Cervélo(サーベロ)から新しいロードバイクが出ました。その名もCaledonia(カレドニア)。平坦路を速く走るためのエアロロードでも、山を速く登るためのクライミングマシーンでも、荷物を積んで旅に出るアドベンチャー・グラベルバイクとも違うようです。ではいったいどんなバイクなのでしょう!?
公式 Cervélo Caledonia-5(ハイエンド)
公式 Cervélo Caledonia(ローエンド)
ちなみにCaledonia(カレドニア)はスコットランドのラテン語名。フランスの海外県として有名なニューカレドニア(ヌーヴェルカレドニー)は「新しいスコットランド」という意味です。
このサーベロ・カレドニアはスコットランドの地形にインスパイアされたのだろうか…と思ったのですが、実際はカナダ・トロントのサーベロ本部近くに「カレドニア・ロード」というメッチャ状態の悪い道があるらしく、それにちなんだ名前なのだそうです。
ルーベのような道を走るためのバイク
サーベロ公式サイトには次のような説明が見られます。
カレドニアはオドメーターが3桁を優に超えそうな時に乗りたくなるバイクです。ロングライドは必ずスムーズな舗装路や、ガタガタした裏道、短いシングルトラックや、あなたの地元のストラーデ・ビアンケさえ含むものです。私達はそうした道すべてを走れるようなバイクを作りました、不吉な雲が130kmのライド中に土砂降りの雨を降らせても大丈夫なように、フェンダーも付けられます…
これだけ読むとグラベルやアドベンチャー、オールロードに近い雰囲気ですが、最大タイヤクリアランスは700×35とちょっと控え目。フェンダー以外のラックなどを取り付けるアイレットもなし。なのでそういうバイクとはちょっと違うみたいです。
サーベロの説明によると、これは通称「北の地獄」パリ=ルーベのようなパヴェを含むクラシックレースを走るためのバイクなのだそうです。実際、今年の10月にパリ=ルーベが開催されるならTeam Sunwebはこのバイクで走ることになります。
下の公式動画のタイトルは”For Your Big, Stupid Rides”(ビッグでバカなライドのために)。この場合の”Stupid”とは、あまり綿密な計画を立てずに無茶なことをする、という感じの意味でしょうか。
今日はメッチャ乗るぞ、乗りまくるぞ、ガンガン漕ぎまくるぞ! という感じですね。走っている途中は、きついわ距離は長いわ雨は降るわ…で”Shit”とばかり口にしていたけれど、帰宅してみたら”最高だったよ!”と言いたくなるようなライド。そんな時に使いたくなるバイク、ということのようです。
ジオメトリ:R3とアスペロとの比較
しかしそんなポエムな説明ばかりだとこのバイクのことがよくわからないので、ジオメトリを眺めてみることにしましょう。サーベロはカレドニアのジオメトリを次のように説明しています。
より速いハンドリングが必ずしも優れているわけではありませんー私達は特殊なユースケースに基づいてハンドリングを開発しました。この場合、そのユースケースとはルーベです。ルーベはカレンダーにある他のどのレースよりもバイクに対しては厳しいものであり、エラー(操作ミス)を許容するマージンは皆無です。私達はリアセンターを伸ばし(去年使われたR3に比べてみて下さい)、BBを下げ、トレイル量を増やしました。ハンドリングはそれでも速いですが、安定性を追加しました。
R3とこのカレドニアのジオメトリを比較してみます(下のチャートは拡大できます)。ヨハン・ファンスュメレンが2011年のパリ=ルーベで勝利した時に乗っていたR3 Mudをベースにしているだけあって、現行R3とスタック・リーチは全く同じ。操舵性に関連するパラメーターはR3にかなり近いようですが、ホイールベースやBBドロップ等、ハンドリング以外の安定性に関する数字がかなり違っているのがわかります。
ついでにサーベロのグラベルバイク、アスペロのジオメトリとも比較してみましょう。
各数値を比較しながら眺めてみるとなかなか面白いです。アスペロとカレドニアはスタックとシートチューブ角が全サイズで全く同じで、ヘッドチューブ角もサイズ48以外は全く同じ。フロントセンターとホイールベースはカレドニアのほうが短く、BBドロップもアスペロほど大きくはありません。やはりアスペロよりもガチのプロサイクリング・レース向きのように思えてきます。
一言で言うとコントロール性と安定性の両立を目指したようなジオメトリという感じでしょうか。が、しかし数字から受ける印象と実際の乗り味がかなり違うことは珍しくないので、可能であれば是非とも試乗したいところです。
例えばサイクルモードで… あ、2020年のサイクルモードは中止になってしまいましたっけ。残念!
販売形態
サーベロ・カレドニア(Caledonia-5)はフレームセットと完成車が用意されます。サーベロの国際サイトによると、完成車は以下の5つのコンポから選べます。
- Dura Ace Di2
- Ultegra
- Ultegra Di2
- Red eTAP AXS
- Force eTap AXS
フレームセットの定価はUS$4,300。完成車は機械式アルテグラでUS$5,000。SRAM RED eTap AXS組みでUS$10,000、Shimano Dura-Ace Di2組みでUS$11,000。
アスペロはフレームセットの定価が$2500で、カレドニアは倍までは行かないとしてもかなり高いです。またR5と同程度の価格。完全にプロユースの高級バイクですね。
速く走りたい、100〜300kmの長距離を走りたい、フロントが暴れる石畳の上でも時速3〜40km/hを下回るわけにはいかないんだ…というような「ファスト・テクニカル・エンデュランス・ライド」とでも呼べそうなニッチな需要に応えるための面白い立ち位置のバイクではないでしょうか。
なおカレドニアには「Caledonia-5」とノーマルのカレドニアの2パターンが用意され、ノーマル・カレドニアはパイプとコクピットの形状が違うようです(Caledonia-5はよりチューブ形状がよりエアロ。しかしジオメトリは完全に同一)。値段はノーマル版のほうが断然安くなっています。
ぱっと見はCaledonia-5がSシリーズに似ていて、ノーマル・カレドニアがRシリーズに似ている印象を受けます。が、上で見たようにジオメトリはRシリーズベースという感じです。あとは、いまはもうなくなってしまいましたが、Cシリーズの事実上の後継モデルという感じもしますがどうでしょうか。