ロード乗りが電動キックボードに乗ってみた

2019年9月にカナダはモントリオールに旅行に行ったのですが、その際にパリ(乗り継ぎ)とモントリオールで電動キックボードに乗ってみました。実際の感触、ロード乗りとして思うところを記します。

電動キックボードとは?

英語ではe-scooterと呼ばれています。乗り捨て型シェアサイクルに次ぐ新たなモビリティとして、欧米やアジアの都市で広がりつつあります。日本でも、福岡で導入試験が始まるとの記事を見つけました。最近公道に近い環境での実証実験を行うとの発表があり、ここ数日その界隈での話題が盛り上がっているようです。

参考 電動キックボードなど3社が業界初の「サンドボックス制度」実証へ。「電動」規制緩和の模索続く

電動キックボードは登録から乗り出すまでが非常に簡単なのがメリットです。使用開始から終了までのステップは、

  1. 運営会社のアプリをスマートフォンにインストール
  2. メールアドレスの認証と支払い方法(クレジットカード、Google Payなど)の決定
  3. (2回目以降の使用はここから)アプリで付近のマシンを探して、またはマシンのQRコードを読んでマシンをアンロック
  4. 乗る!
  5. 指定の返却区域に駐車してロック、セッション終了

です。

参考 [名所名物] Lime bike
参考 セグウェイはもはや過去の遺物か 欧米で広まるシェアリング型電動スクーターの衝撃

実際に乗ってみた

初めて乗ったのはパリにて。預かり所にスーツケースを預け、お目当ての博物館に行くのに徒歩20分程度かかるのでどうしようと思っていたところ、このキックボードが目についたので、移動時間節約のために乗ってみました。

アプリをダウンロードし、登録が終わるまで5分もかからず。目の前のマシンをアンロックし、いざ走り出します。開始地点が裏路地だったのが幸いして、少し練習してから表通りに出ることができました。

右手親指にあたるアクセルレバーを押し込んで加速しますが、0km/h状態では効かず、地面を数回蹴って動いた状態で押し込むことで発進します。この加速がバイナリらしくかなりガツンと来るもので、押し込み量に対応してくれたらいいなと思いました。

ブレーキは左手のみ。なので、左手で出す手信号は使いたくても使えない状況でした。

走行箇所は自転車と同様の扱いで、自転車レーンがあるときはそこ、ないときは車道の右端です。細やかな速度調整ができないので、のんびり走るママチャリと抜きつ抜かれつになってしまって、周囲の車の状況を含めて気を遣う必要があり、多少神経がすり減りました。

電動キックボード Bird

電動キックボード・Bird。パリにて

乗り慣れると、路面の違いによる感触の変化もわかるようになってきました。アスファルトはもちろん快適に走れますが、タイヤの硬さ故か多少のボコボコでも振動が手にダイレクトに伝わります。ツール・ド・フランスでお目にかかる石畳は、はっきり言って辛かったです。

ちなみに平坦のアスファルトで加速レバーを押しっぱなしにすると最高20km/hまで出ました。これで坂を下るのはちょっと怖いなぁ。

タイヤは太いですが、ホイールが小さい分穴や段差に弱いです。そもそも段差は想定されていません。恐らくロードバイクと比較したときのミニベロも同じような感じなんだろうと思います。

重心が低いので前転することはないでしょうが、自転車と比較して左右へのブレの許容度を小さく感じるため、少々不安を感じました。ノーヘルメットだったので、車道で事故が起きたら、と思うとゾッとします。

パリでは約1kmの往復をし、行き帰りそれぞれ9分/3.25EUR(約400円)と5分/2.25EUR(約270円)。お高いですがまあまあ順当に感じます。

モントリオールでは街歩き中に気まぐれで乘ってみました。途中でちょっと教会を覗きつつ地下鉄4駅分=約2kmを20分で走ったのですが、8.15CAD(約670円)かかりました。地下鉄が3CADなので、おとなしくそちらに乗ったほうが正解でしたね。

シェアサイクルとのお値段の比較

気になるお値段を各市が運営するドック型シェアサイクルと比較してみましょう。執筆時点で1EURは約121円、1CADは約83円です。

  • 電動キックボード(パリ、Bird):乗車開始時に1EUR、その後0.25EUR/分。乗車1回あたり最低料金2.50EUR
  • シェアサイクル(パリ、Vélib’):5EURで24時間有効、乗車毎に最初30分無料、その後1EUR/30分
  • 電動キックボード(モントリオール、Bird):乗車開始時に1.15CAD、その後0.35CAD/分。乗車1回あたり最低料金2.50EUR
  • シェアサイクル(モントリオール、BIXI):5CADで24時間有効、乗車毎に最初30分無料、次の15分は1.75CAD、その後3CAD/15分

というわけで、電動キックボードが圧倒的に高いです。BIXIの時間区切りが短いのは、町の規模がパリよりも小さく、長時間借りる必要がないからかと思います。

パリはmobikeを始めとする私企業による乗り捨て型シェアサイクル(電動アシストあり・なし両方)も目立ちましたが、パリ、モントリオール共に市のドック型シェアサイクルは相当な数のドックがあったので、こちらの方が安上がりかなぁ、とも思いました。

乗ってみてわかったこと

メリット

単純に移動が楽&速くなりました。観光客視点からすると、利便性は非常に優れています。

それに際立つのは、装置が小型であることです。スリムなので、置き場にお行儀よく収まっていれば邪魔になりません。

乗り捨て型に共通するポイントですが、ドック型シェサイクル、ツアーガイド必須なセグウェイと比べて自由度が高いのもメリットです。

また、この電動キックボードは、トップチューブもペダルもないという点において、自転車を凌駕しています。

トップチューブがあると何が不便かというと、スカートで乗れないんですよ。またペダルがあるとヒールの靴で乗りにくく、さらに(当然ですが)動くと汗をかきます。さらに言えば、チェーンで服が汚れる可能性もあります。

パリではスーツを着たサラリーマンが電動キックボードで颯爽と走っているところを見かけましたが、バックパックなら汗一つかかずこれで簡単に移動できます。荷物置きがないので、残念ながら手提げタイプでは難しいでしょう。

ハイヒールでしゃなりしゃなりと歩きたいなら、公共交通機関かタクシーを使うのがベストだと思います。

デメリット

先述の通り、荷物置きがないので、ハンドバッグを持っている場合は走行が(無理とは言いませんが)難しくなるでしょう。

車輪が車体の両側にあり、体が進行方向に対して正面を向くセグウェイと比較すると、左右へのブレの許容度が低い電動キックボードは安定性に欠けるかもしれません。電動キックボードで転倒はよほどヘマをしないかぎりないでしょうが、路面が悪いと少々不安に感じました。

また、純粋に値段が高いです。モントリオールで失敗した通り、長距離を乗るならば公共交通機関一択ですね。

問題点

CBN blogの過去記事でも書かれているように、歩道走行、逆走、邪魔になる場所への乗り捨てが主な問題になりそうなのは容易に想像がつきました。

むかしセグウェイっていう乗り物がありましたよね。いや、今でもありますが、あれはいったい何だったんだろうな、と思わせるようなある乗り物が、いま...

パリでは「この移動方法ってすっごく楽ね!」と叫びながら歩道を爆走する英国人カップルがおり、善良な自転車乗りとしては心の中で右ストレートを決めた次第です。

特に駐車場所は、歩道のど真ん中などに停めてある例が少なくなく、使用者のモラルが問われるなぁ…とも思いました。

電動キックボード Bird

電動キックボード・Bird。パリにて。歩道を塞いで駐車してある例。

アプリでは「市から提供された場所に駐車すること」とは書いてありますが、走行中にアプリを確認するのは難しいため、目的地に着いたら近くの駐車できる場所を探して、としていると、料金がどんどん跳ね上がっていきます。

(乗車中片手で携帯を操作するのは不可能ではありませんが、自分でしようとは思いません)

また、モントリオールではヘルメット着用が義務と書かれていましたが、ヘルメット意識の高い地元民はともかく、観光客でそんなものを持ち歩いている人はいないでしょう。ヘルメット未着用による罰金は108CAD(約9000円)、さらに違反切符が渡されるそうですが、これが実行されたかは不明なようです。

(参考記事 Make room, Lime: Bird e-scooters)

さらに、他社で電動キックボードが炎上する事件が起きています。 記事によれば、暑い日だったからとか、何かのイタズラや過剰運転等々いろいろ言われていますが、原因は特定されていないようです。

Limeの回収車

モントリオールにて。右に見える車は、Limeの電動キックボードの回収車。

ロード乗りとして思うところ

ロードバイクで車と併走するのに慣れていると、ノーヘル・車道でこれに乗るのはかなり不安感がありました。

また、自転車についても言えることですが、ツールの使い方に関しては前述の通りユーザのモラルが問われます。使用のハードルが低ければ低いほどユーザの数は増え、モラルの低いユーザの絶対数が増え、余計に目立つことになります。

乗り捨てタイプはその特性上、通行の邪魔になったり、景観を乱すことが非常に多いです。これはもう、乗り捨て型シェアサイクルがあるどこの町でも、嫌というほど見てきました。特にユーザに観光客が見込まれる以上、「立つ鳥跡を濁さず」マインドを持っていないユーザの尻拭いの負担がどこにしわ寄せされるのか。

背景は不明ですが、ミラノでは運河にシェアバイクが複数台投げ捨てられていた事件もありました(The Local it)。私はちょうどこの直前までミラノに住んでおり、現地で乗り捨て型シェアサイクル戦争が激化していたのを覚えています。ちなみにこの後Ofoは撤退し、Mobikeは禁止区域に駐輪したユーザに罰金を課すようになりました。

この電動キックボードは撤退するのか、はたまた定着していくのか興味深いところではあります。下に挙げる記事が、将来を物語っているような気もします。

  • San Francisco Examiner:サンフランシスコでは2018年6月に電動キックボードが完全に禁止され、後に規制を強化したScootとSkipの2社のみに許可が下りた。Birdは乗り捨て型から25USDの月間レンタルにビジネスモデルを移行して復活。
  • The Verge:その月間レンタルを使ってみたけど、自転車の方が良かった by 自転車乗り
  • AJC.com:アメリカのアセンズ市で電動キックボードが禁止される。隣のアトランタ市では、走行・駐車区域を限定しキックボードの数そのものを減らす法を検討中。

で、シェアサイクルと電動キックボード、どちらを使いたい?

旅行(=歩きやすい靴、斜めがけバッグで両手が自由)ならば、自転車乗りとしては、断然シェアサイクルに軍配が上がります。だって電動キックボード、高いもん。

ただ、レクリエーションとしてのちょい乗りを楽しむのも一興ではあります。もし旅先で見かけたら、一度経験してみるのも面白いかと思います。くれぐれも交通安全第一で!

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