ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の結果、様々なスポーツ界からロシア・ベラルーシの選手やチームを排除する動きが広がっています。サイクリングの世界でもUCIがロシア・ベラルーシのナショナルチームによるレースへの参加を禁じ、ガスプロム・ルスヴェロを含む6チームを排除しました。またLOOKはInstagramでロシアチームへのサポート終了を告知しています。
LOOKの決定への賛否両論
以下、LOOKの声明文です。なお同様のメッセージをガスプロム・ルスヴェロにホイールを提供するCORIMAも発表しています。
私達LOOK Cycleは、スポーツが諸国家を団結する手段と考えており、常にあらゆる国籍のアスリートをサポートしてきましたし、これからもそうします。私達は平和を求める多くのアスリートに同調します。
その上で、昨今のショッキングかつ許しがたいニュースに鑑み、私達はガスプロム・ルスヴェロ・サイクリングチームへの技術サポートを停止し、パートナーシップを解消する決定を下しました。
上のインスタ投稿には賛否両論のコメントが寄せられています。まず賛成派の意見。
- とても悲しいが必要なことだ
- 誰もが自分にできる範囲で、いま起きていることを止める努力をすべきだ
こちらは反対派の意見。
- これは必要ではない、スポーツは別物だ。何もかも一緒くたにしないでほしい
- 自分達の政府が戦争を決断したのはアスリートのせいなのか?
- このサイクリングチームはウクライナ侵攻に責任があるのですか?
- この決定は、現状について責任のない人にだけ影響するものだ。LOOKは得意なことだけをやっていれば良い、ペダルを作り、政治には首を突っ込まないほうが良い。違法な侵略を行っている他の国々にも同じことをやれないのなら
アスリートのせいではないが、このような決定はやむを得ない、という意見もあります。
- アスリートのせいではない。だが政府に圧力をかける必要はある
次のコメントは、支持は得られていないものの反論が難しい内容です。
- アメリカがイラクを(許しがたい嘘を根拠に)攻撃した時、TREKやOAKLEY、その他のアメリカ製サイクリング製品をボイコットする人は誰もいなかった。(だから)私はこの決定に疑問を抱く
私個人の意見としては、ロシア・ベラルーシ国旗を掲揚するかたちでのスポーツへの参加、ロシア国営とも言えるガスプロムのような企業が出資するチームがレースに参加するのはやはり適当ではないという気はします。
しかし上でも多くの方が言っているように、ロシア国籍のアスリートだからと言って必ずしもプーチン政権の決定に同意している人が全てではないはずで、少なくとも個人資格での競技への参加や、ガスプロムのようなチームでもチーム名を変更し、出資企業を宣伝しなければ参加を認めるべきではないか、と思います。
ガスプロム・ルスヴェロがレースに参加できなくなることで、これから多くのロシア国籍のプロサイクリストや関係者が徐々に職を失うことになることが考えられます(ベラルーシのチームも同様)。スポーツ界からのロシア勢力の排除は、長期的な視点ではプーチン政権への圧力になりうるとは思いますが、無関係なアスリートを短い時間で不幸にするのではないでしょうか。
3Tの反応
LOOKがガスプロム・ルスヴェロへのサポートを打ち切ったのは、それでもやむを得ない決定だったのだろうと感じます。「ガスプロム」という名を冠するチームを支援し続けることは、ビジネスの主体としては現状ではありえない選択肢でしょう。
ところで3TはInstagramに次の写真を投稿しています。ウクライナ国旗仕様のExploro RaceMax限定モデルを発売し、この自転車の販売から得られる利益の100%をイタリア赤十字社に寄付し、ウクライナ支援に役立ててもらうそうです。
3Tのこのアプローチは、不幸になる人を生まない優秀な政治参加だなと思いましたが、かといってLOOKの決定を非難するのも個人的には難しい。致し方がないという気はします。しかし「車体を全てウクライナカラーにすることを条件に、ガスプロム・ルスヴェロへのサポートを続ける」というウルトラCもあったかな、とも思います(チームが受け入れないかもしれないけど)。