サイクリングでやらかした最大の失敗談を教えてください、というスレッドを海外掲示板で見かけました。本記事時点で266コメントの賑わいを見せています。
出典 What are your biggest cycling fails?
数々の失敗談が投稿されているのですが、その中で最も注目されているコメントがこちらです(抄訳)。
28mmタイヤを履かせたロードバイクで6000フィート(1828.8m)の山のトレイルを走っていた。1日中、人間の姿は見かけなかった。
半分ほど登った頃、水が尽きた。気温は38.9度(102F)で灼けつくような暑さだった。山頂で大きい岩にヒットしてしまい、フロントリムが割れてタイヤが外れた。
Google Mapを使い、文明へと至る最短ルートを取ることにした。地図を追ってトレイルを離れ、倒木の上を歩きながら藪のなかを進んだ。自転車は肩で担いでいた。
トレイルを離れて2時間後、ひどく脱水して憔悴しきった私は、自分が本当にヤバい状況に陥っていることを悟った。ほとんど進んでいなかったし、そのペースでは翌日まで文明社会には戻れないだろうと思った。かなり険しいトレイルを登り返す力はもう残っていなかった。
呼吸が難しくなってきた。日は暮れはじめ、暗くなってきていた。スマホのバッテリー残量は5%以下で、電波は数分おきにアンテナが1つだけ立つ程度だった。緊急サービスに5回ほど発信を試し、ついに自分の大体の位置を伝えることができた。そのときバッテリー残量は1%だった。
20分ほど経ち、ヘリコプターの音が聞こえた。保安官のヘリだった。森のまんなかの小さく開けたエリアで、私は自転車用ライトをヘリに向かって点滅させた。ヘリは私の近くを数分回ったあと、去った。さらに10分が経過すると、赤白の巨大なヘリがやってきた。頭上にやってくるとものすごい風だった。
消防士がロープを投げ、私のところに降りてきた。ハーネスを渡してくれ、次に何をすれば良いか教えてくれた。ヘリコプターまで吊り上げられた時、非現実的な感じがした。消防士は本当にいい人で、もう1度下に降りて私のロードバイクを引き上げてくれた。
あの森で、ひとりで夜を過ごしていたらどうなっていたかはわからない。Verizon(アメリカの携帯電話事業者)と消防署に救われた。
これには「よし、このスレッドのチャンピオンは君だ」というコメントが寄せられています。水不足、高温、メカトラ、遭難未遂、スマホのバッテリー枯渇、間一髪でのコンタクト成功、ヘリの登場等々、確かにドラマチックな体験談ですね。コメント主さんは当時18歳になったばかりの頃だったそうです(幸いヘリコプターによる救助費用はかからなかったらしい)。
投稿者さんが遭難しかけた山はこんなところ(前半、まだ調子が良かった時に撮影した写真だそうです。詳細な場所は不明ですが合衆国と思われます。日本でもよくありそうな地形に見えます)。快晴の日だと日当たりがきつそうです。ボトルは2本挿してありますが、荷物は小型サドルバッグのみ。夜に走る予定はなかったと思いますが、ライトは活躍したようですね。
最も危険な要素は水が尽きたことですが、Google Mapで最短距離に見えるところに道のないところを降りていくのも、よほど勝算がないと難しいと思います。谷に降りていっても崖に阻まれ先に進めないことや、沢を辿ると迷いやすいという話も聞きます。この場合は比較的開けたところで、かつ直射日光のあたらないところで動かずに救助を待ったほうが良かったかもしれないですね。
教訓はこんなところでしょうか:
- 夏場は普段以上に水を持つ(知らないところを走る場合は特に)。または現地で水を得る技術を習得しておく
- 救助が必要になるかもしれないエリアを走るならモバイルバッテリーを持っていく
- 体力も水もない状態でトレイル(轍・踏跡のある道)から離れ、知らない山をやみくもに里を目指して降りていくのは危険
- ヘリコプターによる遭難救助オプションのある保険に入っておくこと