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増補版:ZWIFT以外のバーチャルサイクリングサービスを、わかる範囲でまとめたまとめ。

本記事の掲載内容は2019年2月時点のものです。現在のサービス内容とは異なります。

  • 「VirtuGO」はサービス終了となりました。
  • 「Road Grand Tours」は、大規模なバージョンアップが行われています。以下の記事を参照ください。

参考 「Road Grand Tours」がいつの間にかバージョンアップしていたので、さっそく遊んでみた。
参考 バージョンアップした「Road Grand Tours」は、ZWIFTのライバルになれるかな?

バーチャルサイクリングといえばZWIFT、ZWIFTといえばバーチャルサイクリング。なんだかとんでもない金額の資金の調達にも成功しちゃったみたいですし、そのサービスはますます加速していくことでしょう(頼みますよ、中の人たち!!)。

こうなってしまうとコンペティターがこの牙城を切り崩すのは、難しい(というか、もはや無理ゲーな)ことなのかもしれません。

そんな状況下ではありますが、いま利用できるバーチャルサイクリングサービスを、わかる範囲でまとめてみました。

ZWIFT以外のバーチャルサイクリングサービスを、わかる範囲でまとめたまとめ。

日本語対応とプラットフォームの多彩さでBkoolとZWIFTが拮抗しているように見えますが、サービスとしての完成度はやっぱりZWIFTが圧倒的。OnelapはCGの作り込みや、サービスとしての充実度も高レベル。しかも、月額費用が笑っちゃうぐらい安い(執筆時点で15CNY=244JPY)ので、競合としてはかなりのものだと感じていますが、いかんせん日本語対応が一切されていません。実際のサービス利用を考えると、やっぱりZWIFTの強さが圧倒的な感じですね。以上、おわり!!!

…というわけにもいかないので、本当にZWIFTが唯一無二の最強最高天上天下唯我独尊なのか、上の表に載せたサービスを片っ端から試してみました。RouvyとKinomapはトレーナー購入時のバウチャーを使用して、FULGAZは課金して本番サービスを使用。BkoolとOnelap、Velo Reallyは試用版です。ErgVideoについては最後で。

実写映像と3DCG映像、それぞれ一長一短がある。

さてさて、いろんなバーチャルサイクリングサービスを使いまくってみましたが、まずは

  1. 3DCGを使うか
  2. 実写映像を使うか

で大きく分かれます。それぞれ一長一短があるので、まずはそこから。

実写映像を使ったサービスの、いいところと残念なところ。

ネットの普及と、撮影機材のコモディティ化。実写の車載映像が世界各地から大量に(しかも以前とは比較にならないほどの低コストで)かき集められる現在の環境は、実写映像を使ったサービスには割と最高のバックボーンです。

多くのサービスが第三者からのGPS情報付き動画データのアップロードを受け付けていて、たくさんの映像がアップされまくり。日本国内を含む、実に様々な場所のバーチャルライドが楽しめるようになっています。

実写だけが持つ映像の圧倒的な情報量は、「実在する場所に行って走ってる」という感覚に大きな説得力を与えてくれる強力無比な武器。今日はアルプ・デュエズ、明日はモンテ・ゾンコラン、明後日はヤビツ…。そんな国際地獄巡りだって、映像がアップされていれば簡単にできてしまいます。坂道は素晴らしくないけど、実に素晴らしいですね。

なんですが実写映像を使ったサービスには、共通した大きな課題があります。それは、「映像の品質」。いろんな人からいろいろ動画を集めているせいで、映像の品質がこれっぽっちも安定していません。

撮影者の機材レベルや撮影/編集のスキルに差がありすぎて、完全に玉石混交状態。レーティング機能とか公式のチェック/評価の機能を作るなどして、いい感じの動画が「見るまでわからない」というのをサッサと改善してもらわないと、選ぶ⇒走る⇒なんじゃこの動画は-!! という悲劇が繰り返されまくります。

▼走行中に段差の衝撃でカメラが下を向いて、タイヤと地面しか写ってないシーンがバッチリ収録されている走行映像。これ、BtoBだったら絶対に納品できないですよ…(FULGAZ)

FULGAZ

▼雨で水滴がレンズに…。屋外撮影なのに、予備日設定してなかったんですか?(Kinomap)

Kinomap

さらに実写映像を使ったサービスでは、「映像をペダリングに合わせて動かしているときに、違和感を感じさせないようにする」という部分での技術的な課題が大きすぎるのではないかと感じています。

そもそも実写映像を使ったバーチャルサイクリングサービスの仕組みは「ペダリングの速度に合わせて映像を動かすだけ」という、簡単明瞭単純至極なもの。マスターさんがブログで紹介されていた1982年発売のPerceptronics社「LaserTour」と、原理的にはちっとも全然全く一切変わっていません。

関連記事 バーチャルサイクリングの起源 Perceptronics LaserTour

言い換えると「40年近く、ちっとも進化しないまま」だと言えてしまいます。なので、たとえば周りに歩行者がいたりした場合は、ゆっくりペダリングしたら歩行者の動きもスローモーになってしまいます。そして前方を走っているライダーがいたら、どれだけ猛烈にペダリングしても、その人を絶対に追い越せません。そして撮影時に信号などで停車してしまうと、ペダルをいくら踏んでも動かないシーンが映像に加わります。

気持ちよくバーチャルな現実世界を走っていて、そんなシーンに出くわしたときのリアルな現実に引き戻されちゃった感!ここ、致命的だと思うのですが、解決って不可能なんでしょうか?現状、どのサービスもその点はほぼ放置状態。走行時のリアリティに大きな影響を与える点なのに、きっちり対応して向上させようとする視点は開発から完全に抜け落ちている印象です。

ちなみに昔「Train Simulator」という、同じような原理の電車運転ゲームが開発された際には、すれ違いや沿線風景を自然に見せるために、特別列車を走らせて動画を撮影したそうです。同じようにしようとすると「道路を封鎖したうえで、業務用のカメラを使って、一定速度で走りきる」という動画を撮らないといけない。

それが無茶苦茶大変なのは、自分みたいな素人でもわかります。まともに向き合おうとするとロクでもないコストがかかってしまうので、他のところにリソースを割いた方が良いという経営判断なのでしょう。それは理解しますし、採算化しにくい部分にリソース投下したあげくサービス停止とかなったら元も子もありません。

なんですが、ここの技術的課題がブレイクスルーされない限り、走行時の違和感は未来永劫残り続けます。もともとの仕組みがシンプルすぎるだけに、打破するのは相当にハードルが高いかも。そうなると「バーチャルな映像世界に没入し続けていられる」という面で、3DCGを使ったサービスを上回ることはかなり難しそうです。

あと、実写映像は基本的に走るコースを選ぶたびに、GBクラスの容量の映像データをダウンロードすることになります。ストレージと通信回線への負荷は、がっつり高めです。

3DCGを使ったサービスの、いいところと残念なところ。

映像の美しさと動きの滑らかさ、そしてバーチャルだからこそ実現できる世界観。世界中の人とリアルタイムにコミュニケーションしながら一緒に走れるという自転車体験は、本当に楽しすぎです。テクノロジー進化の恩恵をこれでもかと享受できて、今が実にありがたい時代なのだとつくづく感じます。

バイクやウェア類で、アバターのカスタマイズをするのも面白いですよね。「プレミアムジャージガチャ」とか「フレームガチャ」とか「パーツガチャ」を実装したら、サービス提供会社は日本国内のユーザから大量の日本円を搾取可能なのではないでしょうか。

▼コンポーネントまで無駄にカスタマイズ可能(VirtuGO)。ところでカンパじゃないほうのコンポはもしかして…

VirtuGO

さてさて、そんな3DCGを使ったサービスに弱点があるとすれば、ただひとつ。それは「映像がCGである」という点です。それ言っちゃったら身も蓋もないというのはさておき、どれだけ作り込もうとも3DCGの情報量やリアリティは、実写映像にまだまだまだまだまだまだまだまだ(以下3億文字削除)遠く及びません。

「現地に行って走った感」で実写映像を超えるには、果てしない時間が必要に思えます。実写映像からそのまま完全モデリング!とかできるようにならない限り、3DCGでのバーチャルサイクリングは「仮想現実」ではなく「ゲーム」という範疇にとどまり続けるでしょう。

いや、別にそれでも全然いいんです。それはつまり、そのぶんだけ「進化の余地がキッチリバッチリたっぷりある」ということにほかなりません。

今後が楽しみすぎるのは、3DCGを使ったサービスのほうだと断言しちゃっていいでしょう。早いところ「南鎌倉高校女子自転車部」に出てきた、忍野リリさんの会社開発(OTOTO電機開発じゃなかったのか…)のバーチャルトレーニングシステムぐらいレベルの高い体感型サービスが実用化されて欲しいものです。

……ただ、やっぱりリアルにすればするほど、マシンパワーが必要になってしまうのは確実でしょう。「わたくしの提供するサービスは、低スペックノートだとマトモに動作はしませんぞ!」というサービスだらけになってしまうのだけは、どうか勘弁して欲しいところです。

まとめ

実写映像を使ったサービスが、3DCGを使うサービスをすべての面で上回ることはできそうにありません。しかしながら、3DCGを使ったサービスが実写映像を使うサービスをすべての面で上回ることもできそうにありません。どちらにも、簡単にはクリアできない一長一短がある。そうなると、今のところは「気分で使い分ける」しか、選択肢がないように思えます。

ZWIFT以外のサービス、使ってみてどうなの?

3DCGを使ったサービス

「Bkool Indoor simulator]と「Onelap」は、有償サービス。そして「Road Grand Tours」と「VirtuGO」は、無料のβ版になります。「Bkool Indoor simulator]「Onelap」は有償だけあって、コースの多彩さやサービスの内容の充実っぷりは「さすがにお金を取るだけある」と感じさせるものになっています。それに対してβ版の「Road Grand Tours」「VirtuGO」は、さすがに荒削りな部分がまだ多く残っている印象。そりゃ有償サービスと比べてしまうと、仕方ないことではありますが。
各サービスとも「ZWIFTにはない良い部分」を、しっかり持っています。とはいえ映像表現をはじめ、各種の機能や日本語対応などサービスの全体レベルがZWIFT並みの完成度に到達するには、まだまだ時間がかかるだろういうのが現状の正直なところです。これからガシガシと開発を進めて、強力な対抗馬になってくれることを期待したいですね。

Bkool Indoor simulator

対応プラットフォーム PC(Win/Mac) iPadAndroid

Bkool Indoor simulator

3DCGの画面が用意されているコースは「CGと実写がシームレスに切り替え可能」という、ほかにない特徴を持ったバーチャルサイクリングサービス。用意されているコース数は非常に多く、ざっと数えただけで100以上(!)あります。Stravaとの自動連携やメニューの日本語化、さらに利用可能なプラットフォームの多彩さなど、日本国内で利用できるバーチャルサイクリングサービスとして必要な機能がキッチリ用意されています。

また、アバターの動きがとてもマニアック。上ハン/下ハンの持ち替えのほか、ZWIFTにも見られないダンシング時に蛇行するなどの表現があります。このモーション作った人は、自転車乗りなのでは?と感じさせる芸の細かさがありました。

なんですが、3DCGで用意されたコースについて「実在の場所を走っているのに、それをほぼ再現していない」という点は、かなりの残念ポイント。たとえばセントラルパークが全然セントラルパークじゃないどこかのディストピアだったり、アルプデュエズが周囲に何もない山道(ただし斜度や距離はアルプデュエズ)だったりします。まあ「100カ所以上をいちいち再現できねーよ!」ということなのでしょうけれど、これ…自分の知ってる場所と違う…という違和感はハンパないです。

▼実写のほうのセントラルパーク

Bkool Indoor simulator

▼3DCGのほうのセントラルパーク。ここ、どこのディストピアですか?

Bkool Indoor simulator

▼プライベートなルートも作成できるようです。左下のアルプ×8で200km超えって…?

Bkool Indoor simulator

Onelap

対応プラットフォーム PC(Win)

Onelap

バーチャルサイクリングサービスとしての作り込みやサービス内容は、ZWIFTに勝るとも劣らないと断言できてしまう充実度。デザインのトーン&マナーに微妙な部分があったりはするものの、総じて非常に高レベルなサービスが提供されている印象です。ユーザ数も多く、ZWIFTの中華版として堂々たる地位を確立しているのではないでしょうか。これが15元/月(執筆時点で約250円)。年間契約だと150元/年です。単純比較はできませんが、ZWIFTの1/6という価格設定には「さすが中華!」と驚かされます。

少し残念なのは、本サービスが「中華ZWIFT」以上でも以下でもない、と感じさせられてしまうところ。オリエンタル感を感じさせまくるルートはあったりはしますが、「Onelapならでは」という独自性が非常に見つけにくい。これだけのサービスを開発できるのであれば、もっと深いところで差別化も可能なのでは。

また、日本語化対応は一切されておらず「日本人が日本国内で利用するにはあらゆる面でハードルが高い」と言わざるを得ません。バーチャルサイクリングサービスを利用しようとしたときに、比較検討の俎上にすら上がってこないのが現状です。

ただし、冒頭でも書いたように、サービスの完成度は非常に高レベル。Onelapが本気で日本市場に向き合おうとしたら、ZWIFTが今の地位を保ち続けられるかどうか…と思わせるだけのポテンシャルを秘めているのは間違いないでしょう。

▼地下鉄を通って駆け上がる。ZWIFTユーザにものすごく既視感を感じる演出

Onelap

▼謎のオリエンタル建築。妙にオリエンタルなSEまで流れる

Onelap

▼カメラアングルも普通に変えられます

Onelap

Road Grand Tours

対応プラットフォーム PC(Win/Mac)

Road Grand Tours
いかにもバーチャル!という感じのフォントを使った、情報量の豊富なインターフェイスが印象的。ヨーロッパの実在する場所をモデルにした街中、田舎道、峠、サーキットなどの計6コースが用意されていて、すべてのコースをいつでも自由に選べます。トレーニング系のメニューは、まだ実装されていないようです。

▼メニュー画面で設定オプションを開いたところ。

Road Grand Tours

映像クオリティを高めに設定すると、陰影の処理が追加されるなどリッチな感じが増していきます。なんですが、やはりマシンへの負荷は相当大きいようで映像クオリティの高さに比例して動きがカクカクに…。

ウチのへっぽこノートだと、最高品質設定にすると2FPS(!)とかになってしまいました。愕然。グラフィック性能の凄いマシンで、最高クオリティ設定にした画面を使って走ってみたら気持ち良さそうなんですが…。あと、リアルタイムなFPSが画面内に表示されるので、動き優先か見栄え優先かで設定の試行錯誤は減らせます。

コース内に選択できる分岐はなく、ひたすら1本道。また自分視点で走っていると、コーナーで画面(視界)が斜めになる特徴的な演出が加わります。とはいえトレーナーにまたがっている以上、実際のポジションは垂直正立なので映像と身体感覚の違和感はありあり。KICKR CLIMBならぬ、KICKR BANKの登場が待たれます。

▼コーナーで斜めになる視界

Road Grand Tours

▼世界の奥行きを感じさせる、走行画面のデザイン。Road Grand Toursでライドしたあとだと、ZWIFTの画面には箱庭の中のちっさい世界を走っているような感覚を受けてしまいます。

Road Grand Tours

▼山の彼方、空の向こうにも、別の道が続くことを予感させる広々感のある表現がすばらしい。

Road Grand Tours

VirtuGO

対応プラットフォーム PC(Win/Mac)

VirtuGO

昭和生まれの男子は、某科学忍者隊の変身ポーズをキメてしまいそうな名称のサービス。バーチャルライドだけでなく詳細な走行履歴の閲覧やトレーニングメニュー、アバターのカスタマイズまで。豊富なサービスを一元化して提供してくれる、非常に使いやすいアプリケーションに仕上がっている印象を受けました。

▼メニュー画面。横軸にカテゴリー、縦軸に詳細項目を整理。使いやすい配置

VirtuGO

走れるコースは、執筆時点だとわずか3コースしかありません。まだベータなので、そこは今後の拡充に期待したいところです。走行画面のグラフィックはCG的なZWIFTと実写的なRoad Grand Toursの、ちょうど中間ぐらいの方向性でデザインされている感じ。走っていると鳥の群れが飛んでいたり、気球が浮いていたりというZWIFT的な演出も多く見られます。

走行情報は画面上部にメリハリをつけて整理され、整然と配置されています。最初は「スピードの表示ちっさ!」とか思いましたが、トレーナーなんだからまずは出力とケイデンス、という割り切りは良いですね。非常にスッキリして、走行状態が把握しやすいです。

▼走行画面。PrintScreenでキャプチャーが撮れないので、画面をiPhoneで撮影

VirtuGO

そしてこちらも、画質設定を高品位にすればするほど動きがカクカクになります。スムーズに動くようアプリまかせで自動調整もしてもらえますが、ウチのへっぽこノートだと特にアバターがかなりチープになりました。いかん、ゲーミングPCが欲しくなってきた…。

▼設定をアプリまかせで自動調整したら、影の表現が省略されまくりんぐ

VirtuGO

あと面白いのはフレーム、ホイールはおろかサドルにペダル、さらにはコンポまでカスタマイズできる、無駄なカスタマイズ性の高さ。これでパーツガチャが実装されたら、実際のパーツ購入できちゃうぐらい課金する廃人さんが大勢出てきてしまいそうです。

実写映像を使ったサービス

実写映像を使ったサービスは、原理的にはどれも一緒。なのでバーチャルライド時の感覚に、あまり大きな差を感じません。走行画面のインターフェイスや、トレーニング系のメニューの充実具合などで差異はありますが、目下の課題はやはり「どれだけ高品位な実写映像を選びやすく用意できるか」であるように思います。

Rouvy

対応プラットフォーム PC(Win) iPad/iPhoneAndroid

Rouvy

実写映像に3DCGのアバターやオブジェクトを乗せた、「ARモード」を実装しているのが特徴的なバーチャルサイクリングサービス。とはいえ、その肝心のARモードでの実写映像のクオリティが低すぎます。ダウンロードした映像データを見てみると、右側に余計なエリアがあって、無駄にデータ容量を使っています。さらに映像データ自体が低解像度、4KどころかFull HDですら、キレイに写せるだけのスペックがありません。

▼謎の余計エリアがあるARモード用の映像データ

Rouvy

また、3DCGのオブジェクトも「自然な感じで組み込めている」なんて、お世辞にだって言えない感じです。さらに以前のレビューにも書いた「標識が地面からすっぽーんと飛び出して生えてくる謎演出」には、頭を抱えます。

▼実写映像にCGのアバターがオーバーレイした、ARモードの走行画面

Rouvy

実写映像だけのモード用にはいい感じの映像もあるのに、なぜ低品位な方を使うのか…。そして3DCGオブジェクトも光源の位置を合わせる機能をつけるとか、クオリティを上げる方向は色々あったろうに、なぜ謎演出の方に突っ走っていったのか…。RouvyのARモードでライドしていると、気持ちよさより「????」という感情の方が先に立ってきてしまいます。

基本機能的には、競合同等。そして唯一無二のアドバンテージがARモード…となるはずが、ちっともアドバンテージになってなくない、コレ? という、たいへん残念な印象を受けてしまいました。

FULGAZ

対応プラットフォーム iPad/iPhoneAppleTV

FULGAZ

iPad、iPhone、Apple TVにしか対応していない、林檎信者向けサービス。特筆すべきは、実写映像を使ったバーチャルサイクリングサービスとして、4K映像を使ったApple TV版を他に先駆けて提供している点でしょう。

あとは

  1. 残念品質の映像を駆逐する 
  2. ZWIFTコンパニオンアプリのようなアプリを用意して、Apple TV向けにBTデバイスの複数接続をサポートする 

という対応をしてくれれば、コストパフォーマンスに大変優れたプラットフォームであるApple TVにおいて、ZWIFTに並ぶバーチャルサイクリングアプリの定番的存在になってくれるポテンシャルは十分以上にあると思います。

▼走行画面。必要な情報がスッキリまとまっています

FULGAZ

Kinomap

対応プラットフォーム iPad/iPhoneAndroid

Kinomap

喋るオートバイや、少年にしか見えない短髪の少女は登場しません。メニュー周りが日本語対応しているので、英語赤点侍の拙者でもかなり快適にサービスを利用することが可能。

▼日本語対応されたメニュー周り。ありがてぇ…

Kinomap

動画のラインナップを見ていると他の実写映像を使ったサービスよりも、国内の動画が多くアップされている印象です。さらに「宇都宮ブリッツェンの廣瀬GMを起用したコンテンツ」など、明らかに日本人向けであろう日本語コンテンツがラインナップされています。メニュー周りの日本語対応と合わせて、海外にしか視線が向いていないサービスとは一線を画しているサービスだと言えるのではないでしょうか。

▼明らかに日本人向けな、日本語コンテンツがラインナップ

Kinomap

ちなみに廣瀬GM出演のコンテンツは、実走映像とGMの表情の映像を組み合わせたものですが、スタートからゴールまでGMの軽妙なトークが続いて非常に楽しいです。GM、ずっと喋りっぱなしで、走行映像よりむしろこっちがコンテンツの主役なのでは?というぐらい。なんだかGMが出演されている、とちテレのロードバイク番組「Ride ON!」の収録ライドに同行させてもらっているかのようでした。

▼GM喋りっぱなし

Kinomap

これが「水滴がレンズに付きまくり」「ジャギー出まくり」という、残念品質の映像じゃなかったらどれだけ良かったか…。

走行画面は各種の情報をゾーニングして分割した画面と、走行映像を全画面表示する画面を選択可能です。没入感があるのは全画面の方ですが、若干シンプルすぎる感じはあるかも。

▼各種情報を分割表示した走行画面

Kinomap

▼映像全画面表示

Kinomap

Velo Reality

対応プラットフォーム PC(Win)

キレイな走行映像さえ選び出せれば、あとは他の実写映像を使ったサービス同様にバーチャルライドできます。トレーナーや周辺機器の動作も、別に普通です。

なんですが、Velo Realityは他の同様なサービスに比べて、あちこちが古クサ…もとい、クラシカルな印象を強く受けます。たとえば料金体系。パッと見だと、走行映像の買い取りをメインにした形のように見えます。月額サブスクリプションのプランもあるのですが見つけにくく、はじめのうちは設定がないのかと思ったほどです。

また、走行画面の情報表示パーツも、配色やフォントがインターネット黎明期を彷彿とさせるデザインになっています。確かに実走しているときのことを考えると、走行情報は視界の上部になんか出てきません。サイコンの位置、つまり中央下部に集中されるので、インターフェイスデザインの考え方としては非常に正しいとは思うのですが、さすがにこのフォントとこの配色とこのデザインはどうかと…。もうそれだけで、このサービスを継続して使い続けようという意欲は、電脳世界の彼方に消え去りますね…。

▼ここは…いつの時代のインターネットですか…?

Velo Reality

ErgVideo

対応プラットフォーム PC(Win)

ErgVideo

アカウント登録とアプリケーションのインストール、各デバイスの接続設定までは済ませたのですが、走行画面がどうデザインされているかの情報が一切ありません。走行映像の品質は悪くなさそうなのですが、撮影に使われているのは明らかにコンシューマ機。他をぶっちぎりで引き離す高品位、というわけでは全然なさそうです。

これでインターフェイスがダメダメだったら、1回走ってハイおしまい。となるのは明白なので、課金ボタンのクリックを思いっきり躊躇して、躊躇して、躊躇して、ようやく課金…しようとポチったらエラーが出ました。もう一度カード情報を入力し直して、ふたたび決済ボタンをクリックしてもエラー。もしかして、番号を入力したカードが、買い物しすぎで決済不可になってる?

カード情報を別のカードの番号に書き換えて、ようやく決済…できない。何度やってもエラー出されて拒否されまくり。もしかして、日本向けにはサービス提供してくれてないんでしょうか。オンラインサービスなのに?

というわけで、ErgVideoについては課金する覚悟で挑んだのに、お試しすらできないという結果でした。金銭的には何も失ってないんですが、なんかものすごく「負けた!…完全に負けた!」という謎の敗北感を背負わされて終了です。残念!!!

まとめ

バーチャルサイクリングサービスは、ZWIFTの一強体制がまだまだ続くでしょう。3DCGを使ったサービスでは「Onelap」が機能やCGの作り込みでかなりイイ線いってる印象ですが、日本で快適に利用できるのはまだ先になるはず。というか、おそらくOnelapさんは日本人の利用を想定してないし、日本でのサービス予定もないですよね?

どうしても課金はしたくない!ということであれば今の段階では「Road Grand Tours」のほうがコース数が多く、アプリケーションの動作も(自分の経験上では)安定しています。

実写映像を使ったサービスは、個人的にはApple TVを所有しているのでFULGAZ一択ではあるのですが、対応機器の多い「Rouvy」(ただしARモードは微妙)や日本語対応が少しだけ進んでいる「Kinomap」(でも決済はなぜかユーロ建てのみ)辺りには、他の実写映像を使ったサービスよりもアドバンテージがあると考えます。

参考リンク

公式サイト

Bkool Indoor simulator
Onelap
Road Grand Tours
VirtuGO
Rouvy
FULGAZ
Kinomap(ミノウラのサイト内の公式っぽい日本語での紹介ページ)
Velo Reality
ErgVideo

CBNレビュー

Bkool Indoor simulatorレビュー
Onelapレビュー
Road Grand Toursレビュー
Rouvyレビュー
FULGAZレビュー

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こんにちは、自転車レビューサイトCBNのウェブマスターです。 スマートトレーナーに興味がある。話題のZwiftでインドア・サイクリングをやってみたい。でも値段が高いし、買ってみて本当に良いことがあるのだろうか、と悩みますよね。 ...
著者
などかず

美味しくご飯を食べることをモチベーションにペダルを回し、機材の性能に頼り切って「頑張らないことを頑張る」物欲系へっぽこ自転車乗り。リアルで自転車に乗れない週末にはZWIFTで合計100km以上のバーチャルライドを欠かさないものの、脚力や走行スキルについての言及は意図的に避けている模様。愛車はLOOK675、ブロンプトンCHPT3 V2、タイレルFX(これだけとは言ってない)。

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