ドイツのFOCUSが初のグラベル・オールラウンドバイク「ATLAS」を発表しました。アルミフレーム・カーボンフォーク、Shimano GRX組みの完成車4モデル展開ですが、「負けるために作られたバイク(MADE TO LOSE)」という面白いキャッチコピー、そしてドロップバーバイクらしからぬエンド幅に注目です。
公式 FOCUS ATLAS our new gravel bike | FOCUS Bikes
“MADE TO LOSE”の真の意味
バイクスペックを見る前に、FOCUSによるATLASの宣伝文句を読んでみましょう。これがなかなか面白いです。
MADE TO LOSE(負けるために作られた)
ATLASは私達のはじめてのグラベルバイクです。我々のオールラウンドバイクとはこれであり、あなたを最速にするために作られたものではありませんが、道中のすべてに対処できます。
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なぜ「負けるためのバイク」を作るのか、とあなたは聞くかもしれません。馬鹿げたように聞こえるものは、大いに有意義だったりします。アポイントメントやスマートフォンが日常生活をコントロールしてしまっている今、逃避の時間を見つけるのはかつてないほど重要になっています。
小さい事物を祝福しましょう。公園を抜けてオフィスまで自転車通勤したり、友達と一緒に自然の中へと週末の小旅行に行くのです。私達はあなたの逃避行の伴侶となるようなバイクを作りました。
「MADE TO LOSE」は「あきらめるために作られた」とも訳せるかもしれませんが、レースで優勝したり、最速や最短時間記録を打ち立てたり、StravaでKOMを獲ったりZwiftでエベレスティングに挑戦、といったことの対極にあるような自転車の楽しみ方を提案しているようです。
勿論それらの競争的要素は自転車の大きい楽しみのひとつであり、否定すべきものでは全くありませんが、「勝敗とそれに付随するマウント合戦」から距離を置きたいサイクリストが増えているのも事実。このバイクはそうした層に向けられたものだと思います。
ところでこの「一番を目指さない」という感じの商品紹介は、昨年のENVEによるタイヤ市場参入のニュースを想起させます。ENVEも同社のSESロードタイヤは「最高の転がり抵抗性能は求めない」という、以前ではありえないようなキャッチコピーで話題になりました。
またFOCUSのサイトには”Lose yourself”という文言も見えます。これは「負ける」というより、我を忘れて没頭する・没入する、という意味です。
「LOSE」という言葉は一見すると後ろ向き・ネガティブにも見えますが、とにかく日常の憂きから離れて楽しみまくろう、という肯定的な言葉としても捉えることができます。
「LOSE」という言葉、奥が深いですね。
Boost規格を採用したグラベルバイク
さてFOCUS ATLASのコンセプトはさておき、このバイクのスペックで注目したい点はスルーアクスルの規格。
フロントが110x12mmで、リアが148x12mmなのです。これはモダンMTBの大部分で採用されているBoostと呼ばれる規格です(下の記事で詳しく解説してあります)。
ディスクロードやグラベルバイクではフロント100mm、リア142mmという構成が多いので、ここは注目ですね。FOCUSはこれを「Road Boost」と呼んでいます。
この規格は当然ながらエンドの剛性が上がります。いくらでも重い荷物を積んでくれ、ということなのかもしれないですね。
完成車はSHIMANO GRX組みで4モデル展開
ATLASは6.9/6.8/6.7 EQP/6.7の完成車4モデル展開です。下で表にしてみましたが、搭載コンポはUltegra相当のGRX810・105相当のGRX600・TiagraグレードのGRX400の3パターン。6.7 EQPはマッドガードとキャリア、さらにShutter Precision PL-7ダイナモハブ搭載のモデルです。
モデル名 | コンポ | 重量 | 価格 | |
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ATLAS 6.9 | GRX810 1×11 | 10.5kg | 2499ユーロ | |
ATLAS 6.8 | GRX600 2×11 | 10.8kg |
1999ユーロ/ ¥328,000 |
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ATLAS 6.7 EQP | GRX400 2×10 | 12.8kg | 1799ユーロ | |
ATLAS 6.7 | GRX400 2×10 | 10.95kg |
1599ユーロ/ ¥248,000 |
しかしFOCUS公式サイトでは、ロケールを日本にすると本記事時点で表示されるのはATLAS 6.8とATLAS 6.7のみ。1xの6.9は日本では発売予定がないのかもしれません。あと国内価格は欧州価格より若干高めかなという気がします。
クリアランスとその他のスペック
その他スペックとしては、XS〜XLまでの5サイズ展開。ケーブルは内装式。ディスクブレーキはフラットマウントでローターは前後160mm。アイレットは豊富で18mmキックスタンド取り付け穴もあり、明らかにバイクパッキング・アドベンチャー側に振ったモデルです。
ストックタイヤは全てのモデルでWTB Riddler 700 x 45Cで、最大タイヤクリアランスは700 x 47C。650Bにも勿論対応。BBは安定のBSAスレッド式。ホイールは最上位モデルの6.9がDT Swiss LN Gravel, 622/24。ミドルレンジの6.8がNovatec 25 Elite, 622/25。エントリーモデルの6.7がWTB ST i23 TCSリムにNovatec D041ハブという構成になっています。