茨城県の土浦市は「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の整備に力を入れていて、JR土浦の駅ビル「プレイアトレ土浦」はサイクリングリゾートを目指し、この4〜5月にはレストラン街、来年にはサイクリスト対応のホテルもできるようです。
ただ、霞ヶ浦が盛り上がればいいなと思うのですが、実際に現地を走ってみて「大丈夫かな?」と少し心配になったりもしたのでした。
サイクリングリゾートを目指すプレイアトレ土浦。しかし…
「つくば霞ヶ浦りんりんロード」は私も実際に走ってみて、なんて走りやすい道なんだ! と感動したのですが、「霞ヶ浦一周ショートコース」(90〜100km)を走っている時に「このコースはサイクリング初心者向けではないな、するとプレイアトレ土浦のホテル事業は大丈夫なんだろうか」という危惧を持ったのでした。
というのも土浦駅から北に伸びる「旧りんりんロード」や筑波山方面は休憩所も近場の寄り道スポットも比較的充実していてスポーツサイクルビギナー層でも楽しめると思うのですが、そこを走るだけなら必ずしも土浦に宿泊する必要はありません。
またわざわざ遠くから泊りがけで霞ヶ浦にやって来るツーリストの場合、多くは「霞ヶ浦一周をしてみたい」という気持ちをやはり持つのではないか。つまりホテルを成功させるには霞ヶ浦一周コース、いわゆる「カスイチ」のコースをもっと初心者対応させる必要があるのではないか、と私は思ったのでした。
みんな似たようなことを感じているらしい
そのことについて記事を書きました(リンク下)。
すると同じような危惧を持っている方がかなり多かったことが判明。Twitterで多くの心配の声をいただきました。
みんなが漠然と抱いていた危惧を言い当ててる(*≧∀≦*)
茨城のサイクリングリゾート・プレイアトレ土浦が成功するために必要なものとは https://t.co/YKvKvpHLMN @cbnanashiより
— HMBアウトドアクラブ 霞ヶ浦 Cycling Team (@hmb01302624) 2019年3月14日
これは本当にその通り。自転車初心者の妻はカスイチ早々に飽きて中断しました。
茨城のサイクリングリゾート・プレイアトレ土浦が成功するために必要なものとは https://t.co/yoUv6tp1xk @cbnanashiさんから— Viljo (@Viljo32) 2019年3月14日
まさにこの通り。現状では一般的な顧客は1回来て終わり。初心者がまた来たいと思えるような目的地が皆無なのは痛すぎる…そしてそれを行政がわかっていない。
茨城のサイクリングリゾート・プレイアトレ土浦が成功するために必要なものとは https://t.co/cRDPcgZlnV @cbnanashiより
— 錯乱 (@kitakami_73) 2019年3月14日
初心者の人をどう楽しませることができるのか、ガチでない人でも楽めるのか、そのあたり難しいかも。この記事の言う通り。https://t.co/cztKVlD3JS
— 才賀淳貴@比企自転車旅行倶楽部 (@JunkiSaiga) 2019年3月15日
じゃあどうすればいいんだろう
そこで「じゃあどうすれば霞ヶ浦は初心者対応できるんだろう」と考え、皆様に様々なアイデアをお寄せいただきました。下のツイートにご意見がぶら下がっているので、ぜひお読みください。
この記事で初心者目線で危惧した霞ヶ浦のサイクリングリゾート化計画の成否についてですが、霞ヶ浦を初心者対応するために必要はものは何か、皆さんは何かアイデアがありますか?https://t.co/9s0PxWJJTN
— CBN (@cbnanashi) 2019年3月26日
この記事ではそこでお寄せいただいた様々なアイデアを紹介しつつ考察してみたいと思います。
看板
これは私の意見なのですが、霞ヶ浦を一周するサイクリングロード上にサイクリストのための看板を立ててはどうか、と思います。一定距離ごとに看板を立て、最も近いトイレ・休憩所・コンビニといった必要不可欠な施設までそこから何kmなのかを書く。さらにその近くでのPOI(名所名物)を書く(あれば)。
霞ヶ浦を走ってみてこういう看板はほとんど見かけませんでした。本当はたくさんあるのかもしれないけれど、はじめて霞ヶ浦を走った私には見つけられなかった。最初のコンビニが視界に入ったのは40km走ったあとだったかな(笑)。
あと私は事前にある程度リサーチして行ったので「予科練平和記念館」などにも寄ってきたのですが、わからない人は素通りしてしまうと思います。
この看板を立てるアイデアですが、私は非常に良いと思うのです。なぜなら他の案に比べてコストが安い。5kmおきに看板を一つ設置するとしましょう。一周140kmのカスイチコースでは28枚の看板で済みます。それだけで相当サイクリストフレンドリーになるはずです。
そこに休憩所やトイレやコンビニがなくてもいいのです。それらはどこにあるかがサイクリングロード上でわかればいいのです。あとは「北利根橋まで20km」とか「霞ヶ浦大橋まで30km」といった距離の目安があれば初心者は安心するでしょう。
ただ景観の問題とか、いろいろあるのかもしれませんね。5kmおきくらいなら邪魔にならないような気がするんですが…
トイレと休憩ポイント
トイレと休憩ポイントの数が絶望的に少ない、というご意見をいただきました。これは本当そう思いました。途中何箇所か小さい公園や駐車場を兼ねたトイレがあったりしましたが、数はすごく少なかった印象。かわりにコンビニがたまにでも視界に入ってくれるとだいぶ違うのですが、コンビニはどうもサイクリングロードから離れた場所にあるらしい。
下は旧りんりんロードの休憩所(近くにトイレもある)。これは廃線の駅舎という既存インフラをうまく使えていて素晴らしいのですが、ここまで大きい休憩所じゃなくてもいいと思うんですよね。実際すぐに大きい休憩所をつくる予算もないでしょう。
田舎のバス停のような4人座っていっぱいみたいなベンチ1個あるだけでも相当違うと思います。上にひさしはあるとさらに良いでしょう。スポーツサイクルに慣れていない人は真夏に休憩できる日陰がないと厳しいのではないかと思いました。
自動販売機
自動販売機、ほしいですよねぇ。下は旧りんりんロードの筑波休憩所の自販機。でもカスイチコース上にぽつんぽつんと自販機を置くわけにも行かないでしょうね。あったら良いのですが、現実的な案ではなさそうです。
でも2〜30kmおきに1つでもあると相当違いますよね。景観の邪魔にならないような箇所があればそこに設置。でもどの会社がそれを管理するんだっていう。設置数が少ない場合、補充にくるコストもかかるでしょうしビジネスとしては赤字になりそうな予感。行政の補助金にも限界があるでしょうし、悩ましい課題なのかもしれません。
据え置きのフロアポンプなど
プレイアトレ土浦をはじめとしてレンタルバイクのサービスがいろいろあるらしいのですが、話によるとどうもパンク修理キットはついてこないらしい。するとスポーツサイクル初心者にとっては厳しい(初心者はそもそもパンク修理できないかもしれないが…)。
霞ヶ浦のサイクリングロードは道がすごく良くてパンクリスクは少ないと思いますが、それでもパンクするときはパンクします。
下は旧りんりんロードに置かれていたフロアポンプ。これは休憩所がいずれ設置されるのならぜひセットで考えていただけるとありがたいですね。
回収車
カスイチ挑戦を途中でリタイヤするための人の回収車があるといいのではないか、というご意見がありました。有料でもいい。
当然これは何らかの会社に委託する必要があるでしょうし、コストも発生するでしょう。
日曜日限定でやってみるのはどうなんだろう。でも1日に何回回ってくれるのか。利用する人がゼロの日もありそうだから、そもそも赤字ではないか。財政的になかなか難しいような気もします。
毎週末、毎日常に2〜300人がカスイチに挑戦しているような状態なら現実味が出てくるのかもしれません。
Eバイクのレンタルサービス
霞ヶ浦は遮蔽物がゼロなので向かい風の日は相当キツいらしいです。そういう時のためにEバイクをレンタルしてはどうか、というご意見もありました。
たしかすでにEバイクのレンタルはあったような気がしますが、もっと増やしてはどうかということですよね。でもカスイチ100〜140kmを走るにはバッテリーが…
食事処
食事処が少ない、というご意見も。これも同感。一軒うなぎ屋さんを見かけたかな。こういうのも看板に情報があると助かりますよね。ただ、もしかしたらそもそも掲載できるお店の数がないのかも。下はサイスポのムックで調べて食べに行った「しをみ食堂」のカレー。お店を発見するのに少し手間取った…
中岸には「かすみがうら市交流センター」の「かすみがうらライドクエスト」があります。ああいう施設が右岸のまんなからへんにひとつ、左岸のまんなからへんにひとつあったら相当違うと思います。
そうか、それは休憩所にもトイレにもなるしパンク修理キットもおけるしEバイクの交換用バッテリーも置ける。ただ土地借りて建物作って…となると相当なコストでしょうし経営も当分赤字でしょうから、これも悩ましいでしょうね。
どうも霞ヶ浦のジレンマは「卵が先かニワトリが先か」という感じのものが多いような気がします。
インスタ映えするような撮影スポット
これは私の案ですが、インスタ映えのする写真撮影スポットを考えるのはどうか。インスタブームも5年後には終わっている可能性がありますが2年後はまだみんなやっているでしょう。そしてこのアイデアの良いところは、場合によってはあまりお金がかからないというところです。
下は熱海の有名なインスタスポットとして知られています。ただブランコが1台あるだけで長い行列ができているらしい。ブランコに乗っている姿がシンプルな海バックになる写真をみんな撮りたがるのだそうです。
寂れがちで商店街にはシャッターが下りはじめた熱海の温泉街はこういうちょっとした工夫で盛り返していると聞きます。霞ヶ浦には美しい広大な風景という強力な武器があるので、それを活かしたインスタ映えスポットを作ったりすると面白いのではないでしょうか。
最初はもう熱海の真似でいい感じの場所にブランコを置いてみてはどうか。真似しているうちにそのうちもっと良いアイデアが出てくるかもしれません。
各ポイントをつなぐ船の運行
各ポイントをつなぐ遊覧小型船舶を運行する、というアイデアも寄せられました。当然自転車も載せられるもの。遊覧船自体は現在でもたまに出ているようですが、もっとサイクリストを意識したものということだと思います。
いろんな航路が考えられますが、たとえば土浦を出発して右岸の中間地点、北利根橋、左岸の中間地点、霞ヶ浦大橋、中岸を経由して土浦に戻るような船が1日に2〜3あると、カスイチを走りきる体力がないけれど景色を楽しみたい人にも喜ばれるでしょうし回収車がわりにもなるかもしれません。
これも問題はお金でしょうか。あとは漁業関係者との調整などもありそうで大変そうではあります。
高速スワン
「ロードバイクポジションのとれる高速スワン」という面白いアイデアもいただきました。東京吉祥寺の井の頭公園や上野の不忍池にあるようなアヒルのかたちをしたボートですね。これは霞ヶ浦のサイクリスト向け基本インフラというよりも付加価値を高めるためのアイデアだと思います。
まとめ
おそらく霞ヶ浦は現在のままだと風景も代り映えしないので何らかのアトラクション要素が欲しい、と考えている方が多いように思います。
長距離を信号もなくガンガン走れる環境という意味で霞ヶ浦は素晴らしいサイクリングロードなのは間違いないのですが、そういうサイクリスト層はもはや初心者ではなく、土浦に宿泊することなく日帰りで旅を満喫していくことが多いでしょう。
霞ヶ浦が初心者に喜ばれるためにはサイクリスト向けの基本インフラ以外にも、上で紹介したインスタスポットもそうですが、こうした付加価値も出していく必要があるのではないでしょうか。
というわけで、関係者や行政の方々はこういうアイデアはすでに持っていて可能なことを着々と進めておられるのかもしれませんが、霞ヶ浦を愛するが故にその未来をちょっとだけ危惧している皆様(私も含む)のアイデアをまとめてみました。
いろいろあってもホテルができたら私は泊まりにいきます。行きたい(自転車以外にも筑波山登山を楽しむのが目的です)。
霞ヶ浦、いいところでした。もう当分行かなくててもいいかなと思ったのですが、いま無性に行きたい気持ちです。あの広大な風景と走りやすい道はやはり魅力的です。
つくば霞ヶ浦りんりんロードの繁栄とプレイアトレの「サイクリングリゾート計画」の成功を祈りつつ筆を置きます。
売り上げランキング: 73,557