米国のFUJIは警察向けの自転車を販売しているーーしていたーーのですが、いったいどんな自転車だったのか。純粋にハードウェアとして気になったので調べてみました。一緒に観察してみましょう。
Police PatrolとPolice Special
fujibikes.com公式サイトによると、警察用モデルとしては下の4つがラインナップされていました。”Police Patrol”(下位モデル)と”Police Special”(上位モデル)の2つがあり、それぞれに27.5インチ版と29インチ版があります。定価は下位モデルが$899.99(本日のレートで約97,756円)、上位モデルが$1,199.99(約130,341円)です。
- Police Patrol 27.5 $899.99
- Police Patrol 29 $899.99
- Police Special 27.5 $1,199.99
- Police Special 29 $1,199.99
Police Patrol
PatrolもSpecialもフレーム・ジオメトリは同じハードテールMTB。フォークやパーツなどの違いで2モデルに分かれているようです。下は下位グレード・Patrolの27.5。
フォークはサンツアーの100mmトラベルで油圧ロックアウト機能付き。タイヤはSchwalbe Big Ben。ブレーキはテクトロのメカニカルでローターは前後160mm。駆動系はシマノ・アセラの9スピードでフロント・トリプル。
こうしたMTBに乗る警察官を私もアメリカで何度か見たことがありますが、バーエンドとリアキャリアは必ず付いていたように思います。今回スペックを眺めていて面白いと思ったのはトー・クリップが付いているところです。
警察官の場合さすがにビンディングペダルというわけには行かないでしょうし、それでいて爆走しなければならない状況もあると思うのでこのペダル回りは警察モデルらしいチョイスなのかな、という気がします。
Police Special
上位グレードのPolice SpecialはフォークがRockShox Recon Silverにグレードアップ。トラベルは同じ100mmでリモートロックアウト付き。ブレーキやリムも若干良いものになっていて、駆動系はシマノのデオーレ・アリビオ・アセラのミックスで3×9スピードです。
あとこちらはステムがアジャスタブルになっています。基本的に同じバイクですね。なおダウンチューブにUSAとありますがFUJIのバイクは現在、中国・台湾・ポーランドのいずれかの国で生産されています。
FUJIは警察モデルを販売中止
しかし昨今の北米での人種差別事件を受けて、FUJIはこれらの警察モデルの販売を中止しています。これらの自転車が攻撃的な目的で、武器として使用されたことが確認されたから、とのことです。
しかしそんなことを言ったら警察車両(クルマ)も同じように糾弾されてしかるべきで、個人的にはこれはちょっとやりすぎかな、という気がしないでもありません。
ちなみにBicycle Retailerの記事によると、現在北米ではKona, KHS, Rad Power Bikes, Haroなどが警察用自転車を販売しているようです。キャノンデールは3年前まで販売(勿論現役で活躍している同社製の警察用MTBも存在するでしょう)。
ところでPolice Bike Storeというニュージャージー州の小売店では上位モデルのPolice Special 27.5インチモデルが投げ売りされています。定価$1,219のところ$698.98(約75,868円)にまで値下げされています。
(POLICEという)デカールを剥がせば素晴らしい通勤用自転車になります
と説明欄にあります。
これはジョージ・フロイド氏の事件が起きた5月25日の前日、5月24日にFacebookに投稿されていたのでFUJIによる今回の販売中止声明と関係はないと思いますが、このお店が今後やっていけるのかどうかちょっと心配です。
FUJIは警察用MTBの生産・販売を完全にやめてしまうわけではなく、将来的に同社の自転車が本来の目的で使えるような状況になったら販売を再開したいと考えているようです。