この記事ではシングルスピードバイクの「シングルフリーホイール」の交換方法を解説します。片側にフリーホイール、片側に固定コグを装着する「フリップフロップ」タイプのホイールの両側に、歯数の異なるシングルフリーを装着するのが目的です。固定ギアの取り外しも解説します。
用意するツール
今回の作業で必要になるツールです。モンキーレンチ、SHIMANO TL-SR22、15mmボックスレンチ、Park Tool FR-6、グリスを揃えておきましょう。右下のSHIMANO TL-FW40は、今回なくても構いませんが今後必要になるので掲載しておきます。
フリップフロップ・ホイールとは
まず今回の作業の対象となるフリップフロップ(flip-flop)タイプのホイールを観察しましょう。15mmボックスレンチを使ってフレームから外します。ホイールの片側は、脚を止めても回転を続けるフリーホイール仕様となっています。
もう片側は固定コグ仕様です。脚を止めるとホイールの動きが止まり、脚を逆回転させるとバックする競輪・トラック競技で使うシステムです。このように片側フリーホイール、片側固定コグのホイールをフリップフロップといいます。”flip-flop”は「パタンパタンとひっくり返して違うものにする」という感じの意味です。
フリップフロップのホイールは、フリーも固定も両方楽しめる1粒で2度おいしい製品というわけです。最近のシングルスピード完成車にはこれが搭載されているものが多いです。
今回の作業では、もともと装着されているフリーホイールを別のフリーホイールと交換した上で、固定コグを外してそこにもフリーホイール装着します。そんなことをしてもいいのか、そして何のためにそんなことをするのかについては、後述します。
シングルフリーを取り外す
まずシングルフリーを取り外します。シングルフリーには主に4つ爪、2つ爪のタイプがあります(爪は「ノッチ」とも言う)。薄歯は4つ爪、厚歯は2つ爪であることが多いと聞きますが、このフリーは4つ爪ですが厚歯です(参考:厚歯と薄歯の違いを理解する チェーン・スプロケット・チェーンリングの規格)。
この4つ爪のシングルフリーを外すには、Park Tool FR-6という専用工具を使用します。シマノにもこの用途に使う工具は存在しますが、割高で入手性もよくありません。
フリーの4つの爪にはめたあと、ホイール付属のナットを上からはめて安定させます。
モンキーレンチでFR-6のボルトをつかんで回します。正ネジなので反時計回りでゆるみます。作業時、固くて外れない場合は大きめのモンキーレンチを使うと楽になります。
ゆるんだらクルクル回してフリーを外します。写真下は外したフリーの裏側。台湾LIDA社製のDICTAというブランド。歯数は18Tです。立派な厚歯です。
フリーをはずしたハブの様子。ここでグリスを塗りなおしておきましょう。グリスを塗ると摩擦係数が安定するのでパーツを入れやすくなります。さらに腐食を防ぐので固着も防止できます。
固定コグを取り外す
次はもう片側の固定コグを取り外します。フリーホイールと違い、こちらはロックリングがあります。ロードやMTBカセット用のロックリングとはだいぶ見た目が違います。これを外すには専用工具が必要です。
SHIMANO TL-SR22がその専用工具です。ここで大事な情報があります。固定コグのロックリングは、左ペダルと同じく、逆ネジです。つまりゆるめる時は時計方向に回す必要があります。間違えないようにしましょう。工具のツメの部分をロックリングのツメにかませて、回します。バカ力は必要ありません。
ロックリングが取れたら、コグを外します。コグ自体は、正ネジです。TL-SR22を写真のように巻き付けて、反時計方向に回していくと外れます。
外した固定コグです。こういう順番で並んでいます。真ん中の1枚が見慣れない感じがしますが、ここでは忘れましょう。
シングルフリーを両サイドに取り付ける
さて、新たに購入した厚歯のシングルフリーを装着していきます。取り外したフリーは18Tでしたが、購入したのは16Tと20Tです。これを左右に付けます。箱を見るとわかりますが、シマノの定番厚歯フリーであるSF-1200には16, 18, 20Tの3種類しかありません。
ロードやMTBしか乗らない方には、このシングルフリーというやつは不思議な構造をしているように見えるはずです。というのも、コグとフリーボディーが一体化しているからです。フリーボディーに好みのスプロケットやカセットをセットしていく、という仕組みではなく、フリースプロケットが一心同体。というかママチャリも同じ仕組みなのですが、私にとってこれは新鮮な発見でした。
さきほど外した、もともとホイールについていたフリーホイール(写真右)と並べてみます。爪の数が違います。シマノのSF-1200は2爪。後でこれを外す場合、TL-FW40という専用工具が必要になります。が、取り付けの際にはなくても大丈夫です。
なお同じシマノのフリーでも薄歯用のMX-30は4つ爪となっています(写真右と同じタイプ)。ここの規格、統一してくれたらありがたいですよね。
ではまず、シングルフリー用のボディに20Tを入れていきます。下がハブのシングルフリー側です。
フリーホイールは手で回すだけで入ります。先述のTL-FW40(外す時に使うもの)でクルクル回してもOKです。この部分は乗れば乗るほど自動的に締まっていく部分なのでここでギチギリに締める必要はありませんが、心配な方はTL-SR22で軽く締めておいてもいいでしょう。
今度は固定コグ側に16Tのフリーホイールを入れます。
ここで固定側のボディを観察してみましょう。段がついていて、フリーを捻じこめるスレッド部分がさっきの半分くらいしかないことに気付きます。こんなところに入れても大丈夫なのでしょうか?
しかし固定コグがここに入っている状態をあらためて観察してみましょう。こんなふうに、半分しか入っていません。その上にロックリングという構成。フリーホイールはバックを踏んでも緩むわけでもなく、固定コグと同じだけ捻じこめるのなら問題はないと考えて良いでしょう。
こうして両側にフリーホイールをインストールできました。
できあがったホイールをフレームにセットします。チェーンをかけ、ホイールを外側にひっぱってチェーンのたるみを取り、15mmボックスレンチでナットを締めます。
下の写真は、カンパニョーロの「ピーナッツバターレンチ」と呼ばれる工具を自慢するためだけに撮りました。どうですかカッコいいでしょう。カッコいいだけでなく、使いやすいですよ。でもあんまり売ってません。
完成です。チェーンの張りは、フリーホイールの場合ビッチビチに張らなくても問題ありません。ちょっと触ってちょったわむくらいで問題ありません。
後ろから見たところ。完璧な仕上がりです。なお交換するギアの歯数によってはブレーキシュー位置の微調整が必要になる場合があるので注意しましょう。
ギア比のはなし
今回なぜ16Tと20Tのフリーホイールを装着することにしたのか。この自転車にはいま46Tのチェーンリングがついています。16Tを使う場合、ギア比は2.87。20Tを使う場合のギア比は2.3です。
私がメインで使っているロードバイクのフロントは52/36で、カセットは11-28です。
フロントインナーの36と、リア15のギア比は2.4で、これが46×20のギア比にいちばん近い。つまりいつものロードのフロントインナー、リア5枚目というのが、このシングルスピードバイクで最も軽いギア比。
フロントアウターの52と、リア19のギア比が2.73。これが46×16のギア比にいちばん近い。つまりいつものロードのフロントアウター、リア7枚目というのが、このシングルスピードバイクで最も重いギア比(36×13のほうがもっと近いけど)。
すると平地では十分に快速で走れるだけでなく、軽井沢の旧碓氷峠くらいの坂なら登れてしまうでしょう。車坂峠のような激坂の連続はどうだろう。パワーマネジメントをうまくやれれば走れるように思いますが、今度実際に試してレポートしてみようと思います。
今回の作業まとめ
今回の作業中、どこでどの工具を使用したのか、あと作業上の注意について簡単にまとめます。
- 4つ爪のフリーホイールを外すにはPark Tool FR-6とモンキーレンチを使用
- 固定コグのロックリングとコグを外すにはSHIMANO TL-SR22を使用
- 固定コグのロックリングは逆ネジなので注意
- フリーホイールの装着には専用工具は不要
関連リンク
今回使用したツールとパーツをまとめて紹介します。同じことをやってみたい方の参考になれば幸いです。
固定コグのロックリングとコグ自体を外す工具です。amazonではなぜか成人向けと判定されている商品ですが、定番の工具です。お値段は高めですが、固定コグのほうもいろいろ交換する際は必須です。
4ノッチのフリーホイールを外す時に必要なパークツールのFR-4。私の場合、今後これを使うことがあるかどうかはわかりません。今回は必要でした。
今回取り付けたシマノの2つ爪フリーホイールを外す時に必要な専用工具です。ちょっとバカみたいに高い感じはしますが、まぁ専用工具はこんなものです。
シマノのグリス、容器が変わってたんですね。私が使っているのは何年も前に買った通称「デュラグリス」というDURA-ACEブランドのものなのですが、いまそれは売っていないようですね。グリスはなかなかなくならないから気づかなかった。
シマノのシングルフリーホイール、SF-2000です。16, 18, 20Tがラインナップされています。それより大きい歯が欲しかったら他社製品を狙うか、チェーンリングのほうを変える必要があります。