下の写真を見てみましょう。フロントフォークにラックがあり、大型パニアバッグを左右に設置。ステムバッグとトップチューブバッグも見えます。が、リア側に荷物はありません。実際にこのバイクに乗ってみたら、どんな印象を受けるでしょうか。乗りづらいでしょうか。
積む時はリアからはじめたほうが良い?
海外メディアを眺めていたところ、上の写真について次のようなコメントが寄せられていました。
これは想像しうる最も愚かなセットアップだよ。バイクを安定させられるリアを軽くして、全ての荷重をフォークに振り当てている。フォークには十分な安定性がないだけでなく、バッグの重さと慣性のせいでバイクのコントロールもできない。荷物を積む時はリアから始めて、スペースがなくなってきたらフロント側にも、というやり方でないとダメだ
このコメント、多くの低評価が付けられています。「想像しうる最も愚かな」や「〜でないと意味がない」といった乱暴な言葉遣いが原因だと思います。
しかし内容自体は、私も「確かにそうだよな」と頷けるものではありました。
この写真に近いセットアップは、私も実験したことがあります。フロントはパニアバッグ2個ではなく、フォークパック2個でしたが、大型サドルバッグに入っていた荷物をフォークパックの空きスペースに分散させ、サドルバッグを取り外して走ってみました。
すると、荷重の違和感はやはり大きかったですね。ステアリングはやや鈍重になり、もたつきがち。
しかし、フォークパックに入れた荷物を大型サドルバッグに戻して走ってみたところ、サドルバッグ分の重さが増えているはずなのに、走行感はずっと軽快です。
私の感想ですが、走行感や安定性を考えると、荷物が多い場合はリアのパニアバッグが最も良い。しかしラックやパニアは重くてちょっと… という場合は、大型サドルバッグが良い。サドルバッグは重心位置が高いので、重いものはシートポスト側に詰めるなど工夫しないと左右に振られることもありますが、重いフォークのほうが扱いにくいと感じます。
確かにリアから荷物を積んでいって、それでも足りなかったらフロントパニアなりフォークケージなりに、軽い荷物を担当させたほうが良いとは思います。私はオルトリーブのフォークパックを使っていますが、着替えのような軽いものを入れておく分には便利。あくまでプラスアルファと考えたほうが良いとは思います(全体の荷重分散を優先する場合)。
ハンドルバーバッグやフォークパックの意外なメリット
フロントパニアにせよ、ハンドルバーバッグにせよ、フォークパックにせよ「操舵系をそんなに重くして… バカじゃないの?」という意見が聞こえてきそうですが(でも言い方に気をつけましょうw)、それぞれにメリットもあるわけです。結局は何を重視するか、ですね。
ハンドルバーバッグは、補給食やカメラをすぐ取り出せるのでやはり重宝します。さらに、ハンドルバーバッグやフォークパックには、輪行時に取り外す必要がまずないという大きいメリットもあります。輪行袋の中ではデッドスペースに位置するので、そのまま収納できます。縦置き輪行袋の場合、大型サドルバッグなら外す必要があります(外して手で持てば良いけれども)。
すると「ハンドルバーバッグ・フォークパックというフロントヘビーな構成で、リアにはバッグ類がない」という状態でも、ある人のある日のライドにおいては、それが理に適った選択になっていることも、きっとありうるでしょう。
バイクでの理想的な荷重分散を求めるか。荷物へのアクセスや、取り回しの良さを追求するか。何を優先するかで、正解は変わってくるでしょう。