「トスカーナ、走ってみたいなぁ」
この一言からすべてが始まった。
2019年4月に訪れたオルチャ渓谷。
サイクリング歴は短いものの、あの日訪れた場所以上のパラダイスを、私はまだ知らない。
イタリアでサイクリングするならどこ? と聞かれたら、全力で、いや、むしろ現地まで引きずっていくレベルでおすすめしたいこの場所。
その魅力の一端を、皆様にちょっとでもお伝えできれば幸いです。
準備編
道連れ
旅は道連れ、世は情け。
「一人で走るより、一緒に走る人がいた方が、絶対楽しいよ!」
と、何かのアニメで言ったとか言わないとか。
冒頭の発言主”姉さん”は私と同じくイタリア在住の日本人。私と年齢が近く、しかも自転車歴5年以上という役満キャラクター。ディープリムを履き、乙女ギアなど使わず坂道を軽快に駆け上がる、タフでパワフルで温泉大好きな女性である。
1年前に知り合ってから、私は彼女を実の姉のように慕っている。
この姉さんとは、私が計画担当、姉さんが現地で貧脚な私を引っ張る・叱咤激励担当という、互いの得意分野を活かした良いコンビなのだ。
あっ、パートナーがいらっしゃる方はそちらの方がより楽しいと思いますよ。
トスカーナのどこに行こう?
トスカーナの絶景ポイントといえば? そりゃもう世界遺産のオルチャ渓谷(Val d’Orcia、読みはヴァル・ドルチャ)でしょう。異論は認める。
私がこの名前を知ったのは、地球の歩き方だったか、それとも「Tuscany cycling」でググったら出てきたのかな。
ともあれ、一度走ってみたい、いや、走らずに死ねるか、の勢いで狙っていた場所なのです。
ほら見てよ、これだけでもうヨダレがダラダラ出るレベルできれいじゃない?
というわけでこれは独断で即決。文句は言わせない。
観光スポットとおおまかなルート
地域が決まったら、地球の歩き方やトスカーナ観光局サイトを参考に、まずはオルチャ渓谷の観光ポイントをおさえていきます。
「Val d’Orcia」で画像検索をかけて出てきたサイトの中には、写真の撮影ポイントのGPS座標をシェアしてくれているものもあったので、そこから絶景ポイントもおさえていきます。
この近辺には「イタリア一美しいと言われる村」や、糸杉の並木に彩られた”いかにも”トスカーナな絶景スポット、それに天然温泉やスパ保養地もあるので、気になったら全部Googleマイマップにメモします。
おおよその行きたいポイントが決まったら、次はルート引き。
ドライブルートも参考にします(この辺に高速道路はないのでそのまま走れる)が、やっぱり自転車のことは自転車のプロに聞くのが一番。この近辺で有名なレースといえば、かのストラーデ・ビアンケやエロイカがあります!
参考 ストラーデ・ビアンケ(英語)
参考 エロイカ・モンタルチーノ(英語)
これらをGoogleマイマップに落とし込んでいけば、ぼんやりとルートが見えてきます。
以上を元にルートを引いてみましたが、疲労具合を考慮して、(Komootとにらめっこしつつ)徹底的にグラベルを排除したルートも引きました。
ちなみにグラベルルートは姉さんの「やだ」の鶴の一声で却下されました(これは正しい判断だった。姉さん、ありがとう)。
走行スケジュールと宿
大体の走行距離が見えてきたら、何分割するか、宿をどうするかを決めます。
今回の休暇は4日間。姉さんが遠方からはるばるやってきて初シエナなので、初日はシエナで丸1日割き、移動の疲れを癒やしつつ観光をすることに。
その後は3日間の行程で、毎日移動するのも面倒そうだったし、また、好立地で良いお値段で評判のいいお宿も見つけたので、この宿で2泊。
個人的経験ですが、Booking.comで宿を選ぶときは、評価の低い口コミから見ていくのが吉です。
シエナの宿は姉さんチョイスの「よく自転車イベントで使われる」というチェーンHotel Minervaに決定。駅と旧市街地の間にあり、かつ旧市街地までラクラク歩ける距離の、ベストスポットでした。
というわけでスケジュールは、
- 0日目:シエナ集合、1日観光
- 1日目:シエナ→サン・クイーリコ・ドルチャ
- 2日目:サン・クイーリコ・ドルチャとオルチャ渓谷周遊
- 3日目:サン・クイーリコ・ドルチャ→シエナ→帰宅
に決定しました。
念の為にリタイアルートも忘れずに
最終日は姉さんの帰りの特急列車(予約済み)が制約条件となるため、それに間に合うように余裕を持って計画を立てます。
不慮の体調不良なども考慮して、コース上の電車駅と時刻表をおさえていきます。転ばぬ先の杖!
荷造り
荷造りに関して書き始めると超絶長くなるので、もっと一般的な内容で独立した記事にしました。ご参考にどうぞ。
SPDか? SPD-SLか?
折りたたみスニーカーを所持している姉さんはSPD-SL、持っていない私はほぼスニーカータイプのSPDで行きました。
結果的にどっちでもいいと思いましたが、SPD-SL派の方は替えシューズは必須です。SPD-SLは、
- 当然歩きにくい
- 下り坂の石畳で滑る(ドライでも滑ります)
- 足場が悪いところに行けない
今回の行程での(足場的な意味で)難所はBagni di San Filippo。SPD-SLだけだと行くのが不可能と思われました。
しおり
上記の相談や注意事項などはいつもGoogleドキュメントでしおりを作りながらやっています。というか、これを作るのが妙に楽しいんだな。計画性の鬼と呼んでくれ。
公開版を準備しましたので、ご自由にご覧ください。
というわけで、予定もパッキングもバッチリ、あとは寝るだけ。
0日目:自宅→シエナ、シエナ観光
朝8時前の電車に乗り、途中の乗り換え駅で姉さんと落ち合い、10時頃にシエナに到着しました。
電車遅延が頻発するイタリア、乗り換えを含むルートではいつもハラハラするのですが、今回は無事クリア。
1本目の電車で、降りる側のドアが壊れていたのはご愛嬌。
特急でやってきた姉さんは、駅前の広場で日本式輪行バッグから自転車を取り出して組み立て。鈍行(自転車をそのまま持ち込みOK!)でやってきた私は、そのお手伝い。無事組み上がったら、動作確認を兼ねてホテルへほんの1.42km/42m upの坂道を試走して、ホテルにチェックイン。
幸い部屋が準備できていたので、ありがたく荷物と自転車を置かせてもらい、観光に繰り出しました。
観光は本記事の趣旨とは外れるので割愛しますが、道中、今回の旅のマスコット的な何かが欲しいなーと思ったので、シエナ名物のイノシシを購入。
このときは亥ノ進(いののしん)と命名しましたが、響きの悪さから後日猪ノ進(ししのしん)と改名することに。気移りしがちな飼い主でごめんよぉ。
ちなみにイノシシはイタリア語でチンギアーレ(cinghiare)、ちんぎあーれ、ちぎらない…とは姉さんが言ったとか言わないとか。
イノシシは、トスカーナでミートソースパスタ(ラグー)を頼むと、9割に猪肉が入ってくるくらいにメジャーです。
食べるだけでなくモチーフにもなっており、シエナにはcinghiareという自転車チーム? ジャージ? もあります。シエナにでこれを着ているローディを何度か見かけました。お土産にいかがでしょう。
ちょっとだけ、思い入れのあるシエナの絶景だけご紹介します。
この景色は、去年私がピサから120km(不甲斐ないことにこの最長走行記録は未だ破れていない)を1人で走り、上り坂で足を痛めてボロボロになった果てにシエナに辿り着いて目にしたのと同じもの。
当時はスマートフォンの電源がなくなり、予備バッテリも空になり、目の前にこんなに美しい夕焼けが広がっているのに記録に残せず、リベンジを誓って心の中にしっかりと刻み込んだのでした。
1年経った今、(電車で来たけど)同じ景色を写真に残すことができて、リベンジ達成。あの頃と比べてどれだけ成長したかな、私。あの時と同じルート、また走りたいなぁ。
同じ場所で反対側に目を転じると、ちょうど沈みゆく夕日。
私がトスカーナを好きな理由の一つは、町が丘の上にあるところ。ぐるっと見渡せば、自分がどこから来たのか、そしてどこへ行くのか見えるからです。
明日からは、夕日に照らされたあのなだらかな丘の向こうまで走るんだ…なんて考えると、ちょっと感慨深くなりません?
この日の晩ごはんは飛び込みで入ったレストランでいただいた豚肉のソテー。脂たっぷりでちょっとカロリーオーバー?と思ったけど、明日走るから関係ないよね!
ちなみにイタリアは全土でそうですが、各土地に美味しいものがたくさん。
シエナ近辺ではイノシシの他、チンタ・セネーゼ(Cinta senese)という古代種のブタやそのプロシュット、サラミ、キアニーナ(Chianina)という牛を使ったフィレンツェ名物のTボーンステーキ、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナ(bistecca alla Fiorentina)、それにピーチ(Pici)というふとーいパスタが名物の代表です。
自転車旅行っていいですよね、走った分食べられるから。え、まだ走ってないって? 大丈夫、明日から本気出す!
1日目:シエナ→サン・クイーリコ・ドルチャ 59.31km/820m up
8:50 0km: シエナ出発
朝ごはんをたっぷり食べた後、ホテルを出発。ちなみに荷物を減らすために、初日に使用したスニーカーと服はバックパックに詰めてホテルで預かってもらいました。3日目、戻ってきたときに回収します。
さあ、オルチャ渓谷ゆるポタ旅の始まりです! 気温は15℃、天気は快晴、なんと最高のサイクリング日和なことか!
10:20 32km: ボンコヴェント(Buoncovento)
途中で写真を撮ったりはしゃぎながら走ること約32km。最初の休憩はボンコヴェント(Buoncovento)、幹線沿いの小さな村です。
本当はイタリア一美しい村と呼ばれているモンテローニ・ダルビア(Monteroni d’Arbia)という村で休憩しようと思っていたんですが、ボンコヴェントが「一番美しい」と完全に勘違いしていた…というのを執筆時点で気づくという失敗っぷり。
でもね、現地でモンテローニ・ダルビアと認識していても、きっと止まらなかったと思うんですよ。なんせシエナからたった10kmしか離れていないから。道がめっちゃ気持ちいいから、走り続けたくなるんです!
さて、ボンコヴェントです。市壁に囲まれた、小ぢんまりした田舎の村ですが、観光を意識してかとても清潔です。多分ドライブやバスツアーで短時間見学するような場所なのかな、と推測します。
この周辺はエロイカの舞台なので、こんなディスプレイも。
メインストリートは非常に短く、ちょっとしたアンティーク屋さんとおみやげ食品屋さんくらいしかなかったので、コーヒーとブリオッシュをいただいて、次の目的地に向けて出発。
12:20 45km: モンタルチーノ(Montalcino)
本日の目玉はこの町に到達するまでの、7km/347m up、平均勾配5%の坂。10km未満なら大したことないよ、ってことで、下界に広がるトスカーナの丘陵を楽しみながら登ります。日が高くなってちょっと日差しがきつくなってきたかな。豪脚の姉さんにちぎられつつ、それでも体力としては余裕のゴール。
このモンタルチーノは何を隠そう赤ワインの名産地。ロッソ・ディ・モンタルチーノ(Rosso di Montalcino)はワタクシのお気に入りでございます。が、今回は自転車旅なので、乗るなら飲むながモットーの私は飲酒を断念(法的には1杯くらいOKなんだけどね)。
予定通り、ここでお昼ごはんを食べます。頼んだのは、この地方の名物パスタ、ピーチ(Pici)! ふとーいのが特徴です。噛みごたえ満点。
お会計のときにチップをちょっと多めに出して、しばらく街歩きする間自転車をレストランの正面に停めさせてもらいました。
要塞と教会がいくつかあるので、のんびりと見学&休憩。
忘れずにジェラートもいただきました。
さて、最後はホテルまで15km、とばすぞー! とダウンヒルを始めたはいいものの、すぐに向かい風とオルチャ渓谷に特徴の緩い登りが発生して案外スピードが出ず。
しかし、苦しむ私の目に飛び込んできたのは、まさに絶景だった…!
そうそう、これよ! オルチャ渓谷といったら、緩やかに続く丘と、白い未舗装道=ストラーデ・ビアンケの脇に立つ糸杉の並木!
絶景を堪能したい気持ち2/3、ちょっと止まりたかった気持ち1/3で、その場にストップしてカメラを取り出す私。
道の脇にちょうど車を停めるスペースがあり、ドライブ中の観光客も皆ここで足を止めて、この景色に見入っていました。
これはもう、言葉が出なかった。
16:00 59km: サン・クイーリコ・ドルチャ(San Quirico d’Orcia)
絶景を堪能しつつ、本日のお宿、Antica Sostaに到着。下り坂のどこで曲がればいいのかわからず、先行する姉さんを止められなかったのは仕方ない。
宿は個人経営のB&Bで、入り口がわからず手間取ったものの、こういうのはご愛嬌。女将さんはとても親切な方で、お部屋もアンティーク風で素敵でした。
シャワーを浴び、ジャージを洗濯し、ちょっとお昼寝して、日が沈むちょっと前くらいに散歩兼晩ごはんに出発。
この村は(近隣のどの町とも同じく)観光に特化した村で、中世の趣を残しながらもインフラはとてもしっかり整備されていて、歩きやすく美しい場所でした。
こちらの人の感覚だと、きっと近所のアグリツーリズモの宿(田舎暮らしをテーマにしている)に1週間弱くらい滞在して、近所をドライブなりトレッキングなりするのがベストなんじゃないかな。
おすすめされたレストランは田舎(失礼!)にも関わらず洗練されていて、お値段は気持ち高め。しかし、どんなレストランでもお値段に応じたクオリティが得られ、かつ基本クオリティが高いのが、食の大国イタリア。もちろん美味でした。
客層は中年~壮年のご夫婦が多く、ちょっと背伸びしちゃったかな? と思いつつも、舌が満足したのでそれで良し。
2日目:サン・クイーリコ・ドルチャ周遊 42.83km/650m up
前哨戦:日の出ライド
この日の1本目のライドは、4時半起床で6時前出発。日の出を見るためです。私がこのオルチャ渓谷に来たモチベーションの半分以上は、日の出を見るためといっても差し支えないレベルです。
前日のチェックイン時に女将さんに、朝日を見に行きたいんだけど、と伝えたら、朝食場所に置いてある食べ物は好きに食べていいわよ、とのお言葉をいただいたので、その配慮にありがたく感謝し、軽く朝ごはん。
日が昇る前は気温が下がるのも見越して、秋ジャケットをしっかり持参してきました。カメラを装備して、いざ出発!
と、ここでトラブル発生。本当はCapella Vitaletaというところでいい感じに写真を撮りたかったのですが、なんと宿からの最短経路は、車道から離れてトレッキングルートになっているグラベルを2km程度歩かなければならない場所に。
間に合わない&装備的に無理なので、グラベルの入り口で朝焼けを何枚か写真に収めた後、車道を辿って見晴らしのいい場所を探します。
いい感じの場所を見つけはしたのですが、今度は私の腕がないせいでいい感じの写真が撮れず… 日の出も撮るには撮れましたが、実際に自分で見たときほどの感動はないですね。うーん。下見って大事だなぁ。
結局写真を撮りつつ1時間くらい外でのんびりして、7時前に宿に戻ってきました。二度寝、それから起きて2回目の朝ごはん。え? 食べ過ぎだって? 大丈夫、走るから!
10:30 0km: 宿出発
本日は温泉大好きな姉さんの欲望を満たすため、天然温泉と温泉保養地の2箇所を訪れ、そしてスパでひたすらだらけるのが目的です。
3km/平均斜度-5%くらいの道をかっ飛ばしながら、帰りにこの坂を登らなきゃいけないのかー、と考えつつ、それでもオルチャ渓谷のなだらかな丘陵を楽しみつつ、まずは最初の目的地へ。
11:40 21km: バーニ・ディ・サン・フィリッポ(Bagni di San Filippo)
ここは天然温泉が湧き出ているところで、観光案内にも名前が登場します。温泉といってもまったく整備されておらず、日本で言うなら「川沿いに温泉が湧いてるから勝手にどうぞ」系でしょうか。
険しい坂を登って近くまで舗装道で行き、そこから足場の悪い未舗装道を徒歩で下ってやっと現場到着、という結構ハードモードな場所。私はSPDでそのまま突撃、姉さんは折りたたみスニーカー持参です。
訪れた人の口コミによると「臭い」らしく、温泉大好きな姉さんは飛び込みたそうにしていましたが、ンなことされたら道中ずっと私が先頭を引かないといけないじゃないの。
わかりにくい入り口を通って、川のせせらぎの音に導かれるまま辿り着いた先はーー
白っ!
この白いブツは炭酸カルシウムらしいです。そして居並ぶ水着のイタリア人たち! すごいな!
ちなみに足元はマリンシューズ着用の人が多かったです。こんな足場の悪い場所だと便利そう。
周辺にはおみやげ屋さん、レストランがほんの申し訳程度にあるだけでした。有料プールもあるらしいですが、場所がわかりませんでした。
我々は写真を撮り、水にちょっと触って満足。次の目的地へ。
13:30 37km: バーニョ・ヴィニョニ(Bagno Vignoni)
ひたすら発音しにくいこの町ですが、温泉スパのある場所として有名だそうです。姉さんの希望で、ここのスパに行くことに。もちろん水着持参です。ちなみに私はこれがイタリア在住4年にしてスパ初体験。
スパに入る前に、町をぐるりと見て歩きます。
町のちょっと町外れの坂の下には、上記と同じような天然温泉(無料)があるらしいのですが、既に坂を登って町に入ってしまっていた我々、上り下りが面倒なので天然温泉を見に行くのは割愛しました。
町の中心にはバールと簡単なレストランがいくつか。四角の人工池がシンボルみたいです。中にはなぜかバレリーナのチュチュ?を着た人形がたくさん。夜になったらライトアップされるのかな。
そしてスパへ。自転車はスパの敷地内に置かせてもらい、水着に着替えたらいざ突撃! 中はローマ風サウナと温度の違うプールがいくつか、あとはおひさまの下デッキチェアに寝そべってうとうとするスペースがありました。曇りがちで、デッキチェアで昼寝をすると風邪を引きそうな気温だったのが残念。
水分補給の紅茶とビタミン補給のリンゴをいただきつつ、ひたすらダラダラしました。
スパを満喫した後は、さすがにお腹が空いたので町中のお店でパニーノを購入。イノシシのサラミと近所の町ピエンツァ名産ペコリーノチーズを挟んでもらいました。こんなときはついでに赤ワインも頼みたくなりますが、自転車で来てるから、我慢ガマン。
ちなみにイタリアのパン屋さんでパニーノを注文するのは超ハードモード。サブウェイよりも自由度高くカスタマイズできるのですが、どのパンにするか(名前なんてわからないのに!)、何を挟むか(何があるかもわからないのに!)、塩コショウオリーブオイルはどうするか、を伝えなければなりません。困ったら指差しでなんとか乗り切るのが吉。
店の脇のテラス席でパニーノをかじっていると、姉さんの自転車に興味を持ったイタリア人のおじさまが話しかけてきて、しばらく自転車談義をしました。人懐っこいのはいいけど、断りもなく自転車に触るのはやめてくれー!
18:30 43km: 宿帰還
体力が回復したところで、行きに下った坂も難なくこなしてホテルに帰還。ちょっと休憩して、日が沈む頃に晩ごはんへ。明日は早起きする必要がないので、ちょっと遅くまで飲んでも大丈夫、と言いつつ、町中まで歩くのも面倒だったのでホテル隣のレストランで済ませました。
3日目:サン・クイーリコ・ドルチャ→シエナ 56.73km/855m up
この日の目標は、姉さんの電車に間に合うよう、15時までにシエナ駅に到着すること。生憎の曇り空で、16時くらいには一雨来そうでしたが、走っている間は大丈夫そうな模様でした。
せっかくなので来たときとは違うルートを通り、今回は白トリュフが名産の町アシャーノで早めのお昼ごはんを食べ、シエナに到着するという予定を立てました。
9:40 0km: サン・クイーリコ・ドルチャ出発
サン・クイーリコ・ドルチャを出て20km弱走ると、たまに急な坂が顔を出す、クレテ・セネージ(Crete Senesi、シエナの泥の意)と呼ばれる地域に入ります。ここは土壌が特徴的なグレーの色をしているらしく、それが緩やかな丘に連なっているとまるで月の表面のよう…らしいのですが! が!
4月後半の当時は春真っ只中、牧草が青々と茂り、黄色の花がまるで絨毯のように地面を埋め尽くす、素晴らしい景色が目の前に広がるのです!
幸か不幸か、この地域は道路脇の立木が非常に少なく、日陰はなかなか見つけられないものの、眼前の絶景を遮るものは無し、下りカーブも見晴らしが良くて安心してかっ飛ばせる、真夏でなければ素晴らしい以外の言葉が出ないような場所なのであります。
青々と茂る牧草は初日で十分、あのWindows風の景色の衝撃も初日で消え去った…と思っていたのですが、所詮ボンコヴェント付近はただの平坦。そこに丘が加わることで、なんというかもう、人の語彙を激しく奪い去り、ただひたすら走り続けたくなるような体験ができるのです。
この日も、この絶景をなんとかカメラに収めるべく悪戦苦闘したのですが、生憎私の腕ではどうにもならず…
しかも車の交通量も非常に少なく、初日でも十分らくらく走れたのですが、この日このエリアでは、あれ、追い越されたことあったっけ? と首を捻るくらいのレベル。そもそもイタリアでは車道走行で苦労することは滅多にありませんが、この交通量の少なさ、まさに天国でした。
是非一度この場所に行って欲しい。拙い筆力を尽くして、全日本のサイクリストに力の限りおすすめする次第です。
11:20 30km: アシャーノ(Asciano)
元々ここでお昼に白トリュフを食べるつもりだったのですが、私も姉さんもまだまだ元気いっぱいだったため、寄り道せずに通過。ま、また来る機会はあるさ。
我々がここを走ったのは奇しくもノヴァ・エロイカの一週間前だったため、あちこちにコース案内の札が貼ってありました。
この辺りを走ると、車が停められるスペースと共にVista Panoramicaというサインをよく見かけます。「絶景ポイント」の意で、いやこれが本当に絶景なんだって。
「せっかくだからちょっと止まって写真を撮ろうよ(本音はついでに休みたい)」ができるのが自転車のいいところ。
13:00 56km: シエナ着
アシャーノを素通りしたせいか、目標時間より2時間も早く到着しました。さすがにお腹が空いたので、服を預けていたホテルでバックパック回収…と見せかけて自転車を預かってもらい、町中でお昼を食べた後、ホテルで荷物を全部回収して、駅まで撤収。電車の時間には余裕で間に合いました。
無事帰宅も果たして、遠足終了。いやーー、何よりもう絶景の旅でした。
おわりに
反省点
今回は反省点は特になかったんじゃないかな。1日の走行距離を抑えたおかげでエネルギーのマネジメントも問題なく、大きなトラブルもなく終わりました。
強いて言えば、モンテローニ・ダルビアとボンコヴェントを勘違いしていたくらいか…
反省点ではなく次回の目標として、サン・クイーリコ・ドルチャからもっと東にあるピエンツァやモンテプルチャーノ、キアンチャーノ・テルメにも行きたいですね。この辺りも観光地として有名です。
かかったお金は?
1+3日間でいくら使ったのか、気になるお金を公開。宿や食事は割り勘後の金額です。
日 | 摘要 | 金額(€) |
---|---|---|
0 | 宿泊(2人1部屋、1泊) | 48.155 |
大聖堂見学チケット | 5 | |
昼食 | 9.5 | |
夕食 | 31.75 | |
1 | コーヒー | 1 |
昼食 | 10.5 | |
夕食 | 31.5 | |
宿泊(2人1部屋、2泊) | 62 | |
2 | スパ | 38 |
遅めの昼食 | 6 | |
夕食 | 26 | |
3 | 昼食 | 8.25 |
合計 | 277.655 |
0日目のシエナはビジネスホテルに宿泊したのと、夕食で結構しっかり食べたのでちょっとお高め。
1日目・2日目の夕食も、田舎町ではありますがお高めのお上品なお店でワインもちょっと飲んだので、こんなものでしょう。
特筆すべきは、1・2日目の宿の安さ! 4月末のイースター休暇というそれなりに良いシーズンにも関わらず、1月というかなり早い時期に予約したのが功を奏したのか、こんなお値段でした。
最高の景色と走行環境を備えたオルチャ渓谷、皆様もぜひどうぞ!
▼ ikueさんのその他の記事はこちらから読めます