ハイドレーションシステムと呼ばれるものがあります。飲料を入れたパックをバックパック(または専用ベスト)に入れ、付属のホースを口の近くにセットして給水する仕組みです。「ブラッダー(=嚢・袋)」とも、製品名から「キャメルバック」や「プラティパス」と呼ばれたりもします(固有名詞の一般名詞化)。
自転車の世界では、主にMTBに乗る人がこれを好んで使うことがあります。逆にオンロードを走るロードバイクでハイドレーションシステムを使っている人は、まず見かけないでしょう。何故なのか。この記事では自転車におけるハイドレーションシステムのメリットとデメリットについて考えてみます。
メリット
まずメリットから挙げてみましょう。他にもあるかもしれませんが、すぐに思い浮かぶのは次のような長所です。
- 手をほとんど・あるいは全く動かさずに飲める(故に危険が少ない)
- サイクルボトルよりも頻回に補給するようになる(故に疲労の軽減につながる)
- オフロードでは土埃や泥で汚れることもあるサイクルボトルの飲み口とは違い、清潔を保てる
- ボトルケージが埋まっている・使いにくい・使えない時に活躍する
- オフロードライドではボトルのようなカタカタ音はしない
- ボトルのように衝撃で吹っ飛んで行かない
- 車体側が軽量になるため、よりバイクコントロールを楽しめる
- 落車時には背中を保護するクッション材にもなる
こうして見ると、ハイドレーションシステムはやはりオフロードでその真価を発揮するものであることがわかります。オンロードライドでは、ボトルよりもこまめに、また若干少ない労力で給水できる可能性はありますが、ボトルケージがあるならそれを使ったほうが利便性は遥かに高いですね。
デメリット
今度はデメリットを思い付くままに挙げてみます。
- ハイドレーションシステムのほうが人車全体の重心が高くなる(上で書いたようにMTBではこれをメリットと捉える人もいる)
- ドリンクがどのくらい残っているかがわからない
- 水以外のドリンクを入れた場合、洗浄に手間がかかり、カビが生えることもある
- 洗浄後のパックはサイクルボトルより乾きにくい
- バックパック型のハイドレーションシステムは、夏は暑くて無理
MTBではバイク自体を軽量にすることでコントロール性が高くなりますが、ロードバイクの場合は重心が低くなったほうが直進安定性も増すでしょうし、左右に振られることも少なくなるでしょう。またロードバイクの前傾姿勢では、バックパックの荷重が背中にドッカリかかると暑くてたまらない、ということにもなります。
しかしMTBerにもバックパックによる熱のこもり、発汗量の多さを嫌う人も少なくなく、そういう場合は折衷案として「ヒップバッグ型のハイドレーションシステム」や、ボトルを挿せるヒップバッグを好む方も多いようです。ヒップバッグは短時間のドロップバー・グラベルライドとも相性が良さそうですね(MTBより前傾が深い姿勢であり、ボトルが汚れたり吹っ飛ぶこともあるため)。
個人的に感じるメリットとデメリット
筆者がはじめてハイドレーションシステムを使ったのもMTBに乗りはじめた頃でしたが、洗浄が大変なので使わなくなりました。当時は糖分のあるスポーツドリンクを入れていたせいもあります。また、パックの内部がなかなか乾かないのもちょっと面倒でした。
最近は、オンロードで使うことはやはりないのですが、自転車と登山を組み合わせる遊びが増えてきたせいもあり、再びハイドレーションシステムを使う機会が増えてきました。ライドもハイクも1つの給水システムで済ませられますし、登山中はバックパックの中やサイドポケットに入れたボトルを取り出すより便利です。
一方で個人的に感じる最大のデメリットは、水の残量がわからない、というところ。手軽に飲めてしまうので、うっかり飲みすぎてしまい後半に足りなくなることも。これが一番大きいですね。残量のマネージメントが難しい。自販機がないエリアでは痛手です。
洗浄の難しさは、最近は水しか入れないので感じなくなりました。乾燥についても、パックとホースから水を抜いた後、まるめたキッチンペーパーをパック内に詰めて口を開いて干しておくと(1枚でOK)、1日でちゃんと乾きます。
真夏のオンロードライドでバックパック型のハイドレーションシステムを使うことは私もないと思いますが、今後も秋〜春にかけて、プチグラベルライドや自転車+ハイキング活動で使う頻度が増えていきそうです。