B.B.BASEはJR東日本が運行するサイクリスト向け特別列車です。専用ラックにロードやクロスをそのまま積み込めるのがウリです(*タイヤ幅50c以上は積載不可なのでMTBは要注意)。
東京・両国と千葉の4方面(内房・外房・佐原・銚子)を結んでいます。
公式サイトを見ても大変分かりづらいのですが、What’s New欄に昨年(2019年)10月付でアップされているプレスリリースにある通り、2周年を記念して2月末まで特別割引価格で利用できます。
参考 おかげさまでB.B.BASEは、2周年を迎えます!2019年12月~2020年2月出発分B.B.BASEの運転スケジュールおよび旅行商品等について
公式 BBBASE | 東日本旅客鉄道株式会社 千葉支社
私は昨年11月に初めて利用したのですが、晴天の土曜日で座席の埋まり具合は2割ほど。12月からの割引キャンペーン直前で買い控えがあったのかもしれませんが、この乗車率、ヤバくないですかね…? 客を呼び込むカンフル剤として割引に踏み切ったのかな?とすら思えます。
もちろんたまたま客が少なかっただけという可能性は十分あるのですが、仮に恒常的な客足不振ならば原因はなにか、打開策はありそうか、といった点について、素人目線で考察したいと思います。
特急切符ではなく旅行商品である
いきなりうんちくですが、「B.B.BASE(Boso(房総) Bicycle Base)」は各種特急や新幹線とは異なり、「旅行商品」の扱いです。
要するに駅の券売機では買えず、JRの旅行商品販売サイト「えきねっと」を使う必要があります。この購入手続きが面倒で、20項目を超す注意事項の確認、行き先選択、日時選択、人数選択…と都度クリック→ページ遷移を繰り返すので、じわじわテンションを削られます。
ちなみに、バイクをそのまま詰めるのがB.B.BASEのウリですが、「出先でのトラブルに備えて輪行袋は必ず持参すること」と注意事項に明記されてます。過去には「輪行袋不要!」と紹介しているロードバイクブログも散見されましたが事実誤認です。
まあ私自身「〝バイクをそのまま持ち込める〟ってあれほどPRしてたのに、やっぱり輪行袋は要るんかーい」とツッコミたくなりましたが、トラブルシューティングを考えれば正論なのでこれは仕方ない。
でもレンタルバイク(両国駅でロード、クロスをJR側が貸し出し)利用の人はどうするんでしょうね? バイク持ってないのに輪行袋はある、という人は想定しづらいのですが。
あと、ネットで購入手続きしても切符を受け取るためには結局、駅の券売機で事前に発券しておく必要があります。しかも後述するクーポン券なども切符と共に出てくるので、財布やポッケが割とごわごわします。
使い勝手はそんな悪くない
いきなり文句ばかり並べましたが、列車自体はとてもいい感じです。車体は内房線を改造したことが丸わかりで、見た目のラグジュアリーさはないです。
しかしボックスシートの座席間隔が元の状態(通常の内房線)より広げられており、対面に座った人と足がぶつかる心配はなさそう。
乗車時間は行き先によりけりですが、だいたい1時間半~2時間半で、その間の停車駅は1~3駅ほど。新幹線のぞみ並のノンストップぶりです。なおトイレは車内にありますのでご安心を。
銚子コースだと、千葉駅を過ぎて佐倉(弱虫ペダルの聖地)あたりまで来れば景色が一気に開け、旅気分がグイグイ上昇します。
肝心のサイクルラックも使用手順は簡単です。他の乗客のバイクを眺める眼福もあり。やはりミドル~ハイエンドのロードバイクが多いですが、クロスバイクも少々見かけました。
中央の車両は大型モニターが2つ据え付けられ、添乗スタッフによる行き先の見所解説、モデルコース案内などがありました。主に往復利用者向けですが、佐原―佐倉周遊で城郭や博物館見学、佐原―銚子往復の海鮮グルメ旅など、しっかり考えられています。
B.B.BASEは旅行商品ということもあり当初は往復セット販売しかなかったのですが、現在は片道販売もあります。往路は自走し復路はB.B.BASEといった楽しみ方(もしくはその逆)も可能になり、自由度が上がりました。逆に、当初はあったホテルとのセットプランは消滅。
こうした改定はユーザーの意見を反映したとのことで、姿勢には好感が持てます。
でも「お値段未満」
しかし鉄属性ではない私が総合評価すると、B.B.BASEは「お値段未満」な印象でした。サービスの価値は悪くないのですが、価格がいかんせん高い。
私が乗った両国―佐倉の片道が当時4300円。これは「食事orみやげに使えるクーポン(1000円分)」&「観光協会で使えるドリンクサービスチケット(300円相当ぐらい?)」を含みます。
実質の切符代は3000円ぐらいなので、通常切符の同区間が1690円であることを考えれば、鈍行と特急の価格差としては妥当。…ですが、クーポンの使い勝手が私的にイマイチなのでトータルで割高に感じました。
クーポンが使える場所は到着駅の周囲数キロに限られます。駅に着いた時点では食事には早い時間だし、いきなり土産を買うと荷物が重くなる。目的地までB.B.BASE→自走で帰る計画の乗客(私)にとっては行程を縛られる障害となりました。
あとこれはJRのせいでは全くありませんが、首都圏近郊って千葉以外にも魅力的なツーリングスポットがいっぱいありすぎる=B.B.BASEのライバルが多すぎる…ことも客足不振?の原因ではないかと。
海沿い絶景なら三浦半島、ヒルクライムがしたければ奥多摩、ド平坦が好きなら霞ケ浦…などなど、東京都内を起点とした場合、房総よりも近く安く行けるスポットはたくさんあります。
房総エリアは走りに行く価値自体は十分あるのですが、B.B.BASEの価格を考えるとパンチ力不足は否めないというのが正直な感想です。「B.B.BASE、悪くはなかったけど、次に房総行くなら一般列車でいいかな…」と考える人は一定数いるのではないかと。
高級フレームだからみじんも傷を付けたくないという人には、バイクをそのまま持ち込めるというのは大きなメリットでしょうけど。
非サイクリストを取り込め(?)
手のひらクルクル返すようで恐縮ですが、JRがサイクルツーリズムに力を入れてくれていること自体は大変うれしく思っています。
というか、B.B.BASEが失敗したら逆にヘイト集めそうで怖いし…(「いっそのこと特急での輪行を禁止すればB.B.BASEの客足増えるんじゃね?」みたいな方向になったらヤバい)。
ではB.B.BASEがこの先生き残るにはどうすればいいか。
CBNマスター氏が過去記事で紹介している「確率思考の戦略論」によれば、一般にビジネスでは特定客の年間当たりのリピート回数を増やすよりも、広く新規開拓を狙う方が効率的だそうです。
この考えを敷衍するなら、まだロードやクロスを持っていない女性(バイクは両国か現地でレンタル)にアプローチするのはいかがかなと。
B.B.BASEのゆったりしたボックス席や、目的地までの停車駅がほとんどないという特徴は、仲良しグループのおしゃべり旅にピッタリです。
運行は1日1往復のみ=乗り遅れたらジエンドで無茶はできない=がっつりライドには不向き、という弱点も、未経験者やビギナーにはまったく問題になりません。
いっそ「自転車に全く乗るつもりがない人でもB.B.BASEで房総観光(または千葉県民の両国・浅草・スカイツリー観光)を楽しむ方法」をアピールする、なんてのもいいかも?
JR、ファイト!!
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