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フレーム・完成車

BROMPTON B75 10万円のエントリー向けブロンプトン

2019年4月、折りたたみ自転車で有名なブロンプトン社より、新製品「ブロンプトン B75」が発売された。

B75のポイントは、その価格の安さ。品質に妥協することなく実現した、£745(約10万円)のローコストモデルをレポート。

イギリスの折りたたみ自転車 ブロンプトン

ブロンプトンは、自転車としての使い勝手を犠牲にせず、それでいて、駅のコインロッカーに入るほどコンパクトに折り畳める自転車。

ロンドン都市部で生活する人々のために開発され、大きな設計変更をすることなく、30年以上にわたり世界中で愛用されている。

究極のコミューター THE BROMPTON
ブロンプトンはロンドン生まれの折りたたみ自転車。アンドリュー・リッチー氏が創設したブロンプトン・バイシクル社で販売されている。ラインナップは「ブロンプトン」1車種のみ。基本構造は1986年よりほぼ変わっていない。

ブロンプトンは最低限のメンテナンスをしていれば長年にわたって乗り続けられる耐久性を持ち、その品質には定評があるが、一方で、高品質を保つためイギリスのロンドン郊外の自社工場で生産されていることに加え、専用部品が多いためどうしても高価格になってしまっていた。

ブロンプトン工場見学 ~MADE IN LONDON~
世界屈指の完成度を誇る折りたたみ自転車、ブロンプトン。 40年近くにわたり基本構造をほとんど変えず、現在もロンドンで製造されている。 今回、ブロンプトン世界選手権に日本代表として出場した折にイギリスはロンドン西部のグリーンフォー...

そんななか、エントリー層向けに、買いやすい価格でリリースされたのがB75というわけ。

高品質で低価格 エントリー層向けブロンプトン

ブロンプトン B75というモデル名は、創業者アンドリュー・リッチーがブロンプトンを設計した年(1975年)から名付けられた。

1975年頃のブロンプトンのプロトタイプ

1975年頃のブロンプトンのプロトタイプ

B75は、カラーと仕様を限定し、ローコストなパーツを使用することで、ブロンプトン基準の高い品質を維持しながら低価格を実現している。

ブロンプトンは好みに合わせた車体カラーやハンドル形状、変速の段数で購入できるのが一つの売りになっている(この組み合わせで型番が決まる)が、街乗りバイクとしてオーソドックスな仕様であるM3L(Mハンドル 内装3段変速 泥除けつき)はイギリスで定価£1010。

選択できる中で最も装備が簡素で、かつ安価なS1E(ストレートハンドル シングルスピード 泥除け無し)でも£845。

BROMPTON B75

レギュラーモデルで最もシンプルなS1E(Sハンドル 1速 泥除けなし)は£845
© 2018 Brompton Bicycle Ltd

これに比べてB75は£745。ブロンプトンのラインナップで最も安価な自転車となった。

フレームはレギュラーモデルと同じ

ブロンプトンの廉価版と聞いてまず思い浮かんだのは、15年ほど前まで台湾ネオバイク社がライセンス生産していたいわゆる台湾ブロンプトン。

今でもオークションでよく見かけ、英国製の半額強程度の相場で取引されているが、台湾ブロンプトンはフレームからパーツまでほぼ別物で、英国製に比べると造りの粗さが目立つ。

対して今回発売されたB75は、フレームについてはレギュラーモデルと同じものを使用。カラーやハンドル形状、変速の仕様を1種類に絞り、使用するパーツを省略、あるいはより簡素で低コストなものに交換することで価格を抑えている。

クルマに例えるならば、装備の簡素な最廉価グレードのような存在といえる。

ブロンプトンはほぼ全てのスモールパーツを購入可能なので、だいぶ割高になるが、パーツを替えていくことでB75をベースにしてレギュラーモデルのM3Lと同じものを作ることも可能。

もっというと、社外パーツを取り入れてカスタムブロンプトンを作るのが前提であれば、ベース車両としてもうってつけである。

運動不足のエントリー層に訴求

さて、ブロンプトン社はもちろん、自転車マニアのオモチャにするためにこんなものを作ったのではない。

B75は通勤・街乗りとか運動不足解消のために自転車に乗ろう、というエントリー層を対象にしている。

公式ウェブサイトには以下のような文言が並び、ローコストを全面に押し出している。

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さらに、£30×24ヶ月の分割払いプランも用意しており、ジムの会費やビールに比べても安い、というアピールまで。

B75 ONLY £30 PER MONTH(B75を毎月たった£30で)

  • £158 Zones 1-3 Travelcard (ロンドン市内の地下鉄・バス乗り放題チケット 1ヶ月分)
  • £42 Gym membership (ジム会費)
  • £34 6 craft pints (クラフトビール6杯)
  • £36 3 pizzas on Deliveroo (宅配ピザ3枚)

「ブロンプトン B75は、移動手段としても、体を動かす目的でもリーズナブルで、何なら、ビールやピザを少し我慢するだけで£30の月額を捻出できますよ」といった感じか。

この理屈、新しい自転車を買う正当性を家族に説明するときには使わせてもらおうと思う。

B75 コストダウンのポイント

すでに書いたように、B75はカラーと仕様を絞り、泥除けを省略したり、旧式の部品を使用してコストダウンしている。

カラーやハンドルタイプ等を選択できる現行レギュラーモデルとはどこが違うのか。列挙すると、以下のようになる。

カラーと仕様を1種類に制限

BROMPTON B75

Mハンドル、内装3速、泥除けなし、水色のみ。
© 2018 Brompton Bicycle Ltd

  • フレームカラーが「ウォーターブルー」1色のみ
  • M3Eタイプ(Mハンドル 内装3速 泥除けなし)のみ
  • 通常より-12%のローギヤレシオ(初心者向け?)
  • ロングシートピラー

旧パーツの使用

BROMPTON B75

やや懐かしい感じのハンドル周り
© 2018 Brompton Bicycle Ltd

  • 2017年以前の旧型ブレーキキャリパー
  • 2015年以前の「ラビットイヤー」形状3速シフター
  • 2015年以前の旧Mハンドルとステム(ライズが大きく、ステム全長がやや短い)
  • 2012年以前の旧型ブレーキレバー

簡素化した部品の使用

  • 左右とも折り畳めない樹脂ペダル(通常モデルは、左側のみ折りたたみのペダル)
  • シートピラーのヤグラが鉄製(通常モデルはペンタクリップと呼ばれるアルミ製部品)
  • 白色のリヤサスペンションブロック(詳細不明)
  • フロントキャリアブロック無し(別途購入で装着は可能)

このように、ロンドン郊外で生産される高品質なフレームをそのまま使いながらも、パーツ構成を見直すことで低価格化したのがB75である。

全体的に装備が貧相になっているが、実用上困るかというと、特に困らない。強いて言えば、左ペダルが畳めず、折りたたみ時に出っ張ることだろうか。あるいは、天気に関係なく自転車通勤するのなら泥除けが欲しいとか。

現行レギュラーモデルとの比較

ただ、改めて現行レギュラーモデルを見ると、ブレーキレバーは引きやすいしブレーキもよく効く。シフターもブレーキレバーと一体になっていてハンドル周りがずいぶんスッキリしている。フレームは同じながら、自転車としての質感は値段なりに高い。

現行パーツ装備のP6L-X 2018年モデル

現行パーツ装備のP6L-X 2018年モデル

B75を買って、後からキャリアブロックやペダル、泥除け等を後から購入することもできるが、パーツ単品販売はかなり割高なので、こういったパーツが欲しいかも、と思ったのであれば、最初からレギュラーモデルを買うほうがベターだと思う。

日本での発売予定と購入方法。

ここまでB75を紹介しておいてなんだが、近くの自転車屋に行ってもB75を買うことはできない。

日本はイギリスに次いで、世界で2番目にブロンプトンが売れているが、輸入代理店のミズタニ自転車からは、ブロンプトン B75についての発表は一切されていない。(2019年5月現在)

個人的な予想になるが、日本ではB75はラインナップされないんじゃないかな、と考えている。

イギリスでM3L(2019モデル)は£1010。これが日本では18万円で販売されている。同様の比率だと、£745のB75がもし日本で発売されるなら、13万円程度の値付けになると予想される。(ちなみにアメリカではM3Lが$1444、B75が$995。)

部品を簡素化しカラーを1色に絞ったエントリーモデルが13万円。折りたたみ自転車としてはこれでも高価な部類に入る。まずは、これが受け入れられるのかどうか。

それに、ブロンプトンは長持ちするゆえ、一度買うと(一般の人は)買い換えないため、レギュラーモデルの売れ行きに影響を与えるのでは?とも思っている。

(私は2台持っているし、周囲も複数台持ちが多いけど、多分、特殊なコミュニティなんだろう…)

廉価版を用意することで、購入者をより高価な製品に誘導する…という線もなくはないだろうが、日本において、ブロンプトンは高価格ながら高品質な折りたたみ自転車としての地位を確立しているので、あえて国内販売することは無いのでは?というのが私の予想。

そうなると、日本在住でB75が欲しい人にとって、購入方法はかなり限られる。

ブロンプトンは本社の方針で通販を禁止しているので、B75販売国に在住の知人に頼むとか、海外旅行のついでに買うくらいしか手立てが無い。

B75最大の魅力はやはり価格だが、送料や渡航費用を考えると、日本国内でブロンプトンを買うほうが安いのでは…となってしまう。

そんなわけで、日本在住者にとってはB75には縁がない、というオチがついてしまったのであった。

そういえば、私は今夏イギリスに行くのだけれど…

いや、そんな、まさか。

著者
すくみずさん

年間を通じてMTBとシクロクロスに参戦し、泥汚れと生傷が絶えないオフロードレーサー。自転車は転ぶからこそ面白い。

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