自転車パーツのさまざまなジャンルそれぞれに「伝説的とも言えるヒット商品」が存在します。ポンプヘッドならクワハラのヒラメ。クリンチャータイヤならコンチネンタルGP4000S II/5000。スマートトレーナーならTacx NeoかWahoo KICKRといったように。
そして「フロントライト」というジャンルでは、それは間違いなくこのCATEYE VOLT800と言えます。
生ける伝説 VOLT800
伝説、と言ってもこれは過去の名品ではありません。CATEYEの現役のフラッグシップモデルです。
ん、フラッグシップ? VOLT6000やVOLT1700, VOLT1300という上位モデルがあるじゃないか… と思われる方も多いかもしれません。
しかしこのコンパクトさと重量がポイント。「LED 1灯式」のモデルとしてはCATEYEのフラッグシップと言っていいと思います。実測重量は筆者所有の個体で136g(ブラケットなし・公称重量は140g)。これがたとえば2灯式のVOLT1700になると重量は公称値で256.3gと120gも重くなってしまいます。
バッテリーはカートリッジ式。2017年以前に流通していたロットはBA-3.1だったようですが、現在売られているものはBA-3.4(Li-ion 3.6V 3400mAh)。これはVOLT700, 400, 300, 50, 400DUPLEX等の下位モデルと互換性があり(駆動時間は当然異なる)、大変好感が持てます。筆者所有のVOLT300のバッテリーとスワップしてもどちらも問題なく動作します。
唯一のネガといえば1.5mmヘックスレンチを要する下のボルトくらい。これは振動や長期使用でゆるむ場合があるのですが、メーカー的にはユーザーがこのボルトをいじることは想定していないのでしょう。ここだけ汎用性の高い2mmにしてくれるとありがたいですね。
基本的にネガティブポイントが皆無とも言える珍しい製品です。あえて欠点を挙げるとするなら、最もパワフルな「ハイモード」が時に明るすぎて普段使いでは持て余すことがある、ということくらいです。
発光モードとランタイム
発光モードとランタイムを見ていきます。ハイモード・800ルーメンでの2時間という駆動時間を見て「短い」と思われるかもしれませんが、これは緊急時やスーパーエクストリームな状況以外ではまず使わないモードと言って良いでしょう。
注目すべきは200ルーメンのローモード(ローでも十分に明るい)で8時間駆動が可能なこと。しかも実際には10時間以上駆動するという声が多々あります。VOLT800が愛されている最大の理由がこのモードにあると言っても過言ではありません。
モード | 駆動時間 | 光量 |
---|---|---|
ハイ | 2時間 | 800lm |
ミドル | 3.5時間 | 400lm |
ロー | 8時間 | 200lm |
デイタイム ハイパーコンスタント | 7.5時間 | n/a |
点滅 | 100時間 | n/a |
普通の人は1回のライドで8時間もてば困りません。夜通し走ることもあるランドヌールやロングライダーには強い味方。さらにVOLT700(ディスコン)以前のモデルでは「電池が減ると光量も落ちる」のが仕様でしたが、このモデルでは「ギリギリまで同じ光量を維持する」のが特徴。これもまたVOLT800人気の理由のひとつ。
自転車通勤で1日2時間、点滅モードを使用する場合は50日もつので、週休2日の方なら2ヶ月以上充電なしで駆動してくれます。ピーク時・ミッド時の性能の高さに加えてこの守備範囲の広さが大ヒットの要因なのです。
VOLT800 大ヒットのもう1つの理由
このVOLT800が大ヒットしているもう1つの理由は、内外価格差です。
最近は日本国内でも値段がこなれてきてamazonでは本記事執筆時点で¥9,833ですが、町のリアルショップでは13,000〜15,000円で売っていることも珍しくありません。国内通販では11,000円弱が現在の実勢価格。
ところが昨年、海外通販のTweeks Cyclesでは送料込みで7,000円強、というセールがよくありました。現在VOLT800は世界的にバックオーダー扱いになっているらしく、Tweeksではもはや取扱いなし。Evans Cyclesでも価格は¥7,495となっていますが入荷予定は7月21日。
この超高性能製品が国内価格の半額で買えた、6〜7割の値段で買えた、という点もVOLT800のヒットに火を付けた要因だと思います。
メーカー公称スペック
スペックを観察してみましょう。
- 使用光源: 高輝度白色 LED 1灯
- カートリッジバッテリー: Li-ion 3.6v 3400 mAh:BA-3.4
- 充電: マイクロ USB プラグ
- 充電時間: 約5 〜 9時間
- モード: ハイ・ミドル・ロー・デイタイムハイパーコンスタント・点滅
- 使用温度範囲: 充電時 5°C〜 40°C / 点灯時 -10°C〜 40°C
- 繰返し充放電回数: 標準 300回 (定格容量の70%の容量低下まで)
- 本体寸法: 31.2 x 116 x 43.2 mm
- 重量: 140 g(カートリッジバッテリーを含む)
- 付属品: MICRO USBケーブル, フレックスタイトブラケット(H-34N)
注意したいのが充電時間。スマホを充電するような1A以上の出力に対応したバッテリー・ポートであれば約5時間でフル充電できます。なお充電中は使えないので注意。
定番の「フレックスタイトブラケット」も付属するのでどんな太さのハンドルでもすぐに使えます。
ちなみに発光モードの「デイタイム・ハイパーコンスタント」は以前は単に「ハイパーコンスタント」という名称でした。CATEYEとしてはこのモードは昼間の使用を推奨することを明確にしたかったのでしょう。
急速充電しているかどうかの判断
VOLT800は急速充電している場合、本体のインジケーターが赤色で点滅します。
CATEYEの取扱説明書によると1A以上の入力なら5時間での急速充電が可能となっています。ちなみに筆者所有のiPhone用のApple純正充電器は1Aで、iPad用純正充電器は2.1A。いずれも急速充電対応のUSBケーブルを使うことで赤色インジケータが点滅しました。
操作も簡単
VOLT800はインターフェースもわかりやすいです。どんなモードにいようが、電源OFFであろうが、ボタンのダブルクリックで最も明るい「ハイ」モードになります。そこからワンクリックするとそれ以前に使用していたモードに切り替え。電源ボタンの長押しでも最後に使っていたモードが呼び出されます。
自転車屋さんではなぜかオススメされないライト
よく自転車屋さんではじめてのロードバイクやクロスバイクを買う時、最初に必要な装備としてヘルメットやカギ、ライト等をおすすめされることがあると思います。
しかし、このVOLT800をすすめてくるお店はまずないでしょう。
理由のひとつは内外価格差。国内のリアルショップでは1万円以下で売っているところはまずありません。するとそれを「最初に」おすすめするのはユーザーの予算的に難しい、という事情があると思います。
もう1つの理由は、先述したようにVOLT800の「ハイモード」があまりにパワフルであることです。スポーツサイクル入門者が何も考えずにこのハイモードを使ってしまうと、対向車や歩行者を幻惑させてしまう場合があります。ショップが初心者の方にこのライトを積極的に推してこないのは、そうした事情もあるものと思われます。
でも1万円以下で売っている場合、迷わずこれを買って良いと思います。点滅だけを念頭に置いたフラッシャーにはこれより安価で良い製品もたくさんありますが、点灯も考慮に入れるのであればVOLT800より良い選択肢はない、と言っても過言ではないでしょう。
2015年の登場以降、4〜5年にわたってほとんどスペックに変更がありませんが、それだけ高い完成度を誇っているとも言えるでしょう。