当時としても低グレードであったMONGOOSE IBOC COMP、単に古いだけのなんの値打ちもないありふれたMTBではあるが、さすがに30年近く経つとかえって目新しく感じる人もごく少数ながら存在するかも知れない。
あまり費用をかけずに日常で使える程度の手を入れた程度なので恥ずかしくもあるのだが、日本各地の納屋の片隅に打ち捨てられた古いMTBに光を当てるべく敢えて晒してみようと思う。
読む途中で飽きてもいいように手を加えた部分の詳細は後述するので、まずは幾つかのバリエーションを。
さて、言うまでもなく、小柄な26インチホイール、ホリゾンタルな4130クロモリ製フレーム、これ以上有り得ない簡略な仕組みのカンチブレーキシステム、130mmリアエンド、1インチスレッドヘッド、どれもこれも完全に時代遅れである。
まずはほぼオリジナルな状態
ライザーバーの状態。コンポはオリジナルな Shimano Exage 500LX 7s が付いており、ホイールも当時のままである。
マウンテンドロップバーにしてみた
ホリゾンタルなMTBは古めかしくていい。
NITTO RM3 …RMとはロードマウンテンの事なのか?
色違いなのはオシャレではなく単にブルーラグのこのバーテープは片側売りということをいつも忘れてしまうだけである…
しばらくライザーバーで乗ってみたが、昔みたいに家の裏から即林道と言うわけにも行かずダラダラと舗装路を走る事が大半を占めるため、ポジションに変化が欲しくてドロップバーに交換してみた。
とりあえず街乗りバイクとしてお約束のバーエンドシフターにコットンライクなバーテープの組み合わせである。
このカンチワイヤープーリーの付いたハイライズなステムが入手できなかったらドロップバーは諦めていただろうと思う。
参考にしたのは下記リンクの最高にイカしたバイクである。
参考 SALSA CYCLES 1991 ALACARTE DROPBAR MOUNTAIN BIKE
ドロップバーマウンテンバイクという異端
現代に於いても、ホリゾンタルなクロモリ製オールドMTBにドロップバーを付けるという事は正統派ビンテージMTB諸兄においては邪道と言うかカテゴリー違反のように眉をひそめるられる代物かもしれない。
その上、有り得ないほどハイライズな鉄製ステムは現代のバイクを見て育った人々には奇異な物に映ることだろう。まあ、しかし、私にはこの上もなく魅力的に見えるのだが…
ところで実際に使ってみると、ポジションが限定されるストレートバーやライザーバーに比べて上体や腕の位置が変えれるので案外と楽が出来る。
ただ、このブレーキレバーもバーエンドシフターもそれにバーテープも雰囲気重視で選んだため、都会では廃道と言われそうな路面が当たり前にある辺境の地で日常使いするには使い勝手の悪い物となってしまった。
まあ、気に入ってればなんでもいいのだが、7sではあまり気にならなかったバーエンドシフターがホイールを組み替えて8sに変えたところでなんだか面倒になった。
さらにシンプルさに惹かれて付けたダイアコンペBL07ブレーキレバーがあまりにも安っぽくギシギシ鳴るのでいい加減うんざりしてたところだった。
その時に目に付いたのがこれ、JOHN TOMACのバイクだ。
参考 JOHN TOMAC RALEIGH SIGNATURE TI/CARBON DROP BAR MOUNTAIN BIKE
マイクロシフトを使ってみた。
シマノのようにブレーキレバーが明後日の方向に曲がるものはフレアしたドロップバーには不向きな気がする。同様にカンパニョーロのように下を向いてしまうリリースレバーも使いにくそうである。以前マウンテンドロップバーにギブネールを使っていたのもその理由の一つである。
このマイクロシフトはマウンテンドロップバーと相性がいい、何故ならブレーキレバー内側に巻取りとリリースの2つのレバーが有るため、斜め上からマウスをクリックするようにシフトアップもダウンもたやすくできるのだ。
フロントシフターはデュアル仕様のためシフトパーツを取り外してブレーキのみとし変速にはバーエンドシフターを使っている、実際のところフロントのトリムに対してはフリクションが最適解なのだ。
ただ、この握りの形状はあまり好みではないが、なあにまた飽きたら付け替えればいいだけだ。
その他の手を加えたところ。
ベースとなったMONGOOSEはSHIMANO EXAGE500という現代でいうところのALIVIOグレードで組まれたIBOC COMPで、錆や傷の程よいやれ具合であった。
4130パイプの頑丈なフレームはまだまだ大丈夫そうだったのでフレーム内部をいつものノックスドールでコーティングし、外観はオリジナルの素敵な飛び散りペイントと錆のコラボを活かすため錆止めクリアを吹いただけである。
当然ながらパーツは消耗品である、ヘッドパーツやボトムブラケット、そしてハブ等の回転部分に「一生物」などという高価なパーツも存在するようだが、どれも簡単に作業できるパーツでしかないのでさっさと交換したほうがいいに決まっている。
まず、ガタの来ているリアディレイラーや何故かVブレーキ用のブレーキレバー等のコンポーネントはDEORE LXやXT、それにSTXのパーツを寄せ集めてみた。
そして、揺れの出ている古いホイールについては、固着したニップルで恐る恐る調整するくらいなら新しく組み直したほうが気分がいい。
リアエンドが130mmという6, 7s時代のフレームであるため、ハブはロードバイクのパーツであるTIAGRAを使うことにした。
(DEORE XT 730というユニグライド6sハブも入手したが、今回は8sで組むことにしたためお蔵入りとなった)
このようにアダプターを入れておくと出先でチューブを交換する必要に迫られても米仏英が使えるので安心だというツアラーの話を聞いたことが有る。(兼用バルブナットは緩む事が多い)
タイヤは転がりがよくてノーフラットが謳いのSCHWALBE MARATHON PLUS にしてみた。ただし異様に重いのでTubolitoチューブで重さを相殺する。
オールドMTBのお約束であるシートポストに付けられたHite Rite(スプリング式ドロッパー)は単に懐古趣味の物ではなく、シンプルな動作でサドルを5cmほど落とすことができるという非常に使い良いもので、実際に使用しても何ら不満を抱かない点も特筆すべきだと思う。
1989−1990 ドロップバー MONGOOSE IBOC COMPの仕様
- Frame/Fork: Mongoose Iboc Comp 4130 cr-mo
- Rims: Araya VP-20
- Hubs: Shimano FH-RS400/HB-RS400
- Tires: Schwalbe Marathon Plus 26×1.75(Tubolite Rubo MTB)
- Pedals: Sakae MTP126
- Crank: Shimano XT M737 /STX-RC hyperdrive-C 42-32-22t
- Chain: Shimano HG
- Rear Cogs: Shimano HG50 8s 11-28t
- Bottom Bracket: Shimano UN55
- Front Derailleur: Shimano DeoreLX M565
- Rear Derailleur: Shimano STX-RC
- Shifters: ShimanoSL-BS64 /MicroShift 8s
- Handlebars: NITTO RM-3 520mm
- Stem: Diamond Bavk Hi Rise Quill Stem
- Headset: VP-H811AW
- Brakeset: Shimano STX-RC
- Brake levers: MicroShift
- Saddle: Selle Italia Turbo
- Seat Post: unknown / Hite-Rite
バーエンドシフターに比べてハンドル周りのボリューム感がアップしたが、使い勝手は格段に良くなった。
オールドスクールな雰囲気が一番感じられる角度。
マウンテンドロップ…キン肉マンにそんな技なかったかな?
計器もアナログ針という遊び心第一主義。
ハイパードライブC 42-32-22t 使いやすい構成で変速もいい。
このリアディレイラーSTX-RCがまだ新品パーツで売っていることに驚く。
古いMTBは時代遅れなので使えないのか?
26インチホイール
最近よく耳にするグラベルというのはたぶん路面状態の事を言っているのだと思うが、昔から言うダートやオフロード、シングルトラックにジープロード、そして林道というような道であろう。峠越えや抜け道散策にはとかく未舗装路が付きものである。
また辺境の地では町道や県道はおろか三桁国道さえも荒れ果てたままという所が多いので、頑丈なタイヤで取り回しのいいサイズがありがたい。私的には26インチがベターである。
それに何と言ってもコーナリング時に懐に入るような安心感があるので気に入っている。
カンチブレーキ
油圧ディスクとは比べ物にならないし、その昔ロングカンチと呼ばれていたVブレーキよりも効きは悪い(制動力が劣る)。
しかし、効きが悪いというだけでなので無茶しなければ使えないことは無く、適切なブレーキレバーであれば日常の使用に足る。(かつてDeoreにはカンチブレーキ用レバーというオートバイのブレーキレバーのような物が出ていた。このMONGOOSEのライザーバーにも付けてあるがかなり制動力がアップする)
カンチブレーキで毎日のように夢中になって林道を下っていた頃は雨の中でも怖いとも効かないとも不足だとも思ったことは無かった、他人と競うのでも無ければブレーキの差など慣れだと思っている。
トリプルクランク
最近はフロントシングルが流行りである。もともとは使用エリアを限定し、思いきってフロントを一枚にしたのが最初なのだが、一般化するとそのうちマルチパーパスに使いたいと思う人が増えてくる。そうなると当然リアスプロケットの歯数差が拡大するのでディレイラーの性能向上やエンド幅の拡大が必要とされる。
さらにそのままではチェーン落ちも頻発するのでガッチリとチェーンを保持するナローワイドも必需品となる。
仕方がない、通人の思い切ったシンプルさを見た俗人が欲を絡めて複雑化させてしまうのが世の常なのだ。
実際のところフロントトリプルだとトラブルの悩みが少なくなるのだが…
特に歯数差の少ないハイパードライブのようなクランクの場合、フロントのチェンジがスムーズなのは案外知られていない気がする。
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