ここ最近カンパニョーロによる特許申請文書が続々と発掘されています。リアディレイラーに関するもの、カセットの歯先形状に関するもの、EPSエルゴパワーに関するものなどがありますが、本記事ではBikerumorによる「アッパープーリーがカセットの形状に合わせてノンリニア(非線形)な動きをする」新型リアディレイラーに関する特許のまとめがわかりやすかったので、紹介します。
出典 Patent Patrol: Campagnolo’s curving wide-range derailleur, 13-speed cassettes, EPS buttons & more!
出典 Bicycle shifter with high-precision control and method for shifting in bicycle shifter
アッパープーリーがノンリニアな動きをするリアディレイラー
Bikeurumorによる本特許の解釈は次のようなものとなっています。
- カンパニョーロがヨーロッパで4件の特許を申請している
- うちひとつはよりスムーズな変速を可能にするノンリニアなアッパープーリーを備えたリアディレイラーに関するものである
- このリアディレイラーはカセットに合わせてシフティングを調整できる
- アッパープーリーは曲線的な、ノンリニアな動きをする
- 従来の11-23等のロード用リアディレイラーではカセットの形状はきれいな小さい円錐状だが、現在のカセットは少ギア4〜5枚が1段飛びで、その後に2〜3、時には6歯飛ぶことがある
- ワイドレンジのカセットは円錐状ではなく漏斗状になるが、(一般的な)リアディレイラーはパラレログラムとプーリーケージをカセット両端のあいだで直線的に動かしている
- 特許申請中の新型リアディレイラーのアッパープーリーは曲線的に動き、カセットの形状をより精密に追尾する
- B-スクリューボルトを締めすぎてアッパープーリーをコグから離しすぎたことのある人なら変速がひどいことになることを知っているだろう
- カンパニョーロの新型リアディレイラーはすべてのコグの近くに移動するので、使用頻度の高いカセット中央付近でのシフトはずっと快適になるはずだ
- しかしこれはSRAMやShimanoのMTBリアディレイラーのようにケージのピボット軸からアッパープーリーを遠くにオフセットすることによって実現するのではない
- B-ナックルに歯車があり、パラレログラムを接続するピンと共に回転する歯車が噛み合ってこの動きが実現する
- 変速時、この2つが回転することによりパラレログラムとプーリーケージに複雑で多面的な動きを可能にする
- しかもこれはユーザーが調整可能である
- 例えば11-28のカセットでフロリダを走っているあなたが山に行く時に11-42カセットに交換するとする。この場合に自分でリアディレイラーを調整できる
- ディレイラーの外側に「ロー」と「ハイ」2つのインジケーターがあり、現在の設定を確認できる
- 特許によると中間的な設定はなくローとハイのみとなっている
- 機械式とEPSとではチューニング方法が少し異なっているが得られる結果は同じである
- 特許文書に「クラッチ」という言葉は登場しないが、ディレイラーボルトがハンガーに接続する回転部の周りに「耐衝撃スプリング」が存在する
どうやらこの新型リアディレイラーにはプーリーケージ可動域調整用の「ハイ」と「ロー」ボルトとは別に、使用カセットがワイドレンジか否かを選択する「ハイ」と「ロー」(もしくは「ナロー」か「ワイド」だったり、大きいカセット・小さいカセットを描いたピクトグラムだったりするのかもしれませんが)のボルト、またはレバー的なものが用意されるのかもしれません。
Ekar 1×13のリアディレイラーに搭載か
さてこの新機軸を搭載した新型リアディレイラーはいつ登場するのでしょうか。
どうしてもジャンプが大きいため漏斗状の形状になってしまうワイドレンジ・カセットで威力を発揮するわけですから、当然まもなく発表されると思われるグラベル用コンポーネント、「Ekar 1×13」のRDがそれである、と考えるのが順当ではないでしょうか。
Ekarのカセット構成については下の記事で紹介しましたが、トップ側はクロスレシオで5〜6枚が1歯飛び、最後の2枚は6歯分ジャンプする9-42Tや10-44Tカセットの中間域の変速性能を高めるためにこの技術が使われているのではないかと思います。
クラッチに近い機構も搭載されていることを考えると、なおさらこれはEkar用の特許でしょう。
実は新しいテクノロジーではない?
とはいえ「非線形的な動きをするアッパープーリー」は、実は新しいテクノロジーではない、という意見も海外メディアのコメント欄で目にします。たとえばこのノンリニアな追従を可能にする2つの歯車は既にカンパのRDのいくつかに搭載されているという話もあります。
ただ、ユーザーが使用するカセットに応じてチューニングできる、設定を選べる、という仕組みはまだ存在しないので、そこが特許なのかもしれません。
またBikerumorのコメント欄には、「約25年前に調整可能なパラレログラムを持つカンパのリアディレイラーがあった」という情報も。いずれも真偽不明ですが、仮に既存の技術だとしてもさらにリファインされて登場するのは良いことですね。
この新テクノロジー、名前は何になるんでしょうね。ANT(Adjustable Non-linear Tracking ) Systemとかどうでしょうか。通信規格のANTとかぶるからダメか(笑)。皆さんも大喜利的に考えて楽しんでみて下さい。
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