東京都に属する伊豆諸島や小笠原諸島などの離島で、サイクリング旅行を楽しみたい。しかし、どこがどんな島なんだろう? どうやって行くんだろう? そもそもサイクリングはできるのだろうか? といった大きい疑問がまず出てくると思います。
私自身まだ行ったことのない島があるのですが、「そもそも御蔵島ってサイクリングできるんだっけか?」などと疑問に思って調べ直すことがよくあります(そして後で忘れてしまいます)。
サイクリングを含めて、目的の島でどのような活動をするか。何泊するのが適切か。といった「旅先の詳細」については、この記事のスコープ外。ここでは「大きいザックリとした選択肢として、◯◯島は次の自転車旅行の候補地になりうるだろうか」という、より予備的な検討段階での資料提供を目的としています。大きいイメージをつかむための記事です。
もともと自分のために整理してみたものですが、読者の方にもお役に立てれば幸いです。
東京諸島とは
そもそも「東京諸島」とは何でしょうか。この記事では「伊豆諸島」と「小笠原諸島」に含まれる11の有人島、と定義します。伊豆諸島には9つの有人島があり、小笠原諸島には2つの有人島があります。まずはこれら11の島を「ざっくりとした特徴・イメージ」とともに、まとめてみました。
- 大島: サイクリストには一番人気の離島。東京都内から最も近く、人口も多く、サイクリング環境も良い(過去にアジア選手権が行われたこともあり、イベントも開催)。1周道路は約44kmで、ヒルクライムや林道サイクリングも楽しめる。ほぼ説明不要の人気島
- 利島: 大島のすぐ近くの美しい円錐形の島。椿の生産量は日本一と言われ、イルカ見学でも人気がある。小さい島のため、道路は一周で約8kmほど。深く狭くポタリング観光を楽しむのが良さそう。温泉や海水浴場はない。港が風波に弱いので、船の就航率は低い
- 新島: サーフィンが何より人気の島。露天風呂も多い。島の北部に至るトンネルは自転車が通れないようだが、そこ以外はサイクリングを楽しめる場所はまあまああるようだ
- 式根島: 宮城県の松島に雰囲気が似ていることから「式根松島」と呼ばれている。景観・海水浴・温泉を楽しみに来る人が多い。道路1周約5km。新島とセットで訪れるのも良さそうだ
- 神津島: 天上山という美しい山がある(大島の三原山に雰囲気が似ている)。ヒルクライムも登山も楽しめる。景観に特に優れる。星空が美しい
- 三宅島: 近年は約20年周期で噴火しているわりとヤバい火山。伊豆諸島では3番目に大きい。空から見ると大島に似た構造で、中央に「雄山」という活火山がズドンとそびえ、島の外周に約30kmの一周道路がある。一般的にはイルカ見学・バードウォッチング・トレッキング目当ての観光客が多いが、サイクリングも楽しめる。大島同様、次の噴火で自然環境がリセットされる前に行っておきたい島である
- 御蔵島: サイクリングとキャンプが常時禁止されている秘境。船の就航率が極端に低く、上陸できなかった時は同じ船で一度都内に戻ったり、隣の三宅島や八丈島で待機してから再上陸を試みる猛者も多い。そこまでして行きたい人が多いのは、イルカが多いから。トレッキングも魅力的だが、ガイドなしで歩いてはいけないところも多い
- 八丈島: 伊豆諸島では大島に次いで大きいひょうたん型の島。一周道路は約57kmあり、ヒルクライムも林道サイクリングも楽しめる。一般的には釣り客に大人気。登山向きの山も2つあり、シュノーケリングなどのマリンスポーツも人気の大観光地
- 青ヶ島: 八丈島の南にある小さい島。火山の外輪山のなかに町があるという特異すぎる地形から、海外でも知名度が高い。島1周は徒歩で3時間とのことなので、ガッツリ走るというより島での時間そのものを楽しみたい。八丈島とセットで訪れる人が多い。船の就航率は高くはなく、秘境的
- 父島: 小笠原諸島の島。サイクリングは可能だが、島へのアクセスは大型船のみで所要時間24時間。東京からニューヨーク経由でブラジルのサンパウロに飛べるくらいの時間がかかる。私にとってはほぼ外国。船は週に2便あるが、1週間滞在したほうが良いだろう(※繁忙期のみ週2便、それ以外は1便のみになるので必然的に最低1週間滞在になることがある)
- 母島: 父島とセットで訪れたい島。父島からは船で2時間。父島と母島の両方を楽しむことを考えると小笠原での滞在はやはり1週間にはなる。サイクリングは可能。なお父島・母島ともにキャンプは全島で禁止されている
どれがどんな島だっけ? と思った時に、上が少しでもご参考になれば幸いです。
あれ、「伊豆七島」って聞いたことあるんだけど…
ここで豆知識です。上で紹介した「伊豆諸島」には9つの有人島が含まれています。しかし過去には「伊豆七島」という呼称がありました。それはなぜか。
式根島は、行政区画上は「東京都新島村」です。そのため昔は、式根島が新島の一部という考え方をされていた時期があったようです。また青ヶ島は行政的には「東京都青ヶ島村」ですが、八丈島と深い経済的な結び付きがあったため、いつしか式根島と青ヶ島を除外するかたちで「伊豆七島」という呼称が一般的になった、とされています。
しかし式根島と青ヶ島の人々にとってそれはおもしろくない。のは想像に難くなく、現在は「伊豆七島」ではなく「伊豆諸島」と呼ばれる傾向にあります。
ちなみに下の表でまとめたように、東海汽船のジェット船シリーズ「セブンアイランド」(結・愛・友・大漁)は、「七島」という意味ではあるものの、実際に寄港するのは5つの島だけです。
サイクリストのための選択肢・早見表
サイクリストがこれらの東京諸島を旅したい、と考える時、真っ先に除外されてしまう島があります。それは御蔵島です。なぜなら先述したように島内でのサイクリングが禁止されているからです。坂がすごいので危ないから、という理由らしいのですが、自然保護の意味もあるのかもしれません。自転車を持っていくと警察に一時没収されるそうです(キャンプも不可で、上陸には宿の事前予約が必要)。
どの島でサイクリングが可能か(サイクリングして面白いかどうかではなく、許可されているか)。バイクパッキング派だが、キャンプ場はあるだろうか。交通手段はどんなものがあるだろう。それらを下の一覧表にまとめてみました(島名のリンク先はいずれも自治体の観光サイト・行政サイトになっています)。
自転車 | キャンプ場 | 高速船 | 大型船 | 空路(注2) | |
大島 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
利島 | ◯ | ✗ | ◯ | ◯ | ◯ |
新島 | ◯ | ◯(注1) | ◯ | ◯ | ◯ |
式根島 | ◯ | ◯(注1) | ◯ | ◯ | ◯ |
神津島 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
三宅島 | ◯ | ◯ | ✗ | ◯ | ◯ |
御蔵島 | ✗ | ✗ | ✗ | ◯ | ◯ |
八丈島 | ◯ | ◯ | ✗ | ◯ | ◯ |
青ヶ島 | ◯ | ◯ | ✗ | ◯ | ◯ |
父島 | ◯ | ✗ | ✗ | ◯ | ✗ |
母島 | ◯ | ✗ | ✗ | ◯ | ✗ |
※1 本記事時点で新島・式根島ではキャンプが一時禁止されています。他島の状況も各自治体サイトで事前にチェックしてください
※2 空路は小型機・ヘリを含みます。また全ての空路で東京都内からの直行便があるわけではありません
サイクリングが可能な島の多くでは、レンタサイクルの利用が可能です。自前の自転車を持っていく場合、ジェット船では大型手荷物2個までという縛りがあるので、バイクパッキングにはやや不向き(空路でも結構大変)。軽装で折りたたみ自転車ならだいたいどこでもどんな交通手段でも大丈夫。
利島・御蔵島・父島・母島ではキャンプ行為自体が禁止されているので、どうしてもキャンプをしたい人にとってそれらの島は外れることになります。なお、上の表でキャンプ場あり、となっていても、指定キャンプ地以外での野宿は禁止されており、キャンプ場は有料のみの島もあります(季節限定の場合もあり)。詳細は各自治体のホームページをご参照のこと。
まとめ
このざっくりとした情報をもとに、この島に行ってみたいな、と思った時はあらためて島の詳細を調べてプランを立ててみてはどうでしょうか。
所要日数的には、神津島までなら現地一泊でも楽しめる(存分に楽しむには足りないものの)けれど、三宅島〜青ヶ島までは現地二泊以上のほうが良いでしょう(島や交通手段によっては到着時がお昼頃だったりするので、旅の組み立てが難しいこともあります)。
なお小笠原の父島行きの船は最安の船室でも往復約6万円、現地で5泊することを考えると旅費は最低でも10〜15万円を超えるでしょう。船でまる2日を過ごすことを考えても、一生に一度あるかどうかの大旅行になりますね。
極端に小さい島を除くと、どの島もメジャーな道・観光地以外に探検できるところがたくさんあるので、仮に日帰りや一泊しかできない場合でも、何度でも再訪するという楽しみ方もおすすめです(一般の地図に記されていない道がたくさんあったりします)。
気候的には、神津島以南は湿度が高く、夏は蒸し暑い印象(ですが、最近の東京都内よりもずっとマシな時もあります)。秋から春にかけては過ごしやすく、マリンスポーツ系の観光客も減るのでサイクリストにとっては非常に良い季節だと思います。