結論から申し上げます。スマートトレーナーを買ってZWIFT、ものすっっっっっっっっごくオススメです。バーチャルで走りまくることでもたらされるのは、これまでを大きく凌駕する実走行の楽しさ。特に週末のライドが半ば健康維持のための義務みたいになってる人は「自転車って、やっぱり心底楽しい…!もっと素晴らしくなれセカイ!」と、思えるようになるでしょう。
そして何より強く感じたのは、自分みたいな「頑張りたくないタイプの自転車乗り」にこそ、スマートトレーナーが有効だということ。0.5%の斜度も許さないレベルで坂が嫌い。走行距離200kmとかありえない。ゆるゆるが最高。トレーニングなんて考えたこともない。そんな人こそ、スマートトレーナーを買うべきです。
なぜか?
何の努力もしないのに、ペダルを回す機会が一気に増えるからです。そしてリアルだろうがバーチャルだろうが、ペダルを回した時間は自分を裏切りません。絶対に。回せば回した分だけ、体力・脚力は間違いなく向上します。同じルートを走っても、今までより低いツラみでゴールすることが可能。そうなると、走る楽しさは爆発的に増大します。
考えてみれば当然至極で、作用機序が笑っちゃうほど明白な好循環。そこには、一切のマイナス要素がありません。
ですから、スマートトレーナーを買ってバーチャルライドしまくっている自分が「みんな、まだ公道だけ走って消耗してるの?」とか珍妙なマウントを獲りにいったとしても、それはもう仕方がないと言わざるを得ないですよね?
▼いらすとやさんの「意識高い系の人のイラスト」をお借りして作成
そんなわけで、これから「貧脚中年だけどスマートトレーナー買ってよかった、最高!」という、全角30文字もあれば十分なところを無駄に語りまくらせていただきます。書いてる本人すらウザいと感じるほどの自分語りが延々と続くので、できましたら…その…ブラウザを…そっと閉じていただけますと…幸いでございます。
バーチャルライドを始めたら、どうなった?
こうなりました。
<走行時間と距離>
スマートトレーナー購入前 2017年の走行:157時間/約3,000km(実走のみ)
スマートトレーナー購入後 2018年の走行:277時間/約7,000km(実走+バーチャル)
<出力>
▼FTPテストの結果画面がキャプチャできなかったので、あわててiPhoneのカメラで画面を撮影
2017年12月のFTP:175w(ショップのFTPテスト)
2019年3月のFTP:211w(ZWIFTのワークアウト内にあるFTPテストの時間が長い方)
※機材(フレーム、コンポ、トレーナー)は同じです。
走行距離が2倍以上になり、FTPは約1.2倍です。体重が10kg近く減っているので、PWRは2.4倍から3.3倍になりました。まぁ、「貧脚から貧脚へ」という範囲内ではあるんですけどね(泣)。
実走行には、どんな影響があった?
この変化が実走行にもたらしたのは、坂のツラみの大幅な減少。明らかな体感があるレベルで、登坂がラクになっています。これは数値で比較してみても、明白な差がつきました。
道志みち〜小田原ツーリングのラスボス、乙女峠。約4kmのコンパクトな峠道ですが、道志みちと山伏峠と籠坂峠を超えてきた脚は、完全でパーフェクトに終了しています。地獄の底を這いずり回る苦痛を味わいながら、一瞬でも早く登りが終わってくれることだけを祈り続ける悪夢の時間。そんな乙女峠越えの走行データを、スマートトレーナー購入前と購入後で比較してみると、こんな感じでした。
<道志みち⇒山伏峠⇒籠坂峠を経由した後の、乙女峠の走行データ>
スマートトレーナー購入前 2017年6月 38分56秒(8.4km/h)
スマートトレーナー購入後 2018年10月 26分30秒(12.4km/h)
※機材は同じ(LOOK675 Light+キシリウムPro SL)です。
この世の地獄としか思えない苦痛を、延々40分近く味わっていたのがあっさり30分以下に短縮されています。その差は、実に10分以上。なんとありがたいことでしょう!
ちなみにスマートトレーナー購入後のライドでは道志みちが一部通行止めだったので、10%超の激坂がカジュアルに登場してくる悪魔が敷いたとしか思えない凶悪な迂回路を経由しています。なので乙女峠にたどり着くまでに脚が受けているダメージは、明らかに前回より上。それなのに、これだけの差が生じています。
転倒寸前のスピードでの瀕死走行ではありますが「誤差とは言えない明確な向上があった」のは、間違いありません。
短距離しか走らない。怠惰にしか走らない。たまにしか走らない。駄目な自転車乗りの見本市のような自分でも、これだけの成果。なので、ふつうの脚力を持ったふつうの自転車乗りの皆様であれば、より高い成果を得られることに疑問の余地はないと断言できるでしょう。
ペダルを回す機会と時間が、頑張らなくても増えまくる。
この変化の理由は、もう明らかすぎるほど明らか。冒頭で述べたように「ペダルを回す時間が増えたから」それだけです。なんですが、特筆すべきなのは「それが一切の努力や頑張りなしに、実現できてしまっている」こと。きわめて気まぐれに、楽しくZWIFTで遊ぶ日々を過ごしていた。それだけで、この変化です。
「君の心は輝いてるかい?」胸に聞いたら”YES!!”と答えられない、意識低い系自転車乗り。その自分がなぜ今までと打って変わって、走行距離が2倍になるほどペダルを回しまくれたのか。
それはバーチャルライドならではの、
- ライドを開始するまでの敷居が、すさまじく低い。
- 消費時間あたりの距離獲得効率が、異常なほど良い。
という特徴が、あらゆる「走らない理由」を消し去りまくったからにほかなりません。
バーチャルライドだと、事前準備がほぼ不要。
そもそも外に走りに行くときって、事前の準備が多すぎます。前日のうちにムダ毛を処理して、タイヤに空気を入れて、サイコンやライトを充電して、ブレーキやチェーンをチェックして、天気予報を確認。当日はジャージに着替えて、コンタクトレンズを装着して、日焼け止めクリームを塗って、グローブを着けて…と、走り出す前に準備だけでガッツリ消耗しまくりです。
さらに!
寒さ、暑さ、雨、向かい風といった天候要因をはじめ、眠いダルい面倒くさいなどなど、あらゆる「走らない理由」が家を出るまでの自分を強力に引き止めます。休日出勤しない週末の、気持ちよく晴れた朝。それなのに、布団の中でぬくぬくと惰眠を貪ったまま午後を迎えて自転車で走らずじまい。そんな週末を、これまで何度繰り返したことか…。
それが、バーチャルライドだとどうでしょう?機材のセッティングさえ一度済ませてしまえば、あとは適当な服に着替えてZWIFTを起動させるだけ。走り出すまでのあらゆるプロセスを、いっさいがっさい省略可能で暑さ寒さも関係なし。「ペダルを回しはじめる」までの心理的障壁が劇的に低下して、そのぶんだけペダルを回す機会が増えます。
バーチャルライドだと、時短っぷりがすさまじい。
そしてもうひとつ。バーチャルライドの特筆すべき点が、時間的な効率の良さ。同じように走るにしても、時短っぷりが比較にならないレベルです。「休日朝におよそ1時間~1時間半の登坂を伴うライド」のタイムテーブルを並べてみると、こんな感じ。バーチャルライドの時間効率の良さが、パッと見でわかります。
●実走行だと
まず身支度を調えてから早朝に家を出て、東名高速経由で秦野まで最低1時間のドライブ。寝坊したら即アウトです。
駐車場で車から自転車を降ろし、各部点検やサイコン類の装着と動作チェックしたあとに走行開始。ヤビツ峠で吐血しながら登坂したあと、ウインドブレーカーを着用して麓に戻り、自転車をクルマに積みます。
汗のニオイとベトつきに耐えながら、再び1時間以上運転して帰宅。装備を片付けつつお風呂の追い炊きボタンを押して、湯船が温まるのを待ってようやく入浴です。ふう。
登坂だけでなく、秦野への往復ドライブの疲労もプラスオン。ヘロヘロ具合に、拍車がかかります。スムーズに帰宅できてこの状態ですから、帰路に高速が渋滞してたりしたらもう目も当てられないことに…。
風呂から出た途端にソファーで寝落ちしてしまい、昼の予定をすっぽかして嫁さん激おこ。そんな生命維持に関わる緊急事態に発展するケースだって、1度や2度ではありません。
●バーチャルライドだと
朝ごはんの後にお風呂の追い炊きボタンを押してからトレーナーに跨がり、ZWIFTを起動して走行開始。Alup du Zwiftを吐血しながら登坂したあと、麓に戻ってライド終了。そのまま、お風呂に直行できます。
キッチリ身支度する時間や、家から峠の麓までクルマで往復する時間などを全部カットできて余裕が生まれまくり。そのうえ信号や交差点などでの一時停止がありませんから、ライド中の時間ほぼすべてがペダルを回す時間になります。「実走行より全然短い時間で、より長い距離を走れる」というわけです。
時間にこれだけ余裕があれば、ライド後に嫁さんと昼飯を食べに出かけて帰りがけにスーパーで買い物、なんてことも普通にできます。そして帰宅後は、夕ご飯の前にWatopia Flat Routeでダラダラ平坦走行。さらに就寝前に、Volcano Circuitを軽く30分だけ周回…。そんな1日に3回ペダルを回すような休日の過ごし方だって、楽勝で実現可能です。
予定が入っている日でも「ちょっと1時間だけ」など、スキマ時間に準備ほぼ不要でペダルを回せてしまう。この時間効率の良さとライドまでの敷居の低さは、バーチャルライドならではと言えるでしょう。
このところ毎週末には欠かさず100km以上走っていますが、実走行で100km走ろうと思ったら休日の日照時間の大半を使うことになりますよね。自転車に乗ること以外、何もできずに1日が終わってしまう。それがバーチャルだと、準備含めて1時間×4回で100km完走OKです。
つまり「思いっきり自転車を楽しんでいるのに、普段通りのスケジュール感で1日を過ごす」ことがいとも簡単にできてしまう。スマートトレーナーを買ってからというもの、休日のQOLはもう爆上がりしていく一方です。
バーチャルライドだと、事故らない。
バーチャルならではのメリットは、まだまだあります。そのなかでも、最大級に大きいのが「絶対的な安全性」。バーチャルライドなら、走行時に事故で死傷する確率が限りなく0に近づきます。だって公道に出ないどころか、家から出ないんですもん。
紫外線やスギ花粉やPM2.5や排気ガスの量は、おそらく検出限界レベルの少なさ。そして無免許で飲酒中のドライバーが運転する軽自動車も、アクセルとブレーキを踏み間違えてコンビニに突っ込んでいくハイブリッド自動車も、幅寄せしてくるトラックも、スマホをいじりながら逆走してくる電動自転車も、意地悪な路線バスも、予想不能な動きをする歩行者もいません。
その安全性は、まさに絶対的…!電流鉄骨渡りの参加者と観客ほどに大きな差を持った、極めて安全な立場で存分にペダルを回せるのです。
「家族に心配をかけない」というその1点だけでも、バーチャルライドには極めて大きな優位点があると言えるでしょう。
バーチャルライドだと、実力を思い知らされ続ける。
スマートトレーナーを購入する前は、「出力」とか「FTP」がまったくピンときていませんでした。ヤビツ峠の登坂時間やStravaセグメント区間タイムぐらいしか、自分の走行能力を知るすべがありません。とはいえ、それって交通状況はもちろん、向かい風と追い風でも大きく結果が変わってしまいます。比べるにしても、精緻とは極めて言いづらい比較対象です。
その点、スマートトレーナーを使った場合は外的要因の影響はありませんから、各セグメントの通過タイムで自分の走行能力はかなり精緻に比較できます。また走行中は出力が表示され続けて、自分の体たらくを目の当たりにし続けざるを得ません。
▼走行後も、容赦なく実力を思い知らされる。
スマートトレーナーの内蔵パワーメーターで計測される出力を意識するようになることで、FTPや、出力や、PWRが何を意味するものなのか、はじめて認識できました。体重を量るのと同じように、脚力が測れる。それも、極めて客観的で数値で。
これは実際に、ペダルを回しながら出力が変化していく様子を体験してみないと、腹落ちしないですよね。スマートトレーナーを買ったお店でパワーメーターの装着を力説されたのですが、ようやく理由がわかりました。
そのうえFTPテストをすれば、今の実力は白日の元にさらけ出されます。言い逃れ不可能。実力を思い知らされ続けて興味深い反面、貧脚にはとてもツラい現実と強制的に向き合わざるを得ない。ある意味、非常に厳しい環境であるとも言えます。
ただ、体重が記録し続けないとあっという間に増えていくのと同様に、走行能力も意識し続けておかないと瞬く間に低下していくでしょう。その意味では「自分の状態をウオッチし続けることで、実力を維持しやすい」とも言えるのではないでしょうか。
バーチャルライドだと、ぼっちだけどぼっちじゃない。
いろいろ理屈をこねくり回してみましたが、理屈じゃない点もひとつ。単純に、楽しいんですよね、ZWIFT。あちこちで「Ride ON」が飛び交う。グループライドで挨拶したとき、英語で声がけされて慌てる。同じ集団になった人と、ゴール前で無駄に張り合う、などなど。
一人で孤独に走っているのに、世界中のバーチャルライダーと一緒に走っている。よくよく考えると、これはスゴいことですよ。
また、イベントやレベルアップでアイテム・コースが解放されるなど、一定のゲーム性も持たせてあるので、自分はこれだけ走りまくっても全然飽きていません。スマートトレーナーでZWIFT、本当に楽しいので心の底からおすすめします。
本当にTacx Neoでいいですか?
スマートトレーナーを持ってない人は、スマートトレーナーを買うしかないので、買いましょう。そうしたときに、真っ先に購入候補になるのはTacx Neoでしょう。フラッグシップモデルなのに、フラッグシップモデルとは思えないコスパの高さ。静粛性も高いし、なによりカッコイイ。
自分はWahoo KICKRを購入してからTacx NEOについて詳しく知ったので、正直こう思いました。
「やっべえええ!失敗したああああ!!!!!!」
なんですが、Wahoo KICKRを使っていくうちにオーナーの贔屓目を差し引いても「やっぱりKICKRでよかった…」と、感じる機会もありました。絶対に後悔したくない選択をするのであれば「Wahoo KICKRにあってTacx NEOにない、2つの機能的な差別化ポイント」を認識しておいてください。
ひとつめの差別化ポイントは、取り付け部の高さを変えられること。Wahoo KICKRなら700cのロードだけでなく、ミニベロでだってZWIFTできます。自分はロードをメンテで預けている時は、サブのTyrell FX(20インチ 406)を使ってZWIFTしていました。
そしてもうひとつの差別化ポイントが悪魔的オプション、「KICKR CLIMB」の存在。電波塔やアルプで、脚の負荷が上がるとともにハンドルがグイグイ持ち上げられていく。このリアル感と絶望!
バーチャルライドの坂が「単なる負荷の高い場所」じゃなくて、ちゃんと坂になる感覚が絶大です。実写をつかったバーチャルサイクリングサービスを使ったときなどは、特に走行のリアル感が爆上がり。これ本当にオモシロ過ぎです。デモをやっているショップで、一度体験してみることを猛烈に推奨します。
まとめ
自転車生活にスマートトレーナーを使ったバーチャルライドをとりいれることで、実走行できない日にも自転車を楽しめるようになりました。走行距離が増やせるから脚力が増して、しかも、それが精緻な数値でわかります。ワールドワイドなゆるいコミュニケーションをしながら、朝でも夜でも、1日に何度もペダルを回せる。しかも、安全性は究極レベルで高い。いまのところ、いいことしかありません。
貧脚中年だけどスマートトレーナー買ってよかった!最高!えっ、まだ公道だけ走って消耗してるの?(ドヤ顔)