Shimano TIAGRA 4700は10スピードのコンポですが、同じ10スピードのTIAGRA 4600との互換性はありません。なぜそんなことになっているのでしょうか。本記事ではその謎に迫ります。
TIAGRA 4700の互換性
シマノの互換性チャートによると、TIAGRA 4700は前モデルのTIAGRA 4600や、同じ10スピードのULTEGRA 6700, 105 5700との互換性はないことになっています。下表はシフトレバー・リアディレイラー・カセット・チェーン・フリーハブの互換表です。赤枠で囲ってある部分が公式に互換性があるものです。
不思議ですね。同じ10スピード同士なのだから、ミックスして使えても良さそうなものです。
さらに追い打ちをかけて不思議なのが、HG-Xという赤文字で示したように、チェーンがMTB用の非対称チェーンを使うところです。
HG-Xチェーンとは何かというと、
…チェーンの外側をフロント変速用に、内側をリア用に設計。よりスムーズなフロント&リア変速、軽量性、そしてより高性能なドライブシステムを実現しています。
HG-Xディレクショナルチェーン: 外側はフロントシフティングに最適化され、内側はリアシフティングに最適化されています。
となっています。
しかしよく見ると、対応カセットにはCS-6700やCS-5700がリストされています。ここだけ旧式と互換性があることになります。
ならチェーンは別にロード用でも使えるのではないか、と思ってしまいますが、シフター・フロントディレイラー・チェーンリング・BB・チェーンの互換性チャートを見ると、フロントチェーンリングがHG-Xになっています。
FC-4700は「HG-X チェーンのために至適化されたギア形状」を持つとされているので(出典)、クランクセット(というかチェーンリング)が4700ならチェーンはやはりHG-Xということになります。
シフトワイヤーの引き量も違う
しかしTIAGRA 4700が4600やULTEGRA 6700, 105 5700と互換性がない最大の理由は、HG-Xチェーンにあるのではなく、STIのシフトワイヤーの引き量が違うからです。
ST-4700でRD-4601は引けません。RD-6700もRD-5701も同様に引けません。
一方で、11スピードのSTIでRD-4700は引ける、という情報がネット上に結構あります(※保証はいたしません。念のため)。
TIAGRA 4700はなぜ孤立したコンポになったか
なんでこんな面倒ことになったのでしょうか。
シフトワイヤーをハンドルに這わせる形式にした第2世代の10スピードコンポであるULTEGRA 6700, 105 5700については、リアの変速不良を訴える方が多くいました。CBNにも多くのレビューがあります。
cbn SHIMANO 105 ST-5700
cbn SHIMANO ULTEGRA ST-6700
シマノのワイヤーの引き量は10スピード時代までは1.7:1であったと言われています。
つまりワイヤーが1mm動くとリアディレイラーが1.7mm動く、という比率なのですが、この比率は10スピードになった時点で、コグのスペーシングが狭くなった関係で、もはや誤差をほとんど許容できないところに来ていたという説があります。
そこに来てアウターケーブルをハンドルにはわせたものだから、よほど上手にセッティングしないとさらに誤差が出るようになってしまった。「触覚のあるSTI時代に比べて変速ミスが多くなった」と訴える人が増えた。
そこでシマノはついに11スピードコンポでワイヤーの引き量を1.7から1.4へと変更した。
そしてこの引き量の変更があまりにうまく行ったので、シマノは10スピードにもこれを導入しようと考えた。そしてその時更新すべき唯一の10スピードコンポがTIAGRAであった。
かくしてTIAGRA 4700という不思議なコンポが誕生した、というのが、海外掲示板Redditで誰にも返事もUpvote(いいね、みたいなもの)もされていない、ある孤独でマニアックな投稿が考察している内容です。
出典 Shimano derailleur ratios (Tiagra 4700) version 2.
というわけで、真偽はともかく、この説はなかなか説得力があるように思えたのですがどうでしょうか。
この説が事実に近いなら、TIAGRA 4700は、他の10スピードコンポとの互換性はないとしても、リアディレイラーのシフティングはなかなか良いものになっているのではないでしょうか。
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