最近になってロードバイクを買いました、という方。もしかして「ダブルレバー」と呼ばれていたものをご存知ない方もいるかもしれません。今日はそのダブルレバーのお話です。
現在はシマノでもカンパでもSRAMでも、ブレーキレバーとシフトレバーが一体構造になっていますよね。でも、むかしは違いました。1980年代は、変速には下のような「シフトレバー」を使うのが普通でした。
フレームのダウンチューブにこのレバーを取り付ける台座があり、ブレーキレバーとシフトレバーは分離した別個のパーツだったのです。この台座は現在でもクロモリフレームの一部には残っています。
このSHIMANO SL-7401レビュー(2011年11月ご投稿)にて、GlennGouldさんは次のように書かれています。
7速SIS Wレバー。
これは前後変速機を動かすためのレバーで、W(ダブル)レバーといいます。
…
フリーの段数は80年代に(5)→6→7と多段化が進みましたが、このWレバーの変速相手のフリーは、7枚歯。しかし今では現行アルテの10枚歯を使用中なので、SISモードではなく、フリクションモード(無段階で変速機位置が動く)で使っています。
Wレバーには一般に「フリクションモード」と「SISモード」の2つがありました。フリクションモードは、GlennGouldさんが書かれているように、レバーを動かしてもカチッカチッとどこかで勝手に止まってくれるわけではありません。自分でちょうど良いところにディレイラーを移動させて止めるようなシステムです。
SIS (Shimano Index System)は反対に、9速なら9速、10速なら10速のカセット・スプロケットのピッチにあわせてディレイラーの移動幅を制御してくれるシステムでした。そうしたWレバーには、フリクションモードにも対応している製品があったのでした。上のSHIMANO SL-7401もそのひとつです。
下のSL-7800は、「フリクションモード」と「SISモード」の両方に対応する最後のシマノ製Wレバーだったのかもしれません。この製品以降、シマノのWレバーはフリクションモードを捨てることになったのでした。
GlennGouldさんはレビュー中、次のように書かれています。
このWレバーは2010年秋から使っています。当時、すでに79モデルが出回っていましたが、フリクションモードが廃止され、魅力が激減した79ではなく、旧モデルの78を選択するというのは半ば当たり前、でした。しかし危なかった!埼玉の自転車店、シクロエランさんの最後の一個をようやくゲット。滑り込みセーフ!のタイミングでした。
フリクションモードのないWレバーなんて、それはまるで、由美かおるのいない水戸黄門みたいなもんだ。水戸黄門は終わってしまう。Wレバーももうすぐ終わるかも知れない。。。
下はSL-7900。長年のWレバー愛用者であられるGlennGouldさん、フリクションモードが撤廃されてしまい、さすがに嘆いておられます。
Wレバーはといえば、モデルチェンジしてもSIS変速性能は何も変わらず。質実剛健で確実変速。ダウンチューブに配されるレバーですが、手が入れば左右いずれかの片手のみで前後とも変速することも可能です。
しかし、SIS以降の歴代デュラのWレバーでちゃんと付いていたフリクションモードが、79にモデルチェンジしたらなくなってしまった。。。
「こ、こりゃ、どどど、どーゆーことなんだい、えーっ??」
廃止させてしまったシマノのセンスを疑ってしまいます。由美かおるのいない水戸黄門なんて・・・
現在、シマノの公式サイト、カンパニョーロの公式サイトを眺めてみても、このWレバーという製品は存在していません。もはや過去の遺物。残念ながら、終わった製品です。
が、しかし。日本の「株式会社ヨシガイ」が「DIA-COMPE」ブランドでまだWレバーを制作しています。しかも、最新の11スピードまで対応する製品をリリースしているのです。このことを、私はstone_n_rollさんのレビューで知ることになりました。
カンパのRD、シマノのチェーンにMicheカンパやシマノのカセットという変則的組み合わせでも全く違和感を感じません、これはWレバーの良いところです。貰い物や特価のホイールを使いまわす私には有難い事です。
しかも!今お買い得感のあるカンパ10sカセットでもシマノ10sでも難なく使いこなせる度量の広さ!(当たり前) これはもしかしてカンパ12sもいけるのでは?(試したいけど先立つものがw)
と、ここまで読まれて、Wレバーとかなんか古臭いな、なんかレトロなだけじゃね? と思われるかもしれません。
しかし、サイクルスポーツ10月号の日泉ケーブルの記事を読んでいる時に、Wレバーのフロントにはアウターケーブルがないし、リアにしても本当に短い。フリクションがものすごく少なかったんだよね、みたいなことを読んで、ああ確かにそうだな、と思ったのでした。
シフトの軽快さという点で、歴史上いちばん優れているのは現在のDi2をはじめとする電動及びワイヤレス変速システムでしょう。その次に優秀なのは、Wレバー。だってアウターケーシングがなかったり、極端に短かったりするのですから。その次に、STIやエルゴパワー。
そう考えると、Wレバーってレトロな外見が格好いいのはもちろん、性能面でも実は優れていたとも言えるのではないでしょうか。ハンドルまわりの重量も軽かったことでしょう。
もちろん、変速のたびにダウンチューブに手を伸ばすのは効率的でない、という意見もあると思います。一方で、そのシフティング動作が不思議なライドのリズムをつくり、Wレバーはもうひとつのポジションだったとさえ言える、とまで主張されていた方もいます。
まぁ何が正しいかはさておき、Wレバーを一度も使ったことがない方は、機会があれば是非試してみると、おもしろいと思います。私もDURA-ACE SL-7800を使っていたことがありますが、それはやはり新鮮な体験でした。
次にクロモリのロードを組むときは、またWレバーにしようかと思っています。
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