長野県東御(とうみ)市の「湯の丸高原・地蔵峠(標高1732m)」からお隣の「高峰高原・車坂峠(標高1973m)」まで全長約9km弱の「湯の丸高峰林道」をグラベルロードで走ってきたので、現地の様子をご紹介します(下の地図の赤枠の部分)。東京から日帰りで遊びに来られるルートです。
地蔵峠に至るまでの東御嬬恋線については下の別記事で紹介していますので、そちらも併せてお楽しみいただけると幸いです。
▼ 地蔵峠までのアプローチの紹介記事はこちら
湯の丸高原・地蔵峠〜池の平湿原
アプローチのヒルクライムを終え、標高1732mの地蔵峠を出発します。この先の道については事前に全く下調べをしていなかったので、どこに向かえば良いのか戸惑います。「高峰高原」や「車坂峠」方面、といった看板は見当たりません。
Google Mapを見ると「湯の丸高原ビジターセンター」のすぐ脇の舗装路を進んで行けば景勝地「池の平(いけのたいら)湿原」方面に出ることがわかりました。
ゆるやかな坂を登っていくと「高峰高原出口ゲートは17時に締めます…」という看板が。よし、間違いない!
しかし様子がヘンです。私はてっきり、地蔵峠からすぐにダートが、グラベルが開始するのかと思い込んでいたのですが、どうも「新たなヒルクライムが始まってしまった感」がありありです。地蔵峠までの登坂で既に体力の80%は使い切っているので、やや不安な気持ちに。
登れども登れどもオフロードは見えてきません。何度かつづら折りを曲がると、だいぶ前に「このリフト、ずいぶん上まで続いているなぁ。まさかリフトの終点まで登らされたりしないだろうな?」と懸念しつつ見上げていた地点が遠くに見えました。
そして、そのまさかでした。地蔵峠からすぐにグラベルが始まるわけではなく、追加で4kmほど登る必要があったのです。これは、むしろ知らないでおいて良かったです。知っていたら地蔵峠をダウンヒルして帰っていたかもしれません。この区間は激坂ではありませんが、8%は頻出という感じです。
やがて「池の平湿原」の駐車場が見えてきました。途中、何度か観光バスに抜かれましたが彼等はここに向かっていたようです。
ツアーの観光客が結構いて、私も池の平湿原を散策してみたい誘惑に駆られます。しかしこの先どんな道かは知らず、地蔵峠での大休止で少しだけ回復した体力も思わぬ再登坂で帳消しになってしまいました。ここは観光を我慢し、先に進むことにします。今度は池の平高原で一泊して、登山目的でここに来てみたいと思いました。
池の平湿原の案内看板を見ると、現在地は標高2061mとあります。地蔵峠から329mも追加で登らされていたのか… 標高1973mの車坂峠まで、グラベルをゆっくり登っていけるのかな、と夢想していたのですが、まさか車坂峠より高い場所までのガチヒルクラになるとは考えてもいませんでした。 …ということは、この後は下り!?
湯の丸高峰林道へ
池の平湿原のすぐ先に「ここから先は危険地帯だ! 覚悟は出来ているな?」という感じのゲートが待ち構えていました。ああ、ついに… ついに来た! これが地蔵峠と車坂峠を結ぶ「湯の丸高峰林道」のオフロード。子供の遊びは、ここまでだ!と心の中でカッコよく呟きつつ、フラフラとよろめきながらグラベルロードにまたがります。
景色も開けてきました。地蔵峠には遠くを見下ろせるような展望はなかったのですが(ちょっと歩けばあるのかも)、ここからの見晴らしは期待通り。絶景とまでは行かないまでも、心にしみる広大さです。快晴でないのは少し残念ですが、仮に快晴であったのなら地蔵峠への登坂中に熱射病で倒れていたような気もします。
池の平湿原からはじまるグラベル(約4〜5kmのオフロード)は、前半が下り基調でした。程良い斜度ですがスピードの出るセクションも多く、バイクコントロールを存分に楽しめます。
この日の筆者のタイヤはPanaracer GravelKing SS 700×43です。走っていて思ったのは、この道は28mmでもパンクせずに走行は可能かもしれないが、かなり気は使うだろう、あと振動の大きさを考えると35mmはあったほうが良いなぁ、ということ。一旦停車して空気圧を落としました。
久々の本格グラベルに感動しつつ、下ハンを握り締め調子に乗って爆走します。するとガコン、という大きい衝撃が!
パンクではありません。首です。首に来ました。路面からの突き上げで、首がもげそうになったのです。これはまずい、ということでさらに空気圧を落とします。こりゃもうあれだ、ここはフロントサスがあったほうがいい。というか、必要だ! と感じました。
路面を読みながら集中して走るのも楽しいですが、やはり景色も楽しみたい。というわけでたびたび立ち止まり、恐らく御代田と思われる町並みを眺めつつ休憩。
爆走しても、石・岩・木々を眺めながらポタリングしても楽しい道です。
それにしても長い下り。道は反対側のあの山の斜面までカーブを描きながら続いています。池の平湿原まで登ってくるのは大変でしたが、高峰高原側からこの道を登ってくるのも大変でしょう。でも、この道の登りなら楽しいはず。
やがてアップダウンが増え、高峰高原に近付くにつれて上り基調になってきます。GravelKing 700×43も「ここが俺のフィールドだ。本当の俺を知らなかったろ?」と言わんばかりの調子の良さ。ブレーキングで滑っても挙動が分かりやすく、上りでの路面への食いつきも素晴らしい。
来た道を振り返ると、光線の具合が絶妙です。高峰高原側からは上り基調になるけれど、のんびり写真や動画を撮るなら逆方向も良さそうです。一本早い新幹線で来ていれば往復したかった…
さすがにこの高度では紅葉も始まっています。今月末には絶景が見られることでしょう。
ふと足元を見ると、斜面はかなり急です。ガードレールがあるので自転車なら落ちることはないと思いますが、崖下に滑落したらまず助からないレベルの箇所がいくつもありました。
ゆるやかな上り坂グラベルを楽しんでいるうちに、やがて「高峰温泉」が見えてきました。
下は過去に見たことのあるスキー場です。むかし、ロードバイクやブロンプトンで車坂峠からここまで覗きに来ては、この先は走れそうにないなぁ、と引き返していた地点なので、よく覚えていたのでした。
車坂峠から16kmを下り小諸へ
そしてゴールの車坂峠に到着。湯の丸高峰林道は池の平湿原までが約4.4km、車坂峠までのグラベルも4.4kmという感じでした(筆者GPS調べ)。いっやー、走りに来て良かった。貧脚の私にとっては久々のビッグライドです。
地獄のヒルクライムと痛快なグラベルを経て、車坂峠からのこの景観。高峰高原ホテル前からのこの景色はいつ見ても心が洗われます。これでまた頑張れるだろう。2〜3日、寝込んだ後に。
最奥に見えているのは金峰山と国師ヶ岳でしょうか。右手には富士山があるかもしれませんが、雲に隠れているようです。地蔵峠は90度右方面です。
小休止の後、出発地の「しなの鉄道・小諸駅」まで一気に16kmを下ります。この日のブレーキはメカニカル・ディスクのTRP Spyre SLC。チェリーパークラインを下るには上ハンだけではパワーが足りないため、グラベルで疲れ切った首筋に活を入れ、下ハンを握りダウンヒル開始。油圧ほどではないにせよ、リムブレーキより何倍も楽にブレーキングしつつ下ります。
ノンストップであっという間に標高1310m下の小諸駅に到着。パンクも事故もなく、無事にこの日のライドを終えることができました。
ちなみにTRP Spyreは効きも十分、軽量で輪行でも気を使わず、あらためて良いブレーキだなと実感。そしてこの日の主役機材、Panaracer GravelKing SS 700×43。これまた活躍してくれました。いずれ別記事で紹介予定ですが、かなり好みのタイヤです。
湯の丸高峰林道の基本情報
以下、湯の丸高峰林道を走ってみたい方のために基本的な情報をまとめます。
- アクセス:しなの鉄道・滋野(しげの)駅または小諸駅から地蔵峠へ(東御嬬恋線)、または小諸駅から車坂峠へ(チェリーパークライン)。JR東京駅から日帰り可(新幹線・電車で約1.5〜2h)
- 距離:約9km(池の平湿原〜車坂峠)・ダート区間約4.4km
- 推奨タイヤ:快走するなら700x35mm以上(筆者は43mm使用。用心して通過するだけなら28mmのグラベルタイヤでも行けるかも ※保証はしません)
- 特記事項:池の平湿原側からはダウンヒルに好適、車坂峠側からは後半登りが多いのでのんびり散策ライド向き
本文中にも書きましたが、この日思ったのは「フロントサスのあるグラベルロードだとなおいいなぁ」ということ。また地蔵峠までのアプローチを考えると、電動アシストのあるE-グラベルならなおのこと余裕を持って楽しめそうだ、ということです。
筆者がここに来るには輪行が必須であるため、E-BIKEは現実的ではないのですが、近辺に住んでいたら買ってしまうかもしれません。なにしろ長野にはこういう道がたくさんあるようですから!