2019年9月後半にカナダ・モントリオールを中心にケベック州に1週間旅行に行ってきました。この町の自転車事情がなかなか興味深かったのでレポートします。
街角自転車風景
モントリオール ダウンタウン
モントリオール到着翌日、ダウンタウンの外れから中心まで(下図、中心と右上の2つの大きな黄緑エリアの間ちょっと下あたり)をぶらぶらと歩きました。そこで目についたのが、とにかく自転車が多いこと。
道幅が広く、自転車レーンもメインストリートにはしっかり設置されていて、自転車が生活の足として盤石な市民権を得ているのが簡単に見て取れました。
モントリオールの地下鉄・バス(共通)の運賃は1回券が3.50CAD、120分有効です(執筆時点)。結構お高いですし、車にしてもダウンタウンでは駐車スペースを探すのが難しいので、無料で駐輪できる自転車が主な足になるのも納得です。
町中で一番良く見かけたのは、オールドファッションなクロモリのロードバイク。案内してくれた地元友人に聞いてみると、盗まれるので皆中古自転車を買うそうです。どこの国にも自転車泥棒はいるんだねぇ。
町中には駐輪場も恐ろしく高頻度で設置されていました。
さらに中心地には、1-2ブロックに1ステーションくらいの数でシェアサイクルがありました。市民のみならず、観光客も使用可能。
お値段は、2.95CAD/1回、5.25CAD/1日、15CAD/3日、25CAD/10回です。1回の使用は上限30分。そこそこ大きい町なので、複数日滞在&お天気が許せばこれが便利でしょう。
地図の真ん中あたりの黄緑色のエリア、ダウンタウンからすぐのところに、Mont Royalという小高い丘のある公園があります。頂上への道は舗装道で、市民の散歩道&サイクリング場所となっていました。
日曜日だったせいか、こちらはサイクルウェアに身を包んだ、ディスクブレーキ搭載のグラベルロードやMTBを多少見かけました。道幅は広いですが歩行者も多いので、全力でヒルクライムやダウンヒルをするような場所ではありません。
モントリオールはセント・ローレンス川のほとりにあり、ずっと平原が広がっています。1時間くらい車を走らせれば山もあるらしいですが、坂バカにはつまらない場所でしょう。逆に言えば、平坦なおかげで日常使いの自転車文化が発達したとも言えます。
ケベックシティ 自転車通勤
こちら場所は変わってケベックシティ、モントリオールから北東に250kmの町です。ここでは4-5時間くらいの短い観光をしました。
ここの観光の目玉のひとつがセント・ローレンス川のクルーズ。といっても、フェリーに10分乗って対岸にあるレヴィの町に行くだけです。ただ、川を挟むとケベックシティがよく見えます。
こちらのフェリーは観光以上に市民の足で、水曜日の夕方5時の便に乘ったところ、自転車を持った地元民が続々と乘ってきて大興奮でした。
こちらのライダーの方々をジロジロと無遠慮に見た結果、大体以下のような特徴がありました。
- ガチライダー・通勤共に、新しめなフレームの人はディスクブレーキ率高し
- 新しめのフレームでよく見たメーカーは、Cannondale、Specialized、Norco(カナディアンブランド)、たまにTrek。同じ大陸だから当然か
- ガチライダーはSPD-SL、通勤は片面フラット・片面SPDでSPDシューズ装備率高し
- オーバーパンツ着用率高し。寒かったから、という気がしなくもないけど、気にする人が多いのかな?
通勤車に何を使うかというのは、町の規模=家から職場までの距離や、サイクルレーン普及率、公共交通機関への自転車持ち込み事情も関係してくるので、それぞれの町の特色が出てくるように思います。
例えば著者の住むイタリアのピサでは、650cのホイールを履いた街乗りMTBまたはツーリングMTB、ママチャリ、さらには近所にあるDecathlonで購入した折り畳みミニベロ(畳むと無料で電車に持ち込める)がメインです。町の規模が小さく、特に中心地は歩行者天国でさらに道も狭いので、スピードより取り回しを考えた結果こうなるのでしょう。
カナダでは、サイクルレーンの路面はさして悪くない(決して良いとは言えないが)のでMTBは候補から外れ、次に土地が広大なので移動距離を稼ぐことを考えると、安価ならクロモリロード、高価なら最近のグラベルロードを選択するのかな、と思います。
実際に走ってみた
自転車を借りよう
本当は愛車の水縹号を持っていきたかった(ついでに飛行機輪行についての記事も書きたかった)のですが、今回の旅行はLCCを2社乗り継ぎするので荷物料が大幅にかかってしまうため、現地レンタルにしました。
機内持ち込みスーツケース1個に1週間分の身の回り品と自転車用品を詰め込んだので、ヘルメットを持って行くのを諦め、それにいただいた自家製メープルシロップとメープルバターを持って帰るのを泣く泣く諦め…
閑話休題。モントリオールで自転車を借りるとなれば、当然現地企業のArgon 18を指名レンタルしますよね!
UCIレースで幾度となくお目にかかったり、ベラチスポーツでもお値打ち価格なのを見て、俄然興味が湧いていたのです。いつか2台目にカーボンを買うときの参考にもしたいですし。
それで事前にレンタルできそうな場所を下調べしたのですが、ネットでロードバイクを予約できそうなのは唯一ここ、Ça Roule Montréal / Montreal On Wheelsでした。狙い通りArgon 18で、ペダルはフラット、SPD、SPD-SL、Lookなどから選べます。今回はサイクリング中にどのくらい歩くかわからなかったので、SPDを選択しました。
レンタルのお値段は1日30CAD(税別)、私はタイミングよく夏セールでちょっと割引されました。
それで実際に借りたのはこちら、Argon 18のGo!、フルカーボンのエントリーエンデュランスモデルです。ホイールはVision Team 25(カタログ値1800g)、タイヤはVittoria Zaffiro Pro 25c、ドライブトレインは105(チェーンセットはFSA)、サドルはPrologo(モデル名記録忘れ)。
元々アルミフレームのモデルを予約したのですが、XSサイズではアルミがなかったらしく、フルカーボンを使わせてもらえることに。来年から他のサイズでも順次フルカーボンが導入されていくそうです。
お店でのフィッティングでは、サドルの上下前後調整と、ハンドル高さ調整、ステム交換をしてもらいました。正直言うとハンドル幅が狭すぎてちょっと窮屈な感じがしたんだけど、さすがにそこまでは交換できないよね。
我が愛車水縹号(Bianchi Via Nirone 7、アルミ)と比較すると、フレームは軽量でホイール回りが重く(水縹号のホイールはZonda 1560g程度、タイヤはContinental Grand Prix 4000S II)、乗り心地としては、操作がクイックなくせに足を回すと妙に重い、という不思議な感覚でした。
町中編
この日走ったコースは以下の通り。運河沿いに走った後、セント・ローレンス川沿いに戻って、川の対岸まで出ました。およそ45km。
さて、いざ走ろう! と飛び出したは良いものの、初日はまさかの小雨。私、雨女なのよねぇ。
お店のあるオールド・ポートから5km程度は、道幅が狭かったり、曲がっていたり、歩行者と共有だったり、ボコボコだったりでさんざんでしたが、10km地点を越えると、ようやく落ち着いて走れる環境になりました。
私は普段車道で車と並走しているので、狭い・アスファルト舗装ではない道だとストレスを感じます。
車道の脇の自転車レーンなら良いのですが、車道から1段高いところにある歩道に並走する自転車レーンは、ほとんどで路面が荒れていたり、妙に曲がりくねっていたり、車庫の出口などで高さが上下したりと、多分旅の疲れもあってか、いろいろ細かい不満点が重なるんですよね。
今回のコースのラストは、セント・ローレンス川を渡る橋の1つですが、なんとこんなところにも丁寧に自転車道がついているのです!
この道は自転車通勤をする人たちがたくさん通っているのも見かけました。これだけお膳立てされていたら、10kmくらいの自転車通勤だって平気になりそうですよね。
川沿い編
別の日にはF1サーキットを走った後、川沿いに北上し、程よいところで折り返すという、ひじょーに適当なコースを走りました。総計60km前後。
この日の目玉はサーキット。ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット(Circuit Gilles Villeneuve)というのが正式名称らしい(Wikipedia)。セント・ローレンス川の中洲(人工島)にあります。上の図の中心下ほど、写真で潰れている場所です。
このサーキット、普段は無料で開放されています。当然路面は最高! なんだかクリテリウムを走っている気分になります(出たことないけど)。
ここで走っている人は、町中のサイクリングロードと違い、ガチな人が大半な印象でした。また、ここで初めてLookなどの欧州フレームを見かけました。TTバイクの練習をしている人もいるそうです。
さて、セント・ローレンス川の左岸に渡り、北上していきます。川沿いは幹線道路が走っていますが、それの横に独立したサイクリングロードがついています。アスファルトほど路面は良くありませんが、それでも十分快適に走れました。
しばらくすると幹線から離れ、公園の中へ。ここからガラリと景色が変わりました。これだけでカナダの広大さを感じるなぁ。
自転車屋さんのラインナップ
レンタル屋さん(自転車の販売もしている)と、外から覗いた1軒(営業時間外)、それとふと見かけて立ち寄った1軒の、ざっとの感想です。
- 当然ながら地元・同大陸メーカーが中心
- 私が入った店で取り扱っているコンポはほぼShimano。中心はSoraとTiagraで、低価格帯だとClaris。105が実質最上位扱い
- DB多し
- 自転車の値段は平均的だが、アクセサリ類が高い。Garminは欧州Amazonで見かけるのと似たような値段で、地の利はあまりない
走っている最中に、Colnago取扱店やOrbea取扱店を見つけましたが、入る時間がなかったので、残念ながら価格調査はできず。
所感
モントリオール、ケベックシティ両方で見たように、(路面はスムースでなくても)町のインフラがしっかりと整備されており、自転車が通勤の足として根付いていることがよく見て取れました。
スポーツとしての自転車はあまり見かけませんでしたが、今回訪れた場所が町中だったからかもしれません。チームに所属している地元ライダーによれば、もう少し郊外ルートを走ったりするとのこと。ただ、モントリオール起点の100km程度のループだと、本当に真っ平らなんだよなぁ。
今回案内をしてくれた友人に言わせれば、「まだベストな場所を見ていない」のだそうで、車で1、2時間走れば、もっときれいな場所があるんだそうです。次は自分の自転車を持って行ければいいな…と思った次第です。
モントリオールはカナダのフランス語圏ですが皆完璧なバイリンガルなので英語は問題なく通じますし、少し車を走らせれば広大なカナダの自然を感じられ、さらにメープルシロップが美味です。もし旅行に行かれる際は、ついでにちょっとサイクリングを楽しんでみるのもいかがでしょう?