輪行で自転車を運ぶ 海を遠く渡り
一人を結ぶ nadokazuです。
どこまでも どこまでも つづいている
キツい坂よ 向かい風よ
この悲鳴(こえ)を伝えて
というわけで、本日の駄文はこちら!
きっかけは「おりたたみ自転車と旅しています」すべての自転車乗りに、激推しの名著!
星井さえこ(@rinkosaeco)先生の、自転車コミックエッセイ第2弾「おりたたみ自転車と旅しています」。Amazon売れ筋ランキングでは、自転車・サイクリング部門の本で販売開始直後から堂々の第1位。先日、早くも重版が発表されました。
紙の書籍も電子書籍も購入していますが、2023年の個人的No.1自転車書籍、もう現時点で確定じゃないでしょうか。折り畳み自転車の民はもちろん、すべての自転車乗りに激推ししたい一冊です。
ひとコマひとコマに込められた、濃密なまでの情報量。渾身の作画でありながら、無駄な緊張を感じさせない柔らかなタッチ。さりげなく仕込まれた小ネタをはじめ、激推しポイントはもう書き切れないほど。「自転車」と「旅」の愉しみを、ありとあらゆる角度から提示してくれます。
個人的に最も衝撃的だったのは、7ページに何気なく書かれている
「旅の先でサイクリングしてるんです」
という一文。
ふつう「旅先で」とするところを、あえて「の」がひと文字加えてある。それだけの違いですが、思い起こす情景は格段に奥深く、叙情的なものとなって湧き上がります。
星井さえこ先生の言葉選びセンス、ヤバくないですか?
「ぼっち・ざ・ろっく!」の喜多郁代役をされている声優、長谷川育美さんの歌唱力が余りにも高すぎるので、
『音羽-otoha-さんと樋口(愛)さんが「歌が本業ではない人に、あれだけ歌われたら、私たちはどうすればいいんだ」と心から言っていた。*』
という逸話があるのですが、同じものを感じてしまいます。
*リスアニ!「結束バンドの神アルバムはこうして生まれた!TVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』長谷川育美×三井律郎×岡村 弦スペシャル座談会(前編)」より引用
爆裂する旅立ちの衝動!飛び乗れ新幹線!!
さてさて、そんな「おりたたみ自転車と旅しています」なのですが、本書は自転車乗りにとって最高に魅力的であると同時に、極めて重大かつ深刻な危険性を秘めています。
なにしろパラッと開こうものなら、すぐさま引き込まれて熟読モード突入。全ページを隅から隅までじっくり読んで、膨大な時間を溶かすまで現実世界に戻って来れません。たとえるなら、プリングルズのサワークリーム&オニオン。つまり開けたら最後! You can’t stop!!
それだけではありません!
「自転車旅に出かけたい!今すぐに!!」という感情の爆裂魔法(ルビで「エクスプロージョン!」)が炸裂して、いてもたってもいられなくなってしまいます。
そんな心理状況にされたところで、雨続きだった天候が晴れ予報に好転。そのうえ、桜が満開になったというニュースまで飛び込んできました。
頭の中に響き渡る、何かがブチッと引きちぎられる音。
全速で走り出した感情の暴走機関車は、もう止まりません。気付くと積み重なっている仕事を後先考えずにポイッと放り投げて、衝動に突き動かされるまま新横浜駅から新幹線に飛び乗っていました。
おれは仕事をやすむぞ!
ジョジョーーッ!!
新幹線を新神戸駅で下車して、神戸三宮フェリーターミナルへ!
猛烈なスピードで関東から離れ、西に向かって爆走していく新幹線。およそ2時間半後に、兵庫県の新神戸駅で下車しました。
とはいえ今回の目的地は、神戸ではありません。ここから自転車と一緒にジャンボフェリーに乗船して、うどん県・高松までの船旅です。
もちろん自分みたいな素人に「フェリーを使う」なんて発想は、微塵もありませんでした。すべて「おりたたみ自転車と旅しています」からの、丸パクリです。情けなや…。
神戸から高松までのフェリーで移動は、メリット盛りだくさん!
新神戸駅から神戸三宮フェリーターミナルまでは、Google先生によると約3.4km。自転車なら、楽勝にもほどがある距離です。
高松行きのジャンボフェリーが出港するのは、日付をまたいだ午前1時。東京駅20時54分発の最終便「のぞみ95号」でも、新神戸駅には23時35分の到着なので1時間以上の余裕があります。
「フルタイムでの仕事を終えたあと、いったん帰宅して荷物と自転車を持って出発」というスケジュールだったとしても、新神戸駅からの移動途中で三宮駅周辺エリアの繁華街に立ち寄って、ゆっくり夕食を楽しむことができます。
出発/到着を少し早めにできれば、近隣の日帰り入浴施設でサッパリする時間だって作れるでしょう。
これから向かう旅路に思いを馳せつつ、美味しいごはんに舌鼓を打ちながらゆったり過ごす。神戸から高松までジャンボフェリーを利用すると、こんな贅沢な時間の使い方ができてしまうのですね。
それだけではありません!
高松東港への着岸は、朝5時15分です。ワクワクと気力体力に満ちまくっている「旅の初日」の現地滞在時間が、より長く確保できます。これは当日朝の出発だと、絶対にできない芸当。
しかも!
高松は、うどん県にある街。朝6時頃から、市内各地のうどん屋さんが開店し始めます。ジャンボフェリーを降りたあと、高松駅のコインロッカーに荷物を入れたらドンピシャで開店時間。朝一番の旅の先で、最高のうどんから1日をスタートできてしまうのです。
…ジャンボフェリー、最高なのでは?
新幹線、前泊、ジャンボフェリー、3つのプランで料金を比較してみた。
ジャンボフェリーを使って高松入りすると、余裕を持ったスケジュールで最高に近いプランが組める。それは間違いのないところですが、コスパはどうでしょう? 念のため、料金を比較してみました。
①朝イチの新幹線:新横浜駅〜高松駅
新幹線(のぞみ指定席)+快速マリンライナー(自由席)
合計18,110円
6時の始発に乗っても、30分後ののぞみに乗っても、高松駅の到着は同じ10時26分。この時間だと、朝と言うよりもう昼前ですよね。旅の初日に、現地での初動が遅くなる。仕方ないことですが、旅の全体プランを組む上では結構な痛手ではあります。
②現地で前泊:新横浜駅〜高松駅+現地宿泊
新幹線(のぞみ指定席)+快速マリンライナー(自由席)+前泊ホテル
合計18,110円+宿泊費
前泊プランなら、朝イチから現地で活動が可能。とはいえ、1泊分のホテル代が思いっきり上乗せになります。予約サイトで雑に調べた限りでは、素泊まりでも6,000円程度はする感じ。コストパフォーマンスには、難ありと言わざるをえません。
③新幹線+ジャンボフェリー:新横浜駅〜新神戸駅+神戸三宮フェリーターミナル〜高松東港
新横浜駅〜新神戸駅:
新幹線(のぞみ指定席)14,960円
神戸三宮フェリーターミナル〜高松東港:
ジャンボフェリー(シングル個室・WEB割引適用・深夜料金・自転車は手荷物として持ち込み)4,890円
合計19,850円
新幹線+マリンライナーとの差額は1,740円。結構な金額ではありますが、現地に前泊するよりは全然安く済みます。
あと高松までの交通機関は、新幹線のほかに寝台特急「サンライズ瀬戸」があります。旅の体験としては、最高クラスの時間が過ごせるサンライズですが、チケット峠の高さがもう絶望的。
天気予報を確認してからのチケット確保なんて、ほぼ不可能でしょう。ネット予約ページでも、売り切れ表示以外見たことがありません。普通に買うのだって無理じゃないですか、これ?
以前シングルデラックスの禁煙室が取れたのは、本当に奇跡だったなぁ…遠い目。
▼ 参考記事
ジャンボフェリーの船旅は、こんな感じ。
乗船、入場は二次元バーコード。
事前にWEBで予約/クレジット決済しておけば、乗船用の二次元バーコードが発行されます。神戸三宮フェリーターミナルで手続きをする必要がなくなるので、乗船開始の間近に到着しても大丈夫(余裕を持って到着するに越したことはありませんが)。
アナウンスに従って移動してボーディング・ブリッジを渡ったら、二次元バーコードを読み取り機に通して乗船します。この辺は係の方に案内していただけるので、迷いません。
個室エリアの入口にも専用のコード読み取り機があって、そこでは個室エリア入場用の二次元バーコードをかざします。
スマホで表示したコードをかざせば、乗船/個室エリア入場が可能。より万全を期すなら、バックアップとして事前にプリントアウトしておくのが吉です。
飲食・入浴は乗船前に。
フェリーの船内にある売店で軽食類は買えますし、なんとお風呂まであります。乗船してから食事をとったり、入浴したりすることも可能です。
とはいえ、乗船開始は深夜です。しかも出港から到着までは約4時間半と、思ったよりずっと短い時間しかありません。乗船後に食べたり飲んだりお風呂に入ったりしていると、睡眠時間がバッサリ削られて翌日に思いっきり響きそう。
というわけで飲食・入浴は、乗船前に三宮駅周辺で済ませておくのがよいかと。
自転車は、カギ付きの荷物置き場で保管。
船内には、カギ付きの荷物置き場があります。パッキング済みの自転車も、充分置いておける広さです。
充分に明るいですし、人目もある。なので、大きな不安は感じません。
個室は狭い!窓も無い!だが、それがいい!!
シングル個室の印象は、「壁とドアがあるカプセルホテル」。お世辞にも広いとは言えず、窓も無し。天井はそれなりの高さがあるものの、横幅は1人分ギリギリです。
畳んだキャリーミーならともかく、普通の折り畳み自転車でも室内置きは厳しめ。ましてや輪行状態のロードバイクを入れるのは、至難のワザでしょう。無理せず、前述の荷物置き場を使ったほうが確実に幸せになれます。
室内はiPhoneの広角カメラを使って、ようやく収まるレベル。コレ一畳あるの?ぐらいの狭さです。でもまぁ、4時間少々を寝て過ごすには充分でしょう。なんだか押入感・秘密基地感があって、むしろ自分はこういうの大好物ですね。
快適に眠れる?
部屋に入ったらサッサと着替えて、横になります。特に揺れを強く意識することはありませんでしたが、エンジン音はずっと聞こえる状態です。そして時折、船内設備のブザー音(割と耳障り)も耳に入ってくるので耳栓は必須(枕元に用意されています)。自分はAir Podsをノイズキャンセリングモードにして、就寝中もずっと付けていました。
サンライズ瀬戸のシングルデラックスに乗ったときは、音はともかく揺れが気になり続けて一睡もできていません。なんですが、ジャンボフェリーの個室ではかなりグッスリ眠れています。起きたらちゃんと、しっかり寝て休んだ感がある。きちんと横になって眠れる、この個室は偉大です!
というわけで、目が覚めたらもう高松東港へ到着直前。
ジャンボフェリーで流れる曲「二人を結ぶジャンボフェリー」を聞きながら下船準備をしていたら、思った以上にモタついてしまい、係の方に個室のドアをノックされてしまったことは秘密にしておこう…。
高松駅のコインロッカーは、両替必須!
高松東港から高松駅までは、約600m。自転車なら、アッという間です。駅のコインロッカーに荷物を預けようとしたのですが、なんと100円玉だけしか使えません。ICカード対応機、無いんかい!というわけで、両替必須です。
自分が行った日は、駅入口付近の両替機が使用できなくなっていたので、別フロアの両替機までダッシュする必要があって無駄に疲れました。
高松駅前の「サイクルピット」は、ちょっと残念!
高松駅には自転車組立・解体スペースとして、「サイクルピット」が整備されていました。素晴らしい!ありがたい!うれしい!楽しい!大好き!
なんですが!「組立・解体スペース」「 駐 輪 禁 止 」という日本語の意味が伝わっていないであろう方々に、サイクルラックが自転車置き場として占拠されていました。あちゃー。
サイクルピットの取り組み自体は実に素晴らしいのに、周知・運用が徹底できていない感じ。ちょっと残念。
あと、すっっっっごく重箱の隅なのですが、自転車を「解体」しちゃったら元に戻せなくない?
うどん県の朝食は、うどん!
うどん県では三食うどんを食べることが義務化されているので、朝早くからうどん屋さんが開店します(絶望的な偏見)。自分が向かったお店は、「手打十段 うどんバカ一代」。本当は「中西うどん」に行きたかったのですが、「釜バター」のビジュアルにやられました。
ほぼ開店時間に到着して、さっそく店に入ろうとしてビックリ。平日の早朝だというのに、行列がズラッと店の外まで続いています。なん…だと…!?
違う店に行っちゃおうかとも思いましたが、回転は割と早め。そこまで長く待つこと無く、釜バターにありつけました。
瞬く間に胃の中に格納されていく、釜バターとちくわ天。腹具合は余裕ありまくりで、あと2軒でも3軒でも平気で回れる感じです。
だがしかし!
ようやく体重を減らせたいま、摂取カロリーの制限を開放するわけにはいかず…。涙を飲んで、高松駅周辺エリアを後にしました。
Tyrell IVEの、里帰り。
次に向かったのは、Tyrell乗りの聖地!「有限会社アイヴエモーション Tyrellファクトリー」です。Tyrell FXの購入から、はや10年以上。ずっと「一度行ってみたい!」と思っていたんですよね。
大好きな自転車に乗って、その生まれ故郷を実際に訪ねることができる。うどん県メイドだからこそできる、タイレル乗りならではの特権的聖地巡礼です。
高松駅からは、平坦基調で約20km。うどんを食べた後にゆっくり自走しても、8時頃には到着できました。さすがに始業時間前なので、どなたもいらっしゃいません。
ウチのIVEやFXやFSXは、ここでアッセンブルされたのかー!タイレルオーナー以外の方には、まったく意味がわからないであろう感慨に浸りつつ、シャッターを押しまくりです。
おまわりさーん! ここに不気味な薄笑いを浮かべながら、妙なポーズでカメラを構える不審人物がいまーす!!
出勤されてきたファクトリーの方に不審者通報のお手間をかけないよう、写真を撮影したあとは即座に撤退しました。
うわ…私の四国滞在…短すぎ!
地元のローカル線「ことでん」で高松まで戻って、次に向かったのは自転車ショップの「田町クラウズ」さん。その店名から、ずっと港区にあるとばかり思っていたお店です。
とんでもなく洒落たディスプレイの建物で、非常にイイ感じ。そしてガラスの向こうには、魅力的な自転車と自転車用品がキラキラと輝いています。うっ…頭が…!
旅先だというのに、思わず意識を失いそうになりましたが、まだ開店していなかったので危険な結果にはなりませんでした。ふう、危ないところだった…。
それにしても、わざわざ四国まで来て観光するのが「自転車店」って、よくよく考えると完全に意味不明です。自分のことながら、呆れるほかありません。
でもまぁ、ジャンボフェリーに乗れたしTyrellファクトリーで写真も撮れました。これにて、ミッションコンプリート!高松駅から快速マリンライナーに乗車して、高松を後にします。
あれ…?あれ…?
わざわざ四国に来たのに、5時間しか滞在してなくない?
有名観光地を見てもいないし、骨付き鶏も食べてなくない!?
まとめ
新幹線を使って新神戸まで行って、ジャンボフェリーで高松に向かう。このルートを選択すると、新幹線+在来線を使った場合と比べて高額駅弁1食分程度が料金に上乗せされます。
ですが!
- 仕事を終えてからの出発も、まぁ余裕。
- 前日夜の出発なので、早起きの必要なし。寝坊リスクゼロ。
- フェリーの出港までは、三宮周辺でゆっくり過ごせる。
- 個室で寝ていれば、高松に着く。
- 旅の初日に、朝イチから現地で活動できる。
そして何より
- 楽しい旅の時間が、およそ半日ぶん長くなる。
さらに!
- 「おりたたみ自転車と旅しています」の聖地巡礼ができる。
という、得がたいメリットが獲得可能です(どうせ「7」が本命で、残りは後付けの屁理屈なんだろ?というツッコミ不可)。
次回予告
さすがに四国に5時間滞在しただけで、横浜に戻るわけにはいきません。瀬戸大橋を渡って、さらなる聖地巡礼に向かいます。続きはこちら!