コンポーネント

SRAMから廉価版1x12のSX Eagleが登場 MTB市場でのシマノはさらなる危機に

SRAMが「SX Eagle」という新コンポを出したようです。1×12のEagleです。SRAM公式サイトには本記事執筆時点では掲載されていないのですが、ドイツの自転車パーツ通販サイトでフルセットが販売されており、納期は「少なくとも6週間後」となっています。つまり6月中には市場に出回るということです。

これがそのSX Eagleです。


 

SX EagleはNX EagleのOEM用廉価版?

現在SRAM Eagleのラインナップは次のようになっています。

  • XX1 Eagle AXS
  • XX1 Eagle
  • X01 Eagle AXS
  • X01 Eagle
  • GX Eagle
  • GX Eagle AXS(2021年3月に新登場)
  • NX Eagle

そして今回一部ショップに出回りはじめている「SX Eagle」という新コンポはNX Eagleよりも安い価格設定。

チェーンとカセットについてはNX Eagleと共通です。シフターとリアディレイラー、クランクセットがSX Eagleとなっています。

以下、Bikeradarの記事から。

  • NX同様にカセットは11-50tで、通常のシマノ対応フリーハブで使える
  • いまのところ確認されているチェーンリングはダイレクトマウントの32tのみ(Boost/non-Boost)
  • クランクはアロイ製(アクスル長はDUB)
  • シフターには5段アップが可能な通常版とシングルシフトバージョンの2つがあるらしい
  • グループセット総重量は2,328gでNXより200g重い
  • bikediscount.deでのフルセットメーカー希望小売価格は€365(NXカセットとチェーンを含む)
  • NX Eagleより€50安い計算になる
  • OEMアカウントでのみ流通させることができるモデルかもしれない
  • この結果£1,000以下の1×12搭載MTBが今後数多く出回ることが予想される

以下、Bikerumorからの情報です。

  • クランク長は様々あるがチェーンリングは32tのみが提供されるようだ
  • SX Eagleのリアディレイラーは他のX-Horizon 1xディレイラーに非常によく似ているがケーブルの入り口はNXに比べてより伝統的
  • ケージはスチール製でクラッチがありナローワイドのX-Syncロワープーリーを搭載
  • ケージロックは最大50Tまでのカセットに対応する
  • シフターはプラスティック製でバンドクランプ一体型なのでMatchmaker非対応
  • カセットはNX Eagleと同じPG-1230 11-50T

まだはっきりしたことは言えませんが、今後もSRAMの公式サイトにSX Eagleが登場しないのであればもしかすると「OEMバイク用に安くしたNX Eagle」という位置付けのモデルで、普通には流通しないのかもしれません。

すると上述のドイツのショップで売っていることや、一時WiggleのUKサイトでも売っていたらしい(現在は扱っていないと出ます)のが謎ですが…

MTB完成車市場でシマノは窮地に追い込まれるか

このSRAM SX Eagleですが、同社の1×12グループセットとしては上から5番目に位置します。仮にGXがシマノのSLX、NXがDEOREに対応するとするならDEOREより下のコンポということになります。

シマノはようやくXTRに1×12が登場したばかり。しかもいろいろと不具合があって若干ピンチだったりするのですが、順当に考えてシマノの1×12がDEOREレベルまで降りてくるのはいつでしょうか。

少なくとも今年ではないでしょうし、来年でもないでしょう。

来年運良くXTやSLXにも1×12が降りてきたとしても、DEOREは確実に2年後以降ではないでしょうか。

というか、DEOREはいま2×10か3×10のコンポであって、1×11でさえありません。DEOREは次のアップデートでようやく1×11になるでしょう。

しかしその頃にはエントリーレベルのMTB完成車の大部分が1×12のSRAM SX Eagleを搭載していることでしょう。

果たして人々はどちらを選ぶのか。1×11化したDEORE搭載モデルか。それとも1×12のSX Eagleモデルか。

SX Eagleの各コンポは上位グレードと互換性があります(※カセットだけトップ10Tは使えません)。すると同じ12speedのシステム内でちょっとづつパーツをいちばん良いものにまでアップグレードできたりもします。

そしてエントリーレベルのMTBを購入するユーザー層の多くは、「10速!」「11速!」「12速!」というものが同じ値段で売られていたとしたらどれを買うでしょうか。

答えは明白。シマノ、ピンチです。

スピードで勝負するスラム、じっくり熟成させるシマノ。勝つのはどちらか

とはいえBikeradarやBikerumorの読者コメントを読んでいると、過去にSRAMのMTBコンポーネントを使っていて品質や耐久性に難があると感じた人々も多いようで、SRAM SX EagleはSHIMANO DEOREよりも品質的には劣るだろう、などというコメントも複数見受けられます。

しかし既存の変速システムにじっくりと磨きをかけつつ、新製品は満を持して市場に投入するという余裕をシマノが見せてこられたのも、MTB完成車市場でかなり大きいシェアを握ってきたからでしょう。

それがSX Eagleのような「安価な1×12」が登場してしまうと、仮に品質的に荒削りなところがあったとしてもエントリーレベルの完成車市場はすぐに奪われてしまうような気がします。

さらにSX EagleでMTBデビューした新しいライダーたちは互換性のあるGX, X01, XX1…とちょっとずつパーツ交換をしてくことによってスラム漬けになり、シマノに乗り換えようとは思わなくなる、という事態が起きるのではないか。

そう考えると、シマノはこれまでのような製品ライフサイクルで大丈夫なのか、果たして今後戦っていけるのか、と心配になってきます。

というわけでこのSX Eagleの登場、単に「スラムから新しい安いコンポが出た!」という話にとどまらない、もうちょっとヤバめの話であるように感じたのは私だけでしょうか。

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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