気系統の接点不良など)もあるとは思いますが、eTapのような無線式の場合、もしかすると電波干渉が原因のこともあるのではないか、という興味深いコメントもいただきました。
初代eTapからRedAXSに換装して使っていますが
どちらも変速トラブルは無いですね
首都圏では多いと云う説も有るので
電磁波等の外来ノイズの影響かもしれないですね— muku (@_ochame) January 20, 2020
eTapって無線だよね。毒電波発生装置が近くにあったとか?中華製赤ちゃんモニタでWiFiやらSwitchの無線コントローラが不調になる。 SRAM RED eTapが、ライド中に故障!どうする? https://t.co/3b6geTxfv1 @cbnanashiさんから
— タンクン・ボーン (@nextak) January 20, 2020
ちなみにeTapの通信方式はWiFiやBluetooth、ANT+といった一般的な規格ではなく、128 bitの暗号化でペアリングする独自のプロトコル(Airea)を使用しています。
問題がない人も多い
ところで今回のアンケート中、「こんな不具合があったよ」という報告が多く寄せられたわけですが、だからと言って「電動・無線式=ダメ」ということにはならないでしょう。というのも「問題なかったよ」という方は、ほとんどの場合は発信しないからです。というわけで、次の方のコメントは私も同意です。
ちょっと周囲が過剰反応してる。事例の少ない事に反応して電動コンポは問題と言い出すのは煽りに近い。メーカーが交換応じてくれたならそれで済む範囲やん。 https://t.co/3jkhdKQXpP
— tourou (@tourou) January 20, 2020
と同時に「ここ一番の絶対に負けられないレース」といったミッションクリティカルな状況で使うには、誤動作の確率はまだちょっと多いのかなという印象は受けます。
一度は持ってみたい
そんなわけで「やっぱりメカニカル(「紐」というスラングで呼ばれたりします)がいいな」という方も多いと思いますが、とはいえ一度は所有してじっくり使ってみたい気もします。
一旦故障すれば自分でどうこう出来ないってのと、充電切れってリスクは付きまとうんだけど、1度使っちゃったらもう紐にはまじで戻れんよ… https://t.co/hGwZDTdN0K
— たけとも (@taketomoP) January 20, 2020
電機メーカーで働いているというのもあるが、基本的に機構が複雑になればなる程壊れ易く且つ応急処置が難しくなるという思い込みがあるので、電動コンポを使う勇気はまだ持てない。多分一生使わずに終わるのではないかと思われるがこれはこれでちょっと寂しい。 https://t.co/LyAWk2Snfg
— yoshi (@gear_masher) January 20, 2020
あと数年すれば電動コンポもかなり価格がこなれてくるでしょうから、多くの方が遅かれ早かれ簡単に試せる状況になってくると思います。せっかくの最新技術、そういうタイミングで是非試してみたいものですね。