「どうしてこうなんだ」
宅浪は、肩を、落とした。
レインシューズカバーって、名前だけじゃねえか
その、呆れる性能に、宅浪は、我慢が、ならなかった。
パールイズミのレインシューズカバー
抜群の縫製クオリティを誇る、パールイズミ。かつて、欧州製品は、パールイズミの縫製品質に、まったく、歯が立たなかった。
それは、2000年のこと、だった。パールイズミの、レインシューズカバーを、宅浪は、買った。
「よし、これで雨天走行してもシューズが濡れないし、汚れないぞ!」
だが、その期待は、裏切られた。
「だめだ。全然だめだ。足首から雨が入ってくる。そしてシューズの裏のすきまから、路面からの撥ねかえりが容赦なく侵入してくる」
時間雨量1ミリ以下程度の小雨なら1時間、土砂降りなら瞬く間に、その、レインシューズカバーは、用を、為さなくなった。
「く、くそっ。一体、一体どうすればいいんだ」
土砂降りのある夜、帰宅して、雨水でガポガポになったシューズを、脱いだ。宅浪は、呆然とするほか、なかった。
「土砂降りでウエアが濡れるのはいい。洗濯すれば済む。だけど、完全に浸水したシューズはマジで面倒だ」
宅浪は、洗濯機で、シューズを脱水し、扇風機で、何とか乾かそうと、した。だが、翌朝。そのシューズが、宅浪を、嘲笑った。
「やっぱり、生乾きだ」
クルマで通勤するのは、宅浪の趣味では、なかった。しかし、度々、雨でシューズは中まで濡れて、宅浪を、精神的に追い詰めて、いった。
な、何とかしなければ、オレはずぶ濡れシューズに、殺られる
もう、あとが、なかった。
ビニールテープ作戦
ある日、宅浪は、思いついた。
「そうだ、ビニールテープだ。テープを足首の部分に巻いて、シールすればいいんだ!」
すばらしい閃きに、思えた。
もちろん、テープは、電気作業用途で慣れ親しんだ、超柔軟絶縁テープ、電気化学工業の、ビニテープ、だった。
だが、テープ作戦の効果は、あまりにも限定的、だった。
「あれぇ~、気が付けばシューズの中に雨が侵入している。だめだ」
レインシューズカバーの、縫い目は、裏から防水テープが、貼られて、いた。しかし、融着が甘く、履く際のストレスで、すぐに浮いたり、切れてしまう代物、だった。
それに、クリート開口部からの、水の侵入は、侮れなかった。密着する、シューズの表皮と、シューズカバーが、毛細管現象で、水を盛大に、吸い上げて、いた。パールイズミ製品の、洗練された、シャープな造形が、アダとなって、いた。
「だ、だめだ。完璧な方法なんて存在しない。100年経っても何も進化しない、雨傘みたいなもんだ。諦める他ないのか」
宅浪は、絶望感に、打ちひしがれた。
ある日、近所のスーパーの鮮魚コーナー。宅浪は、さんまを、買った。備え付けの、ポリ袋を1枚、手に取って、トングでさんまを挟んで、2つ、ポリ袋に、入れた。その時、だった。
このポリ袋
宅浪の脳内に、閃光が、走った。
0.01ミリのポリ袋
後日、ホームセンターに、行った。200枚も入っているポリ袋が、あった。厚さはたったの、0.01ミリ。つまり、200枚も入っているのに、全体の厚さが、たったの4ミリ、だった。
「これ、だよな?」
そのポリ袋を、見事にまとった、シューズ。宅浪の頭の中は、妄想で、埋め尽くされて、いた。
「12号。大きさはこんなもんかねぇ?」
各種サイズが、あった。だが、その場で、足を通すわけにも、いかず、とりあえず12号を、買った。
「これをそのまま履いて、うまくシューズを覆って、足首をビニテープでシールすれば完璧だぜ。ふふふふ・・・」
帰宅して、さっそく、施工してみた。12号だと少し小さかったが、何とか、なった。自転車用ソックスといえば、当時はまだ、短いタイプが主流、だった。おかげで12号でも、かかとを引っ張って履いて、ソックスまで覆うことが、できた。
「うーむ、ちょっと見た目がアレだが、これなら雨でシューズがガポガポにならないんじゃ??」
何度か実戦投入した。宅浪の顔は、曇った。
「テープをぐるぐる巻きにしないとバタバタするし。それに施工がちょっと面倒だし、しかもカッコ悪い。通勤走行の前にこんな作業はやりたくないなあ・・・」
その時、だった。宅浪の脳内にふたたび、閃光が、走った。
待て待て待て、ちょっと待て。まず、ポリ袋を履く。次にレインシューズカバーを履くってのは??
希望の光が、見えた。
完全防水システムの誕生
その手順は、こう、だった。
- シューズを履いて、次に、ポリ袋を、履く
- ポリ袋の上から、レインシューズカバーを、履く
- ポリ袋の足首後部を引っ張り上げてかかと部を伸ばしてから、足首部に、ビニールテープを一周、貼る
- テープからはみ出た、ポリ袋を、折り返す
- 折り返し部に、テープを、一周、これでシールが、完了
- レインシューズカバーの、ファスナーを、上げる
見事すぎる、レーシングな風貌。完璧、だった。
シューズの上に直接、履くと、滑りにくくて、とにかく、履きにくい。それも、レインシューズカバーの難点、だった。しかし、ポリ袋の上からだと、スポン!と、呆気ないほど、簡単に、履けた。こんな小さな、発見も、大発見に、思えた。宅浪は、うれしかった。
つ、ついにやった。カンペキ過ぎる完全防水システムが、できた
シューズやソックスが、濡れないどころか、走行後のシューズの手入れが、全く、不要と、なった。宅浪は、雨に、殺られずに、済んだ。
「どんな土砂降りの後でも、シューズは全く濡れていない。す、すげぇ!」
この衝撃は、No Tubesの、タイヤシーラントの、絶大な威力に、匹敵、した。
ただのシューズカバーでも
そして、月日が流れて、気が、付いた。
「レインシューズカバーって、使い込んだヨレヨレ品でも、全く問題ないじゃん」
さらに気が、付いた。
「ただのシューズカバーでもよくねぇか?」
全く問題、なかった。
ところで、この、エアロシューズカバー。とにかく、履きにくい、代物、だった。しかし、やはりというべきか、ポリ袋を、介すると、スポン!100倍、履きやすく、なった。
それは、2007年7月6日の、通勤帰路、だった。早めに帰ったのが、アダと、なった。雷雨が激しくなり、凄まじい土砂降りに、なった。打ち付ける雨で、大腿部が痛かった。そして、あっという間に、道路が冠水、した。クルマの流れが、どんどん、遅く、なった。
「あれっ、タイヤのグリップがずいぶんいいなあ。滑る気が全くしない」
水位が上がって、ホイールを、抑え込んでいる効果と、思われた。驚いたことに、ロードレーサーは、クルマよりもスムーズに、走って、いた。やがて水位は、20センチほどに、なった。クランク1回転ごとに、左右のシューズが、潜水、した。ポリ袋は、ペダルと、シューズのクリートに、挟まれて、いた。嫌な予感が、した。
「クリートとペダルに挟まれたところに穴が開いているだろうし、こりゃさすがに浸水だろうな」
冠水路潜水走行では、だめだろうと、宅浪は、諦めて、いた。そして、ずぶ濡れで帰宅、した。脚をタオルで拭いてから、シューズの防水システムを、解除、した。
シューズもソックスも、全く、濡れて、いなかった。宅浪は、感動に、震えた。
ええっ?や、やったすげぇ。無敵だ!
レインパンツと合わせる方法
レーパンの季節が、過ぎて、レインパンツの季節が、きた。レインパンツと合わせるには、長めのポリ袋が、必要、だった。宅浪は、新聞を定期購読して、いた。雨天の日や、雨が降りそうな、日には、大事をとって、新聞が、ポリ袋に包装されて、配られて、いた。親切な新聞店、だった。
「当然、このポリ袋、使うわな」
貧乏性の宅浪は、ゴミにしかならないはずの、0.01ミリよりさらに薄い、ペラッペラの新聞ポリ袋を、きれいにたたんで、溜め込んで、いた。
そのポリ袋をシューズの上に履いて、その上から、レインシューズカバーを、履いた。足首には、余ったポリ袋が、盛大に飛び出して、いた。
「これにSportfulのレインパンツを合わせれば完璧だぜ」
簡単すぎて、呆気、なかった。十分な丈の長さを誇るSportfulレインパンツの裾が、新聞ポリ袋と、レインシューズカバーの、足首部を、しっかり、覆った。おかげで、効果は、完璧、だった。これで、通年、シューズとソックスが、濡れることは、なくなった。
宅浪は、完璧で、かっこよすぎる、シューズ&ソックス完全防水システムを、手に、入れた。ここまでの道のりは、決して平坦では、なかった。
レインシューズカバーを買ってから、20年。宅浪は、思った。
水虫を持っている人は、やめた方がいいかも
※ポリ袋のサイズですが、欧州シューズサイズ42以上の方には、13号をお勧めします
※現在の自転車ソックスは丈が長めですが、本システムの適用には、昔ながらの短めのソックスが適します
※レインシューズカバーには足首が長めのモデルもラインアップされています
※ポリ袋は滑りやすいので、停止時、路面に足を下ろすときなど、ご注意ください
※最初の数年は、もう少し手間のかかる方法を採用していましたが、ここでは省略しました
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