先日「スポーツサイクリングが女性フレンドリーになりきれない理由」という記事を書いたのですが、思いのほか多くのコメントをいただきました。
スポーツサイクリングが女性フレンドリーになりきれない理由 https://t.co/XJ7J33QBEv @cbnanashiさんから
— CBN (@cbnanashi) October 16, 2019
26件ほどのコメントなので統計的に何が言えるというわけではないのですが、おもしろい意見がいろいろあって、かつ昔から繰り返し言われている内容もあったのであらためて紹介してみます。
コメントの項目別まとめ
いただいたコメントが言及している内容を項目別にまとめたものが下の表です。
女性がサイクリングにハマりきれない理由 | 言及数 |
---|---|
機材スポーツだから | 6 |
男性に差別されるから・良いクラブやサークルがないから | 5 |
日焼けしたくないから | 4 |
小さいサイズのフレームがないから | 4 |
トイレで困るから | 2 |
人目が気になるから | 2 |
脚が太くなるというイメージがあるから | 1 |
良い用品が少ないから | 1 |
生理があるから | 1 |
以下ではそれぞれの項目について考察していきます。
機材スポーツだから
女性がスポーツサイクリングにハマりきれないとしたら、その理由は何か。それは自転車が「機材スポーツである」ことに原因がある、というご意見が目立ちました。
しかし「機材スポーツ」であるとなぜダメなのでしょうか。そこには概ね3つの理由があるようです。
- 機材がそもそも高価だから
- メンテナンスが難しいから
- 輪行などで機材を運搬するのが大変だから
1については「女性だから高価な機材を買えない」ということにはならないと思うのですが、無尽蔵にサイクルパーツを買いまくる男性サイクリストに比べて女性のほうが経済感覚が優れているのは間違いないと思うので(これも偏見か)、自転車趣味はお金がかかるという意味で自動的に抵抗感を持つ女性は多い、ということは言えるのかもしれません。
2の「メンテナンス」についてのご意見も目立ちました。今回、男性以外に女性の方からもコメントいくつかいただいたのですが、「メンテナンスが自分でできないことが理由だ」というコメントもありました。
機材スポーツの中でも自転車はとりわけメンテナンスが難しいものであるのは間違いないでしょう。メンテナンスを苦手とする男性も決して少なくないのですが、女性は男性よりも「メカが苦手である・またはメカに興味を持てない人が多い」とよく言われます(これまた偏見かもしれません)。
一般化はできないのですが、私の知人にもメンテナンスは苦手、できればやりたくない、という女性サイクリストがいます。
プロショップが「女性向けの自転車メンテナンス教室」みたいなものを定期的に開催すると問題の解決には繋がらないでしょうか。ただこの場合、講師も女性であったほうが良いような気がします。それでも、参加者はあまり集まらないかな… やってみないとわからないけど。
3の「運ぶのが大変」というのも確かに大きい理由だと思います。男性よりも背が低い女性が多いわけで、輪行で最も場所を取らない「縦置き輪行袋」の底が地面についてしまうこともあるでしょうし、男性でもイヤになる重さ、階段との戦いなどがあります。
ランニングや山歩きに比べてサイクリングは女性人口が少ないと思いますが、メンテナンスが難しくて機材は重く、運ぶのが大変だ、ということも一因かもしれません。
男性に差別されるから・良いクラブやサークルがないから
さらに「男性に差別されるから・良いクラブやサークルがないから」というコメントも目立ちました。
要約すると、サイクリングクラブ・チーム・サークルに入ってみても「ガチ系」であることが多く、グループライドでも自然と男性のペースになってしまい、つらい思いをすることがあるらしい。
そしてライド中に男性サイクリストから嫌がらせ的な言動(マウント取りやセクハラ発言)を受けたりすることもあるそうです。
なんでそんなことをするのか本当に理解できないですが、私自身、女性の知人とサイクリングロードを走っている時、こういうとんでもない人を目撃したことがあります。
後ろから私達を抜いていった高齢のロードレーサーが、知人女性の前に出て、急にスピードを落としたんですよ。そして次の瞬間サドルから腰を上げて、お尻を彼女の前に突き出したのです! 変態かよ。
さらに知人女性はサイクリングロードを走っていて、前を走っている男性があまりに遅すぎるので(15km/hくらいとか)やむなく抜いて前に出て走っていたところ(知人は結構脚力があります)、その後は大体抜き返されて、またその男性に前を塞がれる、という経験を何度もしたそうです。
女なんかに抜かれると腹が立つ、っていうことだよね?
とは知人の言葉。
さて、路上で見知らぬ人に嫌がらせを受けるのは避けられないかもしれませんが、少なくとも「女性主導の女性オンリーのサイクリングクラブ」がもっとあったりすると良いのでしょうか。
でも男性と一緒に走りたいという人もいるはずですよね。あとは女性オンリーのサークルを作るとしても女性サイクリストの総人口が少なくて難しいということもあるかもしれません。
日焼けしたくないから
女性にとってサイクリングのハードルが高いのは日焼けの問題があるから、というご意見も多く目にしました。
紫外線にさらされるという意味ではランも山歩きも同じなのですが、屋外での活動時間や陽の光を浴びる時間はサイクリングのほうが確かに長いかもしれません。
日焼け止めを塗ったり、フェイスカバーをかぶったり、UVカットのアームカバーやグローブを使ったりと「出かける前の儀式」が増えます。ロングヘアーの方であれば髪もある程度紫外線のダメージを受けるでしょう。
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アスリートとして自転車に命をかけている、という女性にとってはどうでもいうことかもしれませんが、「心身ともにリフレッシュしたい・楽しい時間をすごしたい」というライト層にとっては深刻な問題でしょう。
小さいサイズのフレームがないから
「小さいサイズのフレームがない」というコメントも多かったですね。女性専用ジオメトリーは特になくてもいい、女性向けのペイントもなくてもいい、しかし小さいサイズのフレームが欲しいのだ、というご意見がありました。
身体が小さいのなら24インチホイールのジュニアロードに乗ってはどうか、という意見もあるかもしれませんが、バイクやホイールの選択肢は極端に狭まります。
そこでビスポーク、オーダーメイドですよ! ということになるのですが、これも女性にとっては「なぜそこまでして…」と思われることがあるようです。
トイレで困るから
トイレで困る、という意見も多いです。
男性はあまり困らなかったりしますよね。たとえば大きいサイクリングロードを走っていると、簡易な公衆トイレはよく見かけます。
しかし男性は立って用を足すことができますが、女性はそうは行きません。座らないといけない。
すると誰が座ったかもわからない、それでいて汚れた座面に座る、というのはありえないわけです(男の私でもイヤです)。座面を拭くウェットティッシュなど置いていないので携帯する必要がありますが、すると荷物が増えます。
さらに男性の場合、超緊急事態には超法規的措置を取ることも、可能と言えば可能ですが、女性の場合はそうも行きません。
ただこれは山ガールにとっても同じ悩みの種かもしれません。
女性サイクリスト向けの「近所のトイレ検索アプリ」があったらいいんじゃないか、というご意見もありました。
人目が気になるから
今でこそレーパン・ジャージでロードバイクに乗っている女性は珍しくないと思いますが、これからはじめようという方にとって体型がわかるウェアに抵抗がある人はものすごく多いらしいです。あとヘルメットもカッコ悪い、かわいいものがない、という意見も。その結果「人目が気になるからどうも…」ということになるようです。
レーパンの上にはくスカートはもちろんあります。これがないと絶対無理、という人を結構知っています。
脚が太くなるというイメージがあるから
自転車=ケイリン、脚が太くなってしまう、というイメージを持っている女性が多いという意見もありました。
これは長らく自転車に乗っている方ならわかると思いますが、高強度で追い込んだ走りをしてその都度プロテインを飲む、くらいのことをしないとそう簡単に筋肥大はしませんし、脚が太くなって困る、ということはないでしょう。
毎週末マーク・カヴェンディッシュやマルセル・キッテルとスプリントごっこして遊ぶ、みたいなことをしていたら別かもしれませんが、そのくらいの筋トレ的なサイクリングをして糖質もプロテインもガッツリ摂らないと脚は太くなってくれません。
だから自転車=脚が太くなる、は完全に迷信でございましょう。
良い用品が少ないから
上で書いた「トイレ問題」からもわかるように、女性は装備品が増えがちです。これをうまく収納する防水ポーチなどがあればいいのでは、というご意見も。
そういうものはきっともうあるのだろうと思いますが、女性サイクリストにターゲットを絞った製品がもっとあると確かに面白いかもしれませんね。たとえばウェットティッシュやメイク落としや日焼け止めの小瓶などを効率的に収納できる女性専用ツールボトル、などはどうでしょう。もうあるのかな? 御存知の方、教えて下さい。
生理があるから
女性には生理があるから自転車趣味は大変なのだ、というご意見もいただきました。ランも水泳も登山も楽しむ女性はいるが、それと自転車の違うところは長時間サドルに座っていないといけないところ。これが苦痛なので、生理の時期に乗るのはつらい。その結果、タイミングによっては継続の妨げになる、というご意見だったように思います。
このご意見は初めて目にするものだったので新鮮でした。そして最近YouTubeで観たホリエモンの動画を思い出しました。「現代ニッポン女性社長の『リアル』就任数 依然として少ないまま」というテーマで話しているのですが(5分55秒頃から)、それはやはり生理と関係があるのではないか、という説です。
生理があるせいで自転車趣味は難しい、と言えるのかどうか、私にはわからないのですが、ひとつだけ明らかなことがあります。
それは「男性は女性のことをよく理解していない」ということです。
上のホリエモンの動画でも言われていますが、小学校の保健体育では、女性の生理現象について、周期的な不定愁訴について、男女一緒のクラスで授業を受けることは少ないのではないでしょうか。
最近はどうなんでしょう。私は小中学校の頃、女子と一緒に性教育の授業を受けた記憶がありません。ホリエモン同様、女性の生理についても授業で教わった記憶はまったくないんですよね。
つまり女性についてあまりにも無知なのです。
女性はなぜサイクリングにいまいちのめりこめないのか、というテーマで様々な原因を考えてきましたが、そもそもの根本原因として、女性をサイクリングに誘いたい、女性にもっとサイクリングを楽しんでもらいたい、という男性が女性のことを知らなすぎるということがあるのでしょう。