リアディレイラーをワイヤーで引くワイヤレス変速ユニットで有名なX-Shifterという製品があります。後述するようにKickstarterで問題を起こしたことのある製品ですが、その後Cell Cyclingという会社がライセンスを取得したらしく、現在は量販されています。
そのCell Cyclingから、X-Shiterに対応する重さ1.5gのシフターが発表されました。
公式 BIT – Cell Cycling
公式 Blakbox – Cell Cycling
参考 Cell BIT for X-Shifter Wireless Shifting is World’s lightest electronic shifter at 1.5g
ほぼどこにでも設置可能
発表されたシフターは「BIT」という製品で、重量わずか1.5g(ただし後述の通信ユニットが必要)。6061-T6アルミ製で、下の画像のようにドロップバー用ブレーキレバーは勿論、タイムトライアルバーやブルホーンバー等、およそあらゆる箇所に配置が可能です。Cell Cyclingは設置にあたってバーテープ等に6mmの穴を開けることを推奨しています。
このBITは2個セット販売で、価格は29ドル(発売開始時期は2021年1月初旬)。ただしこれだけで動作するわけではなく、下の「Blackbox」と呼ばれるトランスミッターが必要です。
こBlackboxはバッテリー込みの重量が14gで価格は59ドル。つまり合計重量15.5g、価格は88ドル。これ以外にもちろんX-Shiter本体が必要になります。
現在は1シフターのみ対応
このBITとBlakboxは2本のUSB-Cケーブルで接続されますが、原理的には接続可能なシフターの数は無制限。ただしBlakboxは現時点では1個のシフターにしか対応しておらず、来年の第1四半期のソフトウェアアップグレードではじめて複数シフターに対応するのだそうです。
Kickstarterでの黒歴史
さてこのX-Shiterですが、過去に下の記事で紹介しました。クラウドファンディングのKickstarter発の製品です。
しかし最終的にモノを受け取れなかったバッカーが多数いたにもかかわらず、噂ではプロジェクト創始者がひっそりと会社を立ち上げそこで製品を量産化し販売開始。販売元もCICLOVATIONからCell Cyclingに名前が変わった…のか、ライセンスが移行したのか、実態がよくわからないところがあります。日本でも一時ショップで流通していました(今でも少し売られているようです)。
その詳細は下の記事で詳しく紹介しています。
そのためBikerumorの読者コメントなどを読むと、やはりこんな会社は信用できない、という声が散見されます。確かにこのBIT/Blakboxの複数シフター対応が発売後のソフトウェアアップグレードではじめて実現する、というのは、過去の経緯を考えると少し心配なところではあります(予告されていたフロントディレイラー対応ユニットが結局は出なかったこともあります)。
サポートはダメだが変速は速い?
しかしその読者コメント欄では、実際にX-Shifterと、その上位互換品との呼び声高いArcher Components D1x Shifter(下の記事で紹介しています)、Shimano Di2のすべてを使ったことがある方によるミニレビューが読めました。
それによると
- X-Shiterには保証や返金はないものと思ったほうが良い。Cell公式フォーラムでも同社に不利な投稿は表示されず、問い合わせも無視されるのでいかなるサポートも期待しないほうが良い
- シフターポッドには改善の余地がある。アプリはかろうじて動くといった出来だが、iOS版よりもAndroid版のほうがはるかによくできている
- E-Linkのバッテリーを最大ギア位置で交換しようとすると最小ギアに移動するので、シマノ12スピードのリアディレイラーケージは壊れる場合がある。そのため停車時は最小ギアにしておくこと
- ペダリングせずに一気多段変速すると初代E-Linkは「燃え尽きる」ことがある
- Kickstarterの件はあったものの、昨年の新しい注文品は迅速に配送された
- X-Shiterの変速は設定を詰めれば、Di2ほど速くも正確でもないが、Archerよりはずっと速い
とのことでした。