自転車は痩せるらしい、と聞いてロードバイクやクロスバイク等のスポーツバイクに乗りはじめてみたものの、最初はちょっと痩せたのになんだかすぐ痩せなくなってしまった。自転車が痩せるなんてウソだ! 騙された! などという失望の声を定期的に見聞きします。
誰でもスポーツバイクをはじめたての頃はある程度体重が落ちるとは思います。しかし次第に体重が落ちなくなっていくのは、ある意味当たり前のことです。
順を追って考えていきましょう。
自転車に乗るのが「うまくなる」と痩せなくなる
自転車は少ない入力で大きい出力を得られる効率的な乗り物です。ロードバイクなどはその最たるもの。
でもロードバイクではじめて20km, 50kmといった距離を走った時のことを思い出してみましょう。
たぶんクタクタになったのではないでしょうか。ママチャリとは違う前傾姿勢をキープするだけでも相当疲れます。夜は泥のように眠れたのではないでしょうか。翌日は全身筋肉痛になったことでしょう。これまでにない集中力を使ったせいで気疲れもしたでしょう。
それが乗り慣れてくると20kmなど「そのへんの散歩」同然になり、50kmもたいした距離ではなくなってきます(そして人はブラックサイクリストになっていきます…がその話はおいておこう)。
この「乗り慣れる」とは、「自転車がうまくなる」ことと同義です。
ギアの変速は効率的になり、脚への負担が減っていく。手はハンドルのさまざまな場所に置けるようになり、お尻の位置もこまめに移動することを覚える。ペダリングもきれいになる。体幹や首の筋肉も発達して、ロードバイクの前傾姿勢もあまり苦でなくなる。前よりもずっと少ない力で、以前と同じだけ自転車を走らせるスキルが身についてくる。
すると何が起きるか。それだけで消費カロリーが減るのです。同じ50kmを走るとしても、ロードバイク歴1日目と3ヶ月目では、消費カロリーがまったく違うはずです。まずはこのことを理解しなくてはなりません。
ライド中・ライド後の食べすぎ
にもかかわらず、ロードバイクをはじめたての頃と同じくらいのカロリーのおやつや食事をライド中に採り、ライド後も同じように頑張った自分へのご褒美だ〜! イェ〜ラーメン大盛り! 焼肉! 寿司! スイーツ! とやっていたら全然痩せなくなるわけです。
「毎週日曜日に50km乗っているんだけど、なんか痩せなくなってきた」という問題を抱えている人は多くの場合、こういう理由です。
自転車がうまくなった結果、消費カロリーが減った。でも食べる量はいつもと同じ。というわけです。
体重を落とすための原則はひとつだけです。それは消費カロリーが摂取カロリーを上回るようにすること、です。
対策
ではどうすればまた以前のように自転車で体重を落とすことができるのか。そのためには、上で書いたように「消費カロリーが摂取カロリーを上回る」ような状況をつくれば良いわけです。簡単な例を3つ挙げましょう。
走行距離を伸ばす・増やす
単純に走行距離を伸ばします。普段サイクリングロードで週末に50km走っている、という人であれば70km, 100km, 120km…と伸ばしていきます。
あと週末しか乗ってないという方は平日にも2〜3日、距離が短くても良いので乗るようにすると効果的です。
インターバル練習を取り入れる
でもそんなに乗っている時間を取れない、という人も多いと思います。
その場合いちばん良いのは「インターバル練習」を取り入れることです。いろいろな方法がありますが、いつものサイクリングの中で、たとえば「30秒間だけ全力で漕ぐ」というのを3分おきに3回やる、とかそういうものです(こういう練習を「オールアウトする」と言ったりもします)。
これだけで消費カロリーは相当上がります。ただ安全の確保された場所でやるべきなのは言うまでもありません。事故を起こさないようくれぐれも気をつけましょう。
ヒルクライムに出かける
坂道を走ることは、カロリー消費という面で費用対効果が非常に大きい行為です。のんびりマイペースで平地を50km乗って帰ってくるよりも、峠を10km登るほうがはるかに多くのカロリーを消費します。「輪行」という、公共交通機関で自転車を運ぶ行為で、坂道のある遠くの山に出かけてみましょう。
諸事情で遠くまで輪行できない場合は近所の坂道を積極的に走るのも良いです。とにかく平地とは消費カロリーがまったく違います。自分の生活圏でお気に入りの坂道を見つけましょう。
スマートトレーナーを導入する
短時間で多くのカロリーを消費するにはスマートトレーナーの導入も非常に効果的でしょう。詳しくは次の記事を読みください。近年は室内で効率的にカロリー消費できるインドア・サイクリングが盛んで、それを可能にするデバイスがたくさんあります。最も有名なインドアサイクリングのプラットフォームは「Zwift」と呼ばれるもので、美しい風景もあるので競技者は勿論、一般のサイクリングファンでも楽しめるようになっています。
Zwiftをはじめとするバーチャルサイクリング関連の主な記事が下のページにあるので、是非チェックしてみて下さい。初期費用は、自転車以外に約10万〜20万円が必要になりますが、少なくとも3年〜5年は楽しめるので費用対効果は決して悪くはありません。
ライド後に贅沢なものを食べない
ライド中もそうですが、ライド後に豪華な食事をするのを習慣にしないことも大事です。「頑張った自分へのご褒美」は、実は「あまりに過剰なご褒美」になっていることが多々あるからです。
「頑張って長距離を走った後」や、「何かを達成した後においしいものを食べる」のはサイクリングの楽しみのひとつですが、もしダイエットもサイクリングの目的としているのであれば、食べ過ぎになっていないか注意する必要があるでしょう。
これから食べようとしている食事のカロリーを推定する習慣をつけるのも大切。上のカレーと下のラーメンは、完食すれば1500kcalくらいにはなるでしょう。
1500kcalをオフセットする、すなわち「帳消しにする」にはどれだけの運動量が必要でしょうか。
自転車でどの程度のカロリーを消費できるかは、その人の自転車の乗り方や年齢(基礎代謝)、ライドコースによって全く変わってくるので一概に言えませんが、どんなに距離を乗っても「ゆっくりのんびり」走っているのであれば、消費カロリーは実は大したことはありません。
一般に、ジムに置いてあるようなエアロバイクでのカロリー消費量が1時間で300〜600kcalなどと言われたりしますが(年齢・性別・運動強度で全然変わりますが)、外でリアル自転車で1時間乗ったとしましょう。
自転車を効率良く走らせるためのテクニックが身についていること以外に、脚を止めてコースティング(=踏まずに滑走)していることも多いでしょう。エアロバイクと違って1時間連続で脚を回していることはあまりないはずです。そして追い風なら抵抗も少ない。
20km走っても200kcalくらいしか消費していない、ということもざらにあるはずです。50km走ってもせいぜい300kcalほどしか消費していない、ということも全然珍しくありません。
そんな時、ライド後に1500kcalの宴を開いてしまったら、当然痩せるわけがありません。というわけで、自転車で痩せ続けたければ、あるいはおいしいものを食べても体重を増やしたくないのであれば、ライド中に頑張ってインターバル走をやったり、ロングライドに挑戦したり、山に行ったりするのが良いのです。
また、自転車に乗るのは週末だけ、という人の場合は、週末意外の終日に1回でも2回でも乗るようにしましょう。するとだいぶ結果は変わってきますよ!
脂肪を筋肉に変える
ライド後はプロテインの摂取がおすすめです。ライド後のタンパク質の摂取は、翌日の疲労を軽減する効果があるだけでなく、ライド中に失われた筋肉を補完する役割があります。身体の筋肉力が多ければ多いほど基礎代謝が上がるので、太りにくい体質になります。
ライド後に十分なプロテインが摂取されない場合、体脂肪はほぼそのままで筋肉量が減る、といった現象も起こりえます。これでは「ガリガリでポッチャリ」という身体になってしまい、身体が「痩せるサイクル」に入るのが難しくなります。
ライド中の炭水化物の摂取は「即戦力」となる燃えやすいエネルギー源の補充という意味で必要かつ重要ですが、タンパク質の摂取も忘れないようにしましょう。