東京都心から90分程度で行ける大自然・埼玉県は秩父地方。西武秩父駅を起点に「浦山ダム・滝沢ダム・二瀬ダム」の3つを見に行って帰ってくる、というサイクリングを楽しんできたので、その模様をご紹介します。控え目に言って最高だったので未経験の方は是非お試し下さい(記事末尾にアクセス情報などを記載しています)。
秩父市には4つのダムが存在します。浦山ダムは別名「秩父さくら湖」。滝沢ダムは「奥秩父もみじ湖」。二瀬ダムは「秩父湖」として知られます。他に合角(かっかく)ダム・別名「西秩父桃湖(にしちちぶももこ)」が上の地図の北側にあるのですが、離れているため今回は訪問しません。
浦山ダム(秩父さくら湖)へ
筆者は東京・池袋から「特急ラビュー」の始発(6時50分発)で西武秩父駅に向かいました。到着は8時13分。最初に浦山ダム(秩父さくら湖)を目指しますが、ルートは簡単。駅前の国道140号に出て右折、しばらく走った後、埼玉県道73号に入ると浦山ダムはすぐ近く。案内板も多いので迷うことはないでしょう。西武秩父〜浦山ダムまでは6kmほど。
73号線に入るとほんの少しだけ上り坂になります。途中でダムの右岸方面・または下流広場への分岐路がありますが、私は道なりに(右岸方面に)登り続けました。結果的にそちら側がダムの正面玄関という感じで、正解でした。
はい着きました! 特に高所恐怖症ではない私でも「ヒュッ」となる恐るべき高低差です。堤高は156m。荒川水系・浦山川からの水を蓄えます。
秩父さくら湖(ダム湖名)は水の色もエメラルドグリーン系で綺麗です。左岸にはサイクリングロードもありましたが、現在は閉鎖されているようです(令和元年の台風19号以降、このように走れなくなってしまった道が増えて残念)。
もう1度ダム下を見下ろしてみましょう。左下に見えている広場までエレベーターで降りられるとのことなので、行ってみることにしました。なお自転車のエレベーターへの持ち込みは禁止です(堤頂通路も走行は禁止)。
目の前で見る排水はシンプルながらド迫力! 夏は清涼感があってさらに気持ち良いでしょうね。
さて自転車を置いてきた堤頂に戻るのですが「500段の堤体昇降階段で高低差124.5mを昇ってみないか?」という案内板があったので試してみました。これはいい!プチハイキング気分も楽しめます。
ダム施設や周辺をたっぷり見学・散策した後は、有名な「ダムカレー」を食べることにしました。浦山ダムの防災資料館「うららぴあ」1Fに「さくら湖食堂」があります。11時の開店まではまだだいぶ時間があったのですが、「営業中」の札があったので訪ねてみたところ何と作っていただけるとのこと(特例措置かも)。皆さん親切で感激です。
こちらが浦山ダムのダムカレー!注文前は「俺はこの時間帯にカツカレーを完食できるのか…」と不安でしたが、ちょうどいい量でした。カツは薄めのハムカツ、ライスは小盛りなのでさっぱりペロッと食べられます。おふくろの味系の辛すぎず甘すぎずのおいしいカレーで大満足。左のカツがダム堤体を、白米が堤頂通路を、カレーが秩父さくら湖を表現しているわけですね。天才か。
お腹いっぱいになったところで、名残惜しいのですがそろそろ出発です。なおこの浦山ダム・秩父さくら湖は、この日訪れたダムの中では設備的にはいちばん充実していました。コース全体の中で多めの時間を割り当てて良いと思います(73号線を右岸沿いに走りに行くのも良そさう)。
お約束の「ダムカード」もいただいてきました。管理事務所かさくら湖食堂、どちらでも置いてあります。記念スタンプもあるので、専用の紙に押印していきましょう(後ほどお見せします)。
滝沢ダム(奥秩父もみじ湖)へ
次の目的地、滝沢ダム・奥秩父もみじ湖を目指し、西走します。23kmほど先です。浦山ダムの左岸側の道を下り、140号線に合流したら後は道なりに。秩父鉄道の終点・三峰口を超えていきます。登り基調の道ですが、程良いアップダウンがあって気持ちの良い道。しかし頭上に木がないセクションが多いので直射日光対策は忘れずに(猛暑日は何度か水をかぶる必要がありそう)。
もうすぐ到着かな? というあたりで何かすごい構造物が見えてきました。な、なんだあれは…
これは正式名称「雷電廿六木橋(らいでん・とどろきばし)」というループ橋です。見た目だけでなく名前もすごい(「とどろき」はこの地にあった集落の名前から)。あそこを走って行けるのか… 素晴らしいじゃないですか。しかし24mmの広角レンズでは広大さが伝わらないだろうか…
はい高いはい最高。よくこんなところに橋を建てたものだなぁ、と感心。滝沢ダムの建設時、140号線に高低差が出てしまうためそれを解決するために設計されたそうです。様々な賞を受賞している、有名なデザインの橋であるとのことです。16mm広角レンズが欲しかった…
思わず「うっひょ〜!」を連発してしまう、スペキュタキュラーで大迫力の景観です。右手に見えているのが滝沢ダム。これも下流広場との分岐点がありましたが、このループ橋を通らない理由はないでしょう(なお滝沢ダムについては、堤頂と下流広場を連絡するエレベーターに自転車禁止の表示はなかったので、もしかして通行はできるのかな?)。
滝沢ダム・奥秩父もみじ湖は、資料を読むと浦山ダム・秩父さくら湖とほぼ同じか、少しだけ規模(キャパシティ)が大きいようです。奥まった場所にあるせいか、自然感はより強いですね。管理所わきの自販機で買ったコカコーラゼロを飲みながら、しばし休憩。
ダムの堤頂から眺めたループ橋です。
もみじ湖の周囲にも遊歩道があるのですが、残念ながら道が荒れていて通行止めでした。これも台風19号の影響か。
滝沢ダムのカードも無事ゲットしました!見学スタンプシートも埋まりました。浦山ダムではダムカレーのスタンプもあるので忘れずに。
堤頂から西を見ると、奥に雰囲気の良い橋が見えています。あの橋を渡って南下し、次の目的地・二瀬ダムに向かうことにしましょう。
二瀬ダム(秩父湖)へ
さきほど眺めていた「雰囲気の良い橋」は「中津川大橋」といいます。これを渡ると…
…大峰(おおみね)トンネルに入ります。このトンネルは距離が長い。後で調べたら2.2kmほどありました。歩道は狭く、しかも登りなので、テールライトをこれでもかというくらい発光させた上で車道を走ったほうが良いです。極端に暗くはなく、非常駐車帯も数カ所あるのですが、十分気をつけましょう。
大峰トンネルを抜けた後は、道の選択肢が2つあります。1つは少し直進した先にある「川又」のバス停・トイレの上に回りこんで奥秩父もみじ湖の「下」を通る140号線に行くか、あるいはトンネルのすぐ左にある林道に入るか、です(下の地図をご覧下さい。赤線は筆者による実走行軌跡)。
140号線の下を走るこの林道は工事中のこともあるようですが、いまは休工中とのことで(2022年6月現在)、迷わずそちらに舵取り。二瀬ダム・秩父湖を間近で眺めるならこっちですね。「三峯神社・秩父湖・不動滝」方面はこちら、という看板が出ていました。
ここから二瀬ダムの入口までは、ほぼ完全に下り!しかも結構な下り! 登り返しは少しだけありますが、90%以上は下りでした。爽快なダウンヒルを楽しめます。路面はたまに小さめの穴を見かける程度で、25cタイヤのロードバイクでも全く問題ない道だと思います(筆者は寄り道をするためグラベルバイクで来たものの、本記事のコースだけならロードや小径車でもOK)。
林道沿いの右手に現れる秩父湖は、やや暗く鬱蒼とした雰囲気です。工事中の箇所も多く、美しい吊り橋も通行止めだったり、スプレーによる落書きがあったりと、「ハレ」ではなく「ケ」の空間という雰囲気です。ライド自体は素晴らしく楽しめますが、景観的には浦山・滝沢ダムのほうが優れているかもしれません。
二瀬ダムは堤頂が三峯神社方面に向かう車道(278号線)になっています。ちなみにここでもダムカードを配布しているのですが、この時は知らなかった… 見学スタンプシートにはなかったぞ!(浦山・滝沢ダムは「独立行政法人・水資源機構」による管理で、二瀬ダムは国土交通省が管理しているせいか。北の合角ダムも埼玉県が管理、と事業者が異なります)。
二瀬ダムは、ダム自体を眺めてもあまり面白くなかったのですが(水の色はすごく綺麗だけど)、サルの親子を見ることができました。浦山ダムではダムカレー、滝沢ダムではループ橋、二瀬ダムではサル… と、それぞれのセクションで目玉になる思い出が出来ました。
では暗くなる前に帰るとしましょう。最近は18時頃まで明るいですが、余裕を持って帰りたい。あと何か食べて帰ろう…
140号線を下っていくと、三叉路に出ます。左折すると往路で辿った滝沢ダム方面、右折すると秩父方面です。「道の駅大滝温泉」そして「道の駅あらかわ」を超え、やがて武甲山が見えてきたら、旅はそろそろ終わりです。
秩父市街で名物のホルモン焼きを食べることにしました。超有名なお店でなくとも、安くてうまい。ダムで配布されていたパンフレットや周遊マップ、データシートを眺めながらの食事で余韻に浸りました。
西武秩父駅に着くと、武甲山は不気味な暗雲に覆われていました。山頂は恐らくどしゃ降りでしょう。ちょうど秩父に入った頃に雷雨の兆候があり、少しだけ降られましたがレインウェアはギリギリ使わずに済みました。
あのような雲から秩父の山々に落ちてくる雨が、やがて浦山川となり浦山ダムに、中津川となり滝沢ダムに、荒川となり二瀬ダムに流れていくのか… と、そんなことを考えました。
アクセス情報・参考情報
このルートを走ってみたい! と思われた方のために、主なアクセス情報・参考情報を下にまとめました。お出かけの際のご参考になれば幸いです。
- このコースの走行距離は約70km
- 最寄り駅は西武秩父。行程を短縮したい場合、秩父鉄道の浦山口スタート、三峰口ゴールでも良いですが、西武線へ乗り換える場合は御花畑駅から距離があるので重い自転車は注意
- 浦山ダムから滝沢ダムに至る道は、適度なアップダウンのある走りやすい道ですが、頭上に遮蔽物がない区間が長いため熱中症には注意。夏場は頭にかけられる水を用意
- 寄り道をしないのなら普通のロードバイクで可。激坂と呼べるほどの坂はなく、小径車でもOK
- 天気が変わりやすいエリアなのでレインジャケットは持っていたほうが良い
- 記事中で紹介した距離2200mの「大峰トンネル」以外にも、短いトンネルが数箇所あります。日中でも高性能な前後ライトが必要(交通量は多くないもののトラックがよく通る)。リアは照度や振動で自動点灯するものがあると便利
- コース全体を通じて自販機に困ることはありませんが、後半は「道の駅大滝温泉」で計画休憩を入れると良いでしょう(ファミリーマートが併設されています)
- 浦山ダムの「さくら湖食堂」は月曜・火曜休業。営業時間は11:00〜13:00(土日は14:00)。他のダムに食堂はありません
- 滝沢ダムと二瀬ダムの訪問順番を変えるのはアリだとは思いますが、明るい時間帯に景観の良い滝沢ダムやループ橋を見たほうが良いような気はします。が、二瀬ダムから大峰トンネルに林道を上っていくのも楽しそう
- ダムカードの配布時間は浦山・滝沢ダムが9:00〜17:00、二瀬ダムが8:30〜17:15、本記事では訪問していない合角ダムでは9:00〜16:00となっています
- 浦山・滝沢・二瀬・合角の4ダムのカードを集めると、「二瀬ダムの手作りカード」という幻のアイテムがもらえるらしい(参考サイト)