SRAMがAutoCADで有名な米国Autodesk社と協業し、新しいデザインのクランクセットを開発しているようです。下はAutodeskがYouTubeに上げている動画からの1コマですが、相当に肉抜きされた奇抜なデザインとなっています。
人間の頭で考えると強度的に心配になってしまう姿をしていますが、果たして大丈夫なのでしょうか。経済誌Forbes電子版が伝えています。
出典 SRAM And Autodesk Reimagine The Bicycle Crankarm – Forbes
生成デザイン(Generative Design)を利用
Autodeskについては昨年12月、仏デカトロンが3Dプリントのアルミ自転車フレームを開発するために同社と協業しているニュースをお伝えしました(下の記事)。
Autodesk Fusion 360というソフトウェアによる「生成デザイン」(generative design)機能を使用することにより、様々な制約条件を踏まえつつ、機械学習や計算幾何学を交えたアルゴリズムが最適な製品デザインを提案してくれる仕組みです。
スーパーコンピューターが短時間で様々なデザイン案を出してくれるので開発時間の短縮に繋がるだけでなく、人間には想像できないような斬新な製品が生まれてくるというわけです。
20%軽量で強度は2倍に
SRAMがこのAutodeskの助力を得て開発中のクランクは、従来型のクランクよりも20%の軽量化を果たしながらも強度は2倍になっているそうです。もし本当にそうであれば、このクランクの形状を眺めていると負荷が集中しているのはこのあたりなのか、ということが想像されて興味深いですね。
ソース記事のForbesとのインタビューで、SRAMのシニア・デザインエンジニアWill King氏は次のように語っています。
生成デザインは、基本的なデザインについて違う考え方をできるように設計されています。私達がクランクアームを選んだのは、それが安全でなくてはならない構造部品だからですが、こうした新しい視点で取り組めば軽量化するチャンスもあると考えました
数時間で数千の製品アイデアが生まれる
生成デザインはデザイナーによるドローイングから始まるのではなく、最終的な製品に必要なパラメーターの入力から始まります。クランクアームで言えば、耐えなければならない力や特定の寸法(自転車のフレームやライダーのかかとにぶつからない形状)の入力が必要。さらには鋳造なのか3Dプリントなのかといった製造方法も指定します。
パラメーターが入力されると数時間で数千もの潜在的なソリューションが生成され、要件を最もよく満たすいくつかの選択肢が特定され、その結果、人間が決して考えつかないような結果が与えられます。時間的なコストだけでなく、材料のコストも削減できます。
SRAMのこのクランクは3Dプリントのチタン製でまだプロトタイプの段階ですが、そう遠くない将来にこうした「生成デザイン」の技法を利用した自転車パーツがこれからもどんどん増えていきそうですね。