ヒット商品の研究:XOSS G+はなぜバカ売れしているか

XOSS G+という低価格GPSサイコンがバカ売れしています。面白い製品だなと思い、実際に買って使って記事で紹介したところ、CBN Blog経由で2日間で70個売れました。恐らく今月末には100個くらい売れていると思います。

XOSS G

たまにこういう感じでバカ売れしてしまう、不思議な商品が存在します。いわゆる「バズった商品」です。

売れる理由は、最終的には「商品自体に魅力があるから」ということにはなるのですが、一方で「結構良い製品なのに、なぜかまったく売れない」ものも存在します。

その差はどこから生まれてくるのでしょうか。ただの偶然でしょうか。本記事で考察してみます。

突出したいくつかの点

XOSS G+には明らかに突出した点がいくつか存在します。

  • GPSログが取れるサイクルコンピューターなのに圧倒的に安い(初登場時は5,000円くらい、最近は3,000円前後。最安時は2,680円になったこともある)
  • 約25時間という公称駆動時間の長さ

この2点がまず強烈な印象を与えました。

3,000円という価格は、たとえばCATEYEのようなビッグブランドの場合だとGPS機能は付きません。このインパクトは大きく、とりあえずこれだけで「最初の注目」を集めるのに十分です。

また「駆動時間が長いものが好まれる」のは最近のGPSサイコンのトレンドです。

これをGARMIN Edge 25Jという、大メーカーによるミニマル仕様の製品と比較してみましょう。

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この記事を書いている時点でのEdge 25Jの価格は¥17,209で、公称駆動時間は8時間とされています。

そして、できることに大差はありません。というか、Edge 25Jは勾配が表示できないという点でまさかの敗北を喫しています。

勿論、GarminはGPS界の権威なのでGPSログの精度や安定性では圧勝しているでしょう(※実はそうでもないものもあるという意見も多いですが…)。

しかし、

  • 3,000円 vs. 17,000円
  • 25時間 vs. 8時間

インパクトの差はあまりに大きいですね。

XOSS G+の25時間という駆動時間は「盛っている」らしいのですが、それでも20時間くらいは持つという話があります。少なくとも「Edge 25J」のことをなんとなく知っていた人からすると、かなり魅力的なものに見えるでしょう。私自身、Edge 25Jは買おうかなと思ったことがあるのですが、駆動時間が短いのでやめました。

ここでは製品の最終的な完成度はあまり問題になりません。とにかく「キャッチー」な要素が2つもあります。ヒット商品に共通しているのは、こういう感じで何らかの「キャッチーさ」があることだと思います。

色の白いは七難隠す、あるいは「ハロー効果」という概念とも関係がありそうです。

覚えやすいブランド名・商品名

XOSSはいわゆる中華ブランドです。しかし、他の中華ブランドと比べて「ブランド名を覚えやすい」という点も効いていると思います。そして「G+」という、シンプルながらも覚えやすい製品名があるのも功を奏しているように個人的には思います。

例えば「iGPSPORT iGS20E」と比較してみましょう。これも良いサイコンであると聞きます。ユーザーも多いと思います。

ただ、このあたりは主観がかなり入るのですが、「iGPSPORT」は私にとってはどちらかというと「覚えにくい名前」です。

恐らくiPhoneやiMacなどで流行した「i」と「GPS」と「SPORT」の3語を組み合わせたものだと思うのですが、最初は読み方がぱっとわからなかった(最近慣れてきましたが)。アイジーピーエス…いや、アイジーピースポートかな? と悩みました。

下のどちらが「記憶に残る」かは、一目瞭然でしょう。

  • XOSS G+
  • iGPSPORT iGS20E

さらに面白いことがあります。

それは「XOSS」の正式な読み方を誰も知らないということです(笑)。ゾス? イクソス? それともショス? 諸説あるようですが、この「微妙に謎めいているところ」も良い効果が出ているような気がします。

シンプルで覚えやすい、しかしミステリアスなところもある。「G+」にしても、意味はよくわからないのですが、「XOSS G+」という名前は「中華製品の怪しさ」を残しつつ、覚えやすいものになっています。

iGPSport, enkeeo, suaokiなど、amazonの中華サイクルコンピューターを眺めているといろんなブランドがあるのですが、「XOSS」という名前はキャッチーさでやはり頭一つ抜けている感じがします。

単にシンプルにすれば良いというものでもないのが、難しいところではあります。

最近の例で言うと、「ROTOR 1×13(ワンバイサーティーン)」があります。個人的には、シンプルでスッキリしていてわかりやすくて、いい名前だなと思います。

でも、売れる名前かどうかという意味では、売れる名前ではないかもしれない、とも思います。なぜならそこにはミステリアスな要素がないからです。謎がありません。

ミニマリズム

XOSS G+の割り切った設計も人気の一因になっていると思います。ミニマルです。ミニマリズムは最近のトレンドです。ロードバイクやグラベルバイクのメーカーロゴが小さくなっているのもその流れです。

XOSS G

ロゴといえば、XOSSのロゴもシンプルですね。

機能面に話を戻すと、GPSサイコンというとやれることがたくさんあって、画面表示も様々にカスタマイズできます。反面、それは煩雑な印象を与えます。

G+の場合は、データフィールドは固定です。画面は3つあり、それを切り替えるだけ。カスタマイズはできません。

ナビ機能も勿論ありません。

それでいて「斜度」のような多くの人が重要視するデータは表示できたりします。

これは鳴り物入りで登場した「CATEYE AVVENTURA CC-GPS200」になぜか斜度表示がないことにガッカリした人々の心を掴んだのではないでしょうか。

また、液晶の数字はやや細めなのですが、「スピード」という多くの人が最も重要視するであろう部分だけは大きい表示となっていて、そこだけは見やすいです。

できることを絞った簡易な製品であること。それでいて斜度という重要なデータ表示に対応し、画面で最も目立つ「スピード」の表示部分は目立つようにした。

外観的にも性能的にもミニマリズムを感じさせながらも、大事なところをうまく押さえているな、という感じがします。

伸び代への期待

G+は完璧な製品ではありません。

特に「GPSサイコン」としての最重要機能であるGPSログの手動での取り出しができず、最人気のGPSデータポータルであるStravaへのアップロードも不安定、という問題を抱えています。

実際、私も最初はStravaとの同期ができず、これはあまりおすすめできない製品かも、という記事を書いたところ、その日はやはり1個も売れなかったんですね。

ちょっと前からXOSSの激安GPSサイコン2モデルが話題になっています。ナビ機能のないXOSS G+と、ナビのあるXOSS SPRINTです...

しかしその後Stravaとの同期にはコツが要ることがわかって、手順はちょっと面倒だけどなんとかアップできた、みたいな記事を書いたら、その日以降、爆発的に売れました。

GPSサイコンながら実勢価格が3,000円前後という驚異のコストパフォーマンスを誇るXOSS G+。しかし下の記事で詳しく紹...

思うに、私達は「完璧ではなくとも、伸び代があっておもしろそうな製品」に興味があるのではないでしょうか。

モノが売れないのはマーケットのせいではない

現在は世界的に不況で、日本でも消費税増税もあって消費が冷え込んでいる、と言われます。

また、自転車産業は右肩下がりであるとか、サイクリング人口も減っている、なども言われます。

そういう「外的な要因」のせいで、いまはモノが売れない、という話をよく聞きます。

しかし、本当にそうなのだろうか、とも思います。モノが売れにくくなっているのは事実だとしても、面白い製品、革新的な製品はやはり売れ続けると思います。

XOSS G+は、技術的なイノベーションは皆無ですが、製品の立ち位置、見せ方、需要のつかみ方などがうまく、それらが総合的に功を奏してヒットしつつある、バズっている商品であるように感じます。

バズる、という現象は「再現性に乏しい偶然の産物」であると思われていますが、よく観察するとそこには一定の法則とパターンがあるに違いない、と、XOSS G+を使っていて思ったのでした。

この記事を書いた人