サイクリングウェアやシューズが臭すぎて「これはもう使えないのではないか、もしかして『死んだ』のではないか…」と思ったことはあるでしょうか。それほど摩耗していないからまだ何年か使えそうだけど、もう買い換えないといけないと思えるくらい臭い… そんな事案を、私は自転車キャンプツーリングをやるようになってから、はじめて経験しました。
高温多湿な島で経験した異変
それはある高温多湿な南の島での出来事でした。昼は濡れた林道をグラベルバイクで巡り、跳ねた泥でシューズも濡れました(原因1)。湿度の高いなか、高強度で数時間ペダルを踏んで汗をたくさんかきました(原因2)。キャンプ場でも同じシューズで歩き回っていました(原因3)。タープの下で寝ていた時、明け方にスコールのような雨が降って、避難中にまた濡れました(原因4)。
たぶんそれらの原因が重なったのだろうと思います。あとその島に住む独特な微生物との相互作用も影響もあったのではないかと想像しています。旅の終わり頃、私はこれまでの人生で経験したことがないような異臭に悩まされ「すぐ近くに何かの死骸がある。それか、大量の牛か馬のフンがある」とあたりを見回しました。
しかし結局のところ、悪臭源は私のシューズでした。どれくらい臭かったかというと、接近した人の表情が一瞬でこわばって目を丸くするのがはっきりわかったくらいでした。細菌が指数関数的に爆殖してしまったのです。
救世主オキシクリーン
さて帰宅後に「激臭兵器」と化したトレランシューズやソックスを救出しようと、地道に様々な方法を試しました。しかし、ファブリーズ… 無力。ハッカ水…無力。焼きミョウバンや重曹(重曹水で洗ったり、粉をお茶パックに入れてシューズの中に入れて放置するなど)… ほぼ無力(微力はあったかも)。
結果的に私のケースで有効だったのは2つだけでした。オキシクリーンでの漬け置き洗いと冷凍、この2つです。
このオキシクリーンというのは「酸素系」漂白剤で、「塩素系」漂白剤と違って衣類には比較的優しいとされています。本当に困ったので英語圏の情報まで調べているうちに、これに辿り着きました。米国製です。素材への攻撃性は不明でしたが(ほぼないらしいけど)、シューズを捨てるよりはいいだろうと試してみることにしました。
私がやった方法は、6〜70度のたっぷりのお湯をバケツに入れてこのオキシクリーンを投入してかきまぜる。そこにシューズを漬けて一晩放置。その後は普通の洗濯用洗剤で洗濯・脱水してから、扇風機・浴室乾燥機・シューズアタッチメントを付けた布団乾燥機・天日干しなど、あらゆる方法を駆使してなるべく短時間で徹底的に乾かす、という方法です。
するとそれを1回やっただけで明らかに「他の方法に比べて臭いが劇的に落ちた」と感じました。しかし一抹の不安はあったので、シューズをさらにジプロックに入れて2日ほど冷凍しました。その後オキシクリーンでの漬け置き洗いをもう一度、乾燥させてからまた冷凍。この2サイクルで、謎の激臭は消えました。
シューズ特有の「普通の臭さ」は、手持ちの他のシューズ同様に、ちょっとは残っています。しかしそれはそれで仕方がないし、それで良いのです。人間にとって細菌・バクテリアは「殲滅の対象」ではなく、ともに生きていく仲間です。バランスが崩れて特定の細菌だけ増えすぎた時は対応が必要だけれども、完全に無臭なウェアやシューズを求めるのもあんまり良くないと思います。
臭いのもとになるのも、皮膚の常在菌です。人間は動物なのだから、臭くて当たり前なのです。臭すぎてやばくなったら対応すれば良いのです。
というわけで「ウェアやシューズの匂いがキツくなってきたかなぁ」と思ったら、オキシクリーンは個人的におすすめです。普段のお洗濯でも少し混ぜておくと生乾き臭の予防にもなると思います。