Amazon スマイルSALE ゴールデンウィーク 開催中【月曜夜まで】
よみもの

登山道までのアプローチに自転車を使って山歩きしてみた:秩父の名峰・残雪の武甲山へ【埼玉】

2月下旬、埼玉県・秩父地方を象徴する名峰・武甲山(ぶこうざん)周辺に山歩きに行ってきました。自転車のブログで何で登山の話なんじゃい、と思われるかもしれませんが、登山口に辿り着くまでのアプローチに自転車を活用する、ということをやってみたので、山登りに興味があるサイクリストの方にお読みいただければ幸いです。

武甲山

秩父の象徴・武甲山(2021年秋に撮影)

武甲山は標高1304m、日本二百名山の1つに数えられる人気の山で、石灰岩の採掘によって削られたその独特な山容が不思議な魅力を放ちます。

なぜ自転車を使うのか

このハイキングで自転車がどのように活躍したかを説明しましょう。今回は「武甲山御嶽神社・一の鳥居」から登山を開始し、まず下の地図の左上に見える武甲山山頂を目指し、続いて小持山・大持山へと縦走、妻坂峠を経て一の鳥居に戻る、というコースを辿ることにしました。「大持山周回コース」と呼ばれる、距離約10kmの定番コースです。

歩くのは「大持山周回コース」

しかし西武秩父線・横瀬駅から「一の鳥居」までは約6kmの舗装路で、歩くと1時間半ほどかかってしまいます。セメント工場からの大型トラックが往来する、正直歩いても全然楽しくない道で、多くの人が駅からタクシーを利用します。私も以前、秩父鉄道の浦山口まで抜けるコースを辿った時はタクシーを利用しました。料金は2300円ほど、時間も15分程度で便利でした。

西武秩父線・横瀬駅から登山口までは6kmの距離がある

今回の「大持山周回コース」では、登山の始点と終点が同じ。「一の鳥居」に帰着してからタクシーを呼んでも時間がかかるかもしれないし、往復4600円はもったいないし、かといって往復3時間も退屈な道を歩きたくはありません。

はい、そういうことです。アプローチに自転車を活用すれば、時間もお金も節約できます。往路は40分、復路は20分に短縮化。しかも体力に余裕があれば、帰りにポタリングも楽しめる… かもしれない!?

西武秩父線・横瀬駅〜一の鳥居(登山口)まで

というわけで「よく走るわりに軽量」な折りたたみミニベロ・Dahon K3(当ブログ内の関連記事一覧)を抱えて横瀬駅に到着。池袋駅6時50分発の「特急ラビュー」に乗り、8時8分に到着です。K3は軽いので大きいストレスなく輪行できました。自転車のバックに見えているのが武甲山、これからまずあの頂を目指します。

Dahon K3の後ろに見ええているのが武甲山

横瀬駅の海抜標高は250mで、登山口のある一の鳥居は528m。6kmかけて280mほど登るだけなので、たぶん楽勝です。たぶん3〜4%のゆるい坂をのんびり登るだけでしょう。たぶん登山前の準備体操にもなるでしょう(はいフラグ)。

登山口までは約6km

ルートは見えている武甲山方面を目指して大きめの道路を走るだけで良く、道に迷うことはありません。しかしこの道路、一般車は皆無で、通るのは砕石を積んだトラックがほとんどです。交通量は多くなく、極端に危ない印象もないのですが、一応注意して走ったほうが良さそうです。

一般車は皆無だが、石灰岩を運ぶ作業用車両は多い

さて序盤は確かに楽勝でしたが、一の鳥居手前の1kmくらいから8%近い坂になりました。最初はのんびり走らせて最後にガツンと上げてくる、デレツンのとんでもねー坂です。Dahon K3のギアでは重すぎて、若干脚を使ってしまいました。が、なんとか無事到着。パンクだけはしないよう気をつけて走りました(修理に時間を取られると登山時間が減るので絶対に避けたいところ)。

武甲山御嶽神社・一の鳥居

一の鳥居には駐車場があるのですが、この日は登山者用トイレ新設工事関連のトラックが多く止まっていたので、少し離れた藪の中に自転車を置かせていただきました。なんとか本日の第一関門突破です。

自転車の出番はひとまずここまで

しかし山に入ってしばらく経ってから、GPSサイコンのXOSS G+をハンドルに付けっぱなしにしておくという痛恨のミスを犯してしまったことに気付きました。GPSサイコンは登山記録でも便利に使っているのですが、結果この日の山行は記録なし。普段と違うことをやると、何かミスることが多いですね。

登山口〜武甲山へ

いよいよ登山開始です。この日は横瀬町の最高気温が14度になる日でしたが、登りはじめて30分ほどで路面は雪混じり、ところどころ凍結。

残雪が残る登山道

登山で愛用しているSalomon X Ultra 3 Wide MID Gore-TEXに安物の中華チェーンスパイクを装着します。チェーンスパイクは今年初デビューしたのですが、これがまた面白いもので、少々凍った路面でも驚くほどのフリクションでザクザクと気持ちよく歩けます(ザレ場におけるブロックタイヤのような感触)。この日の登山に武甲山を選んだのも、雪を楽しみたかったからでした。

Unigearという安い中華チェーンスパイク

下は山頂まで半分を少し超えたあたりにある「大杉の広場」と呼ばれる場所です。ここで標高1000m。

大杉の広場

この「大杉」がどれほどの大きさかを示すべく、前にバックパックを置いてみました。大人4〜5人分もの横幅があります。誰も見ていなかったので抱きついて頬をスリスリし大自然パワーをいただいてきました。

おわかりいただけただろうか

他にもお見せしたい写真は山程あるのですが、誌面の都合上、巻きで進行します。これが武甲山山頂、標高1304m。今日の第二関門を無事クリアしました。

武甲山山頂

眼下には自転車で走ってきたアプローチ道もよく見えます。よくあんなところから上がってきたなぁ、と感慨(600mm相当の望遠で撮影)。

アプローチで走ってきた道が見える

長野方面には冠雪した浅間山が見えました。浅間山(に最も寄れる前掛山・2524m)はいつか登ってみたい山の1つで、JR小諸駅から浅間山荘までこの日のように自転車でアプローチして1泊し、早朝から登る計画を立てています(登山自体に8時間かかるため)。その時はDahon K3ではギアが重すぎるので、ブロンプトンかロードバイクを使うことになるでしょう。

いつか登りたい山・浅間山

シラジクボ・小持山・大持山へ

武甲山頂はこの日のルート全体の3〜4分の1程度の地点なので、先を急ぎます。私はコースタイムを意識した急ぐ登山が好きではないのですが、初めての道を歩く時、ある程度コースタイムを意識しないと日が暮れてしまったらまずいので、仕方ありません。

武甲山頂からは「シラジクボ」というコル(=鞍部。ピークとピーク間のなだらかな箇所)まで一気に降ろされます。何故カタカナで「シラジクボ」なのか。一節によると「シラジ」はこの地方の方言で「すり鉢」のことで、「すり鉢状の窪地=シラジ・クボ」なのではないか、とのことです。

シラジクボまで降ろされる

山歩きをしているとこういう風変わりな地名に出くわすのがまた面白かったりします。埼玉・東京県境に「棒ノ折山(ぼうのおれやま)」という有名な山があるのですが、これは「草ぼうぼうの尾根=ぼうのおね=ぼうのおれ」に変化した、と言われています。ヒルクライムが好きな方も「これどういう由来なんだろう」という不思議な地名をたくさん知っているのではないでしょうか。

シラジクボに降ろされた後は小持山に登らされます。坂道の険しさが写真で伝わりにくいのは、ヒルクライムでも登山でも同じですね。激坂です。

下げた後は登らされる

本日2つ目の山、小持山(1273m)に到着です。ここは特に展望もなく、山頂も狭いので休憩はせず先に進みます。

小持山に到着

やがて「雨乞岩」という名所に辿り着きました。ここは展望が開けた素晴らしいPOIでしたが、ズームレンズの広角側が換算24mmしかないので伝えきれないのが残念(16mmくらいで撮りたかった)!切り立った崖で、岩のあいだから枯れ木が1本伸びています。奥秩父の名峰・両神山がよく見えていました。

展望が素晴らしい雨乞岩

ここは気持ちの良い場所なので食事休憩にします。サーモスの「山専用ボトル」に入れてきたお湯でカップヌードルPROを食します。

断崖絶壁の上で昼食(立て箸すみません)

次いで第4関門、大持山(1294m)に到着。ここも、三角点はあるものの小持山同様、眺望が特に良い場所ではありません。この日、眺望が素晴らしかったのは武甲山頂と先に紹介した雨乞岩。雨乞岩は絶景ポイントでした。

大持山に到着

しかし大持山から第5関門の妻坂峠までは最高に気持ちが良い尾根道で、ここでは雪の中に入ったり、植物の写真を撮ったりバードウォッチングをしながらのんびり過ごしました。ここは春秋にまた来たい。妻坂峠から武甲山までの道を往復しても飽きなさそうです。

妻坂峠までは気持ちの良い道が続く

写真で見ると地味な道ですが、個人的にはこういう尾根道が歩いていていちばん楽しいですね。

妻坂峠〜一の鳥居へと下山

第5関門・妻坂峠(833m)は特に何もない場所で、道標があるだけ。ここを左折すると一の鳥居に戻り、直進すると武川岳に至ります。右折すると有間山・名郷方面。猛者になると飯能の天覧山から子の権現(ねのごんげん)・伊豆ヶ岳を経て、武川岳〜武甲山〜浦山口駅まで縦走したりするそうです(奥武蔵全山縦走コースと呼ばれている)。

妻坂峠

妻坂峠からは沢沿いの林道で、台風被害の跡が残る箇所もありましたが淡々と下るだけ。この日は特に危ない目にも合わずに歩けました(しかし不注意で足を踏み外したら普通に滑落する場所あり)。技術よりも体力で行けるコースでした。

妻坂沢沿いの道

登山口のある一の鳥居にゴール。私が貧脚なのと、写真をよく撮ることもあり、平均的なコースタイムより1時間遅い約6時間の歩行でした。勿論、疲れています。ここから1時間半かけて横瀬駅までつまらない舗装路を歩くというのは、やはり良い考えには思えません。

一の鳥居に帰着

だが俺には自転車がある! タクシーを呼んで待つ必要もない! 時速40km/hで下ります。しかし採掘関連の作業車が多いので気を付けたい道です。遅い時間には道が凍結していることもありそうです。あと石灰石の粉塵もすごいので、快適なダウンヒルという感じでもありません。

作業車が多いので要注意

あっという間に横瀬駅に到着しました。実はここから西武秩父駅まではわずか2kmなので、秩父鉄道沿いに寄り道しよう…とも思ったのですが、予想していたよりも体力を使ってしまったので大人しく特急ラビューで直帰することに。Dahon K3の、ブロンプトンほどではないものの簡単なパッキングと軽さが疲れた身体にありがたい。なんて便利な自転車なんだ。

特急ラビューで池袋へ

まとめ:自転車でのアプローチはやはり便利

登山口へのアプローチに自転車を使ったらきっと便利だろうな… ということは以前【8つの雑感】サイクリングと山歩きの似ているところ・違うところという記事でも書いたのですが、実際にこの武甲山登山でも予想通り、時間も費用も節約できました。

【8つの雑感】サイクリングと山歩きの似ているところ・違うところ
筆者はサイクリストですが、最近は山歩きを楽しむ機会も増えています。標高差1000m未満の低山ハイキング(日帰り)が中心で、初級〜中級とされるコースしか知らないのですが、歩きながら「サイクリングと山歩きの似ているところ・違うところ」をよく考え...

しかしこの日は登山活動へのウェイトが大きすぎたので、活動全体の中で自転車はあくまで「ツール」に留まるという感じで、サイクリング自体を存分に楽しむまでには至らなかったのが少し残念と言えば残念かもしれません(これは私の体力不足のせい)。

片道6kmというアプローチのために担いで行ったDahon K3は、サイズ・重量的に最適なチョイスだったと思います。これがブロンプトンだったら「せっかくこんなに重い自転車を持ってきたのだから、もっと乗って帰らないと損だ」と感じたかもしれません。ロードバイクならなおさらでしょう。坂道もなんとかクリアできました。

1日の中で登山とサイクリングの両方をバランス良く楽しむには、もっと標高の低い山を短時間で歩くのが良いかもしれません。奥武蔵や秩父にはそういう楽しみ方にぴったりの低山がたくさんあるので、登山も好きな近郊のサイクリストの方は試してみては如何でしょうか。

著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

マスターをフォローする
CBN Blog
タイトルとURLをコピーしました