タイヤ・チューブ

この自転車用タイヤは不良品? 返品・交換してもらえる? 私の個人的な考え方

新品で買ったばかりのタイヤの様子がどうもおかしい。チューブレスレディタイヤの空気がすぐに抜けてしまう。半年くらい使っていたらある日突然タイヤの表面にイボのような瘤ができてしまった。タイヤがぐねぐねと変形した。ワークスタンドに乗せてホイールを回すとタイヤの真円が出ていないように見える…

こうした場合、そのタイヤを不良品として判断すべきでしょうか。何でもかんでも不良品として返品・交換を依頼するとお店にモンスタークレーマー扱いされはしないだろうか… と悩む方もいると思います。そこでこの記事ではいくつかの症例ごとに、不良品かどうかを判断する目安について個人的な意見を書いてみたいと思います。

なおこういう話は工業製品の品質に対する個々人の価値観によって判断が異なるので、あくまで私個人の考え方ということで悪しからずご了承下さい。最終的には自分で判断することです。

トレッド面・サイドウォールのヒビ割れ

まずはタイヤのヒビ割れから。新品のタイヤでもトレッド面やサイドウォールにヒビ・亀裂が入っていることがあります。下は500milesさんによるSchwalbe G-One Allround Evolutionレビューからの写真ですが、シュワルベのロゴ下に2cmほどの亀裂が見えます。15kmほど試走したばかりのタイヤだそうです。

Schwalbe G-One Allround Evolution サイドウォールのヒビ

Schwalbe G-One Allround Evolution サイドウォールのヒビ photo:500milesさん

下は筆者がブロンプトン用に新品購入したSchwalbe Marathon 16×1.35 (35-349)のサイドウォールの亀裂です。

Schwalbe Marathon 16×1.35 (35-349)のヒビ

Schwalbe Marathon 16×1.35 (35-349)のヒビ

こうした亀裂については、私の場合は販売店に返品を交渉します。Amazon購入の場合は未使用品であれば問答無用で返品が可能ですし、使用直後でも合理的な理由があれば返品プロセスに入ることができます。

サイドカット、という言葉があるように、サイドウォールは石・岩の鋭利な部分に運悪く当たってしまうとスパッと裂けてしまう箇所でもあり、そんなデリケートな部分に最初から亀裂が入っていたらパンクのリスクが高まります。また最近の軽量なチューブレスレディタイヤはサイドウォールが薄いものが増えているので、その場合はなおさらです。

⬇そんな時のためにタイヤブートは持っておきたいところ(基本的にチューブド・クリンチャー用です)。

トレッド面(踏み面)についても購入直後にこうしたヒビがあった場合は購入店に相談してみたほうが良いと思います。もし商品説明に「弊社タイヤには一部、トレッド面やサイドウォールにヒビのある個体がございます」という文言があったとしたら、たぶんそのタイヤを買う人はいないでしょう。

一週間乗ったら割れてきた! 100km乗ったら割れた! という場合はどうでしょうか。ヒビの程度・原因にもよると思いますが、通常使用の場合はお店に相談してみる価値はあると思います。

タイヤの変形・瘤の発生

次はタイヤの変形や瘤(こぶ)の場合です。下も筆者が過去に撮影した写真ですが、シュワルベ・コジャックがキュウリのようにグネグネと曲がっています。購入直後にこうなったのではなく、使用開始後1年以上は経過していたと思います。ある日突然こうなってかなり驚いたのを覚えています。

SCHWALBE KOJAK 20×1.35(ワイヤービード)のゆがみ

SCHWALBE KOJAK 20×1.35(ワイヤービード)のゆがみ

このタイプの変形の他に、トレッドやサイドウォールにイボのような瘤が風船のようにボコッ、と出てくることもあります。これらの症状は使用後しばらくしないと発生しないものが多いようなので、使用時間・使用距離によっては不良品として返品交換してもらえるかどうかは微妙です。

使いはじめて2週間とか、20kmしか乗っていないのにこうした症状が出た場合なら購入店に返品または交換を交渉するのは全然アリ、というかそれはおかしいことではないと思います。

1000km乗ったらこうなってしまった、というような場合は、運が悪かったと思って諦める。次からその製品は避ける、くらいしかやることはありません。

その場合でも販売店や代理店に相談または報告してみる価値はあるでしょう。まっとうなショップも代理店も、最終的には高品質で信頼性の高い製品を売りたい、ユーザーとの信頼関係を築いていきたい、と考えているはずなので、その時々で適切な対応をしてくれると思います(そうでなかったら他社を利用すれば良いだけです)。

メーカーに直接メールすると、製品不良と認められたら代品を送ってくれることも稀にあります。

リフレクターラインのズレ

次はリフレクターラインやペイントのズレです。下もシュワルベ・コジャックの写真ですが、リフレクターラインがずれています。これはコジャックに限らずシュワルベのタイヤでは時々見られる症状らしいですが、単にプリントのズレであれば性能的には問題ありません。

SCHWALBE KOJAK 20×1.35(ワイヤービード)のリフレクターラインのずれ

SCHWALBE KOJAK 20×1.35(ワイヤービード)のリフレクターラインのずれ

私の場合、タイヤの性能に全く影響しない外見上の問題であれば、これはそのまま使い続けてしまうと思いますが、いやこんなのありえないだろう、タイヤが回転している時にこのリフレクターラインが凸凹していたら気持ち悪い、という方の気持ちもよくわかります。新品購入時にすぐにチェックして、状態が受け入れられないようであれば販売店に相談してみましょう。

タイヤが真円でない

タイヤが真円になっておらず、ワークスタンドに乗せて回転させてみるとまるでホイールが縦振れでもしているかのように凸凹している、という場合があります。この時ですが、

  • それはホイールの縦振れとは関係がない
  • ビードが完全に上がっている

ことが間違いない場合、どうやってもまともに乗ることができない不良品なので返品交渉すべきでしょう。筆者は一度だけこの症状を経験したことがあります。ビードが上がりきっている(ように見える)状態で縦に3〜5mm振れていました。

しかし原因がタイヤではなく、もしビードが完全に上がりきっていないことにある場合は、ホイールとの相性が悪い可能性もあり、場合によっては返品に応じてもらえないこともあるかもしれません。いずれにしてもそのまま使い続けることはせず、相談してみましょう。

チューブレスタイヤからのシーラントの滲み出し

次はチューブレス(レディ)タイヤからのシーラントの滲み出しです。これは判断が難しいところがあると思います。たとえば下のWTB ByWayのサイドウォールからの滲み出し。こういう症状を出すモデルもあれば、出さないモデルもあります。また同じ製品でもこの症状が出る個体、出ない個体があります。

WTB ByWay 700c x 40mm サイドウォールからのシーラント漏れ

WTB ByWay 700c x 40mm サイドウォールからのシーラント漏れ

さらに厄介なのが、季節によってこの症状が出たり出なかったりもします。

最近の軽量チューブレスレディタイヤはサイドウォールが薄いものがあり、その場合、タイヤ内の空気圧と外界の気圧との差からシーラントが漏れてしまうことがあるようです。

Schwalbe G-One All Round サイドウォールからのシーラントの滲み出し

Schwalbe G-One All Round サイドウォールからのシーラントの滲み出し

この症状についてはこれまで色々調べてみたのですが、海外でも様々なメーカーの様々な製品で症状が報告されていて、かつ、こうした泡が出ているからといって必ずしも空気圧が急激に減少するわけではない、ということも言われます。

あくまで個人的な意見ですが、現在のチューブレスレディタイヤは「恐らくこんなもの」であり、こういう症状とうまく付き合っていかないとチューブレスを使い続けるのは難しい気がします。チューブレスが爆発的かつ完全に普及しない理由のひとつは、こういう「不良なのか何なのかよくわからない」ケースが多いことではないかとも思います。

というわけで、私はこの場合はこのまま使い続けてしまうと思います。ただし、明らかに小さい穴が開いていてそこからシーラントが吹き出しているような場合はまた別の話で、そういうことがあったら製品不良を疑います。そんな感じです。

シュワルベのタイヤは不良品が多い?

ところでシュワルベのタイヤには不良品が多い、とよく言われますが、本当にそうなのでしょうか。

これは推測ですが、シュワルベタイヤの不良に関する報告自体が多いのは事実だと思います。しかし「報告数の多さ」=「不良発生率の高さ」とは言い切れないでしょう。

ロードバイク・MTBともにシュワルベのタイヤは販売ボリュームが非常に大きいので、仮に不良発生率が他社と同等だったとしても、不良品に関する話題は必然的により多くネット上に上がってきます。実際、上で挙げた症状の大部分はシュワルベ以外のブランド、スペシャライズドでもIRCでもパナレーサーでもWTBでも報告されています。

というわけでシュワルベ=低品質、と即断するのは危険です。私自身もシュワルベタイヤでのトラブルを多数経験してきましたが、考えてみるといちばんよく使っているタイヤがシュワルベということとも関係ありそうです。

勿論、実際にシュワルベは歩留まりが悪い、という可能性も否定できません。このあたりは統計情報があるわけではないので、真相は誰にもわからないと思います。

ちなみにシュワルベは、Hung-Aという韓国の提携メーカーとジャカルタに工場を大きい工場を建てており、同社のタイヤは現在ほぼ全てがインドネシアで製造されているとのことです(他ブランドの自転車用タイヤはそこでは製造されていないようです)。

⬇タイヤのトラブルについては関連記事があります。あわせて是非お読み下さい

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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