雑誌サイクルスポーツの過去5年の大特集を振り返る

日本でいちばん売れている自転車雑誌「サイスポ」ことサイクルスポーツ。しかし以前Twitterで「自転車雑誌はいつも同じような特集ばかりで、つまらない」というご意見を目にしました。

確かに、思い返してみると同じテーマが周期的にループしていたような気はします。

そこでサイスポの過去5年間・60冊の大特集(第1特集)のヘッドラインを採集し、観察してみることにしました。ただ、目的は「また同じテーマだ!」と揚げ足を取ることではなく、トレンドを理解することです。

季節によって同じようなテーマが繰り返されることは、自然なことではないかと思います。そのテーマの下で、いつも新しい考察や発見に遭遇できればそれでいいのではないでしょうか。

月刊サイクルスポーツ

月刊サイクルスポーツ

日本でいちばん売れているサイクル誌の大特集を追っていくことで、ここ5年間の日本のスポーツサイクリング界で何が話題になっていたのか、人々はどんなものに興味を持っていたのか、がぼんやりわかるのではないでしょうか。逆に「大特集となっていないもの」を考えてみるのもおもしろいと思います。

2019年

まず今年2019年の第1特集を観察していきましょう。下に一覧表にしましたが、それぞれをカテゴリーに分けています(スマホの方はテーブルを横スクロールしてご覧下さい)。

カテゴリーは基本的に「サイクリング・機材情報・Tips・トレーニング・メンテナンス」などで分けていますが、「ディスクロード・エアロロード・ロングライド・ヒルクライム」は大きいサブカテゴリーと言えるので別途付記してあります。

大特集 カテゴリー
2019年12月号 秋のニッポンおいしいロングライド サイクリング
ロングライド
2019年11月号 ディスクロードの正しい買い方 機材情報
ディスクロード
2019年10月号 これであなたも上級者の仲間入り
力まず走ればラクで速い!
Tips
2019年9月号 夏ライド簡単〝涼〟ワザ Tips
2019年8月号 本能を呼び覚ます至福の地
峠、エモーショナル。
サイクリング
ヒルクライム
2019年7月号 知らなきゃ損する令和サイクリストの常識
やってはいけない!? 50のコト
Tips
2019年6月号 新世代ツーリングを完全ガイド
自転車で、旅に出よう。
サイクリング
2019年5月号 ジムトレいらずで楽しく速くなる!
走ってつける本当の〝自転車筋〟
トレーニング
2019年4月号 ロードバイクの軽量化を問い直す
軽さは正義。
機材情報
2019年3月号 ロードバイク究極の選択2019 機材情報
2019年2月号 リム&ディスクの注目32モデルを徹底試乗!
ロードバイクホイール考
機材情報
ディスクロード
2019年1月号 寒さを楽しさに変えるアイデア教えます!
サイクリストの冬支度
Tips

この2019年の結果は次に紹介する2018年の傾向と比べるとおもしろいのですが、トレーニング系特集が減っている気がします。特に「ガチのレース系トレーニング」記事が1つも入っていないのは興味深いです。

勿論、第2特集・第3特集などでトレーニング系を含む様々なテーマが扱われていますが、雑誌の表紙で大きい文字で紹介される第1特集(大特集)は「読者に手に取ってもらう」ために重要なものです。

ここから考えると、最近は「競技系サイクリスト以外にも訴求したい(読んでもらいたい)」という編集部の方針が想像できるような気がするのですが、どうでしょうか。

別の言い方をすると「こういうテーマのほうが読まれるはずだ」という仮説があるわけで、「世の中では競技系以外のサイクリストが増えているだろうから、その人達にも楽しまれるコンテンツを作ろう」という発想があるのではないでしょうか。

機材系の話題としてはディスクロードに関する特集が2回登場しています。これも後で紹介しますが、サイスポの大特集で「ディスクロード」が扱われるのは2017年以降となっています。

また、過去5年間を通じて大特集に「MTB」が扱われたことがないのも大きい注目点だと思います。

2018年

次に2018年の大特集を見ていきます。

カテゴリーをぱっと見て気付くのが、「エアロロード」が3回登場していることです。確かに2017〜2018年はエアロロードの話題はネットでも多かった気がします。私がはじめてのエアロロードを買ったのも確かこの頃でした。

大特集 カテゴリー
2018年12月号 徹底分析! 最新空力事情から実験・試乗まで
エアロロード大研究2019
エアロロード
2018年11月号 世界が注目の〝福田理論〟で解明
ペダリングのカギは足首にあり!
トレーニング
2018年10月号 ここまで走れたら何も怖くない! 200㎞超えの技術 サイクリング
ロングライド
2018年9月号 エアロ&ディスクで最新ロードバイクは次のステージへ
超速! 2019ニューモデル徹底解剖
エアロロード
ディスクロード
2018年8月号 サドル、ハンドル、ペダルで見直せ!
前乗り時代のポジション改善術
Tips
2018年7月号 うまく使ってラクに走る
磨け! 加速力
Tips
トレーニング
2018年6月号 やるべきことは超シンプル
今年こそクライマーになる!
トレーニング
ヒルクライム
2018年5月号 世界最先端
ダンシングの新事実
Tips
トレーニング
2018年4月号 ペダリング効率と体幹がカギ!
踏まずに時速30kmキープ!
Tips
トレーニング
2018年3月号 今年こそ結果を出したいフルタイムワーカー必見!
パワートレーニングで折れない心を手に入れる
トレーニング
2018年2月号 ディスクロードで自分史上最速になる! ディスクロード
2018年1月号 沖縄! 屋久島! 室戸岬! 台湾! 親子旅!
実録!予算5万円で行く 大満足 じてんしゃ旅
サイクリング

そして最大の注目点が「トレーニング」に関する大特集が6回もあること。この年の半分はトレーニング系特集です。2018年は過去5年の中では最もトレーニング大特集が多かったようです。

これは2019年とは対照的です。もしサイスポの特集が世の中のトレンド、日本のサイクリストのニーズや嗜好とある程度の一致を見せているとしたら、これも面白い傾向ですね。

競技系サイクリストの方は2018年のバックナンバーをまとめ読みしてみてはどうでしょうか。どれもKindle化されているので、amazonで買えます。Kindle Unlimited会員なら無料で読めます。

Kindle Unlimitedは現在30日無料キャンペーンを行っているので、過去に登録されていない方は30日間無料または3ヶ月199円で読み放題です。過去にKindle Unlimitedを利用したことのある方は3ヶ月299円で利用できます。上の特集を読みたい方はこの機会にどうぞ。

おトク情報 Kindle Unlimited30日無料・3ヶ月199円・再登録3ヶ月299円キャンペーンはこちら

2017年

2017年の大特集を見ていきましょう。先にも書きましたが、「ディスクロード」が取り上げられたのはこの年がはじめて。

あとはTips系(サイクリングのコツ全般)が多めです。Tips系はガチのトレーニング系の内容とミックスしたようなものもあって、工夫が感じられておもしろいと思いました。非競技系サイクリストでも効率的に走りたいという欲求があるのは同じです。

大特集 カテゴリー
2017年12月号 自転車は“手”が命 “握り”で走りが変わる! Tips
2017年11月号 そのニガテ、実はただのカンチガイ!?
「上り」も「平地」も強くなる
Tips
2017年10月号 あなたはまだまだ強くなれる!
“40歳からでもOK”のインターバルトレーニング
トレーニング
2017年9月号 2018新モデル超速詳報
「ディスク」「エアロ」「エンデュランス」が
さらなる進化を遂げた2018年モデルが早くも登場!
エアロロード
ディスクロード
2017年8月号 コース作りや楽しみ方がイチから分かる!
峠で遊ぶ。
サイクリング
ヒルクライム
2017年7月号 極限・激走・限界突破!
ヤバいロングライド
ロングライド
2017年6月号 落車・ケガ・パンク・事故0(ゼロ)
トラブル知らずの“最速”走行術
Tips
2017年5月号 読めば絶対失敗しない!
あこがれのロードバイク生活スタートガイド
Tips
2017年4月号 2017年に走りたい「一周ライド」17選 サイクリング
2017年3月号 ショップ店長イチ押し!
BESTパーツ&アイテム いま、これが買い!!
機材情報
2017年2月号 これが本当の自転車の進ませ方
ペダリング最終回答
トレーニング
2017年1月号 今さら聞けない
ロードバイクトレーニング基礎のキソ
トレーニング

10月号の「“40歳からでもOK”のインターバルトレーニング」が読者層の高齢化を反映しているとしたら、これも興味深いものがあります(40歳は高齢じゃねーだろ、という話もありますが、若年層がメインターゲットとして想定されていないとは言えるわけで、注目すべき事象です)。

2016年

2016年の大特集一覧です。

この年の注目点は「メンテナンス」が珍しく大特集になっているところ。雑誌でメンテナンスについて大きく取り上げてもあまり受けは良くないのかもしれません。ただ、不思議なことにネットの世界だとメンテナンス関連の情報・記事は需要が多かったりします。

大特集 カテゴリー
2016年12月号 泊まりがけで走り尽くす!
オレたちの晩秋ライド
サイクリング
2016年11月号 絶景・温泉・食・出会い 100㎞で全部楽しむ!
寄り道ロングライド
サイクリング
ロングライド
2016年10月号 誰でもできてすぐに効く!
速さを生み出す 魔法の呼吸術
トレーニング
2016年9月号 遊びもトレーニングも2時間走れば十分!
短時間大満足ライド
トレーニング
2016年8月号 トレーニングなんていらない!?
1カ月で磨くヒルクライム力!
トレーニング
ヒルクライム
2016年7月号 ラクだから最後まで力を残せる
自分だけの“ポジション黄金比”を探せ!
Tips
2016年6月号 キーワードは「独走力」
自分史上最速になる!
Tips
2016年5月号 みんなもう楽しんでいる!
今年こそ始める ロードバイクライフ
Tips
2016年4月号 よみがえる性能と美しさ
疲れた愛車を新車に戻す!
メンテナンス
2016年3月号 みんな知りたい!
自転車最旬トピック ヒト・モノ・コト
Tips
2016年2月号 冬こそ楽しく実践!
『燃焼』ライド
トレーニング
2016年1月号 プロに学ぶ力を速さに換える術 トレーニング

そして「ロングライド」が登場するのは過去5年ではこの2016年以降です。

2016年は「ラクに楽しく自転車に乗ろう」という大きい傾向が見られるように思います。ガチトレーニング系は「プロに学ぶ力を速さに換える術」のみ。

2015年

最後に2015年の特集傾向を見ていきましょう。

最初の注目点は10月号の「C・フルームV2! ツール・ド・フランスのすべて」。過去5年を通じてサイクルロードレースが大特集に登場するのはこの1回だけです(勿論小特集では頻繁に取り上げられています)。

あとヒルクライムが2回登場しています。この頃はエアロロードやディスクロードの話題はほんと少なかったですね。4年前のことです。この頃は新車を買うのにリムにするかディスクにするかという悩みを持つ人はまずいませんでしたよね。

大特集 カテゴリー
2015年12月号 もう“曲がれない”とは言わせない!
コーナリング学
Tips
2015年11月号 遊び方のノウハウ満載!
峠道を愉しむ
Tips
サイクリング
ヒルクライム
2015年10月号 C・フルームV2!
ツール・ド・フランスのすべて
ロードレース
2015年9月号 スゴいニューモデル全掲載!
2016最新鋭ロードバイク出撃!
機材情報
2015年8月号 とっておきを走ろう!
NIPPON夏ライド
サイクリング
2015年7月号 愛車をもっと好きになる!
パーツ交換の極意
メンテナンス
2015年6月号 とにかく上りに強くなる
目指せ頂点(テッペン)!!
トレーニング
ヒルクライム
2015年5月号 プロショップは怖くない!
新説 ロードバイク事始め
エディトリアル
2015年4月号 必読!バイクとカラダのメンテナンス Tips
メンテナンス
2015年3月号 2015最新・人気ロードホイール対決part1 機材情報
2015年2月号 サイクリングライフに欠かせない
10年モノの逸品に出合う
機材情報
2015年1月号 注目29社からひもとく
ブランドの「個性」とは何か
エディトリアル

もう1つの注目特集は1月号の「注目29社からひもとくブランドの『個性』とは何か」と5月号の「プロショップは怖くない!新説 ロードバイク事始め」。これは機材情報というよりも、分類が難しい「エディトリアル」(編集部による論考)のようなもので、過去5年間では非常に珍しいように思われます。

2019年7月号の「知らなきゃ損する令和サイクリストの常識やってはいけない!? 50のコト」もエディトリアル的な特集と言えると思いますが、こういう独自の切り口での提案・提言的なものは個人的にもっと読みたいなぁと思います(でも一般受けはしないのかもしれないw)。

5年間を振り返ってみて

過去5年の大特集ヘッドラインを眺めてみて、皆さんはどう思われたでしょうか。

個人的にはディスクロードが大きい話題になってきたのは2017年頃だったのか、とか、2018年はエアロロードで盛り上がっていたな、とか、2019年はガチなレース派向けのトレーニング記事が何故か減った! というような発見がありました。2018年のトレーニング特集の多さも不思議です。

季節性としては2017年を除いて11月〜1月にかけてツーリング系の特集が毎年組まれています。そして夏(6〜8月)には5年間を通じて必ずヒルクライムや峠サイクリングの特集が出ていますね。

あとはMTBが大特集になったことが1度もないのは驚きでした。シクロクロスやクロスバイクが大特集になったことも一度もありません。

来年2020年は、e-BIKEが第1特集に入ったりするのでしょうか。

“No paint job makes everyone happy.”

以前紹介したSurlyのブログ記事に、こんな面白い言葉が書かれていました。

No paint job makes everyone happy.

どんなペイントもすべての人を幸せにすることはできない。

雑誌もすべての人を満足させることはできないでしょう。長年の愛読者の期待に応えなくてはならないですが、そこだけに注力していると勢いは絶対に落ちていきます。常に何か新しいことに挑戦しないといけないでしょうし、可能な限り多くのオーディエンスにリーチする必要があるわけで、そうなると「万人受け」する透明な雑誌になってきます。

その「万人受け」方向に突き進みすぎるとそれはそれで飽きられてくるので、時々は意外性のあるテーマの特集が組まれると「おおっ」と思いますよね。

でも、それは第2特集・第3特集の役割なのかもしれません。第1特集・大特集は万人受けするために必要なことをやり、第2・第3で攻めた感じの特集をやる、という感じでしょうか。実際最近のサイスポはそういう感じになってきている印象を受けます。

最後にあらためて強調しておきたいのは、この記事で見てきたのはあくまで「大特集の傾向」。それ以外におもしろい連載や特集が毎号たくさん入っています。

例えば今年はじまった「サイスポ酒場」などは編集長や編集者の方々のおもしろトーク・辛口トークがあって個人的には楽しく読んでいます。

ウェブでなかなか読めないクオリティの検証系記事や石田ゆうすけ氏の「僕の細道」も外せません。

果たして来年はどんな大特集が組まれるのか。「e-BIKE」以外にも「グラベル」が入ってきたりするのかもしれませんね。

CYCLE SPORTS (サイクルスポーツ) 2019年12月号
CYCLE SPORTS編集部
八重洲出版 (2019-10-19)
この記事を書いた人