きみはもう決心してしまった。話題の高性能ミニベロ・Tern BYBを買うのだと。そして、その決心は固いと聞いている。もう覆せないとも聞いている。だから、その点について悩む必要はない。もう後戻りはできないのだし、する必要もない。
だが、Tern BYBにはP8とS11という2つのモデルがある。きみが次に考えなくてはならないのは、そのどちらを選ぶべきかということだ。
Tern BYB S11
その前に、Tern BYBについておさらいしておこう。これはS11というモデルで、その名が示すように11段変速のモデルだ。フロントシングルで、リアディレイラーはシマノ・アルテグラが採用されている。噂によると、フレーム剛性が高く、走行性能はかなり高いらしい。
それでいてコンパクトに畳めるとも聞いている。特に注目すべきは、このフットプリントの小ささだ。横幅も狭い。コロコロするキャスターも標準装備。S11の折りたたみサイズは33 x 81 x 51 cmに収まる。
CBN Blogライターのなどかずさんの調査によれば、東海道新幹線の「特大荷物スペースつき座席」は1席あたりの幅が約523〜535mmだから、Tern BYB S11(510mm)は各自の席裏に問題なく収まる。厚みも490mm内に完全に収まる。
きみは来年以降も、東海道新幹線での輪行をあきらめる必要がなくなるのだ。きみの人生から、ひとつの悩みが消えることになる。
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下位モデルのP8にしても、折りたたみサイズは35 x 81 x 52 cmと、縦の長さ以外は1〜2cmほど増えるようだが、「特大荷物スペースつき座席の裏」にはやはり問題なく置けるのだ。きみは誰にも文句を言われないだろう。
繁忙期の東海汽船のジェット船のスーツケース置場にも問題なく置けるはずだ。この空きスペース。この奥。夢のようだ。
それでいてS11は1×11の11スピードだ。カセットは恐らく105グレードだが、リアディレイラーはアルテグラだ。ロードバイクと互角とまでは行かないまでも、小径車としては十分すぎるほどのクロスレシオ。100km超の平地ロングライドでも、ヒルクライムでも活躍するだろう。
パンク時のホイールの脱着も、ブロンプトンより手早く済ませられるのは間違いないだろう。
BYB P8とBYB S11の違いを表にしてみた
しかし気になるのは、S11とは別にP8というモデルもラインナップされている点だ。そしてこの2つは、値段があまりに違いすぎる。S11の税別価格は¥248,000であり、P8は¥138,000。その差は11万円である。この差はあまりに大きい。
一体どこが違うのだろう? フレームとフォークについては共通であることが判明した。きみはTern公式サイトからP8とS11の主な違いを抽出し、職場でエクセルのスプレッドシートにまとめはじめる。
BYB P8 | BYB S11 | |
---|---|---|
重量 | 14.3kg | 12.7kg |
スピード | 1 x 8 | 1 x 11 |
折り畳みサイズ | 35 x 81 x 52 cm | 33 x 81 x 51 cm |
ヘッドセット | Flux, cartridge bearings, Physis integrated |
Flux Pro, angular contact bearings, Physis integrated |
ハンドル | Flat bar, 6061-AL, Andros adapted |
Kinetix Pro X, Double-butted 7050-AL, Andros adapted |
グリップ | Velo ergonomic, lock-on | Ergon GS1 Leichtbau |
サドル | Tern Porter | Ergon SMC30 Pro, TiNox Rails |
ブレーキ | Kinetix SpeedStop V-brakes, Stainless hardware |
Tektro V, swivel link, race pad |
ブレーキレバー | Shimano | Shimano |
ホイール | FH: Kinetix Neutron Mini 74, sealed cartridge bearing RH: Novatec, sealed cartridge bearing ステンレススポーク・ニップル |
Kinetix Pro X, Paired Spoke technology, Straight-pull design, 16H |
タイヤ | Schwalbe Citizen, 42-406, Puncture protection, Reflex |
Schwalbe Marathon Racer, 40-406, Puncture protection, Reflex |
リアディレイラー | Shimano Acera, Shadow RD | Shimano Ultegra, Shadow RD |
クランク | Forged 6061-AL, 52T | FSA Gossamer Pro, 54T MegaEVO BB386 |
カセット | Shimano 11-32T, 8 spd | Shimano 105, 11-32T |
BB | FSA, Cartridge, sealed bearings | FSA, BB-EVO8681 |
チェーン | KMC, 8 spd | Shimano, 11 spd |
ペダル | MKS EZY | MKS UB-LITE EZY |
キックスタンド | Deluxe center mount | Premium center mount |
価格(税別) | ¥138,000 | ¥248,000 |
わかりやすい違いと言えばまず、S11のほうがP8よりも1.6kgほど軽量であることだ。
S11の12.7kgという数字は、キャリア付きのBrompton S6Rの11.9kg, M6Rの12.2kgよりは重いが、S11もP8も20インチ(406)ホイールであることを忘れてはならない。ブロンプトンは16インチ(349)だ。
P8は8スピードだ。だがBrompton S6Lよりギアが2枚も多い。P8とS11のギアレンジ自体はほぼ似たようなものだから、大きい不満は持たないかもしれない。ただS11は、ホイールが少スポーク構成で明らかに空力性能が良さそうに見える。スポークもSapimのエアロ。
またP8の14.3kgという数字はかなり重いようにも見えるが、コロコロの性能が異様に高いという噂を信じる限り、それはあまり問題にならないかもしれない。
いや、本当にそうだろうか。きみは何度も絶望してきた。エスカレーターのない駅の階段に。
11万円の違いに納得できるか
すでにブロンプトンの3速モデルや6速モデルを所有しているきみにとっては、8スピードのP8でも十分魅力的なものに見える。S11のホイールは、確かに魅力的だ。だがクランクやその他のフィニッシング・キットのグレード差、1.6kgの重量差を考慮に入れても、きみは11万円の違いに納得できるだろうか。
P8を後で11スピード化することもできるだろう。いいホイールに交換することもできるだろう。無印クランクをFSA Gossamer Proに、リアディレイラーをアセラからアルテグラに交換する。しかしそれらに必要なコストは、やはり10万円近くかかってしまうだろう。
P8を買うのであれば、後で駆動系をアップグレードするのはやめておいたほうが良さそうだ。それをするくらいなら、最初からS11を買ったほうがいい。P8を選ぶ場合、ほぼ吊るしで運用したほうが良いだろう。
P8でも自分は満足できるだろうか、ときみは自問する。できるかもしれないし、できないかもしれない。S11があと5万円くらい安かったら、きみは悩まなかっただろうか。
S11もP8も、発売はもう少し先だ。カラーはS11がシルバーのみ、P8が3色から選べる。