自転車旅ミニコラム、的な記事です。最近「特に観光地というわけではない日本の田舎」を走り回っている時に、あらためて気付いたこと・考えさせられたことがあります。地方在住の方にとっては当たり前すぎて話題にさえならない内容かと思われるのですが、都市生活が長い私にとっては「こ、こんな感じなのか!」と新鮮な発見がありました。
トイレがまずない
まず公衆トイレが本当に少ないんだな、というのがひとつ。東京都心なら半径200mに1つくらいの割合で見かけそうなものですが、私が走った地方では半径5kmに1つもないのが普通だったりしました。公園を見かけても、トイレはないほうが普通。サイクリングにぴったりの河川敷でも、トイレはまず見かけません。
考えてみると公衆トイレの維持管理には結構なコストが発生するので、観光地でもなければ「なくて当然」なのだろう、とあらためて思いました(そんなものに税金を投入するわけにはいかないだろうから)。
地元の方とそういう話題になったところ「まぁこのへんは自転車に乗る人なんか、誰もいないからねぇ」とのこと。また、トイレがなくて困るような距離を、健康のために歩いたり走ったりする人も、まずいない。近所を散歩中にもよおしたら自分の家に帰ればよいだけの話である。だから、公衆トイレなどは必要ないのだ。なるほどその通りです。
確かに私以外のサイクリスト、というか「クルマに乗っていない人間」はこの地方ではほとんど見かけませんでした。徒歩や自転車の人間よりも、ハクビシンやタヌキに遭遇する確率のほうがはるかに高い(※盛ってません)。みんなクルマで移動しています。ものすごいクルマ社会です。
これはもう、ほとんどアメリカだな、と思いました。
自販機が少ない
トイレ以外に少ないもののもうひとつが自販機。とはいえ、トイレよりはずっとあります。しかし観光地でもある地方に比べると、絶対数は相当少ないと思いました。公民館・市民センター・精米所などにあることが多いようです。「ドリンクは最初に見かけた自販機で適当に調達すればいいだろう」という考えだと、夏場は危ないかもしれないな、と思いました。
さらに自販機を見かけても新500円玉・新1000円札に対応していないものが都市部よりずっと多い印象でした(コカコーラ・ボトリングのような大規模なネットワークの機械でも非対応が珍しくなかった)。キャッシュレス決済対応の自販機も皆無。この状況も当分続くのだろう、と思いました。
あれが全てを解決するはず…!
そんな田舎の広大な風景のなかを走っていて、私はふと思いました。
そうか、こういう田舎にコンビニがポツンポツンとたまにあると、ドリンクも買えてトイレも利用できる。コンビニがあれば、全て解決するのではないか。それに近所にスーパーや商店も見当たらないから、ここにコンビニがあったら流行るんじゃないか、儲かるんじゃないのかなぁ…
しかし、コンビニもなかなか見かけないのです(※あることはあります。が、ずいぶん少ない、というのが私個人の感想)。
これもよくよく考えてみると、そうした地方の住民の主な移動手段はクルマなので、「値段が高くて(東京価格と変わらない)品揃えも少ない近所のコンビニ」よりも、「安くて品揃え豊富な5km先の大型スーパー」に行ったほうがはるかに合理的、ということになります。コンビニは、東京のような都市と違って必要不可欠な社会インフラではないのだろう、と思わされました。
結局のところ、日本の田舎はものすごいクルマ社会なんだな、と痛感したのでした。高齢化との関係が大きいのだろうと思います。500m歩くのは大変だ、というお年寄りでも、クルマなら15km先のスーパーに余裕で買い物に行けます。
さて、そうしたちょっとした不便さと引き換えに、そういう田舎には東京の人間からするとほとんど天国のように思える、桃源郷のようにも思える素晴らしい道が本当に多く、観光地でない日本の田舎を走るのは楽しくて面白いことだなぁ、と感じたのでした。