平坦に根をおろし、平坦と共に生きよう。平坦と共に冬を越え、平坦と共に春を歌おう。どんなに高性能な自転車を持っても、たくさんのかわいそうな機材を操っても、平坦から離れては生きられない、へっぽこ自転車乗り、nadokazuです。
というわけで、本日の駄文はこちら!
うわああ!脚が!脚がぁああ!
西伊豆スカイラインって、どんな道?
静岡県の県道127号線の一部で、戸田峠から土肥峠(船原峠)までの区間になります。
…と、いうのが、だいたいどこのサイトでも書かれている西伊豆スカイラインのプロファイル。なんですが、そのウラを取ろうと思って自治体や公共機関、観光協会などのサイトを見まくってみても「西伊豆スカイラインはここからここまで」という記述は、全然見つけられません。自分の検索力が、極めて低いだけかもですが。
で、かろうじてJAFのサイト「JAFナビ」の「西伊豆スカイライン」のページに、
戸田峠から達磨山・伽藍山を通り土肥峠(船原峠)を結ぶ、西伊豆の稜線上を走る延長約10.8kmの一般道路であります。現在は県道127号船原西浦高原線の一部として無料で開放されています。
という記載を見つけました。ただ、そこから「公式サイト」としてリンクされている、伊豆市観光協会サイトにも区間の正式な記載はナシです。なんでやねーん!
でもまぁ、戸田峠側と土肥峠側に、それぞれ「西伊豆スカイライン」と書かれた案内標識があるので、多分そういうことなのでしょう。
戸田峠側の案内標識。
土肥峠側の案内標識。
さてさて、そんな西伊豆スカイラインの特長は、ほぼ全線にわたって山の稜線沿い、つまり標高の高いところ(だいたい800m〜900m)を走り続ける点。
なかでも「達磨山北登山口付近の約1.5km」区間は、まさに西伊豆スカイラインのハイライト。富士山と駿河湾、果ては遠く南アルプスまでを見渡せる「暴力的」と言って差し支えないほどの絶景が楽しめます。
しかも!そんな道が!首都圏から、普通に日帰り可能な近さです!(近いとは言ってない)
だから行くよ! 諦めず 心が輝く方へ!
西伊豆スカイラインには、どこからアプローチする?
輪行して西伊豆スカイラインに向かうことを考えた場合、最寄り駅は「沼津駅」または「修善寺駅」です。南端の戸田峠側からコースインするのであれば、沼津駅と修善寺駅の両方が選択肢になり、北端の土肥峠側からなら修善寺駅が出発地点になります。
沼津駅から戸田峠→西伊豆スカイライン
沼津駅を出発して海沿いを走り、県道17号線を経て、県道127号線の入口に向かいます。
127号線の分岐から先は、Stravaのセグメントで「シャイニークライム」と名づけられているルートですね。O.K. 行こう 行こうよこの先へ!
修善寺駅から戸田峠→西伊豆スカイライン
修善寺駅を出発して、修善寺温泉街の途中で右折。「修善寺虹の郷」の脇を抜けて、戸田峠に向かいます。
修善寺駅から土肥峠→西伊豆スカイライン
修善寺駅を出発して、西伊豆スカイラインの南端のスタート地点である土肥峠を目指す場合は、こんな感じ。
以上が最寄駅から寄り道なしで、西伊豆スカイラインに向かうルートの一覧です。理由は後述しますが、個人的なオススメは戸田峠→土肥峠よりも、土肥峠→戸田峠方向で走るルート。なので、修善寺駅出発が推しになります。
首都圏から修善寺駅まで行くとなると、在来線だと3時間近くかかります。考えてみれば、結構な長旅です。
ですが!
一番大切なのは できるかどうかじゃない!
やりたいかどうかだよ!
西伊豆スカイラインは、土肥峠→戸田峠のルートがおすすめ!
見出しに記載した通りです。土肥峠方面から戸田峠方向に向かって走るルートを、猛烈にオススメします。その理由は、ただひとつ!
「進行方向に富士山を見据えて走れる」から。
そして
「いちばんの絶景区間をライド後半に持ってこれるから」
です。※ふたつじゃねーか!というツッコミ不可。
西伊豆スカイラインの景観には「富士山が大迫力で見える」という要素が、非常に大きく貢献しています。
戸田峠→土肥峠というルートだと、富士山はずっと後ろ側。せっかくの富士山を景観から全部ポイ捨てすることになって、大幅な魅力減を余儀なくされます。
その反面、土肥峠→戸田峠の方向に走ると、これから向かう方向に「ドーン!」という書き文字を加えたいぐらいの迫力で富士山が見えてきます。気分はもう、上がりまくり。
しかも!
絶景のクライマックスを、ライドの後半にがっちり配置できます。
先述の通り「達磨山北登山口付近の約1.5kmの区間」こそが、西伊豆スカイラインのハイライト。
もちろん、ほかにも景色を楽しめる部分はありますが、この区間の眺望には遠く及びません。
戸田峠方向からのコースインだと、西伊豆スカイラインに入って早々に、いちばんのハイライト区間を通過してしまうことになります(しかも、富士山を背にして)。それは崎陽軒のシウマイ弁当をいただくとき、シウマイを最初に全部食べてしまって、残りのおかずでご飯を食べるようなものです。
そりゃあシウマイ弁当をどんな順番で食べるかなんて、完全に個人の自由。他人がとやかく言うようなことでは、決してありません。
ですが…ですが個人的には、
「おいしいものは、後に取っておこうかな!」
という、ひまわりのような明るさで心までぽかぽかにしてくれる太陽な人の考え方に完全に同意です。
西伊豆スカイライン、実際に行ってみた。
川崎駅を5時39分に発車する、沼津行きの直通に乗車。この電車なら、小田原や熱海での乗り換え無し!三島駅到着は、7時21分です。ちなみに三島駅はSuicaエリアから外れるので、あらかじめ修善寺までの連絡切符を買っておくのが吉。これ豆な!!
新幹線の場合だと、こだま701号(新横浜駅6時40分発車)で三島駅到着は7時26分。出発が1時間違うのに同じ頃に到着とは…新幹線…おそろしい子!
三島駅では、7時34分発の修善寺行きに乗り換えです。
今回は戸田峠でも土肥峠でもなく、さらに北側にある風早峠まで行って、そこから稜線沿いの県道411号線で土肥峠にアプローチして、西伊豆スカイラインを走るコースにしました。
どうせ登坂するなら最初に標高を上げきっておいて、そのあと稜線沿いの道を長く走った方がお得ですからね。
修善寺駅を出発後、国道136号線〜国道414号線でおよそ11km走って右折すると、風早峠までの長い登坂になります。Stravaでは「東京ラスクゆるクラ」というセグメントになっていて、セグメント情報によると平均斜度はわずか2.5%でした。
実際に登ってみてもキツイ部分はなくて、本当にゆるゆるです。途中、いい感じに色づいている銀杏があったので、自転車を止めて撮影しました。
インナーローで走っていれば、脚への走行負荷は極小。景色を楽しむ余裕だってありまくり。これなら時間さえかければ、楽勝で風早峠まで到着できますね!素晴らしい!!
…と、思えたのは、最初のうちだけでした。
よくよく見てみると「東京ラスクゆるクラ」セグメントは、登坂ルートの途中までしかありません。走って行くうちにどんどん斜度はキツくなり、挙句の果てに斜度10%超が延々と続く絶望的な登坂までが続々登場。舐めたことを考えていた自分は、瞬く間に叩きのめされました。
それでも…それでも…峠にさえ到着してしまえば、あとは稜線沿いを水平移動するだけ。今よりも、ずっとラクに走れるはずです。ここは耐えるしかありません。
ここはがまん…がまんや!石垣光太郎!!
延々と続く登坂に気が遠くなってきた頃、ようやく風早峠に到着しました。
これで…残っているのは、稜線沿いの道だけ。登坂の苦しみから、ようやく解放される…。と、安堵する自分の目に飛び込んできたのは、下り坂とその先に続く、見るからにヤバそうな斜度の長い上り坂でした。
ゆったり横移動だと思っていた稜線沿いは、ガッツリ登坂成分を含んだ魔物の住処だったのです。
前方を見ると、進行方向に山が立ちはだかっています。中腹辺りにうっすら見える、斜面を横切る白い線。それって、自分がこれから向かう道ですよね…。
風早峠までの登坂で、とっくに売り尽くした脚力。その残りカスで、ここから先を走らなければいけない。そんな事実に絶望しながらも、先へ進むしかありませんでした。
しかも腹が立つことに、登坂のツラさを解消してくれるはずの絶景がどこにもありません。行きの電車内からは富士山が見えたんですよ?
それなのに苦労して山の上まで登坂したら、霧雨風味のドン曇りです。富士山という山は存在しなかったかのように、キレイさっぱり消滅していました。
絶景ポイントだと聞いていた場所も、完全な期待はずれ。富士山どこー!!
せっかく標高が高い場所にいるのに、見晴らしの良いところでも雲だらけ。しかも冬装備なのに、震え上がるほどの寒さ。よく見てみると、側溝に雪が!!
これ…なんて言う罰ゲームですか??
脚のみならず心までズタボロになって、ようやく戸田峠駐車場に到着。あとは、沼津市街まで坂を下るだけ…ではありませんでした。
県道128号線を沼津市街方向に右折にすると、真城峠がライフを失った脚に追い打ちの登坂を喰らわしてきます。しかも、最大斜度は10%超!一切の容赦がありません。悶絶。
ここは間違いなく、魔境…。坂の魔獣が跋扈する、悪魔が棲む道…。
自分みたいな貧脚素人が、決して踏み込んではイケナイ世界だったんや…。
みなさんも、西伊豆スカイラインにだけは、決して行かんといてください…!
西伊豆スカイライン、リベンジしてみた
というわけで、西伊豆スカイラインに挑んだものの、ボッコボコに敗北して帰宅しました。
ツラいツラい登坂に耐えて耐えて耐え抜いて、ようやく走った西伊豆スカイライン。
それなのに…ゼロだったんだよ!
悔しいじゃん!!
差がすごいあるとか、昔とは違うとか、
そんなのどうでもいい!
悔しい!やっぱり私…悔しいんだよ…。
こうなったら、リベンジするほかありません。というわけで、2週連続で西伊豆スカイラインに向かいました。
2回目は、自家用車での車載。曇り空だったら、すぐさま伊豆ドライブに切り替え可能でリスクヘッジも万全です。
深夜の東名高速をひた走り、夜明け前のタイミングで戸田峠の手前にある達磨山高原レストハウスに到着しました。すると…
駿河湾の向こうに、雲ひとつない状態で富士山が見えます。これは…勝った!!
陽が昇るのを少し待って、一旦クルマで西伊豆スカイラインへ。雲が出ないうちに、絶景カットを確保します。
その後、沼津市街に降りて有料駐車場にクルマを停め、自転車で出発。先週とは逆方向の、県道127号線で戸田峠に向かうルートです。
走り出してから、気付きました。
登坂って「距離が短くて斜度がキツい」のと「距離は長いけど斜度はゆるい」のでは、後者の方が間違いなく生存可能性が高いです。たとえ距離が伸びても、修善寺方面に降りたほうがよかったのは明白。
知っていたはず。わかっていたはず。なのに、なぜ、わざわざ斜度のキツい方を登る選択をしてしまったのか…。
そして案の定、シッティングではクリアできない斜度に、ダンシングでなんとか耐え続けるという筆舌に尽くしがたい苦悶を味わう羽目になりました(私の斜度耐性は、一般的なサイクリストの皆さまに大きく劣ります)。
でも、この景色が見られるなら、もうそれでいい! 許す! すべてを許します!!!
絶景だとは聞いていましたが、本気を出した西伊豆スカイラインは実にすさまじい破壊力。本当に「凄い」としか、言いようがありません。参りました!降参です!
関東近郊にお住まいの、自転車乗りの皆さん!
西伊豆スカイラインです!
あなたも!あなたも!
西伊豆スカイライン 行ってみませんか?
輝ける西伊豆!
西伊豆スカイラインーー!
走った後は、お楽しみが盛りだくさん!
前述のとおり、コース設定は「土肥峠→戸田峠」がおすすめです。坂を下った沼津市街エリアでは、実に多岐にわたるお楽しみがあなたを待っています。
太宰治ゆかりの宿で、日帰り入浴!
西伊豆スカイラインから、県道128号線を経由で海沿いまで下ってしばらく走ると、三津海水浴場の向かいに、歴史を感じさせる造りの旅館があります。
「安田屋旅館」。かの文豪、太宰治ゆかりの宿です。
創業明治20年。大正7年築の松棟と昭和6年築の月等棟は、国登録有形文化財に指定されております。
松棟2階「月見草」の間には、文豪太宰治が昭和22年に逗留。現在も客室として利用されています。
そんな由緒正しすぎる旅館で、日帰り入浴ができる。これは、入らないわけにはいきません。
時間は12:00~14:00と、18:00~20:00。料金は1,000円で、バスタオル/フェイスタオルが各200円。若干ぬるめでしたが、大変よいお湯でした。
そういえば入口を入ってすぐのところには、大きな犬のぬいぐるみが飾られていました。なぜだろう…?
サイクルラックが置いてある甘味処で、糖分補給!
安田屋旅館さんから、少し沼津駅方面に進んだところに、サイクルラックが置いてある自転車乗りに優しい甘味処「松月」があります。
イチオシは地元の名産である、みかんを活用した「みかんどら焼き」。餡の中にはみかんが混ぜ込まれていて、酸味があるので甘くてもサッパリ食べられます。これ、補給食に凄くいいのでは。
店内でも食べられますし、テイクアウトもOK。荷物を増やしたく無いときは、大量購入して自宅配送にしちゃいましょう。
松月さんの店内にはカラフルなイラストがたくさん飾られていて、とても華やかでした。
昭和ムード漂う喫茶店でランチ!
沼津港の近くには、海鮮を扱うお店がたくさん!しかも展望水門「びゅうお」という観光スポットもあります。
ですが、個人的には「地元の古くからある喫茶店」を見逃すことができません。
というわけで昼食に入ったのが、「欧蘭陀館 下河原店」。
理由はよくわかりませんが、カラフルなイラストや人形、そして斉藤さんという女性タレントの写真やサインがわんさか飾られています。
さてさて、こちらのお店で注目したいメニューはハンバーグ。それも通常のハンバーグではなく、メニューや店内ポスターで写真入りで紹介されているほうのバージョンです。
通常のハンバーグは、コーヒーをセットにして1,100円。十分美味ですし、量もある。もちろん、これで不満は一切ありません。
なんですが!
それに対して、メニューや店内ポスターで推されているほうのハンバーグは、コーヒー付き1,250円でオムレツにナポリタン、フルーツ、さらにデザートやジュースまでプラスになっています。差額150円で、この内容の差は大きすぎです!
デザートはクレープで、中にはバナナが入っていました。フルーツの上に乗っているのはシュークリームと思いきや、なんとシューアイス!坂でズタボロの身体に、アイスワタルシミ。
ジュースの入ったグラスには、錨がデザインされていました。
結局2週連続で行ってしまいましたが、2回とも待ち時間なしで入れました。駐車場完備なので、車載の時でも無問題です!ヨーソロー!
お土産に、ご当地パン「のっぽ」!
沼津駅から帰宅するとき、自分用にパッと買えるおみやげとして、ご当地パン「のっぽ」はいかがでしょう?沼津駅では、改札近くの売店で購入可能です。
この「のっぽ」言ってしまえば、ただの細長い菓子パンなのですが、俺たちのヤマザキナイススティックを上回るであろう全長。さらに、味のバリエーションも豊富です。
私はミルククリーム味と、プリン味を選びました。普通に美味で、翌日には2本とも胃の中ズラ〜。
まとめ
3度目になっちゃいますが、繰り返します。西伊豆スカイラインのハイライトは、「達磨山北登山口付近の約1.5kmの区間」です。
でもでもコレって「たった1.5kmを走るために、早朝から輪行して遠征したうえ標高900m近くの場所まで登坂する」ということです。それって、苦労の割に見返り少なくない?
と、思いそうになるのですが、それだけの価値は間違いなくあります!
ここに辿り着くまでに味わった、疲れも辛さも苦労も、暴力的な絶景の前に吹き飛びます。あらゆる坂は完全に邪悪な存在ですが、西伊豆スカイラインは絶景力のグーパンチで心の中の坂嫌い魔獣まで無理矢理浄化してしまいます。
赦そう…許されざる存在である、すべての坂を赦そう…。
ただし!そのために、絶対欠かせない条件があります。それは「晴れて空気が澄んでいる」こと。
西伊豆スカイラインから眺望を差し引いたら、ただの(聞くに堪えない罵詈雑言)な坂地獄でしかありません。
輪行して、登坂して、ようやく見られたのが、こんな風景…!
気力体力脚力と、ここまで辿り着くために必要だった苦労のすべての結果が…これ…。
そうなると、伊豆半島なんか本州と切り離して太平洋に放流してしまえ!ぐらいのレベルで、膨大な負の感情が沸き起こるのは間違いありません(経験者談)。
変わりやすい山の天気。眺望の良し悪しは、登ってみないとわからない。西伊豆スカイラインは、巨大なリスク要因が不可避の道なのです。
でも!
それでも!
これだけの絶景に巡り会えるなら、リスクですら些細なことでしかない。心から、そう思えます。
もう逃げないで 進むときだよ 新しい場所へ!