シーラント不要のロード用チューブレスタイヤは絶滅するような気がする

今月はCBNで「チューブレス特集」をやっていることもあり、昨今のチューブレス事情をあれこれ調べているところです。

それで本当は今日、この記事で「現在入手可能なチューブレス及びチューブレスレディタイヤ」を紹介しようと思っていました。が、いかんせん数が多い。

そこで今回は「純粋なチューブレスタイヤ」だけ調べてご紹介しようと思ったのでした。

ちなみに純粋なチューブレスタイヤとは何かと言うと、昨日タイヤシステムの違いを理解する クリンチャー・チューブラー・チューブレス・チューブレスレディという記事でも解説したのですが、ケーシングの内側にブチルやラテックスといった素材でできた「エア保持層」を備えた、シーラントを必要としないタイヤのことです。

この純粋なチューブレスは、サイクルスポーツ2019年2月号によると現在日本国内で入手できるのは2製品しかないとされていたので、国際的にはどうなんだろうと思い、リサーチを開始したのでした。

製品名 重量 空気圧(PSI) 備考
Continental Grand Prix 5000 TL 300g 80-109 シーラント推奨
IRC Formula PRO TUBELESS RBCC 280g 90-115 グリップ優先
IRC Formula PRO TUBELESS Light 275g 90-115 転がり優先
IRC Formula PRO TUBELESS X-Guard 300g 90-115 耐パンク性優先
Specialized S-Works Turbo Road Tubeless 280g(*) 90-115 *26mmの重量
Hutchinson Sector 295g(*) *28mmの重量
シーラント必須
Hutchinson Intensive 2 315g
Panaracer Race A Evo 3 Tubelsss 330g 90-120

しかしこの表を途中まで作っているうち、どうも妙な気分になってきました。

というのも「チューブレスレディではないチューブレス」タイヤとして売り出されているものでもシーラントの使用が「推奨」されていたり、「必須」だったりする製品があり、メーカーの説明にもどうも歯切れの悪さを感じるのです。

調べていくうちに、こんなふうにチューブレスとチューブレスレディを分けて考えることに何か意味があるのだろうか、と疑問に思ったのです。

たとえば先月から市場に出回りはじめたばかりのContinental Grand Prix 5000 TLは、構造的には空気保持層を有するチューブレスタイヤです。しかしコンチ公式サイト(英語版)では、シーラントが”recommended”(推奨=使うことをおすすめする)であるという記述があるのです。

Continental GP5000 チューブレス @PBK
割引コード「JPSS」使用で1本¥8,212
amazonでは¥8,550(記事執筆時価格)

またGP5000 TLをいちはやくテストしている海外の有名自転車メディアには、このタイヤにはシーラントが必須(required)であり…みたいなことを書いているところもあります。

表の中のHutchinson Sectorという、パリ=ルーベの石畳での使用を想定して開発されたタイヤもチューブレス構造らしいのですが、メーカー公式サイトにはシーラントが必須(required)と書いてあります。シーラント必須、とか言われると、それってもうチューブレスレディだよね、などと思ってしまいます。

私が調べてみた限り、上の表の中では、IRC, Specialized, Panaracerが表中の製品に関してはシーラントの使用については何も言ってないようです。これらはシーラントを使わずに使ってもいいよ、それで本来の性能を発揮できますよ、ということでしょう。

チューブレスとチューブレスレディという区分はやがてなくなる?

どうも「チューブレス」と「チューブレスレディ」という区別は、技術的にはこれからも存在するとしても、ユーザーから見るとほとんど意味がないものになってくるんじゃないかという気がします。

メーカー側としては、シーラントを使わせない手はないでしょう。シーラントなしでも高い気密性を確保できるタイヤを開発したと自負していても、自社開発でないホイールで使われた場合、もしかするとエア漏れするかもしれない。

だからこのタイヤはチューブレスなんだけど、念のためにシーラントを使ってね。きみがどんなホイールを使うかわからないから。あと小さいパンクならシーラントが勝手に穴をふさいでくれるからほぼパンク知らずということにもなる。

いいことづくめだよね? と、メーカーは言うでしょう。まあ、ユーザー側ではシーラントを入れる手間が出るものの、それでチューブラータイヤなみの耐パンク性能を獲得できるのならまあいいか、Why not? 喜んでやりましょう、という気持ちになったりもするのかもしれません。

ところでチューブレス専用タイヤというのは、エア保持層があるぶん、チューブレスレディータイヤよりも一般的に重い。下の図のピンク色の部分です。この上、中にシーラントを入れると、さらに30gかそれ以上重くなってしまいます。

チューブレスタイヤ・ホイールの構造

Original illustration by Deerwood, remixed by cbn under CC BY-SA 3.0

チューブレスタイヤは、タイヤの内側にインナーチューブに相当するエア保持層が貼りつけられています。これがあることによって、タイヤ側の気密性が保たれます。

するとこんな考えは出てこないでしょうか。

シーラントの使用が前提になっている以上、もう立派なエア保持層は不要なのではないか。エア保持層をやめてしまって軽量化しよう。

というわけで、これからはチューブレス専用設計のタイヤというのはほとんど開発されないのではないか。シーラントの使用を前提とする、というか必須にするチューブレスレディしか残らないんじゃないか。

ということを考えました。

これは、カメラに詳しい方向けにたとえると「このレンズの歪曲収差や色収差はカメラ本体側でデジタル補正させることにしよう、その結果、補正用のレンズを入れなくて済むからレンズ全体を軽量化できる。」という昨今のデジタルカメラ用レンズの傾向にも似た部分があるように思います。

さてこの「チューブレスレディ」システムですが、各メーカーがそれぞれバラバラな名前で呼んでいて、これまたややこしいことになっていますが、MavicのRoad USTのように標準化を模索する動きもあります。これについては後日別の記事で掘り下げたいと思います。