食えないごはんが あるものか
かまえた胃袋が うけとめる
気は小さくて 脚力(ちから)なし
ズバーンとポチった nadokazuだぜ
というわけで、本日の駄文はこちら!
秩父名物!わらじカツ丼!!
「宇都宮のギョーザ、香川のうどん、秩父のわらじカツ丼」
これは、西武鉄道が2014年秋に掲出した、キャンペーンポスターのキャッチコピーです。
薄くのばして草履のような大きさにした豚肉を揚げる「わらじカツ」を、甘辛いタレで絡めた「わらじカツ丼」。秩父郡小鹿野町にある食堂「安田屋 本店」が発祥の店とされ、「秩父の名物」として紹介されているのをあちこちで目にします。
小鹿野町のご当地キャラクター『おがニャッピー』の特技が「利きわらじカツ」だったりするので公式に認知された名物なのだ考えられますが、秩父地方の自治体や観光協会などがわらじカツ/わらじカツ丼を「当地の名物である」と言及した資料は、見つけることができませんでした。もしかして、どこかに闇が…?
参考 秩父郡小鹿野町公式サイト「小鹿野町ご当地キャラクター『おがニャッピー』」
それはさておき、丼からカツがハミ出す「わらじカツ丼」のヴィジュアルは、もう圧巻のひと言です。
「秩父にやべーカツ丼あんのに 行かないって思ってる奴いる!?」
「自転車で走ってんのに “カロリー”に日和ってる奴いる?」
「いねえよなぁ!!?」
脳内集会の結果、瞬く間に秩父に行くことが決定しました。
横浜から秩父へ!どのルートで向かう?
そうと決まれば、さっそくプランを立てましょう。自分の巣がある横浜市鶴見区からだと、西武秩父までは3つのルートが考えられます。
①秩父まで自走する
自転車乗りなんだから、自転車で行く。当然と言えば、当然すぎる選択肢です。Googleの経路検索結果(自転車)によると、距離は約107km。ちょっと…いや、かなり遠いですが、走れない距離では決してありません。さらに見逃せないのが、電車賃が1円もかからないということ。わらじカツ丼を目一杯食べたとしても、差し引きゼロ円。つまり、実質無料で食べ放題です!
だがしかし…。
獲得票高は、1,000mを余裕でオーバー。絶望的な登坂を強いられることが、数字だけでわかります。この経路を使ったが最後、秩父のはるか手前で力尽きて試合終了。わらじカツ丼を食べられずに、涙目で引き返すバッドエンドが確定してしまいます。
この選択肢は、ガチ勢のみなさまにお任せいたしましょう!
②東飯能駅で八高線から乗り換える
横浜線で八王子に出て、八高線に乗車。東飯能駅で、西武秩父線に乗り換えます。乗車距離では、このルートが最短になるはずです。
なんですが!
横浜線も八高線も、特急はおろか急行すら走っていません。ほぼ全線で各駅停車の旅路になるので、鉄道利用とはいえかなりの時間がかかってしまいそうです。
なにしろGoogleで経路探索しても、推奨ルートとして表示されないほどですから。
そして、もうひとつ!
東飯能駅は西武線の特急が止まらないので、1時間に2本しか電車が来ません(12時台に至っては1本だけ!)。そして八高線のほうも、1時間に2〜3本程度の運転です。
乗り換えに手間取ったり電車がうまく接続していなかったら、移動計画は即座に破綻して終了してしまいます。
…ダメじゃん!!
③池袋から特急ラビューを使う。
丸い!速い!窓がデカい!そして足元ひろびろ!特急ラビューは、西武鉄道の至宝です。
マスターさんの記事で存在を知りましたが、たとえ自転車抜きにしても使い勝手は抜群。普通に考えれば、「秩父に行くなら特急ラビュー一択!」と断言してしまってよいでしょう。
それなのに!
特急ラビューの始発は、西武池袋駅。横浜方面からだと、JR線〜西武線への乗り換えで結構な距離の構内移動を強いられます。
しかも!
池袋駅には、西武線の地下改札を使うルートにしかエレベーターがありません。下調べなしで駅の案内図に従ってしまうと、確実に階段強制ルートに向かってしまい地獄を見るハメになります(経験者談)。
横浜エリアから特急ラビューに乗ろうとすると、「わざわざ都心まで出て、混雑した駅の中で重い自転車を長距離運搬する苦行」が、強制プレゼントされてしまうのです。地獄!
乗車しちゃえば、特急ラビューはもう最っ高!
なのですが、池袋駅での乗り換えがあまりにもツラすぎます…。
4社の路線を一気に直通!「Sトレイン」!
こうなったら、輪行なんかやめちゃって自家用車で秩父に行けばいいんじゃね!?
という本末転倒な思考に陥っていたところ、「Sトレイン」という電車の存在を知りました。
横浜の元町・中華街駅から、西武秩父駅まで直通運転(土曜・休日のみ)。乗車時間は2時間を超える長さですが、西武秩父まで「乗り換えなし」で行けてしまいます。しかも全車座席指定なので、指定券が取れれば確実に着席が可能です。
この電車なら…秩父までラクに輪行できる…!
これで勝てる…!
それにしても、4社を経由しての直通運転って、事前にどれだけの調整が必要だったか、想像に難くありません。運行管理を担当されている方々のご心労に思いを馳せつつ、Sトレインの利便性を最大限享受させていただくことにしました。
Sトレイン、実際に乗ってみた。
Sトレインの指定席券は、駅の切符売り場のほかに西武鉄道のインターネットチケット購入サイトから購入・発券が可能です。座席表から席を選べるので、なるべく空いてる車両をチョイスするのも容易。
席はいろいろありますが、オススメは前後に3列並んだ席の真ん中。飯能駅のスイッチバックで進行方向が逆になるのですが、真ん中の席なら反対向きに回転させても真横が壁にならず、見晴らしをキープできます。
Sトレインの、ここが気になる!
Sトレインに使われているのは、通勤列車としても運用されている車両です。
そのため一部のシートは横向きのままですし、前向きになっているシートにもリクライニング機構はありません。背もたれは肩〜首辺りまでと低めで、ヘッドレストも一体形なので高さも申し訳程度に留まります。
そして当然ながら、車内には広告と吊り革が思いっきりぶら下がっています。遠征のワクワク感は、容赦なくスポイルされまくり。
停車駅は特急レベルの少なさで、菊名や日吉、武蔵小杉など東横線の名だたる主要駅も容赦なく通過していきます。ただし運転停車が多いので、ホームに並んだ方々を横目で見ながらゲスい優越感を味わうシーンは少なめです。
座席近くにはコンセントが設置されていますが、2座席に対して一口のみ。通路側の席にも利用案内はありますが、利用できるのは窓側席の方に限られそうです。
車両だけで見てしまうと、特急ラビューに乗って感じるスペシャリティとは差がありすぎます。追加料金が倍になっても特急ラビューの車両を使ってくれたほうがいい!と個人的には思えてしまうほどです。
とはいうものの、こうしたネガを感じてしまうのは、特急ラビューがべらぼうに高い快適スペックを持っていることの完全な裏返し。
「独立した座席で、西武秩父まで直通できる快適性」は、他の経路にはありえないSトレインだけが持つ唯一無二の価値にほかなりません。
そして車内には広大なフリースペースがあるので、輪行自転車の置き場所に困ることが絶対ない!という安心感も自転車乗り的には見逃せないポイントです。
山の中にある街には、坂がある。
あーだこーだ勝手なことを考えていたら、Sトレインは定刻通り西武秩父駅に到着しました。
改札を出たら、駅前の観光案内所の前にあるコインロッカーに着替えやキャリーカートを収納して輪行を解除します。
そして入念な検討(約15秒間)の結果、わらじカツ丼を食べに行くのは「東大門」というお店に決定しました。決定打になったのは「精肉店直営のお店」だということ。カツの肉質には、期待が持てそうです。ちなみに西武秩父駅からは10km程度離れているのですが、自転車を使えば楽勝の距離。むしろ、ランチ前の丁度いい腹ごなしになるでしょう。
道中で通過した秩父の街中では、これ昭和初期建築だよね?いま令和だよ!?と思わずガン見してしまうレベルの建物が、あちこちに残されています。次に来たときには、レトロ建築巡りをしても楽しそうです。
それに、あちこちにカラフルなイラストが飾られていて、見ていて飽きません。
少しだけ肌寒さを感じますが、ペダルを回していればむしろ心地よい気温。青空のもとで鼻唄まじりに快走していると、いい感じの橋がありました。
残念ながら工事中だったので、数枚だけシャッターを切ってすぐに再出発。橋を渡ると、まだ走り出したばかりだというのに、なんだかペダルが重くなります。そう、坂が始まったのです。
そういえば、秩父は山の中にある街でした。当然、坂はありますよね…。
繰り返される、容赦のないアップダウン。奇声を発しながら1時間近く苦しみ続けて、ようやくお店に到着しました。
フロントダブルでリアには32Tが入っているTyrell FXで来たから辿り着けましたが、DAHON K3で来ていたら途中で引き返していたでしょう。そしてしっかりダウンヒル区間もあったので「登坂ありの帰路」が、現時点で確定しています。絶望。
「メガわらじカツ丼」の挑戦状。
11時前だというのに、店内はすでに満席状態。普通にわらじカツ丼をオーダーするつもりで待っていると、メニューにあった「メガわらじカツ丼」に眼が釘付けになりました。
普通サイズでもビジュアルインパクト抜群のわらじカツ丼が、メガサイズで提供されるトンデモメニュー。写真の横には「悔しかったら食べてみんしゃい!」という文字が躍っていて、客を煽りまくりです。
そう言われたら、黙ってはいられません。こちとら相武台の双龍で「ろんぐらいだぁすセット」をやっつけた、聖なる胃袋(セントストマック)を持っています。
「出来らぁっ!!」
という心の声を聞きながら、「メガわらじカツ丼」のほうがネタになるよな…。などと、実に小賢しいことを考えていると
「食べきれなかったら、包んでお持ち帰りできますよ!」
と、笑顔で言われてしまいました。わたくしのゲスな心根は、店員さんに見透かされていた模様です。
そして結局…頼んでしまいました…メガわらじカツ丼。
店員さんから移動するように指示された隣の店舗(ラーメン店)のカウンターで待つこと15分ほど。テーブルに置かれたのは、シャレにならないサイズの物体でした。
それは カツ丼と言うには あまりにも大きすぎた
大きく 重く そして 大雑把すぎた
それは 正に 肉とご飯の塊だった
カツの大きさもさることながら、ご飯の量が尋常ではありません。ドラゴンころしならぬ、胃袋ころしです。
メニューの写真ではあまり大きさを実感できませんでしたが、現物を目の当たりにすると絶望的なサイズがあります。「ネタになるかも~!」とか、軽い気持ちで頼んでしまったことを心底後悔しますが、あとの祭りもいいところ。
これが自分の胃の中に収まるイメージが、まったくできません。ネタとか冗談で済まされるレベルを、明らかに超えています。注文して出されたものを残すなんて、絶対に許されない!…理性ではそう思えていても、食べる前から心の中では無条件降伏。
けれど、それでも食べ始めないことには何も先には進みません。意を決してカツを持ち上げ、かぶりつきます。
揚げたてのカツは、熱々でサクサク。肉は普通のとんかつより薄いので、思いのほか食べやすいです。しばらく食べて油がキツく感じてきたところを、漬物を使って口の中をサッパリさせつつ、さらに食べ進めます。
ひとつ目のカツをクリアして、この調子で2つめも…という辺りで箸の進みがガクンと落ちました。甘じょっぱいタレを纏ったサクサクのカツは、確かに美味しいです。でも、味の変化なしでこれだけの量を食べるのは、やっぱりキッツイ…。
「すみません、ギブアップです。包んでください…」
と、喉元まで出かかったところをグッとこらえます。
2枚目のカツを胃袋に収めて、丼の中に残った絶望的な量のライスを時間をかけてなんとか食べ尽くし、どうにか完食。その日は夕食どころか、翌日の朝食も食べられませんでした。
神様ごめんなさい…もう二度としません…。
帰路はアップダウンがなるべく少ないルートを選択…したものの、おなかパンパンでペダルの1回転1回転がキツいったらありません。そしてインナーローでヒーコラ登っているのに、その先でさらに斜度がキツくなることを直視させられて絶望。
ようやく西武秩父まで帰還しましたが、ライフは完全に枯渇。駅前の日帰り入浴施設でひとっ風呂浴びて帰ろうと着替えを持ってきていたのですが、そんな元気もなく発車時間の近いラビューに乗って逃げるように秩父をあとにしました。
日曜午後の池袋駅は、絶賛大混雑。乗り換えに体力と神経をごっそり削られて「やっぱりSトレインで帰ってくればよかった…」と、涙に暮れる結果に。
まとめ
Sトレインに乗って横浜から西武秩父まで輪行してみましたが、いくつもの残念ポイントがありました。
リクライニングしない座席、特別感を消し去る吊り革と広告。元町・中華街~西武秩父の直通運転も1日1本だけに限られていて、朝の往路はともかく復路の時間にも自由度はありません。
ただ、それでも、そうだとしても、絶望的に輪行移動負荷の高い「池袋駅での乗り換え」を回避できるのは、Sトレインだけが持つかけがえのないメリット。
「Sトレインは横浜をはじめとする東急東横線沿線エリアから西武秩父までの、現状で最も快適な輪行移動手段である」こう断言できます(n=1)。
そして個人的には「どうせなら、サイクルトレインとして運用してくれればいいのに~!」と、思わずにはいられません。
Sトレインの車両中間のドアは、終点までずっと開かないまま。そこにはフルサイズのロードバイクを複数台置いたとしても余裕ありまくりの、広大なフリースペースがあります。現状だと完全にデッドスペースになっていて、空気だけを運んでいる状態です。
そこを自転車置き場にして、出入口からホームまでのアップダウンが最も少ない妙蓮寺駅から西武秩父まで運用してもらえれば、割と最高なことになる気がするのですが。
西武鉄道さま!!サイクルトレインの実証実験、こんどはSトレインでやってくれません?