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チェーン・チェーンリング・カセット

クロスチェイニング(たすき掛け)は本当に避けるべきなのか コンポメーカーの回答から考える

ギアの「たすき掛け」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。

たとえば、フロントチェーンリングがアウターでカセットが最大スプロケット(コグ)。あるいはフロントがインナーでカセット側は最小スプロケット。下の図で示してあります。

チェーンのたすき掛け(クロスチェイニング)

この「たすき掛け」(英語ではCross-chaining, クロスチェイニングと呼ばれる)は良くない、それは使ってはいけないギアだ、というのが一般的な意見だと思います。実際、これらの組み合わせを使うとチェーンがフロントディレイラーのケージにあたったり、リアコグから異音が聞こえることもあるでしょう。

しかしこんな話も聞いたことがあります。一部のプロは好んでこの組み合わせ、特に「アウター・ロー」を使うことがある、と。その理由は2つ。

  • そのほうがパワーロスが少ないような気がするから
  • レース中の大事な場面や負荷の高い坂道でフロントディレイラーを変速することにはチェーンが外れるリスクがあるから

その話をどこかで聞いた時は、なるほど、もし本当に駆動損失が少なくて戦術的にもメリットが大きいなら、自腹でパーツを買う必要がないプロライダーならガンガンたすき掛けしても別におかしいことではないのではないか、と思いました。

ではシマノ・カンパニョーロ・SRAM・FSAといった有名コンポーネントメーカーはこの「たすき掛け」、「クロスチェイニング」をどのように考えているのか。

Road.ccが2017年頃の記事でメーカー各社にこのことについて質問しているので、以下、日本語で紹介します。

出典 Cross-chaining: is it really all that bad? (クロスチェイニングってそんなに悪いの?)

シマノ広報担当者の回答

最も効率的なチェーンラインはチェーンがまっすぐ走っている時に生まれます。この結果、フリクション(摩擦抵抗)が最小化されます。

“big-big”(最大チェーンリング・最大スプロケット)の組み合わせを使っている時、(チェーンの)ローラー、プレート、ブッシングに不均衡なパワー伝達を押し付けることになります。

とりわけチェーンラインが変化する箇所(チェーンがスプロケットとチェーンリングと出会う箇所)ではそうです。

この不均衡な負荷は余分なフリクションを発生させ、チェーンの摩耗が増えることになり、長期的には最適とは言えない変速につながってしまいます。

これらの理由からシマノは極端なギア・ポジションを避けることを推奨します。

Ben Hillsdon, PR担当, シマノ・ヨーロッパ

カンパニョーロ広報担当者の回答

クロスチェイニングはまっすぐなチェーンラインよりも効率が低いため避けるべきものです(フリクションが増大し、リンクの自由な動きも減ります)。

レース中にヒートアップすると誰しもがクロスチェイニングをしてしまっていることに気付くかもしれません。しかし私達はこれを習慣にしてはいけません、なぜなら一般的には同じようなギアポジションがより大きい・より小さいチェーンリングに存在しているからです。

極端なクロスチェーンはチェーンリングとカセットを摩耗させます。というのもチェーンの角度が厳しいとチェーンの外側あるいは内側がチェーンリングやカセットにダイレクトに接触するからです。

それに対してまっすぐなチェーンラインはフリクションを最小化し、チェーンのリンク各々の軸にあるローラーへの接触を制限してくれます。

Joshua Riddle, 広報マネージャー, カンパニョーロ

SRAM ロード・プロダクトマネージャーの回答

SRAMは”big-big”が大好きです。NORBAやMTB世界選手権サーキット(何年も前ですが!)にいたメカニックたちは、この”big-big”を「プロギア」と呼んでいました。プロ選手たちがメカニックに何を言われてもいつもこの組み合わせで乗っていたからです。

同じことはプロのロードレーサーについても言えます。彼らは可能な限り長いあいだ大きいチェーンリングにとどまろうとするでしょう。

大スプロケットを使わざるをえないような時でさえ大きいチェーンリングにとどまることには非常に良い理由があります。

  • 荒れた路面でのチェーンマネジメント
  • フロントでシフトする必要なく最大ギアにアクセスできる
  • フロントシフトはリアよりもスローであり、チェーンにも厳しい

ですから我々は、そうするのが好きなら”big-big”で乗ることを推奨します、チェーンがフロントディレイラー・ケージに接触して音を立てない限りは。SRAMの2×11ドライブトレイン、特にヨー(yaw)・フロントディレイラーはこの組み合わせに対応するよう設計されています。

SRAM Yaw Technology イメージ

クロスチェイニングにおいて失われる効率はほとんどありません。また”big-big”のケースにおいては、クロスチェイニングで失われる極小な効率性はチェーンへのより大きい曲げ半径で得られる効率性によってオフセット(帳消し)されるものです。

よりよいチェーンマネジメントが得られること、大きいギアに容易にアクセスできることのメリットはどのような効率損失をも凌駕します。

効率の測定についていくつか補足します。荷重をかけたドライブトレインと未荷重のドライブトレイン(ワークスタンドにのせたバイクのクランクを手で回している時など)では、測定される効率に巨大な違いが生まれます。

クロスチェイニングをしたバイクが作業台の上で見せるような動きの渋さは、ドライブトレインに荷重がかかった状態では消えてしまいます。

荷重のかかった、あるいはかかっていない機械システムにおける潤滑油にも同じことが言えます。軽量なオイルは一般的に、システムが手で回された時は重いグリスよりも良い感じがしますが、システムが荷重されるとより重い潤滑油がより効率的になるでしょう。

同様にクロスチェイニングのせいでコンポーネントの寿命が短くなるという心配もありません。チェーンがフロントディレイラーのケージに接触して擦れていない限りは。

JP McCarthy, ロード・プロダクトマネージャー, SRAM

FSA ジェネラルマネージャーの回答

過去10年間で多くの人が、大チェーンリングと大スプロケットにチェーンを走らせるようになり、クロスチェイニングはますます当たり前のものになってきました。クロスチェイニングへの許容度がずっと高い電動シフトでは特にそうです。

このことが意味しているのは今日のチェーンは過去よりも高いストレスにさらされているということです。この理由から我々はより強靭なチェーンの開発に投資することに決めました。

我々は非常に高いレベルの信頼性とパフォーマンスを持つ製品を提供するために必要な原材料を安定的に供給されています。

FSAではクロスチェイニングの重要性をよく理解しています。このフィールドでの我々の最新製品は(※2017年時点)48/32のアドベンチャー・チェーンセットです。これは新しいスーパーコンパクトの標準で、48/21 – 48/18といった組み合わせが可能になります。チェーンがよりリニアになるため、クロスチェーンを回避しうるソリューションのひとつです。

我々はこの新しいチェーンセットシリーズをカーボンのSL-KからエントリーレベルのVero Proまで、2017年に発売するでしょう。

Maurizio Bellin, ジェネラルマネージャー, FSA

メーカー各社の見解の要約

さて、皆さんはどう思われたでしょうか。メーカー各社の見解を要約すると、

  • シマノ・カンパニョーロはクロスチェイニングには反対であり、推奨しない
  • SRAMはクロスチェイニングに賛成。メリットが大きいし、言われるような駆動損失も皆無に等しく、コンポーネントの摩耗もない
  • FSAはクロスチェイニングには好意的だが、チェーンの負担はやはり大きくなるものと考えている

という感じでしょうか。

上のメーカー各社の回答を読む上で若干注意したほうが良さそうに思えるのは、シマノ・カンパニョーロはエンジニアではなく広報担当者が答えているということ。一方SRAMでは製品開発に近い立場の人が答えていること。

そしてSRAMは1xドライブトレインを強力に推進してきているわけで、マーケティング上の理由からも「クロスチェイニング推し」になるのは容易に推測できます。その意味で少しバイアスがかかっている可能性は、なきにしもありません。

「たすき掛けはダメ」は時代遅れ?

個人的にはクロスチェイニングによってチェーン落ちのリスクが減る、というのは大きいメリットとして納得できます。アウター・ローのような組み合わせは実際に同じギア比でのフロントインナーなどでの駆動抵抗を荷重状態で測定したデータがあれば見てみたいと思います。

またSRAMの1xドライブトレイン用チェーンの耐久性・寿命はたとえばシマノ・カンパニョーロのチェーンに比べて低いのか、それとも変わらないのか、という点も大変気になるところ。

1xドライブトレインにはそもそも「クロスチェイニング」という発想がありません(1×11では9枚しか使うべきではない、という話はありません)。

「クロスチェイニングをしたからといってコンポの寿命が縮まるわけでなない」というSRAMの見解に対して、元記事のコメント欄では「でもSRAMのコンポはすぐ壊れるよ」といったコメントも。

もしかするとシマノやカンパニョーロが自社のコンポーネントに求める耐久性要件とSRAMのそれは大きく違う、というようなこともあるかもしれません。が、推測にすぎません。

1xドライブトレインのチェーンラインはチェーンリングの位置の関係上、2xのそれよりも厳しいものではないという意見もありますし、電動シフトではフロントディレイラーが自動で最適な位置に動いてくれるのでチェーンがケージに接触してガラガラ… ということも少ないはずです。

果たして私達は「たすき掛け」をもう心配せずに使ってもいい時代に入っているのか。それともやっぱりやめたほうがいいのか。なかなか考えさせられる内容でした。

私個人は”big-big”のたすき掛けは気にせずよく使うようになりました。リアディレイラーの調整が不十分だと異音がしますが、パーツの耐久性といった点は心配していません。というのも、寿命が来る頃には新しいコンポに買い換えているような気がするからです。

でも自転車で日本一周、世界一周といったツーリングに出るのならたすき掛けは避けるかもしれません。

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著者
マスター

2007年開設の自転車レビューサイトCBNのウェブマスターとして累計22,000件のユーザー投稿に目を通す。CBN Blogの企画立案・編集・校正を担当するかたわら日々のニュース・製品レビュー・エディトリアル記事を執筆。シングルスピード・グラベルロード・ブロンプトン・エアロロード・クロモリロードに乗る雑食系自転車乗り。

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