シングルスピードの自転車に興味を持ったとき、何か1台完成車を買おう、と思ったのでした。わからないことがいくつかあるし、パッケージでまず手に入れて、どういうものかを理解した上で、必要があれば改造していく。それで、いくつか候補を検討したのですが、Cinelli Tipo Pistaはその中の1台でした。
all pictures ©cinelli.it
完成車を買う時に値段というのは大事なファクターです。この自転車は国内定価が税別10.5万円で、お店では税込み11万円台で売られている。チネリのシングルスピードのラインナップでは、これがいちばん安いものらしいんだけど、GIANTやFUJIにはもっと安い実売7〜8万円くらいのシングルスピードがあります。するとこれはある種、ミドルグレードと言っていい価格帯じゃないでしょうか。
シマノ105搭載のカーボンロードが15万円で普通に買える時代なので、アルミのシングルスピード完成車で11万円台というのはわりと高級品な印象です。とまぁ、値段は置いといて、個人的に大事なスペックだけメーカーサイトから抜粋してみます。
- 重量: 7.8kg(フレーム 1850g / フォーク 500g)
- フォークレイク(オフセット):35mm
- BB:BSA 68mm
- カラー:Touch of Gray / Purple Rain
- クランクセット:LASCO/ 48T / 165mm
- コグ:SHINING / Single Speed 18T – Fixed 17T
- ヘッドアングル:71,7(XS) 72,5(S) 73,5(M) 74(L)
重量7.8kg。この自転車で重量はほとんどどうでもいいのですが、十分軽い数字です。フォークレイク35mmというのは、この要素だけでは判断できないのですが、ハンドリングはクイックでコントロール性が高い反面、直進安定性には欠けるだろうという印象。
サイクリングロードをどっしりのんびり長く走るための自転車というより、ベロドローム(競輪場)で相手の隙を突いてサッとイメージしたラインを取るための機敏な自転車ではあるまいか。そんな印象を受けます。
参考CBNレビュー ヘッド周りのジオメトリ考察 (flareさん)
BBがスレッド式のBSAというのも良い(まぁこの手の自転車では普通だけど)。カラーは2色展開っぽい(2019年モデル)。いや、調べてみたら国内限定カラーとかあるようです。クランク長はフレームサイズにかかわらず165mmらしい。ギア比はフリーホイールの場合で2.66。街中では困らないだろうけど、若干重めな数字かな。固定ギアだともっと重い。奥多摩とか厳しそうだ。
そうそう、つまりこの自転車のリアホイールは両切りのハブで、片側に固定コグ、もう片側にフリーホイールを付けられる、いわゆる「フリップフロップ」というタイプであることがスペック表からわかります。
「フリップフロップ」のホイールは、左右をひっくり返すことでバックを踏める固定ギア、普通の自転車のように乗れるフリーホイールを切り替えられる。この仕組みはシングルスピード入門用にはとても良いものだと思っていて、私は自分が買うならまずフリップフロップ・ホイール付きの完成車がいい、と考えていたのでした。
リアは当然トラックエンド。ただチェーンテンショナー(チェーン引き)というパーツがついていません。シングルスピードの自転車はチェーンの張り加減を調整する必要があって、テンショナーというパーツがあるとそれがラクに行えるのですが、なくてもなんとかなるという人もいる。まぁ、必要になったら後で買えばいい。
見た目はかなり大事。チネリのグラフィックはいつ見てもカッコいいよね。このウィングロゴは自転車の世界でいちばん成功したブランドロゴとも言われているらしく、なんかもうこれだけで商売できる感じがすごい。ビアンキのチェレステカラー同様、チネリ社の主要な資産です。
一応Promaxのキャリパーブレーキがついているみたいだから、すぐ乗れる。ホイールはタダ同然みたいなものなんだろうから、後で自分で手組してみるのもおもしろい。シングルスピード入門用にはすごくいい1台じゃないだろうか。
と、こんなふうにネットでスペックを眺めながらあれこれ考えて、たまたま近場のリアル店舗に自分好みのカラーで適正サイズの在庫があったりすると、即お買い上げ、ということになります。
しかし私の場合、この自転車はタイミングがあわなかったのでした。結局シングルスピード入門としては他の自転車を買うことになったのですが、このTipo Pista、いい現物があったら買っていたと思います。