フレーム・完成車

GIANT ESCAPE R DROPはドロップハンドルのロード…いやクロスバイク

なかなかおもしろい完成車がジャイアントから発表されました。その名も「ESCAPE R DROP」。そう、言わずと知れたクロスバイクの名車「エスケープ」シリーズの新作です。

公式 GIANT ESCAPE R DROP

Escape R3については下の記事で紹介しました。

クロスバイクのイデア・GIANT Escape R3の伝説
どの業界のどんなカテゴリーの製品にも伝説的なプロダクトが存在します。 そして日本のクロスバイク界における伝説的なプロダクトと言えば、GIANT Escape R3。「クロスバイクと言ったらEscape R3」と呼ばれるほどの名車なのは...

そのE-BIKEバージョン「ESCAPE RX-E+」についても書いてみました。

GIANTのE-BIKE ESCAPE RX-E+は新たな伝説を作ることができるのか
GIANTが昨年暮れにE-BIKEを発表しました。伝説のクロスバイクESCAPE R3と同じ「ESCAPE」シリーズに属し、そのよりスポーティーなモデルである「RX」の名を含む「ESCAPE RX-E+」です。

さて問題の「ESCAPE R DROP」ですが、その名の通り、最大の特徴はドロップハンドル仕様であることです。価格は税抜¥66,000。

ロードではない。ドロップバー・クロスバイクである

しかしこれはあくまで「クロスバイク」であり「ロードバイク」ではないようです。

GIANT公式サイトによると…

ベストセラークロスバイク「エスケープ R3」のドロップバー仕様が2020モデルで待望の新登場。

ドロップバー用ジオメトリに、初心者にも安心のサブブレーキレバー、やや太めの30Cタイヤ、快適サドル。

リラックスした乗車姿勢でロードバイクスタイルを楽しめる、新型ドロップバークロスバイク。

あらためて「クロスバイクって何だろう」と思わされます。このバイクの基本コンポーネントはSHIMANO CLARIS 8スピードです。つまりロードバイク・コンポーネントです。

トラディショナルなクロスバイク的な要素といえば、かろうじてTEKTRO RX1というミニVブレーキでしょうか。これはVブレーキでありますが、ロードバイク用キャリパーブレーキとワイヤーの引き量が同じなのでCLARISでも問題なく引けます。

ESCAPE R3等に手を出した方は、改造に改造を重ねて最終的にはドロップハンドル仕様にたどり着く方も多いと思います。なら最初からドロップバー仕様のエスケープを… という発想は、マーケティング的にはありでしょう。

しかしこうやって見ると、この姿はもはやロードバイク。これならキャリパーブレーキにしても良かったのではないか、と思わなくもありません。

TEKTRO RX1のことはよく知らないのですが、少なくともロード用のTIAGRAグレードのキャリパーブレーキがそれに劣るということはきっとないでしょう。

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このバイクが「クロスバイク」であり続けるために、唯一口実のように残されたのがこのTEKTRO RX1という印象を持ちましたが、どうでしょうか。

というかこれはもう「クロスバイクか、ロードバイクか」という議論を無意味にする自転車なのでしょう。

あえて分類しなければならないとしたら、これは「エスケープ」というクラスに属する自転車なのだ、と言うしかないような気がします。

スペックリスト

スペックリストです。先述のようにメインコンポはSHIMANO CLARIS。クランクセットは他社製ですが、トリプルではなくダブル。フロントの46/30T, リアの11-34Tという構成を見ると最近のグラベルロードようなバーサタイルな用途を想像させます。このあたりはクロスバイク的ではあります。

  • フレーム:ALUXX-Grade Aluminum OLD130mm
  • フロントフォーク:Cr-mo
  • BBセット:VP BC73 120-68mm
  • ギアクランク:PROWHEEL RPL-521 30/46T/CG 165mm(XS)、170mm(S、M)
  • チェーン:KMC Z8.3
  • F.ディレーラー:SHIMANO CLARIS 31.8
  • R.ディレーラー:SHIMANO CLARIS
  • シフター:SHIMANO CLARIS 8S
  • ブレーキセット:TEKTRO RX1
  • ブレーキレバー:SHIMANO CLARIS
  • ギア:SHIMANO HG41 8S 11-34T
  • ヘッドセット:FEIMING セミカートリッジ
  • ハンドルバー:Aluminum 31.8 400mm(XS、S)、420mm(M)
  • ハンドルステム:Aluminum 31.8 90mm(XS、S)、110mm(M)
  • サドル:GIANT CONNECT COMFORT
  • シートピラー:Aluminum 27.2x300mm
  • シートクランプ:Aluminum 31.8 QR
  • ペダル:Aluminum CAGE
  • ホイールセット:GIANT SPINFORCE LITE WheelSet F:24H R:28H
  • スポーク:Stainless 14G
  • タイヤ:GIANT ESCAPE R TIRE 700x30C
  • チューブバルブ:仏式バルブ
  • 付属品:ベル

カラーはブルーとブラックの2種類。サイズはXS, S, Mの3つ。重量はいちばん大きいMサイズで10.9kgとなっています。

スペックリストには含まれていませんが、サブブレーキレバーが装着されているのが大きい特徴のひとつです

タイヤも30Cとやや太め。ESCAPE R3も2020年モデルは30Cになりました(2019年までは28Cだった)。このあたりはトレンドに寄せてきている感じです。

またエスケープは2019年モデルからクイックリリースをやめてしまったことも大きい話題になりました。

色々な理由があるとは思いますが、この自転車はクイックリリースのほうが良かったのではないか、いやユーザーに積極的なメンテナンスと改造を促すという意味で、クイックリリースは「エスケープシリーズのDNA」と呼んでも過言ではない仕様だったのではないか、とさえ思うだけに、この点はやや残念。

でも定価で税抜き66,000円ですよ。実売価格はちょっとだけ安くなるでしょう。コストパフォーマンスはきっといいんじゃないでしょうか。

自転車通勤の最初の1台、などにはすごく良さそうです。ノーブランドの激安中華ロードバイクを買うよりはるかに良いのは間違いないと思います。しかもCLARISから105へ、そしてUltegraへ… というパスが目に見えます。そして行く行くはDEFY、そしてTCRへ…

あっ…(察した)

でも自転車通勤でのパンクを考えたらやっぱりクイックリリースが良いと思うけど…

正常進化か、それとも終わりの始まりか

この「ESCAPE R DROP」は勿論乗っていないので、あくまで数字上のスペックや画像を見た上での感想でしかないのですが、「エスケープのDNA」がどんどん失われつつあるのではないかというのが正直なところではあります。

まぁこれは「エスケープ」というバイクに対する1ファン側の勝手な期待というか、思い込みの上での感想です。個人的には「エスケープの最大の魅力は『自分で発見する』ことにあったのではないか。乗り手が自分の意志でドロップハンドルにたどり着くための最良のプラットフォームではなかったのか」と思っていたのです。

ともあれ、「乗ってみたら実はすごかった。これはまさにエスケープ、いやこれこそがTHE ESCAPEなのだ」と感心してしまう可能性も皆無ではありません。

ジオメトリもESCAPE R3やRX1とは微妙に違うようです。ホイールベースが短いので、R3よりも少し機敏な感じでしょうか。もしかするといい乗り味になっているのかもしれません。

GIANT公式サイトでのジオメトリ表はモデルによって各箇所を示す略号が違うので直感的な比較が難しいです。そこで「ESCAPE R DROP」と「ESCAPE R3」のジオメトリで共通部分の違いがわかるように表にしてみました。黄色でハイライトした部分が差分です(長い表なので横にスクロールすると全体を見られます)。

ESCAPE R DROP
SIZE (mm) シートチューブ長(mm) チェーンステーアングル(度) 水平TT(mm) ヘッドチューブ長(mm) ヘッドアングル(度) ホイールベース(mm) チェーンステー長(mm) BB Drop(mm) スタック(mm) リーチ(mm) 適応身長 (cm)
430(XS) 430 75515 125 71999 425 70 543 370 155〜170
465(S) 465 74530 14571.51000.5 425 70 563 369 160〜175
500(M) 500 73545 170721001.1 425 70 588 365 170〜185
ESCAPE R3
430(XS) 430 75 525 125 71 1009.1 425 70 n/a n/a 155〜170
430(XS) 465 74 545 145 72 1010.4 425 70 n/a n/a 160〜175
465(S) 500 73 565 170 72.5 1015 425 70 n/a n/a 170〜185

こうやって見るとホイールベースが短くなったのはトップチューブを短くしたからであることがわかります。

いずれにしても付属のタイヤとチューブは結構重いものだと思うので、最初にタイヤとチューブをもっと良いものにしましょう(笑)。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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