過去数年、クラウドファンディング・プラットフォームで資金調達した自転車関連製品についてヒットしたもの・失敗したものを振り返る記事を英road.ccが公開しています。
出典 Where are they now? The best, worst and wackiest cycling crowdfunders and what happened to them
悪夢もあれば思わぬヒットも
以下、記事の抄訳です(長大な記事なので抜粋です)。
- Tailfin:超軽量で剛性の高いカーボン製パニアラック。2016年開始のプロジェクトは成功、ウルトラディスタンス・ライドやバイクパッキングの隆盛も後押しし、現在に至るまで人気
- Brim Brothers:シューズに取り付け、クリートからパワーを直接計測するパワーメーター。2016年にプロジェクト開始、€175,443の資金を調達したが製品化されることはなく、プロジェクトの活動停止が発表された
- Knog Oi Bell:1870年代に発明された製品の焼き直し。2016年のプロジェクトで成功。評判はおおむね良かったが、初代は音量の小ささとスプリング機構が壊れやすいことで不評となり、その後Luxe版の発表につながった
- Nothirst Upright cycling water bottle:飲み口に角度が付いているエアロボトル。目標額の30%に到達せず、立ち消えになったと思われる
- STYX power meter:クリート内蔵式のパワーメーター。610ユーロで届けられる予定だったが目標額に至らず、生産はされなかった
- Lumo:LED内蔵ジャケット。2014年に£75,000の資金を集め、実際に生産され評価も悪くなかった。2016年にも同シリーズ製品がKickstarterに登場し、これも生産されたと思われる。現在Lumoは存在せず、2019年にLumos Helmetに買収されている。しかしLumosのサイトではこのこれらの製品はいまラインナップされていない
- Swytch e-bike conversion kit:ハブモーター式のE-BIKE改造キット。後継品も含めroad.ccのシスターサイトeBikeTipsでは良い評価を受けた
- HindSight smart sunglasses:後方がよく見えるというサングラス。製品の評価は良くなかった。同社はその後2023年に改良版を発表しており、現在road.ccでテスト中である
- Superstrata Bike(関連記事):世界初の3Dプリント・ユニボディ・カーボンファイバーバイクを謳った完成車。2020年に500万ポンド以上の資金調達に成功。配送された製品が約束されていた内容ではなかったり、現在でもまだ製品を受け取っていない人がいる。同社によると96%のバッカーには届いているとのこと。送料だけで779ドルを支払う必要があったなどの苦情が出ている
- Flectr:ホイールリフレクター。もっと安い反射ステッカーで充分だろうという意見も多く見られたが、同社製品はKickstarterに登場するたびにヒットした。同社は現在でもホイール・クランク・スポーク用の様々なリフレクターを販売している
- iQ2 pedal-based power meter:ペダル式パワーメーター。2018年にプロジェクト開始。以後音沙汰がなく、2022年11月に創業者がKickstarterとIndiegogoで生産開始を発表した。2023年3月16日、中国からの次の状況報告は2週間後になるだろうと述べた
- iTrakit GPS bike tracker:製品化されることなくキャンペーンページが閉鎖された。2020年初頭の半導体サプライヤー間との技術的な問題と、パンデミックの影響などが重なったという
- Loffi Glove:スマイリーのマークが描かれたグローブ。道路文化を「怒り」から「ポジティビティ」へとシフトすることを目的とした。グローブとしての評価も(road.ccのレビューでは)良好。成功したプロジェクトである
- SpeedX:クラウドファンディングでの最悪の失敗例。初代の「スマート」ロードバイクLeopardで1000万ドル近くの資金調達に成功したが、配送された製品は期待を大きく下回るものだった。その後、新モデルUnicornでも資金を集めたが、名前が示唆するようにこの神話的なバイクは製品化されることなく、多くの人がお金を失った。Leopardはその後アプリが対応しなくなり、スマートバイクではなくなった
これらの中で個人的におもしろいなと思ったのはLoffi Glove(公式サイト)。グローブとしての基本性能があってこそのヒットだとは思いますが、グローブ両サイドのスマイリーだけでほぼ成功したと思われる珍しい例ではないでしょうか。技術的なイノベーションではなく人々の感情に訴えたという点で、他のクラファン製品と発想が全く違うように見えます。
Loffi Glove以外の製品はすべて、利便性と効率性の向上にフォーカスが当てられています(Knog Oiは官能性にも訴えかけている点でやや特殊ではあります)。Loffi Gloveは製品だけでなく、メッセージとブランドという無形の価値を生み出し、届けたところが違っています。これからクラウドファンディングで何かやってみよう、という方にとっては参考になったりしないでしょうか。