そのデブは、まるで狂おしく
身をよじるように、走るという…。
ポチりを重ねても重ねても買い続けようとする。
もう、いくところまでいくしかない駄文書き、nadokazuです。
そうさ、これからが始まりさ……オレとTyrellの湾岸ストーリーがな……!
というわけで、本日の駄文はこちらなんだヨ。
富山湾岸サイクリングコースって?
富山県観光振興室の富山県サイクリング公式サイト「とやまサイクルナビ」によると、富山県では3つのサイクリングコースが行政によって整備されています。
本稿でとりあげる富山湾岸サイクリングコースは、その3コースのうちのひとつ。同県の新潟側の県境である「市振」から、石川側の県境「氷見」まで。距離にして約100kmを、富山湾沿いに走るコースになります。
サイトの記載によると、最大高低差は約35mとのこと。
ちょっと奥様!100km走って35mって、どんだけフラットなんザマスか!? こんな素晴らしいサイクリングコースが、日本に存在していたなんて…! 富山県さん、ありがとう!そして、ありがとう!!
富山湾岸サイクリングコースは、どうしてオススメ?
まず、このコースが「県の観光振興を目的に整備されている」という点が、大きなポイント。道路だけではなく、周辺観光を含めてトータルに環境が整備されていることを期待できます。
実際、コースの周辺には「サイクルステーション」や「サイクル・カフェ」が整備され、サイクリスト向けの多彩なサービスが提供されています。
たとえば、この「ひすいテラス」もサイクルステーションのひとつ。バイクラック/空気入れ/修理工具/飲料水の補給/現地情報の提供/トイレ/レンタサイクル/シャワー/コインロッカー/公衆無線LAN…と、もう至れり尽くせりです。
これはつまり「補給どうしよう」とか「お手洗いどうしよう」という不安を、最小限に留めて走行できる、ということ。コースとしての安心感は、相当に高いと言えるでしょう。
それにですよ、富山と言えば、富山湾の向こうに見える立山連峰が絶景として著名です。さらに氷見うどん、富山ブラックラーメン、ますの寿司、白えび、寒ブリ、ほたるいか、きときと寿司などなど、ご当地グルメも枚挙に暇がありません。
それでいて平坦基調というのですから、もはや隙がなさ過ぎです。「平坦を好き放題走って、絶景を撮って、ご当地グルメを楽しみまくる」という、至高のサイクリングプランが立てられる。…これはもう、実際に行ってみるほかないですよね?
富山湾岸サイクリングコースには、どうやってアプローチする?
関東方面からアプローチしやすいのは、新潟側のスタート地点である「市振駅」でしょう。東京から北陸新幹線で、まずは糸魚川駅へ。えちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインに乗り換えたら、3駅で市振です。
東京駅を6時28分に出発する「はくたか551号」に乗車した場合、市振駅到着は9時20分。乗車時間は、3時間をあっさり下回ります。ちなみに速い列車だと、2時間34分で到着が可能です。
太平洋岸の住民にとって、日本海沿岸エリアってハルカカナタなイメージがあるのですが、思いのほかスピーディに到着できてしまう。自転車だと、徹夜で走って夕方近くにようやく辿り着く場所なのに…。新幹線の恐るべきスピードには、震え上がらずにいられません。
また北陸新幹線には、東海道新幹線と異なり「特大荷物スペース」の規定はありません。荷物置き場もしっかりスペースが確保されているので、最後尾座席後ろのスペースを確保できれば、輪行自転車の運搬は容易です。
さらに、えちごトキめき鉄道の車内にも、かなり広いフラットスペースがありました。混雑状況にもよりますが、自転車の置き場に困る可能性はかなり低いと言えるでしょう。
コースはどんな感じ?
富山湾を右手に見ながら、海沿いを延々と走り続ける感じです。途中で若干内陸部に入る区間があるのと、富山市街に入ってからは一般道が中心になるものの、コースはかなりの部分が自転車歩行者専用道路。後ろから迫る排気音にビクつかない、安寧のサイクリングが楽しめます。
路面の状態は、「平均的なサイクリングロード」と言ったところ。とはいえ、某河川敷サイクリングロードのような、下車を強いられる意地悪設計の車止めはありません。
コースにはブルーラインもしっかり引かれていて、辿っていけばゴールに着きます(ミスコースしてないとは言ってない)。これは、しまなみ海道と同様ですね。
前述の通り、サイクリスト向けのサービスを提供してくれる施設が沿道に点在しているので、補給やお手洗いの不安を感じることもほぼありません。これは…控え目に言って、最高に近い走行環境なのでは?
コース周辺の見どころ4選
ヒスイ海岸
その名の通り、翡翠が採れる海岸です。ただし、遠目から見ると、ただのキレイな海岸でしかありません。波打ち際では釣り人に混じって、翡翠ガチ勢であろう方が血眼で翡翠を探していました。
新湊大橋と渡し船
新湊大橋は、斜張橋としては日本海側最大級の巨大橋。富山県の観光公式サイト「とやま観光ナビ」によると、総延長はアーチ部分も含めて3.6km、橋を支える主塔の高さは127m、海上に架かる主体部分が600m…だそうです。
2本の主脚の間は遊歩道で結ばれているのですが、自転車に乗車しての走行はできません。つまり、「押し歩き」になります。長さ480m、海面からもっとも高い所で47mある遊歩道を、延々と自転車を押して歩く。渡り終えるまでには、いったい全体どれだけの時間がかかることでしょう…。これは高所恐怖症の精神を破壊しようとする、強い意志があるとしか思えません。
新湊大橋を避けるルートは、走行距離が約10kmの追加になります。まぁ、仕方ないか…と思っていたら、対岸への渡し船がありました。しかも、乗船料は無料!これは素晴らしすぎでしょう…。
尾道の渡し船を彷彿とさせる、フェリーでの船旅は快適そのものでした。
万葉線
新湊大橋の先では、一部区間でローカルな路線の線路付近を走ります。タイミングがいいと、レトロな車両が1両でトコトコ走る場面に出会うことが可能。思わず自転車を降りて、乗り倒したい衝動に駆られるので注意が必要です。
雨晴海岸
富山湾の向こうにそびえる、立山連峰の絶景が楽しめると著名な場所。…のはずなんですが、どれだけ目をこらしても立山連峰は見えませんでした。
もしかして、空気が澄んだ極寒の時期じゃないと、見ることができない景観なの?と思って雨晴海岸のライブカメラをチェックしたところ、立山連峰がバッチリ見えていました。わたくし、いま血の悔し涙を流しています。
ほかにも、氷見周辺に「忍者ハットリくん」をフィーチャーしたエリアなどがあって、観光しながらのサイクリングもしっかり楽しめそうです。
実際に行ってみて、どうだった?
ほぼフラットの100kmを、心底楽しめました。ですが「下準備の不足も思いっきり露呈した」というのが、正直なところです。
市振駅からサイクリングコースのスタート地点までは、数分の距離。看板も整備されていて、迷うことなくコースに入れます。
果てしなく広がる空と日本海を眺めながら、自動車の入ってこない専用道をゆるゆる走るのはもう最高。平日だったからか、歩行者や自転車も極小。ほぼ誰ともすれ違いません。
富山湾に沿って走るので、広い空と青い海を飽きるほど見られます(堤防や防風林に遮られて、海が見えない場所もそれなりにありますが)。
コースにはブルーラインがしっかり引いてありますが、走っていていつの間にか見失っていることが何度かありました。道路を反対側に渡ったり、右左折が必要な場所での案内が若干不足気味なのかも?
…と思って、走行動画を見返していたら、必要な案内はしっかりされています。たとえば右折して道路の反対側に渡る場所では、路面の矢印に加えて看板での案内もバッチリ完璧です。
2つのサイクリングコースが重なっている交差点でも、右左折それぞれの行き先案内がしっかり記載されています。
なのに!それなのに!右折せずに直進したり、右折のところを左折したりする自分。そう!不足しているのは、案内ではなく注意力!私は、最低の人間です…。
さてさて新湊大橋を超えるとコースも後半に入って、だんだん脚の疲労が隠せなくなってきます。とはいえ、残りは僅か。雨晴海岸を過ぎ、氷見エリアまで来ると「もうゴール間近だな」という雰囲気になります。
だがしかし! 実はそこから先が、地味に長くてツラいのです。
氷見駅周辺を過ぎてしばらく走り、「そろそろ到着だろう」と思った矢先に「県境10km」という看板が現れて折れた心が複雑骨折。
さらに、ここまでほぼ皆無だったアップダウンが何度も何度も何度も何度も何度も出現して、メンタルだけでなく脚もダメージを受けまくります。
ようやくゴール地点に到着した頃には、日没間近。脚は完全に売り切れて、心身ともにズタボロです。
誰だよ!「100km程度でしかも平坦。15時ぐらいにはゴールできるんじゃないの?」とか舐めたことを考えてた奴は!! …はい、私です。もう自分で自分を、小一時間説教したい。
そして、ゴールしてから、こんな現実に直面しました。
ゴール地点は、富山県と石川県の県境付近。ここには、駅がありません。つまり「輪行で撤退するためには、駅まで戻らなければいけない」ということです。最寄りの氷見駅までは、約15km。ついさっき走った、アップダウンに泣かされたルートを、売り切れ状態の脚でまた走ることになります。うわぁ…。
もうひとつの最寄り駅である七尾線の七尾駅は、氷見より遠い約21km先の彼方ちゃん。しかも、途中に山越えがあります。…駄目じゃん!!
「富山まで戻るのを諦めて、この周辺で宿泊してしまう」ということも考えましたが、もう17時近く。予約なしで宿に飛び込むのは、時間的に無理でしょう。
これはもしかして、「詰み」というヤツでは?
ゴールした喜びを、あっさり打ち消す絶望。
生存可能性があるのは、氷見駅に戻る選択肢だけです。時速10kmでの巡航すらできなくなった脚で、ヨタヨタと撤退を開始。もはや途中で脚が攣って走行不能にならないことを、祈るほかありません。
だがしかし!天は我々を見放してはいなかったのです!
氷見方向にしばらく走ったところにある、「脇」という微妙な名称のバス停。そこに、なんと始発待機中の路線バスが!運転手さんに自転車を乗せて良いか伺うと、OKとの返事が!た、助かったー!!!
音速で自転車を輪行袋に収納。その後は数十分のバスの旅を経て、七尾駅にエスケープ(ちなみに始発から終点まで、乗客は自分だけでした)。駅近くの安いビジネスホテルに部屋を確保して、なんとか生命をつなぎました。
まとめ
コースの大半が専用道、しかも自転車も歩行者も少なく快走できる「富山湾岸サイクリングコース」。東京から始発の新幹線に乗れば、ミニベロでもその日のうちに全線走破するスケジュールで走れます。
とはいえ、氷見側のゴール地点付近に、正直、特筆すべきポイントはなさげです。氷見駅付近をゴールにして、そのまま氷見周辺に宿泊するか、富山駅の周辺エリアに輪行で戻っちゃう方が「ライド後のお楽しみ」プランは充実させられるはずです。もちろん「コース全線を走破した!」という達成感はあったりするので、脚の具合と相談してゴールを決めましょう。
自分は結局グダグダでしたが、周辺施設が整備されたコースを、気持ちよく、安全に100km走れる富山湾岸サイクリングコース。これから空気が澄んでいく季節なので、立山連峰の景観が楽しめる確率だって上がるはず。関東からでも、行く価値ありありです!