ジロ・デ・イタリア2023第19ステージの後半で、プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)が1xのバイクに乗り換えたことが海外メディアで話題になっています。
以下、Bikeradarの考察記事からの抜粋です。
出典 Primož Roglič swaps to 1x gravel bike groupset mid-stage at the Giro d’Italia
- プリモシュ・ログリッチは、ジロ・デ・イタリア2023第19ステージの最後の登坂で1xのSRAM Red AXS XPLRを使用した。カセットはマッシブな10-44Tだ
- トレ・チーメ・ディ・ラヴァレード(Tre Cime di Lavaredo)の入口で、彼は2xのRed eTap AXSのCérvelo R5からRed AXS XPLRを載せた同型のバイクに乗り換えた
- 1xはタイムトライアルでは一般的なものであり、平坦なレースでも特に春のクラシックレースなどで時々使われてはいる。しかし山岳地帯で見られることはほとんどない。ログリッチはなぜこの重要な登坂で1xを使用したのだろうか?
- 1xは一般的には2xよりも軽量であり、理論的にはより2xよりもエアロであり、チェーンラインも2xより改善されているため機械的な効率が良いことがある。チェーン保持力も高い。しかし今回の登坂路がスムーズであったことを考えると、それ(チェーン保持力)は主要な理由ではなかっただろう
- これらは全てマージナル・ゲインだが、7.6パーセントの7.2kmコースをワールドツアーのペースで走るなら効いてくる可能性はある
- その上で言うと、自転車を交換し、セプ・クスに集団に連れ戻してもらうタイムロスは、1xによる恩恵を上回ってしまうかもしれない
- ログリッチが今回AXS XPLRを使ったのは、ギアリングが最大の理由だろう
- チームメイトのワウト・ファン・アールトはミラノ・サンレモで1xのRed AXSを使ったが、52Tのチェーンリングに10-28Tカセットの組み合わせだった。ログリッチが選択したのはグラベル用のXPLRだ
- XPLRにはログリッチが使用した10-44がラインナップされている。XPLRは1x専用なので、そのカセットを使いたければ1xにする以外にない。XPLRには38T〜46Tのチェーンリングが用意されているが、ログリッチがこの時使っていたサイズはわからない
- ログリッチはジロの第20ステージ、18.6kmの個人タイムトライアルのためにこれを試しておきたかったのかもしれない。このステージでは前半が平坦で、最終の9.8kmは1050m登る。勾配は最高で22%に達する。登りの開始地点では多くのライダーが軽量なクライミングバイクにスイッチするものと思われる
- ログリッチは比較的プレッシャーの少ない時に、スーパーローギアの1xセットアップをそのステージで使う前に試しておきたかった可能性がある。10-44Tと1xのシンプルさが際立つのはそこかもしれない
- タイムトライアルでは非常に一般的ではあるが、1xのロードバイクはうまく行ったことも行かなかったこともある。Aqua Blue Sportは2018年に解散するまで1xドライブトレインのみでレースに参加していた。ライダーの中にはチームの凋落を早すぎる1xの採用に原因があったと述べる人たちもいた
- 2023年では1xの再興が少し現れている。ミラノ・サンレモでファン・アールトが1xのCérvelo S5を使ったし、Lotto–Dstnyのヴィクトール・カンペナールツは春のクラシックのオープニング・ウィークエンドで1xのRidley Noah Fastで参戦した(2xのClassifiedハブと組み合わせていたけれども)
- 2xのかわりに全面的に1xが使われることはないと思うが、局面によっては1xによるアドバンテージを好むチームやライダーが出てきているのは間違いない
以下はCycling Weeklyの記事から。
出典 Here’s why we think Primož Roglič used a gravel groupset on Giro d’Italia’s Queen stage
- ログリッチがこのセットアップを使用したのはハイケイデンス・スタイルを最適化するためだったのではないかと思う。この日は地獄のような18%勾配が複数地点にあった
- カセットはSRAM XPLR XG-1271
- レースの最初から使わなかったのはトップスピードが足りないからだろう
- チェーンリングは44Tと思われる(確証はないがそのように見える)。44/10であればケイデンス130でも69kphしか出ない。しかし最低ギア比は1:1になる
- このセットアップでは、ログリッチは100rpmで最低でも12.8kphで走れるだろう。39/32の組み合わせなら、同じ100rpmだと最小速度が15.6kphになる。より速いが、より疲れる。勾配18%で70kgのライダーがUCI規則下限の6.8kgのバイクに乗っていた場合、そのケイデンスと平均速度を出すには600ワットを維持し続ける必要がある
- 彼らのようなプロがこうした出力でアタックすることは可能だが、長い登りで維持するのは大変だ。ギア比を小さくすることで高いケイデンスを維持しやすくなり、同じ速度での筋肉への負荷を減らせるだろう
- チェーンラインも良くなることで、カセットの中央付近を使う時間が長くなり極端な角度になる時よりもワットの節減になっただろう
- ログリッチのR5が1xの採用でより軽量になっていたかどうかはわからない
- ログリッチはこの登りの険しい斜面でアタックを仕掛けたが、一般的なコンポのPinarello Dogma Fを駆るゲラント・トーマスに対してはほとんど効果がなく、どれもキャッチされていた。最後の100mでは数秒を奪うことができたが、これは機材の選択ではなく彼の脚力によるものだ